AIの「ワードプレス化」目指す、AIの専門知識を持つ社員がいないにも関わらず、スウェーデン企業の野望

AIの「ワードプレス化」目指す、スウェーデン企業の野望

スウェーデン発のAIスタートアップ「Peltarion」には、人気ゲーム「キャンディークラッシュ」の開発に携わったエンジニアをはじめ、スポティファイやKlarna、Truecallerなどスウェーデンを代表するテック系ユニコーン出身の上級エンジニアが多く参画している。

ストックホルム本拠のPeltarionは、これまでに投資家から1600万ドル(約18億円)を調達している。顧客にはBMWやNASA、Ocadoといった大手企業が顔をそろえ、今後の利用を希望する企業数は800を超えるという。

CEOのCrnkovic-Friisによると、多くの企業がグーグルの「TensorFlow」やアマゾンの「Sage Maker」、マイクロソフトの「Azure Machine Learning」などのフレームワークを使って画像認識や自然言語処理のシステム開発を試みているが、ツールが非常に複雑でAIの専門家がいないと運用は難しいという。

そこでCrnkovic-Friisが考えたのは、HTMLが使えなくてもウェブサイトを構築できるワードプレスのようなAIツールだった。Peltarionでは、グラフィックを用いたインターフェースで独自のニューラルネットワークが構築でき、専門知識を持たないソフトウェア開発者でもAI開発が可能だ。

Crnkovic-Friisは筆者にノートPCを使って操作方法を見せてくれたが、真っ白なページにダイアグラムやバブルとそれらを結ぶ線が表示されていた。バブルはニューラルネットワークの「レイヤー」を意味するという。

個々のバブルにはパラメータが含まれ、ソフトウェアがニューラルネットワークを構築するためのステップとして機能する。データはそれぞれのステップを経由して送られ、ネットワークが答えを間違えた場合には、鎖状につながったバブルを逆流して修正が行われる。

ニューラルネットワークには、未知のデータからも正しい答えを導き出す「汎化能力」がある点が、フレームワークに基づくソフトウェアと大きく異なる。Peltarionでは、データの複雑さに応じて汎化に数分から数時間を要する。

巨大企業にAIを独占させるな

ユーザーは構築したニューラルネットワークを自社のアプリやウェブサイトに統合し、Peltarionのサーバ上で動作させることができる。Peltarionは、グーグルのクラウドサーバを利用している。

Peltarionを利用するバイオテックスタートアップは、患者のMRIデータから腫瘍を発見・分類するためのニューラルネットワークを構築した。これにより、従来は数時間掛かっていた作業が、ミリ秒単位にまで短縮できたという。

また、あるメディア企業は、AIの専門知識を持つ社員がいないにも関わらず、Peltarionを使うことでユーザーの気分に応じて音楽をタグ付けする画像認識システムを開発したという。さらに、あるエネルギー会社は風力発電の発電量に影響する天候の変化を予測することができるニューラルネットワークを構築した。

Crnkovic-Friisは、2004年にPeltarionを友人と共同で設立した。同社の投資家には、スウェーデンで強大な影響力を持つヴァレンベリ(Wallenberg)家が含まれる。長年、2名だけで事業を運営してきたが、この2年で社員は50名に急増したという。

AIソフトウェアは、数社の巨大なテクノロジー企業に独占されるべきではないとCrnkovic-Friisは指摘する。「テクノロジーが良いことのために使われるためには、民主化が必要だと我々は確信している」とCrnkovic-Friisは語った。

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