ホンダ、ヒト型ロボット「ASIMOアシモ」開発中止検討=2足歩行ロボの先駆け

ホンダ、「アシモ」開発中止検討=2足歩行ロボの先駆け

 ホンダが2足歩行の人型ロボット「アシモ」について、開発の中止を検討していることが28日、明らかになった。アシモは2000年に発表された2足歩行ロボの先駆けで、段階的に改良が加えられてきた。今後はアシモで培った技術を活用し、福祉・介護分野などで使う実用的なロボットの開発に注力する方向だ。

 ホンダは1986年に2足歩行ロボットの開発に着手。現在のアシモは走ったり、ジャンプしたりといった高い運動性能を持つ。手を使って簡単な作業もすることができる。

 ホンダは、人型ロボットの開発自体は継続する。アシモも一般の知名度が高く、ホンダの技術力の象徴でもあることから、イベントなどで活用を続ける方針だ。

ホンダ、ヒト型ロボット「ASIMO」開発終了との報。技術は転けないバイクや介護支援外骨格などに応用へ

ホンダが、ヒト型二足歩行ロボットASIMOの開発を中止し、開発チームも解散するとNHKが報じました。ASIMOといえば、世界で初めて本格的な二足歩行を実現したヒューマノイドロボットとして知られ、電機系メーカーやロボティクス分野のスタートアップでなく、自動車メーカーが開発したという点でも非常にユニークな生い立ちを持つロボットです。なお、記事執筆時点ではホンダからはまだ正式な発表はありません。ASIMOという名称は2000年以降に発表された機体を総称するもので、二足歩行が可能なヒューマノイドロボットとして発表されたのは1996年の"P2"が最初。さらに源流をたどれば、その研究開発の開始は創業者の本田宗一郎氏が健在だった1980年代にまでさかのぼります。

ASIMO(Advanced Step in Innovative Mobility)と名付けられてからも開発は活発に続けられ、公共空間やオフィスでの利用を想定して機体の小型軽量化を行い、歩行性能に関してもBoston DynamicsのAtlasが最近になってジョギングを習得したのに対し、ASIMOは2005年の時点ですでにこれを可能としていました。また2011年の7代目ASIMOでは歩行だけでなく、水筒を開けてコップに水を注ぐ、複数の人の話を聞き分け返答するといった、将来のロボットに求められる具体的な機能の開発にまで踏み込んだ開発も行われていました。

ただそれ以降、ASIMOの開発に関する知らせはパッタリとなくなっていました。今になって思えば、2011年の時点である程度人とのコミュニケーションが可能なまでに開発が進んだASIMOには、すでにやり尽くした感が漂い始めていたところはあったかもしれません。

とはいえNHKの報じるところでは、ホンダはASIMOの開発は終了するものの、より実用的なロボット技術の開発に力を入れるとされます。ASIMOが持つ高度なバランス性能や運動制御技術は、すでに発表されている立ちゴケしない安全なバイクの開発や介護支援用パワードスーツ的なロボット技術へと"進化"していくことになる模様です。

Boston Dynamicsのロボットは生々しいまでになめらかな動きを実現しつつも、それが具体的に何に使えるかに関してはまだまだ模索が続けられている状況と言えます。一方でASIMOは姿こそ違ったものになるものの、その技術を実用化していく道筋を見つけたといえるのかもしれません。

ちなみにホンダは2017年、はしご昇降や四つん這いで歩行できる、ASIMOとは別のヒト型ロボットE2-DRを発表しています。E2-DRは災害現場などでの活用を想定して開発が進めてられており、ASIMOと似た部分もありながら、さらに複雑な動作が可能になっているようにも見えます。同じく2017年にはロボティクスを含む新しい分野の研究開発施設を設置しています。

ホンダはNHKの報道に対し、「ASIMOという名称になるかは分からないが、ヒューマノイドロボの開発は続ける」とのコメントを発表しました。もともとASIMO専門の開発チームがあったわけではなく、ヒューマノイドロボット全般を開発する部隊は変わらず活動を続けていくとのこと。

シンギュラリティには一生行きつかない」 安川電機・津田会長に聞く「ロボット産業の未来」

 ロボットの応用範囲が広がる中、ロボットメーカー大手の安川電機会長で、2017年12月に国際ロボット連盟(IFR)の会長に就任した津田純嗣氏にロボットの果たすべき役割について聞いた。

