IGTVを考察する 5つの特徴と注目すべきプレイヤーたち
2018年6月にインスタグラムが発表した、新アプリ「IGTV」。筆者は、インスタグラムマーケティングの本を共同執筆しており、3年間インスタグラムのマーケティングを追ってきた。ユーザーとしては、SNS化する前からの使用しており、数えれば7年間も使用していることになる。
インスタグラムの歴史をたどっても、このアップデートはインパクトのあるものだといえる。SNSマーケティングに精通する人は、「朝起きたときに世界の風景が変わっていたように感じるほどの事件だ」と話し、ある人は「もはや当初の信念である『スーパーシンプル』は存在しない」と話した。
2010年に写真加工アプリとして誕生し、12年にSNS化し、16年にはスナップチャットの機能を飲み込むインスタグラムストーリーズを装備。そして18年6月に、ユーチューブの市場を狙うようにも見える、IGTVをローンチした。5年間続くSNSはない、と言われるなかで彼らは形を変えながら、アメーバのように生き続けている。
IGTV、5つの特徴
IGTVの大きな特徴は、以下5点である。
1. 縦型動画を配信するプラットフォーム
2. 最長60分配信可能
3. インスタグラムアプリ内からの遷移の多さ
4. 動画内容に関連する検索が不可
5. 動画内容における、タグ付けや遷移が可能
IGTVは、インスタグラムの既存のユーザーの動線を壊さぬよう、別アプリとしてローンチしている。しかし、インスタグラム内からの動線が多く、ユーザーにとってはほとんど「アプリ内アプリ」となっている。
インスタグラムからの遷移方法は現状3つ。1つ目は、アカウントのトップページの左下から、遷移する方法。2つ目は、フィードの右上に現れた、テレビマークをタップする方法。3つ目はインスタグラムストーリーズからのスワイプアップだ。
現状、インスタグラムストーリーズで外部リンクにできるのは、公式マークのついたアカウントと、1万フォロワー以上のアカウントだけ。しかし、IGTVはどんなユーザーでも、動画に外部リンクをつけることができる。インスタグラムにおける、IGTVへの注力具合はこうしたアップデートからでも感じられる。
一方で、ユーチューブで育った10代の若い世代に話を聞くと「IGTV内での検索がしづらい」と話す。ユーチューブでは、「薄付きメイク」など特定のキーワードで動画を検索できるが、IGTVではアカウント名の検索しかできないため、動画内容に紐付いた検索ができない。今後アップデートされることも予想されるが、現状においてはアカウントにおけるフォロワーや、すでにアカウントの存在を知っている人のための動画を配信するほかないだろう。
また、動画における説明文については、インスタグラムアカウントのタグ付けや、外部リンクの貼り付けが可能だ。インスタグラムの歴史を遡れば、通常投稿のコメント欄にさえ関連URLを貼れないことや、先述の通りストーリーズに関連URLを貼ることができるユーザーが限定されていることなど、外部リンクを拒否してきた彼らとは思えないほど、サクサク外部に飛べる仕様となっている。
チェックすべきプレイヤーは?
