ニコンの新フルサイズミラーレス 気持ちよく高画質
ニコンがフルサイズ(撮像素子が35mmフィルムと同じ大きさ)のミラーレス一眼カメラ「Z 7」「Z 6」をそれぞれ2018年9月下旬、11月下旬に出荷する。フルサイズミラーレスはソニーが先行して市場を築いたが、ニコンに続き、キヤノンも10月下旬に「EOS R」を発売予定。にわかに激戦区となってきた。「Z 7」の試作機から、ニコンのフルサイズミラーレス機の実力を見てみよう。
■新レンズマウントは大口径が魅力
「Z 7」「Z 6」の最大の特徴は新たなレンズマウントを採用したこと。「Zマウント」と呼ばれるそれはマウント内径が55mmと、とても大きい(ソニーのEマウントは約46mm)。明るいレンズの開発が可能になり、魅力的なレンズラインアップが期待できる。またボディー内手ブレ補正機構も搭載。最大5段分の効果を発揮しシャープな像を提供してくれるのがうれしい。
Z 7は4575万画素という高い解像度を誇る。緻密なディテールと自然な色再現を、軽量コンパクトなボディーで存分に楽しめる。ビル壁面のトーン豊かな写りがいい
「Z 7」は4575万画素、「Z 6」は2450万画素の撮像素子を搭載。加えて撮像素子のデータから画像を作り出す画像処理エンジンには、新しくなった「EXPEED 6」を採用するなど、より高次元の画質が期待できる。
「Zマウント」 に対応する直線基調のソリッドな外観デザインの新レンズ「NIKKOR Z」も同時に3本発表された。コンパクトに収納できる沈胴方式を採用した標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」、スリムながら高画質を誇る「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」、開放時のボケ味が魅力の「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」だ。どれも「S-Line」と呼ばれるグレードの高いレンズとなる。
そして「Zマウントシステム」の象徴となるモンスターレンズ、「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」の開発も発表された。開放F値「0.95」となるこのレンズはニッコール史上最高の明るさのレンズとなり、高い解像力とボケ味を実現するという。続々と投入される「NIKKOR Z」のレンズロードマップが公開され、今後の展開が明らかになっているところもニコンファンとして心強いところである。
またZシリーズに従来のFマウントレンズを装着できるマウントアダプター 「FTZ」の存在も頼もしい。ニコンによると「AI NIKKOR以降の約360種のNIKKOR FマウントレンズでAE撮影が可能で、さらにそのうち、モーター内蔵のAF-P、AF-S、AF-Iレンズ計90種以上でAE/AF撮影が可能です」とのことで、今までのレンズ資産が安心して活用できる。
■使って気持ちよい「Z 7」
実際に「Z 7」を使ってみたがとてもいい感触を得た。一眼レフと比較して軽量コンパクトなのはもちろんだが、まず「ホールド感が高い」というところだ。大きく握りやすいグリップはカメラを確実に構えられ、各種操作がとてもやりやすかった。ソニーのフルサイズミラーレス機α7の場合、筆者のように手が大きいユーザーにとってはボディーが小型すぎてグリップしにくいという難点があるが、Z 7はちょうどいい大きさである。
「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」の写りは上質だ。直線が気持ちよく描かれ、ハイライトとシャドーが際立ち、立体感あふれる描写となっている
新たな「Zマウント」は懐深い伸びやかな描写が美しい。かき氷の冷たさと、シャリシャリとしつつも儚い感じが実によく伝わってくる。このようなリアル感ある写真が楽しめるのがニコン Z 7だ。このふんわり感はなかなか出せない
そしてファインダーをのぞいてみて「EVF(電子ビューファインダー)が見やすい」という点に驚いた。約369万画素の有機ELパネルを採用したEVFは、視野率約100%、ファインダー倍率約0.8倍、対角視野角約37.0度と一眼レフから持ち替えても自然な見やすさだと感じるはずだ。長時間の撮影でも疲れることがなく、被写体に集中できる。撮影範囲の縦横約90%をカバーする493点のフォーカスポイントをしっかりと確認して、思いのままに撮影を楽しめたのがうれしかった。ホワイトバランスやピントを拡大して表示することも可能だ。
Z 7の最高感度はISO 25600。ボディー内手ブレ補正機能と相まって、低照度時の撮影領域をグンと広げてくれる。高感度時の描写もよく整っている。
オートフォーカスは像面位相差AFとコントラストAFの組み合わせによる「新開発ハイブリッドAF」で、ストレスを感じることがなく確実にピントを合わせ続けてくれた。4575万画素という高い解像度ながら、最高約9コマ/秒の高速連続撮影ができる点も素晴らしい。
新たなレンズ群「Z NIKKOR」は、コンパクトなカメラボディーにマッチし、ハンドリングもいい。「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」のヌケ感も実にいい雰囲気。「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」はロックボタンはなくズームリングをひねるだけでスタンバイとなる。とても使いやすいズームレンジで日常的な撮影ならほとんどこなすことが可能だろう。色のりも解像感も抜群だ。
「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」で浅草の名所を捉えたが、ズーミングも意のままで見やすいEVFで撮影に集中できた。ややアンダーめに露出を切り詰めて深みのある色を出した
バッテリーの持ちもよかった。カタログスペック以上に撮れるので驚いたほど。「D850」などのバッテリーも使用できるし、モバイルバッテリーでの充電も可能なのがうれしい。
■名機「D850」を上回る操作感と写り
なによりも使っていてこの「Z 7」は気持ちいいのだ。防じん防滴で高い剛性感のあるボディーは安心感のあるグリップで握りやすく、見やすいEVFはとてもクリアで、オートフォーカスと連写は高速かつリズミカルで小気味よい。フルサイズ一眼レフの名機「D850」では「撮るぞ!」と気合を入れなければならなかった被写体が、軽量コンパクトさとボディー内手ブレ補正機能、「NIKKOR Z」とのマッチングにより、よりリラックスして撮影できる。そして写りは「D850」を上回るのだから申し分ないではないか。ニコン「Zマウントシステム」のこれからがとても楽しみである。
三井公一
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影している。2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。