 AI(人工知能)を内蔵したロボットが、人間の能力を上回る「シンギュラリティ」の可能性については、「一生かかってもそこまでは行きつかない」と指摘。人間の仕事を奪うのではないかという懸念についても「マスコミの論調的に言われているだけで、科学、技術系の人でそう言っている人はいない。囲碁や将棋などの狭い分野では人間の能力を上回ることはあっても、ロボットに人間の代わりをさせようと思って取り組んでいる人はいない」と述べ、ロボットの果たす役割はあくまで人間を補助するものとの認識を示した。

「シンギュラリティ」とは

 米国の有名な発明家レイ・カーツワイル氏が、2029年ごろにコンピュータが人間の知性レベルに到達し、もしくは凌駕(りょうが)すると予測。45年には全人類の知能をAIが超えると主張し、「シンギュラリティ」は「2045年問題」とも言われている。

 三菱総合研究所が17年1月に発表した報告書では、AI技術が普及する2030年には、日本の国内総生産(GDP)は50兆円ほど増える一方、雇用は240万人減ると予測した。また、13年にオックスフォード大学のオズボーン氏らが発表した「雇用の未来」によると、今後10~20年程度で米国の雇用の約半分はAIやコンピュータによって代替されるリスクが高いと予測している。

●中国は脅威

――ロボットの市場規模はどのくらいか。

 ロボットのうち8~9割は産業用で、自動車の部品製造や組み立て、半導体・液晶の製造工程などで使われているものが圧倒的に多い。金額でみると、日本ではロボット単体で19年が約1兆円、周辺部分を含めるとその4~5倍になるだろう。台数では世界で200万台強が動いている。海外で一番旺盛なのが中国だ。順調にいけば、毎年15%ほど出荷台数を伸ばしていくだろう。

――中国のロボット技術の進歩をどう見ているか。

 日本に近づいてきている部分もあるし、なかなか追い付かない部分もある。ロボットを適用する範囲は日本よりも広がってきていて、その意味では脅威だ。スマートフォンをあれだけ大量に作れるのは中国しかない。かつては米国に留学した中国人は米国で仕事を見つけていたが、最近は中国に戻っても高給で働ける場があるので、優秀な技術者が中国に滞留するようになってきた。

 日本の大手の自動車会社や、半導体製造を手掛ける企業は徹底的に生産技術を磨いているからそう簡単には負けないだろうが、中規模なところは怪しくなっている。中国では家電製品やスマホ製造の自動化が日本よりも進んでいる。日欧米の装置メーカーが中国に最新の製造装置を売るので、かなり良い製品ができている。その中で中国の技術がどんどん上がってきている。

●AIによって何が変わるか

――AI内蔵のロボットは何ができて、何がまだできないのか。

 ディープラーニング(深層学習)という画期的な方法により、パターンを覚えさせるのではなく、コンピュータが人間には考えつかないような論理を導き出してくれるようになった。だから囲碁などでは人間には考えつかないような手を打ってくる。しかし、会話や翻訳はできても、物理的作業、つまり実際の動作が入ってくると途端に難しくなる。どうやってモノをつかめるのかを理解はできても、実際にどうつかむのかということになると2歳の子どものレベルで、まだまだ未熟なのが現状だ。

――AIを内蔵したロボットが出現すると、人間の仕事を奪い、失業者があふれるのではないかという指摘もあるが。

 マスコミが過剰に書いているだけで、それほど急激に人間の仕事を奪うことはない。ただ、通訳の仕事や、清掃など一部の単純労働はロボットに置き換わるだろうし、現にすでに起きている。しかし、AIを搭載したロボットの登場で街に失業者があふれるというような事態にはならない。ロボットにより単純な仕事から解放された労働者は、より付加価値の高い職に就けるようにすればよいのだ。

――ロボットが人間の能力を上回る「シンギュラリティ」が近い将来に到来するのではないかとも言われているが。

 一生かかってもそこまでには行きつかない。少なくとも私の周りの科学、技術系の人には、そう言っている人はいない。囲碁や将棋など狭い分野では、人間の能力を上回ることはあっても、ロボットに人間の代わりをさせようと思って取り組んではいない。

●コストが合わない介護分野 欧州では「ロボット税」も

――ロボットを介護の領域に使えないか。

 介護はロボットの稼働時間が短いのでなかなか難しい。介護で使う場合、1日当たり1時間動けば最長だろう。普通の産業用ロボットが18時間ほど稼働しているのと比べると、介護は稼働時間が圧倒的に少ない。このためロボットを介護分野で使うためにはコストを下げなければならず、費用対効果を考えると無理がある。介護の仕事をアシストするものでやらなければならない分野には参入しているものの、いまは最小限でやっている。海外のように30キロ以上の物は介護に携わる人間が持ってはならないというような規制ができれば別だが。

