トランプ氏、10%の追加関税を課す、22兆円規模の中国製品に追加関税を警告 反発必至

トランプ氏、22兆円規模の中国製品に追加関税を警告 反発必至

トランプ米大統領は18日、2000億ドル(約22兆円)規模の中国製品に対し、10%の追加関税を課すと警告した。貿易を巡る米中の対立が一段と深まった。

大統領は声明で、新たな関税の対象になる中国製品の特定を米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表に指示したことを明らかにした。

中国が500億ドル相当の米国製品に対する報復関税を決めたことへの対抗措置だとし、「中国が慣行の是正を拒否し、最近発表した追加関税措置の実施に固執した場合、法的手続き完了後にこれらの関税は発効する」と述べた。

また「中国は、米国の知的財産権や技術に関連した不当な慣行を是正する意思がないようだ。こうした慣行を是正するどころか、何も悪いことをしていない米国の企業や労働者、農家を脅かしている」と非難。中国が米国の新たな措置に対して再び関税を引き上げれば、「米国はさらに2000億ドル規模の中国製品について追加関税を求めることで対抗する」と言明した。

トランプ大統領の発表を受け、世界的に株価は下落、米ドルとオフショア人民元はともに下げた。

一方、中国商務省は19日、米国が中国製品に対する追加的な関税リストを公表する場合、中国は「断固として反撃する」とし、「質的かつ量的な」措置を講じると表明。

声明で「このような極端な圧力や脅迫は、複数の機会における相互の合意から逸脱するものであり、国際社会を失望させるものだ」と指摘。「米国は貿易戦争を始め、市場規則に違反した。両国の国民だけでなく、世界の利益を損なっている」と米国を非難した。

ライトハイザーUSTR代表は声明で、追加関税の準備を進めているとし、前回と同様の法的手続きを取ると表明したが、品目リストの公表時期は明らかにしなかった。初回の対中関税はパブリックコメント(意見公募)や公聴会を経て修正が加えられた。

中国の産業政策や市場開放、3750億ドルに上る対米貿易黒字などの問題について米中は交渉してきたが解決に至らず、トランプ大統領は15日、500億ドル相当の中国製品に25%の輸入関税をかけると発表した。これを受けて中国も直ちに対抗措置を取る方針を示した。

大統領は4月上旬、中国の報復関税に反発して1000億ドル規模の追加関税を検討するようUSTRに指示していたが、USTRの報道官は今回の2000億ドル規模の関税はこれに代わるものと説明した。

トランプ大統領は、中国の習近平国家主席とは「素晴らしい関係」を維持し「今後も多くの課題に共に取り組む」としながらも、「米国はこれ以上、中国や他の国につけ込まれることはない」と強調した。

米シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の中国専門家デレク・シザーズ氏は、中国が打ち出す報復措置について、昨年の米製品の輸入は1300億ドルにとどまるため関税をかけられる輸入品が少ないと指摘し、代わりに中国で事業を展開する米企業をターゲットにする公算が大きいと分析した。

またトランプ政権が関税リストを公表しても、中国は産業政策を変更する可能性は低いと指摘。「中国が政策を撤回するのは、米国の措置が大規模で長期に及び、資本流入に悪影響が及ぶ場合のみ」であるとの見方を示した。

*円換算を追加しました。

アングル:トランプ関税の米国内影響、「誤差の範囲」超えも

トランプ米大統領が新たに課した追加関税は、米国の経済成長を最大でも1パーセンテージポイントの数分の1程度押し下げ、同じ程度インフレ率を上昇させるだろう。史上2番目の長期成長を続ける19兆ドル(約2100兆円)規模の経済にとって、取るに足らない大きさの影響だ。

トランプ氏は15日、、中国からの総額500億ドルに上る輸入製品に対し25%の関税をかけると発表した。これは、6月から輸入鉄鋼とアルミニウムに課された重い追加関税に続く措置だ。 

米国の消費者や企業は、これまでの関税の影響を難なく乗り切ってきており、好調な経済に助けられて雇用も拡大。失業率は、1960年代の水準まで低下している。 

コストへの影響も、これまでのところ対応可能な範囲に収まっており、ロス商務長官は鉄鋼・アルミニウムへの関税は、たとえば自動車のコストを数百ドル押し上げる程度だと発言している。 

中国による対抗措置は、今のところ、米国経済全体に占める割合の小さい農業部門にほぼ絞られている。 

だがそれは、トランプ氏がさらに保護主義政策を押し進めれば変わるかもしれない。そうなれば、株式市場の「売り」を招き、企業や消費者のマインドを減退させかねないと、英金融大手バークレイズの米国チーフエコノミスト、マイケル・ガペン氏は言う。ダウ平均株価.DJIは15日、1%近く下落した。 

米連邦準備理事会(FRB)がこの10年超で初めて実質金利をプラス圏に引き上げる中、こうしたリスクが現実のものとなっている。FRBの決定は、消費者の借り入れコスト上昇を意味している。 

大統領はすでに、1年に及ぶカナダとメキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)を巡る再交渉が暗礁に乗り上げたことを受け、NAFTA離脱をちらつかせている。また、輸入自動車部品が米国経済の安全保障を損なっているとして、関税強化の必要性を調査するよう指示した。 

「保護主義政策、特に関税は、通商コストを高め、消費者や企業に対しては税金のような効果を持つ。また不確実性が高まることで、資産のバリュエーションにも影響が出て、家計の支出や企業の投資意欲を損なう可能性がある」と、前出のガペン氏は言う。 

<全方位戦争>

トランプ氏の一方的な関税拡大は、近年の米通商政策の枠から大きくはみ出たものだ。トランプ氏が関税を発動する以前は、1980年代に日本からの輸入自動車数を制限するために取られた措置が最も大規模なものだった。 

通商問題でトランプ氏の交渉人を務めるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、その際の対日交渉でも重要な働きを示し、デトロイトの自動車メーカーを日本メーカーの攻勢から守ることに一役買った。だがそれは、代償を伴うものだった。 

経済シンクタンクPERCの試算によると、当時、米国の消費者が支払う自動車の価格は、1台あたり1200ドルも上昇した。全米で消費者の追加負担は総額130億ドルにも上ったと、同シンクタンクは1999年の報告書で指摘している。 

中国や欧州各国、カナダやメキシコは、1980年代の日本のように譲歩をする構えは見せておらず、トランプ氏の措置への対抗策をそれぞれ打ち出している。

米国の同盟国は、米政府が鉄鋼・アルミニウム関税の例外措置の交渉を拒否したことに憤慨しており、今月カナダで開かれた主要7カ国(G7)首脳会議でも意見は対立。トランプ氏は孤立した。 

「欧州や日本、カナダなどの同盟国について言えば、『万人の万人に対する闘争』状態になる恐れが現実にある。そうなれば、米国を含めた世界の繁栄が損なわれる可能性がある」と、ハーバード大学のジェフリー・フリーデン氏と タフツ大学フレッチャースクールのジョエル・トラクトマン氏は15日、リポートで指摘した。 

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

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