自分の名前を検索したら「ネトウヨ」と検索候補が…ネット上の発言は一生消えない
現代社会においてインターネットは現実世界にも匹敵するほどの影響力を持つようになった。初めて会う人や仕事先で交流のある人物の名前を検索する人も多いと思うが、GoogleやYahoo!などの検索サイトには、単語を入力するだけで、続いてよく検索されている言葉が勝手にサジェスト(提案)されるようにプログラムされている。
じつは、この“検索サジェスト機能”が思わぬ悲劇を生むことがある。今回は、過去のネット上での発言により検索サジェストが荒れてしまった「デジタルタトゥー」に悩む人の声を聞いた。
◆過去のインターネット生放送での過激発言が原因で…
西日本在住の重藤奈央さん(33歳・仮名)は、デジタルタトゥーに悩んでいる1人だ。
早速、彼の名前を検索してみると、「重藤奈央 ネトウヨ(ネット右翼)」、「重藤奈央 障害」などの検索サジェストが表示された。重藤さんがこのような状況に追い込まれたのは、2年ほど前からであるという。
「私の検索ワードがこんなにも荒れてしまったのは、3年ほど前に私がインターネット生放送を行ったのがきっかけでした。当時、私はある右翼団体に所属していまして、ネットの生放送で所属団体の宣伝も兼ねて、よく過激な発言を繰り返していたんです。もちろん、過激な活動をしているという自覚はあったので顔は露出することなく、身体と声のみでの配信でした」
しかし、重藤さんの本名が視聴者たちに特定されるのにそれほどの時間は掛からなかった。彼の過激な発言に怒ったネット民たちは、右翼団体の過去の活動動画や放送での発言などを元に、重藤さんの本名とそれに付随する情報を特定し、ネットに拡散した。
「身元がバレたときは、身が凍る思いでした。なまじ顔出しをしないなどの特定対策を行っていただけに、寝耳に水というか『どこから漏れた』という思いで疑心暗鬼になりましたね。放送自体はすぐに辞めて、所属していた団体からも席を外しました。元々そんなに思想が強いわけでもなく『ちょっと政治的な活動がしたい』といった興味本位でしたから」
騒動後、重藤さんがネットから姿を消したことにより事態は一旦収束に向かったという。だが、本当の恐怖は静かに足音をたてながら重藤さんに迫っていた。
◆ネット上に残る一生消えない痕跡
本名が特定され、これ以上の活動に恐怖心を覚えた重藤さんはネットから距離を置いた。それから半年ほどの月日が経ち、重藤さんが久しぶりに過去の放送サイトや自身について調べていると、驚くべき事態が発覚。
匿名掲示板や、個人のホームページなどで重藤さんの本名と共に、今までの過激な発言などが全てまとめられていたのだ。そして、検索サジェストが荒れている事実も、このときに気づいたという。
「もう、終わったと思いましたね。自分の名前を検索したら、過去の放送の過激発言だけが切り取られており、悪意のある動画が表示されるんです。また、本名の後にはネトウヨだの障害だの文字が並ぶようになっていました。僕は別に、犯罪を犯したわけでも、他人に迷惑をかけていたわけでもない。単に自分の意見をネットで発言していただけです。それが過激だったとかそんな理由で、ここまでのことをされる筋合いなんてないでしょう。むしろ、彼らのやっていることは名誉棄損ですよ。書き込みしている人間全員を炙りだして裁判したいぐらいですけど、ここで僕がまた表に出ていったら火に油を注ぐようなものなので……Google側には、とにかく情報の削除を求めていく所存です」
重藤さんの名前をネットで検索した際の印象は、お世辞にも良いとは言い難い。友人や知人も含め、仕事相手からも「まるで犯罪者」のように誤解を受けてしまうのではないかと不安な日々を過ごしている。
現在、サイトや掲示板の管理者などに掲載情報の削除を求め続けているというが、検索サジェストはもちろん、ネット上に拡散されてしまった情報のすべてを消すことは不可能に近いのかもしれない……。
だれでも簡単に相手の情報が調べられるようになった今、ネットでの軽率な発言や行動は控えたほうがいいだろう。その代償は計り知れないのだ。<取材・文/小畑マト>