――IFR会長としての仕事は何か。

 ロボットの市場規模調査や需要予測の公表など世界的な統計をとることが主たる仕事だ。ロボットの導入促進に向けた活動もしている。欧米では、もちろん産業界の中にはいないものの、一般的な人々から「ロボットが人の仕事を奪うのでは」という意見が時々出てくる。欧州連合(EU)の議会で、ロボットで失業した労働者への再教育資金確保のために課税する「ロボット税」が、16年にEU議会の議員によって提案された。だが、17年、IFRが動いて廃案にした。ITの普及がロボットの100倍くらい仕事を奪っている一方、ロボットは奪っていない事実を理解してもらいたかった。

●「3K職場」撲滅 中小企業にも「生産性革命」を

――ロボットを普及させるためには何が求められるか。

 ロボットを使うには、生産技術の分かった人がどうしても必要になる。だが、日本には生産プロセスを分かってはいても、その生産技術のノウハウが横に広がっていかないという課題がある。自動車や電機メーカーでは、社内に優れたノウハウを持つ人材もいるにはいる一方、食品会社などにはそういう面が弱い。

 このため日本ロボット工業会と経済産業省が一緒になって、ロボットを生産技術に生かすスキルを備えた「システムインテグレーター」を育てようとしているところだ。だが、日本ではこのシステムインテグレーターが、まだ会社の中でお金を稼げる立場になっていない。欧米はシステムインテグレーターの養成に投資する一方、日本は増やしてはいるものの、まだまだ不十分だ。エンジニアリングの心得のあるシステムインテグレーターが増えてくれば、より多くの分野でロボットが簡単に動かせるようになる。

●「外国人受け入れ」の前に必要なこと

――これからのロボットの役割は何か。

 ロボットを使って「きつい」「汚い」「危険」、いわゆる「3K職場」をなくしたい。ロボットを300万台稼働させたとしても、「3K職場」の1%も解消できないというのが現実なのだ。全く惨憺(さんたん)たるものというしかない。「生産性革命」に寄与するためには、大企業だけでなく中小企業でも扱えるような「使いやすいロボット」を提案すべきで、それがメーカー側の役割だ。課題は山積している。

 いまのロボットの普及スピードでは、「3K職場」の現場は変わらない。もっと加速する必要があるだろう。いまは中国でさえ、若者が「3K職場」では働かないと言っている。それなのにいまの日本は海外から労働力を持ってきてその不足分を補い、さらに今後もその動きを強めようとしているようだ。過渡期だから仕方がない面はあるものの、それは一時の間に合わせにすぎない。現状、ミャンマーやネパールなどの国から何とか労働者が来てくれているのかもしれないが、彼らもいずれ「3K職場」を嫌うようになるだろう。そうすると、また「人手不足」の状況を繰り返すことになる。いろいろな場面で「ロボット化」がもっと必要だ。

●「ロボット導入」により人間の生産性も上がる

 以上が津田会長へのインタビュー内容だ。AIを内蔵した最先端のロボットを普及させる以前に、建設現場などにある「3K職場」の改善が先決だという津田会長の強い思いが伝わってきた。

 この数年、AIやコンピュータの進歩により、人間の仕事が奪われて失業者が多く出るという衝撃的な予測が多く出されている。だが、現状ではホテルの受付、掃除、警備補助、いやしのためのコミュニケーション程度にしか実用化されていない。一日でも早く、「3K職場」に導入できるロボットを実用化してもらいたい。

 中小ビルの建設現場でよく見かけるのが、コンクリートを作るため、作業員がセメント袋を担いで運ぶ光景だ。1971年までは一袋50キロもあったが、それが40キロになり、96年からは25キロまで軽量化された。それでもこの重い袋を1日に何回も担ぐのは「きつい」「危険」な重労働だ。

 スペースのない、狭い物流現場では、フォークリフトも動かしにくく、ロボットは稼働させにくいといわれている。だが、こうした現場にこそ、積極的にロボットを導入して作業員の過重労働をなくす必要があるのではないだろうか。

 放射能に汚染されて人間が近寄れない原子力発電所における内部の撮影、修理などはロボットにしかできない作業だ。実際には何種類もの国産ロボットを試したものの、ガレキが散乱した狭い空間のために故障が多く、目立った成果は挙げられていない。組み立てラインで使う日本製のロボットは世界でも有数の技術を誇る一方、原発のような極限的な現場で使えるロボットとなると、外国製でも使えるものはないという。

 こうした危険な作業現場にロボットを導入することで、人間が身体を壊さず長期的に働ける技術や仕組みが実現すれば、「ニッポン株式会社」の生産性も確実に上げられる。

(経済ジャーナリスト 中西享)

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