現段階でチェックすべきプレイヤーを聞かれることが多いが、その答えは「初期段階からIGTVを使っているプレイヤー」だ。どんなサービスにでも言えることだが、新機能やアップデートのタイミングにはプレイヤーは少なく、それがβ機能などであれば、サービスの運営元がプレイヤーを選び、その機能を提供していることが多い。
IGTVについてもそうだ。ローンチ当初に動画を多く投稿していたプレイヤーの顔並みは、頷くべきものばかり。COMPLEX、Refinery29、Them、インフルエンサーで言えばキム・カーダシアンやキッズインフルエンサーのZooey Miyoshiなど。これらは、事前にインスタグラム側からリークされていた、もしくは投稿を依頼されていたと考えても不自然ではない。
アップデートから1カ月がたち、IGTVを上手く使いこなすプレイヤーたちを紹介しよう。
シャネルはショー風景と来場者のインタビューをまとめて
最も親和性が高いのは、ファッションショーのランウェイ映像ではないだろうか。現段階で、これほど縦型にハマるコンテンツも少ない。
中でも先人を切ってIGTVを活用しているシャネルは、いままでのコレクション動画をIGTVにまとめている。ショーの裏側、セレブリティが来場する様子、コレクションの発表を受けてセレブリティが話す簡単なインタビューなど。ファレル・ウィリアムズや、リリー・デップなどが登場するリッチコンテンツだ。動画のクオリティはもちろん、テンポもよく、そして、ファンのために届ける最適なコンテンツである。
また、グッチはIGTVのサムネイルをきちんと制作し、そのランウェイがいつのコレクションなのかをわかりやすくする努力もしている。小さい画面の中でサムネイルが見られるため、IGTVのコンテンツを多くの人に見てもらおうとするのなら、サムネイルを制作する努力は必要だろう。
60分の縦型動画を企画で押し通すネットフリックス
ネットフリックスは、オリジナル作品「リバーデイル」に出演する人気俳優コール・スプラウスが60分間もの間ハンバーガーを食べ続けるだけの動画を配信した。何も話さず、本当にハンバーガーを食べ続ける”だけ”。こうした、人に言いたくなるような企画も、口コミやSNSなどにおけるシェアが期待できるコンテンツだ。
自然や風景にまつわるプレイヤーは?
例えば「世界の絶景」など、自然や風景に関連するコンテンツはインスタグラムをはじめどんなSNSでも親和性の高いコンテンツだが、IGTVならどのように表現すべきだろうか?
一般的には、そのようなコンテンツは縦型のフォーマットではマッチしづらいと考えられるが、ナショナル・ジオグラフィックは、風景を切り取り編集し、合間合間にセレブリティのインタビューを挟んでいる。むしろ、縦型で大自然の映像を流すことでインパクトを感じ、没入感も感じられる。
サーフィン動画を集めた「NobodySurf」もIGTVにいち早く投稿していたプレイヤーの1つだ。NobodySurfでは、縦型動画に加え、横型動画も投稿している。IGTVにおいては「縦型動画でクオリティの高いものを」と言われがちだが、そんなことはない。人が集まり、それが本当に見たい動画であれば、横型でもいいはずだ。NobodySurfは、縦型・横型を上手く使い分け、映像の臨場感を届けている。
人を巻き込む必要がある企業たち
IGTVがローンチされて何が変わるのだろうか。お察しの通り、インスタグラムが次に目指すのは、ユーチューブの市場だろう。しかし、人間の視覚は横に広く、テレビも、映画も、動画の歴史は常に「横長」動画だ。縦型動画で長時間の映像を見続けるのだろうか、というのは誰もが疑問視していることだろう。
では、縦型動画において、横型動画よりも親和性の高いコンテンツとはなんだろうか。
1つは「人」である。実際に、当初からIGTVを駆使して使いこなすプレイヤーたちを見ていても、映像の中身は「人」の映るコンテンツが多くを占めている。むしろ出てこないコンテンツは、よほどテンポよく編集したものか、モーショングラフィックなどを多用し飽きさせない工夫がされていない限り、たとえ短時間でも見ているのが厳しいと感じる。
その「人」は、有名人である必要はない。例えば企業の場合、NASAやエアビーアンドビーがインスタグラムストーリーズで展開しているように、社内の人間がIGTVを通じてどんどん表に出ていくのもいいだろう。もしくは、社内の人間とインフルエンサーが一緒になって番組を作るのも面白い。「人」型のバーチャルユーチューバー(VTuber)でもいいかもしれない。
そうなると、ますます企業は「人を巻き込むSNS活用」を求められるだろう。加えて、IGTVのプラットフォームにおいて求められる「人」はインフルエンサーである必要がないかもしれない。
現に、筆者が運営している女性向けエンパワーメントメディア「BLAST」において、IGTVコンテンツのリポーターとして、起用しているのはユーチューバーの女性だ。彼女がインフルエンサーだから起用しているわけではなく、ビデオカメラに慣れていて、口角を上げながら話すことができ、女性に好感を持ってもらえる女性像だったからだ。
インスタグラムのフィードで、タッグを組むべきはインフルエンサーなる存在だったかもしれないが、IGTVでタッグを組むべきは、また違うスキルを持った人になるだろう。
