魔法びんのサーモスが手掛けた「VECLOS」高級イヤホンを聴き比べ

魔法びんのサーモスが手掛けた「VECLOS」高級イヤホンを聴き比べ

 過去の記事では、真空断熱構造のステンレスボトル(要するに、魔法びん)の開発で世界的に有名なサーモスから生まれたオーディオブランド「VECLOS」を紹介し、その独特な構造と、そこから引き出される、魅力的な音について紹介した。

 VECLOSのスピーカー、ヘッドホンは雑味のないクリアな音質で、定位感に優れたサウンド。真空断熱構造が音質にもたらす「メリットの大きさ」も身をもって知ることができた。

 ただ、筆者は東京にオフィスを構えているため、音楽を聴くのはもっぱら通勤電車の中だ。ドライバーが大きい、オーバーイヤー型ヘッドホンの音質がいいのは分かっているが、毎日取材でデジカメやパソコンを持ち運ぶカバンは常にいっぱいで入れにくい。つまり毎日聴くのならば、やはりインナーイヤー型ヘッドホン(イヤホン)の使い勝手が一番よい。

チタンかステンレスか、シングルかデュアルか、その選択も楽しい

 というわけで、この記事では、VECLOSブランドのイヤホン4モデルを紹介する。チタン製エンクロージャーを採用した「EPT-700」と「EPT-500」。ステンレス製エンクロージャー採用の「EPS-700」と「EPS-500」だ。型番のTはチタン、Sはステンレスを表す。700シリーズと500シリーズの違いは後ほど説明しよう。

 4モデルに共通するのは、サーモスが魔法びん開発で培った技術を投入した真空エンクロージャーの採用だ。ヘッドホンやデスクトップスピーカー同様の真空二重構造だが、これを直径わずか1cm強と小さな、イヤホンの筐体に取り入れた技術力の高さには驚く。この小ささで、内筒と外筒の隙間はわずか約1mmとなっており、真空状態を保持しているわけだ。

 再生ユニットには、いずれも解像度の高いバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを使っている。上位機種の700シリーズはフルレンジドライバー+ツイーターのデュアルドライバー構成、500シリーズはシングルドライバー構成だ。

 4機種に共通する特徴は、このドライバーをシリコン製のクッションで包んでエンクロージャーに固定している点。つまり、上述した真空エンクロージャーと、このフローティング構造によって、不要振動や共振を抑えている。結果、音の輪郭がボケない、クリアなサウンドを実現できるというわけだ。

 なお、上位の700シリーズでは、ケーブルに純度99.9%以上の銅(OFC:無酸素銅)を銀メッキコートした芯線を採用している。信号伝達のロスや歪みを抑えられるという。

優劣よりは個性で選べる4モデル、ベストマッチのジャンルは?

 ここでちょっと余談。筆者は年の離れた姉がいたので、小学生の頃からクイーンやキッス、ビートルズなどの洋楽に触れてきた。小学校の高学年になって、初めてギターを触ったあとは、吉田拓郎やかぐや姫などのフォークに目覚め、中学校時代は周囲の影響で聖子ちゃんや明菜ちゃんを聴くようになった。しかし、高校入学後にバンドを組んだら、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルなど、ハードロックにかぶれる……というように、とても節操のない音楽人生を歩んできた。

 つまり、様々な種類の音楽を楽しみたいという欲求がある。イヤホンを選ぶ際には、どんなジャンルに合った傾向があるのかは気になる点だ。という前提を踏まえつつ、各機種の音の傾向や特徴などを探っていきたい。

 それでは、最上位モデルのEPT-700から順に試聴してみよう。

 ほかのVECLOS製品と同様に雑味がない音だ。それでいてチタンモデル特有のまろやかで伸びやかな音が特徴となっている。デュアルドライバーということで再生レンジにもゆとりがある。音量を上げても破綻がなく、低音から高音までバランスのとれた音を聴かせてくれた。「ワイドレンジで、音に厚みがある」という表現がぴったりの機種だ。

