<北海道震度7>死者35人 土砂崩れ現場、懸命の捜索続く
北海道南西部の胆振(いぶり)地方を震源とする最大震度7の地震による死者は8日午後9時現在、35人になった。道などが発表した。9日午前3時過ぎに生存率が著しく下がるとされる「発生から72時間」を迎える。厚真(あつま)町の土砂崩れ現場では自衛隊や警察などによる懸命の捜索が続いた。地震直後に全域に影響した停電は午後11時までに約295万戸のうち781戸を残して解消されたが、電力供給量は依然不足しており、経済産業省は「最大限の節電」を要請している。
道などによると、心肺停止は2人、安否不明は3人で、すべて厚真町の住民。夜通しの捜索活動で、多くの安否不明者の死亡が確認された。死者は同町の31人のほか、新たに札幌市で男性(53)が確認された。けが人は648人に増え、建物の全半壊などは少なくとも73棟。午後10時現在、4058人が札幌市などで避難生活を送っている。
電力の復旧は急速に進んだ。道内最大の電力を供給していた苫東厚真火力発電所は再稼働できていないが、停止していた火力発電所の再稼働や本州からの電力融通が進んだことで、全戸数の99%以上に電気が届いた。残るのはむかわ町や厚真町、日高町などの781戸。北海道電力によると、完全復旧の見通しは立っていない。
電力の復旧に合わせ、新千歳空港が国際線でも運航を再開したほか、JR北海道の在来線も札幌近郊など一部で運行が始まった。
ただし、現在の供給能力は350万キロワット程度で、地震発生前日(5日)のピーク需要だった383万キロワットに届いていない。北海道電力は節電の継続を求める一方、計画停電の可能性も検討している。
世耕弘成経産相は8日の記者会見で「平常時よりも2割の節電を目標として、最大限の節電をお願いしたい」と呼びかけた。計画停電については「現時点では、(平日で電力需要が高まる)10日も実施する予定はない」と述べた。【伊藤直孝、日下部元美、安藤大介】
<北海道震度7>犠牲者数が錯綜 政府主導で混乱も
今回の北海道で起きた地震では、安倍晋三首相や菅義偉官房長官が犠牲者数をいち早く発表している。国の発表内容は警察や自治体より遅れることが多く、政府の先行発表は異例だ。政府関係者は「官邸主導をアピールする狙いがある」と話すが、首相が発言した情報が不正確で官房長官が謝罪する事態も招いている。
6日午後6時、安倍首相は政府の関係閣僚会議で「これまでに9人の方が亡くなられた」と発言。北海道庁が同日午後10時現在の被害状況として発表したのは「死者5人、心肺停止4人」で、どちらの情報を採用するかでマスコミ各社の報道内容も分かれた。
翌7日に混乱が生じた。午前9時の関係閣僚会議で安倍首相が「16人の方が亡くなられた」と発言し、菅官房長官も約2時間後の記者会見で「死者16人」と発表したが、午後には「死者9人と心肺停止7人だった」と訂正し、謝罪した。集計段階で、医師が正式に死亡を確認していない心肺停止者を死者に含めたのが原因だった。
関係者によると、6日に政府が発表した死者数にも心肺停止者数が含まれていた。基になる資料で「死者など」とされていたのに、官邸への報告までに「など」が抜け落ち、心肺停止者を死者にカウントした可能性があるという。
災害の被害の発表を巡る混乱は今回が初めてではない。2015年9月の関東・東北豪雨では、茨城県などが一時「15人」と発表した行方不明者が、全員無事だったことが判明。今夏に発生した西日本豪雨でも、地元自治体と警察庁が発表した犠牲者数が食い違うなど情報が錯綜(さくそう)した。
政府関係者によると、こうした事態を回避する目的もあって、官邸主導の発表を推し進めたという。この関係者は「政府の責任で正確な情報を提供するのであれば良い取り組みだ。ただ、今回は(20日開票の)自民党総裁選もにらみ、危機管理態勢の充実ぶりをアピールする狙いもあったかもしれない」と指摘する。【最上和喜、金森崇之】
