「見える化」年間2万人が見学に訪れる「産廃処理の会社」が描く未来

年間2万人が見学に訪れる「産廃処理の会社」が描く未来

私たちが、ふだん捨てているゴミのその後って考えたことがありますか?

ものをつくる、ものを生み出すことに関してはとても関心が高く、ものづくりの現場もどんどん「見える化」しています。そして、多種多様な企業がともに取り組むこと(オープンイノベーション)によって、「新しいもの」もどんどん生まれています。

しかし、この地球上にものを生み出すことで生じる、ゴミの行き先や処理についてはどうでしょう。いろいろな人たちや企業などが、知恵を出し合って、そのことに当たっているでしょうか。全力でゴミの処理について取り組んでいるでしょうか。

最近、海に漂うプラスチックゴミの問題がさかんにメディアでも取り上げられています。クジラがプラスチックゴミを大量に呑みこんで死んでしまったり、ウミガメの鼻にストローが刺さってしまったり。ストローを取ってもらっている映像を見ましたが、苦しむウミガメの姿を見て、とても胸が苦しくなりました。

私たち人間がつくりだし、自分たちがただ便利だからと使っているものが、動物たちを苦しめ、そして死に追いやっています。このままだと、最終的には私たち人間にもその災禍は降りかかり、そして地球は死にます。

産廃処理施設内に見学コース

先日、積極的な取り組みをしている産業廃棄物処理施設があると聞いて、ある会社を訪問してきました。埼玉県三芳町にある「石坂産業」です。東武東上線ふじみ野駅から車で10分ぐらいのところにありますが、なんと駅から産廃施設”見学者用”の送迎バスが出ています。

石坂産業の社長は女性です。そのためか、産廃処理施設に隣接する本社ビルには、数々の女性らしい細やかな配慮が目立ちます。社長の石坂典子さん自らに案内してもらい、施設も見学させてもらいました。どんな産業廃棄物もリサイクルするために細かく分別されていて、そのためのさまざまな工夫がなされています。ちなみに石坂産業のリサイクル率は98%だそうです。

産廃処理施設の見学というと、ヘルメットとマスクで装備するイメージですが、石坂産業の施設に限って言えば、その必要はまったくありません。施設内にすでに見学コースがつくられていて、限界まで仕分けを行う現場を、ガラス越しに見ることができます。トラックが産業廃棄物を運んでくるところから仕分けまで、すべての工程が見える化されています。

ただし、ガラスの向こう側では粉塵が舞い、捨てられた不要になったものをリサイクルするべく、スタッフの方たちが細かく仕分けをしています。最後の工程では、機械では仕分けできなかったものを土の中から取り出す作業を人が手でしていました。

石坂産業では、廃棄物をただ「焼却」するのではなく、「分別」することに対しての技術開発を徹底的に行い、独自のシステムを構築しています。土に還ることがない廃棄物すべてを「資源」に変えるべく、ありとあらゆる工程にIoTやAIなど最新技術を導入しようとしています。

すでに莫大な資金が投入されていますが、費用を分担しながら、さまざまな独自システムを他の企業とも組んで開発しているということです。開発されたシステムは、日本全国の他の産廃処理施設でも使えるはずだし、逆に他の施設がシステムを導入することで、開発費用も安くすることができると思います。

さらに、ゴミ問題はグローバルな地球環境の問題でもあるので、将来的には世界中の産廃処理施設にシステムを販売することができるかもしれません。

産廃処理の会社が里山を守る

石坂産業の周りには里山があります。里山とは、都市と自然の間にあって、人が利用している森林をいいます。この里山のうち、東京ドーム4個分にあたる領域を、石坂産業がきれいに整備して管理しています。しかし、それは会社の敷地ではありません。他に地主さんのいる土地ですが、それを石坂産業は自らの資金で、美しく整えています。

石坂産業が整備している里山

もともとその場所は、粗大ゴミの不法投棄が続き、害虫が湧いたり悪臭がしたりと近隣からの苦情のもとになっていたそうです。石坂産業が放置した粗大ゴミではなかったのですが、産業廃棄物施設の近くということもあり、近隣からはそのように見られてしまうため、回収して処理していたそうです。

しかし、ゴミを回収した翌日には、新たにまた不法投棄されるという、いたちごっこ。そのため、地主さんに申し出て、石坂産業が管理することにしたそうです。ちなみに現在、石坂産業が管理する里山は、素敵な森となっており、環境教育のフィールドにもなっています。

さて、その里山は、どこを歩いていてもゴミひとつなく、雑草も生えていません。また、砕いて再利用した瓦を敷き詰めたキレイな庭があったり、捨てられた枕木を森の中で活用したりと魅せることを意識されており、再生された資源の活用例を目の当たりにすることができます。石原産業は、年間2万人という見学者に、こうした再資源化の現場を見せてくれています。

日々たくさんのものがつくられ、捨てられています。この捨てられているものすべてを地球の資源として再生するべく、アクティブな挑戦をし続けている石坂産業という会社があることは、日本にとってとても幸運なことだと思います。地球環境を守るモデルを、日本から創ることができるかもしれません。

ものづくりだけではなく、つくられたものの行き先にももっと目を向け、どうやったらゴミを資源に変えられるのか。個人も企業も知恵や技術を出し合って取り組まなければいけないと思います。その意味で、石坂産業は「リサイクル率100%=地球環境を守る」の実験場になると確信しています。

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