 ハードロックを聴いてみると、バスドラとベースの重低音が脳髄に響き、ギターソロではハムバッカーのメロウなディストーションサウンドがつぶれずに、一音一音分解されて聴こえる。音の角が立っていないので、ロックを長時間聴いていても疲れない。さすがハイエンドモデルと言えそうだ。

 EPT-500は、チタン筐体のまろやかなサウンドはそのままだが、シングルドライバーになるぶん、より軽やかな傾向になる点が特徴だ。J-POPなどのポップスを気軽に聴きたいときによく合う。ボーカルがよく前に出てくるので、シンプルな伴奏の前で歌う、ジャズボーカルを聴くにもいいだろう。3ピースのジャズボーカル曲を聴いてみたが、音の定位感がはっきりと感じられてが楽しい。まるで目の前に歌手がいるようだ。

 EPS-700は、「音の厚み」とハッキリとした「輪郭」の共存がお好みならぴったりだ。ステンレス製筐体ならではのアタック感と、デュアルドライバーによる音の厚みによって、アップテンポで疾走感のある女性ボーカルの曲にはよく合う。バックバンドの重厚な演奏に、女性ボーカルがかぶさっても、声が決して負けることはない。逆に澄んだ高音が明瞭な輪郭を伴って前に出てくる。例えば、最近の深夜アニメの主題歌・挿入歌をメインに聴く人には適しているのではないだろうか。

 EPS-500は、VECLOSのイヤホンの中では、もっともライトな感覚で聴けるモデルだ。ステンレス筐体とシングルドライバーの組み合わせによるサウンドは、輪郭が立っていて、澄んだ音色になるのが特徴。長時間聴いても邪魔にならない、軽い聴き心地は、イージーリスニングや昭和歌謡をBGM的に聞きながら、作業に打ち込む場合などに合いそうだ。また、アコースティック・デュオのようなシンプルな曲の「美しいハーモニー」が最も心地良く響くモデルだと思えた。入っている音が、シンプルであるからこそ、ハーモニーの息遣いが耳元で感じられ、広い音場に身をゆだねることができるのである。

拡張性も愉しみ、実売3~5万円で満足できるイヤホンを探す人へ

 筆者は過去に、ハードロックバンドを組んでいたこともあり、「音楽は重低音が効いていればそれでいい」と思っていたこともあった。しかし、もう一つの趣味である「深夜アニメ」の主題歌・挿入歌のレベルが、近年顕著に上がっており、お気に入りの曲のハイレゾ音源がいくつも配信されている点に興味をひかれた。

 そこで、ちょっと前に大枚をはたいてハイレゾ対応プレーヤーを購入したのだが、調べてみると、1980年代のハードロックやアイドル曲など、中学・高校時代によく聴いていた曲のハイレゾ配信が増えているではないか。ここに背中を押されてハイレゾ再生に興味を持つという人も少なくないだろう。

 とはいえ、プレーヤー以上に選択肢が多く、機種選びに悩むのがイヤホンだ。高級モデルの音が良いのは分かっているのだが、正直どれを選べばよいのかも分からない。音楽プレーヤーに多くのお金を使ってしまったこともあり、そこそこの価格のイヤホンで妥協してしまった面もあった。

 本当にこれでよかったのだろうかと、自問自答しているときに出会ったのが、このVECLOSだ。ケーブル着脱式であるため、バランスケーブルに交換すればバランス駆動による、より高音質な再生にも対応できる。

 また最近のスマホでは、イヤホン端子を持たない機種も増えている。4モデルはすべてMMCX端子を使ったケーブル交換が可能だが、最近ではシュアの「RMCE-BT2」のように、イヤホンのMMCX端子に接続するタイプのBluetoothケーブル(レシーバー)も出てきている。ケーブル着脱式であるため、必要に応じてバランス駆動による高音質や、無線化による手軽さを手に入れられる点も、VECLOSブランドイヤホンの特徴だろう。

 こうした自分でカスタマイズできる楽しさも魅力である。お気に入りのイヤホンをワイヤレス化できるのは、電車通勤者にとっては嬉しいものである。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