「iPhone SE」の引退にみる “古き良きもの”と決別してきたApple
Appleが2018年の新iPhoneを発表しました。今年は「XS(テンエス)」「XS Max(テンエスマックス」「XR(テンアール)」の3機種。そして、昨年デビューした「X(テン)」、数年間生き延びた「SE」、2015年発売の「6s/6s Plus」は引退です。
「iPhone SE」が見たかったのに……
iPhone SEが消えたのは、3万円台で買えるiPhoneがなくなったというだけでなく、4型というイマドキにしては小さいディスプレイとの決別も意味します。iPhone 6sも4.7型でした。
今、Googleで「"iPhone SE" スペック」と検索して出てきた「iPhone SE - 仕様 - Apple(日本)」という公式サイトへのリンクをクリックしたら、「ようこそビッグスクリーンの世界へ。」というiPhone XSのサイトにリダイレクトされました。
まるでAppleに「コンパクトが良いのは分かるけど、使ってみれば良さが分かるから大画面の世界においで」といわれているようです。
もう一つ、Appleが完全に決別したのは3.5mmオーディオジャックです。2016年発売の「iPhone 7」で初めてこのジャックがなくなったときは、「なくさないで」という署名運動までありました。
今回iPhone SEとiPhone 6s/6s Plusが消えたことで、3.5mmオーディオジャックのあるiPhoneはなくなりました。同時に、これまでは3.5mmオーディオジャックのないiPhoneには「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」が付属していましたが、これがなくなり、別売になりました。
これも私には、「最後に3.5mmジャックのヘッドフォンを買ったのは2年前でしょう? そろそろ新しい(LightningかBluetoothの)ヘッドフォンを買えば? なんだったらAirPodsがおすすめだけど」というメッセージに見えます。
Appleはこれまでも、愛着を寄せる“古き良きもの”からユーザーを引き剥がして、結局は新製品を「い、いわれてみれば、これも悪くないよね」と思わせてきました。
その度に使えなくなったケーブルや周辺機器を前にため息をついたものですが、このやり方でぐいぐいとユーザーと業界を新しい世界に導いてきたともいえます。
例えば、Macintoshのポート類。うちには1989年発売の「Macintosh SE/30」があった(今は実家に居候)んですが、これの背中にはキーボードとマウス用のADB、ストレージ用のSCSI、プリンタ用のRS-422があります。正面にはフロッピーディスクのスロットも。
これらのポートはもう使われていません。ADB、SCSI、RS-422のシリアルポートは1998年の「iMac」では全てUSBに切り替わりました。フロッピーを入れるスロットがなくなり、CD/CD-ROMのトレイだけになりました。あの衝撃は忘れられません。
それからもMacのポートは、FireWireやThunderboltに進化し、ネットワークはWi-FiやBluetoothといったワイヤレス接続が標準に、そして有線での接続は何でもUSB-C(Thunderbolt 3)に集約されてきています。
周辺機器メーカーさんも大変だと思いますが、Appleが新しい技術に移るたびに周辺機器メーカーさんが泣きながら対応する新製品を出してくれて、結果的にユーザーは早く快適に使えるようになるという構図です。
そんなわけで、iPhone SEを少しの間悼んだら、“進化は痛みを伴うもの”だと割り切ってAppleについていけばいいんじゃないでしょうか。