初めてのレンズはなぜ単焦点がいいのか?よって、最初に買うべきは手頃な単焦点レンズ

初めてのレンズはなぜ単焦点がいいのか

 実は先日、新しく発売されたレンズを買っちゃったのである。

 シグマの「56mm F1.4 DC DN」。明るい単焦点レンズ。マイクロフォーサーズ機に付けると、35mmフィルム換算で112mm相当の中望遠レンズになる。

 楽しいですな、明るい単焦点レンズ。

 初めてデジタル一眼を買う人の多くは「レンズキット」を買うと思う。

 レンズキットのレンズは基本的に「広角から中望遠の便利なズームレンズ」(標準ズームと呼ばれる)。クオリティよりも携帯性や利便性、コストを重視したレンズで、俗に「キットレンズ」とも呼ばれている。最近は小型化を重視した繰り出し式レンズも多い。

 キットレンズは小さくて便利だが、それだけではデジタル一眼ならではの楽しさを味わうには心許ない、というか、弱い、というか、ちょっとレンズを追加すればもっとデジタル一眼らしい写真を撮って楽しめるのに。

 そういう人に、2本目のレンズとしてお勧めすべきは何か。

 たぶん多くの人が「単焦点レンズ」と答えるかと思う。わたしもそう答える。

 高倍率ズームレンズは便利だけど、それまで使ってるレンズとかぶっちゃうし。

 さらに高性能なズームレンズ、となると価格が10万円を軽く超える。

 キットレンズではまかなえない、超広角ズームや望遠ズームとなると……活躍の場が少ない。「こういう写真を撮りたい」とか「カメラという趣味にハマってしまってもっといろんな写真に挑戦したい」という人じゃない限り、超広角や超望遠は不要なものだし、望遠ニーズがある人は(子供の運動会を撮りたいとか)最初から、ダブルズームキットを買うということにして。

 で、買ってみようかなと思える手頃な価格で、1本余計に持って行こうかなと思える携帯性で、標準ズームとは明らかに異なった写真を撮れる、となると、明るい単焦点レンズが一番なのである。

●やっぱ背景がボケる「デジタル一眼」っぽい写真は撮りたいよね

 明らかに違うのはボケ。

 特に最近は背景が大きくぼけた写真を「一眼レフっぽい」といったり、一眼レフに迫るボケ、的な言い方が様々なところでされるので、以前より「背景や前景が大きくボケた写真」に多くの人が敏感になってるのだ。

 そして、「絞り値」(F値)を小さくするほど、ボケは大きくなる(ピントの合う範囲が狭くなる)。

 で、レンズ名の「F1.8」とか「F3.5」は、そのレンズの「開放絞り値」……つまり「絞りを一番開いた時の絞り値」を表すわけで、この数字が小さいほどレンズは明るくてその気になれば大きくボケた写真を撮れるわけだ。

 そこで実例。

 例えば、エントリー機の標準ズームレンズは「F3.5〜5.6」が基本。小さい方が広角端、大きい方が望遠端の「開放絞り値」になる。

 ではここに50mmの単焦点レンズがあるので、F5.6で撮ってみよう。

 レンズはこれを使用した。

 ちょっと旧型だけれども、50mmF1.4のレンズだ。

 カメラはニコンの「Z 6」。35mmフルサイズセンサーのカメラだ。

 まずはエントリー機用ズームレンズの場合、こんな感じになる。

 これでも十分ぼけてるとえばボケてるわけだが、ここから少しずつ絞りを開いていってみよう。

 分かりやすいように、部分的に拡大して、F1.4とF5.6を並べて見た。上がF1.4、下がF5.6。

 かなり違うでしょ。

 F1.4の方は鼻の頭が既にぼけているし、後方にいる招き猫はもやっとしてよく分からないが、F5.6の方は目鼻であるということがかろうじて分かるくらいのボケ具合にとどまっている。

 ちなみに、絞りの仕事は「イメージセンサーに当たる光の量を絞る」こと。

 今回使った50mmF1.4のレンズ(古いレンズなので絞りをメカ的に動かせてこういうとき便利)で、F1.4とF2.8とF5.6で絞りがどう絞られているかみると分かりやすい。

 レンズの絞り機構によってこうして通す光の量をコントロールしてるわけだ。ちなみに、F1.8のレンズだと、絞り開放時の穴がもうちょっと小さくなる。

 さらに、詳しい理由はスルーするけど、光の入る穴を絞ってやることで、ピントの合う範囲も広くなる。

 そして簡単な結論。

 「背景が大きくボケるデジタル一眼ならではの写真を撮るには、開放F値が小さい単焦点レンズが一番手っ取り早い」のである。

 最初に買う交換レンズとして魅力的ってのが分かってもらえるかと思う。

 ついでにいえば、「被写体が近くて背景が遠い」ほどよくぼけるので、テーブルフォトのような1m以内の被写体を撮ったとき、よりボケ感を楽しめる。

 逆にいえば「ピントの合う範囲が狭い=ちょっと間違うとピンボケしやすい」のでそこは注意。

 特に人を撮るときはちゃんと「手前の目」にピントを合わせるように(だから最近、瞳AFが話題になるのだ)。

●もう一つのメリットは暗所に強いこと

 明るい単焦点レンズのもう一つのメリットは「暗所にも強い」こと。

 今度は別のカメラで。

 日が落ちかけた暗い時刻にF1.4とF5.6で猫を撮り比べたのがこちら。ISO感度はオート。F5.6の方は標準ズームレンズ相当だと思って見て下さい。

 拡大して比べて見よう。

 絞り値が小さい(レンズが明るい)とその分多くの光を入れられるので、ISO感度を上げなくて済む。

 逆にレンズが暗いと光量が足りないとISO感度をあげなくちゃいけないので画質が落ちる。

 ISO感度を無理に抑えると、今度はシャッタースピードが遅くなるので手ブレしやすくなる。

 暗所に強いので夜のポートレートもOk。

 明るくない室内でも背景をぼかした「それっぽい」写真をさっと撮れるのだ。

 部屋が暗くてもOkなのだ。

●よって、最初に買うべきは手頃な単焦点レンズ

 以前聞いた話。ミラーレス一眼を買った人が「もっとボケる写真を撮りたいからカメラ買い換えたい」と言ったそうな。言われた人は「いや、ボケるレンズを買えばちゃんとそのカメラでもボケるから」と答えたそうだけど、「レンズを追加で買う人は少ない」と言われるのも分かるエピソードである。

 よって、デジタル一眼を買った初心者には、まず手頃な……「F1.8」でそこそこの価格の(そうなると、焦点距離もだいたい決まってくるので)レンズを勧めたい、というわけである。

 なんてことない被写体でも、背景がいい感じにボケるだけで気分が出るから。

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