NECPCの品質が実現不可能なレベルまで上がっていた、品質のこだわりとサービス体制が秘密兵器

NECPCの品質が実現不可能なレベルまで上がっていた

今回のことば

「NECPCは秘密兵器。NECPCが持つノウハウを世界に展開していきたい」(NECパーソナルコンピュータ社長兼レノボ・ジャパン社長のデビット・ベネット氏)

品質のこだわりとサービス体制が秘密兵器

 2018年5月16日付けで、NECパーソナルコンピュータ(NECPC)の代表取締役執行役員社長、レノボ・ジャパンの代表取締役社長、そして、Lenovo Groupグローバル バイスプレジデントに就任したデビット・ベネット氏。

 7月20日に開いた最初の会見で「2020年には、レノボ製品の1日修理の比率を95%まで引き上げたい」とした。

 社長就任後の最初の発表を、サービス強化にしたのには理由がある。

 ベネット社長は「新製品の開発には長い時間を要する。就任2ヵ月の私が、こんなにすごい新製品を出した、といっても説得力に欠ける」と冗談交じりに笑うが、本音は別のところにある。

 「就任してから、NECPCの米沢事業場と群馬事業場を早く訪問したいと思っていた。実際に訪問してみたら、良い意味で驚き、感銘を受けた。それは、品質への徹底したこだわりだった。たとえば、PC本体の品質を高めるこだわりは当然ながら、梱包するダンボールにまでこだわっていた。徹底した品質への取り組みとともに、使い方相談が無料であること、さらには、米沢事業場では最短納期3日間を実現しており、群馬事業場では24時間以内の修理率が98%以上になっていることにも驚いた。これは世界全体を見ても例がない仕組みであり、NECレノボグループが持つユニークな強みであると感じた」と語り、「レノボ製品の1日修理の比率を95%まで引き上げることは難しいターゲットではあるが、努力をすれば、できるのではないかと考えた。そこで、私からぜひやってみたいと提案した」と、経緯を明かす。

 1日修理の定義は、保証期間中の製品が対象で、群馬サービスセンターに入庫、修理を完了し、出荷するまでの時間を指している。現在、レノボ製品の1日修理の比率は80%台であり、これを引き上げることになる。

 ベネット社長が自らの目で見た結果、最大の強みと感じたのが品質へのこだわりだったわけで、強みをいち早く生かすのが、レノボ製品の1日修理の比率を95%まで引き上げることだった。だからこそ、最初の発表をサービス強化にしたといえる。

 「他社であればこれは不可能であるが、われわれはすでにNECPCの製品で達成した実績がある。2020年に95%という数字は達成可能である」と、自信を見せる。

 ベネット社長は会見のなかで、「NECPCは秘密兵器」と表現した。品質へのこだわりと、それをベースにして実現しているサービス体制は、ベネット社長の目には、まさに秘密兵器に映った。

 「日本人の目からみたら普通でも、外国人の目からみたらすごいこと。米沢事業場を訪問したときに、『みなさんがやっていることは、もっと自慢して良いものなんですよ』と思わず言ってしまった」と、エピソードを明かす。

 秘密兵器はすでに、レノボグループに伝搬している。

ニーズが変わった海外で強みを発揮できる

 米沢事業場のノウハウを活用することで、日本市場向けレノボ製品の初期品質は30%も改善し、群馬事業場のノウハウを活用したことで、レノボアジア地区全体での修理パーツ品質が60%も改善するという成果があがっている。

 だが秘密兵器は、それだけに留まらない。製品の観点からも生かそうとしている。

 たとえば、NECPCの最軽量PC「LAVIE Hybrid ZERO」を北米市場に展開したり、すでにグローバルに展開しているレノボ・ジャパンのThinkPad X1 CarbonをはじめとするThinkPadシリーズの販売を、より加速したりといったことも視野に入れている。

 「LAVIE Hybrid ZEROは、北米で開催されたCESで賞を総なめにした実績からも証明されるように、米国でも高い評価を得ている。ThinkPadシリーズも、さらにグローバルで展開できる余地がある」とする。

 そして、いまこそ秘密兵器を活用できるタイミングが訪れているとも指摘する。

 「日本は製品やサービスに高い品質を要求する、こだわりを持ったユーザーが多い市場であり、NECPCは長年に渡って要求に応えてきた。一方で、海外市場ではそこまでのこだわりが求められず、低コストであることが重視されてきたが、ここ数年、日本以外の市場でも、製品やサービスの品質を重視する傾向が出てきている。つまり、NECPCがやってきたワールドクラスの品質は、こうした海外のニーズの変化に対して最も適したポジションにあり、他社にはない、ユニークな位置づけを担うことができる。こうしたタイミングが訪れているからこそ、秘密兵器としてNECPCの特徴を生かすことができる」。

 レノボグループでは、昨年から「カスタマーセントリック(顧客中心)」という方針を明確に打ち出しているが、NECPCが持つノウハウをグローバルに活用することは、この方針にも合致する。

 「だからこそ、NECPCが持つノウハウを世界に展開していきたい」と、ベネット社長は語る。

世界展開を視野に

 さらに、米沢事業場では次のイノベーションに向けた研究開発をするR&D組織として「NT&Iチーム」を発足している。

 「NT&Iチームは、意味のあるイノベーションを実現する新たなモノづくりに挑戦してもらう組織。米沢、群馬、大和のチームの力を活用して、イノベーションを継続したいと考えており、そこから創出するイノベーションにも期待してほしい」とする。

 ベネット社長はカナダ国籍を持つが、高校時代に1年間、横浜商科大学高等学校に留学。2004年にカナダトロント大学大学院卒後、早稲田大学日本語教育センターで日本語を習得したり、学習院女子大で日本の古典文学を学んだりといったユニークな経歴を持つ。さらに、文部科学省国際交流員として香川県に勤務。日本AMDに入社し、10年間にわたって、グローバルおよび地域のセールスにおける要職を歴任。バイスプレジデントとしてアジアパシフィックおよび日本の成長を牽引してきた経験を持つ。

 日本語も堪能で、妻は日本人。「古典では、古今和歌集と土佐日記が好きだ」と語る。

 そして「私のゴールは、業界リーダーとしての責任をはたし、世界と日本の架け橋となり、世界から日本へ、日本から世界へと展開することにある。日本で展開していることを、どうやって世界に展開するか。それを考えていきたい」とする。

 NECPCとレノボ・ジャパンが日本で培った強みを、グローバル戦略にどう反映させるのか。日本を熟知するベネット社長のこれからの手腕が注目される。

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