不登校児「スマブラ」でヒーローに。Twitterで絶賛の嵐
カードゲームプレイヤー・ライターのゆうやん(@yuyan_mtg )さんがTwitterに投稿した『大乱闘スマッシュブラザーズ』の思い出が注目を集めている。「スマブラ」の愛称で親しまれるこのゲームは、マリオやカービィ、ピカチュウなど各ゲームの人気キャラクターを使って複数人で戦うアクションゲームだ。最新作『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』が6月13日に発表されたばかり。このニュースを見て、ゆうやんさんは「スマブラの話で必ず思い出すのが、小学生の時に不登校だったT君」とつぶやいた。17個にもなる連投ツイートに「涙が出た」と多くのコメントが寄せられているのだ。ゆうやんさんとT君の間に何が起きたのか? 話を聞いた。
「スマブラだ」。ふとしたつぶやきが思わぬ展開に
小学4年生のある日、「T君の家までプリントを渡しに行ってくれ」と先生に頼まれた。T君は2年生のときから不登校だった。たまたまその日、いつもT君にプリントを届けに行く同級生が休みだったのだ。ちょうどその場に「僕」がいた。
T君とは一応、3年生の時からクラスは同じだったけれど、顔も知らなかった。いじめがあるわけじゃなかった。ただ、学校に来ない不思議な子。そんな彼に家に行く。
「好奇心と、ちょっとだけ怖い気持ちがありました」
玄関先でT君のお母さんにプリントを渡す。すると奥から聴き馴染みのある音がした。
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「お、スマブラだー」って呟いたらお母さんが「あ。知ってるの?遊んでく?」と聞かれて、俺が快諾すると、お母さんが嬉しそうにT君に話しに行く。10分ぐらいして家に上がる許可が出て、靴を脱いで中へ。初対面のT君にコントローラーを渡されて、ろくに会話もしないままゲームスタート。
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「やっぱ突然ゲームしたいって言っても無理なのかな」「学校来ないってことは学校の人嫌いだろうから、遊んでくれないのかな」。
待っている10分の間、そう思った。でも、どうやら人嫌いではないらしい。
今まで話したこともなかったけれど、とにかく僕はスマブラを一緒にやりたかった。
えっ、そのキャラ使うの?
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「アイテムなし、ストック3で良い?」奇しくもT君が提案したルールは、いつも俺が友達と遊んでるものと同じだった。
そしてキャラ選択。
俺が選んだのはカービィ。色ももちろん青に変更した。たいしてT君は…
プリン!?
当時、罰ゲームでなければ誰も使っていなかったキャラだった。
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プリンは、打撃を受けるとすぐに画面上にふきとんでしまい、使いづらいキャラクター。「プリン選んじゃっていいの?」と驚きつつ、プレイする。
T君のプリンはめちゃくちゃ強かった。
勝てないどころか、1機すら奪えない。こんなに使えるキャラだったっけ? なんとか勝ちたい。こんなはずでは……と夢中になっていた。気がつけば夜。3時間もほぼ無言でゲームをやり続けていたのだ。
「こんな強い人がいるということをみんなに教えて、みんなで絶対に遊びに行こう」
帰り道、そう思った。コテンパンにされて悔しかったし、何よりまたT君と対戦がしたかった。
プリン師匠、誕生
「T君っているでしょ。あいつめちゃくちゃスマブラが強い。しかも、プリンを使ってるんだよ」
みんな「本当に?」と目を輝かせた。いてもたってもいられない。昨日家に行ったばかりだったけれど、6人でT君宅へ向かった。
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次の日、学校でT君の家でスマブラをしたことをクラスで話しまくった。「3時間で一回も吹っ飛ばせなかった。しかも使用キャラはプリン」その言葉にクラスの友達は興味津々だった。
早速その日の放課後、6人でT君の家に行った。
お母さんは少し驚いていたが、6人を迎え入れてくれた。
俺以外の一人ずつがT君に挑戦する。まずは藤原君。使用キャラはネス。結果はもちろん、T君の圧勝だった。
「もう1回やらせて!」藤原君が言う。だが2回目の結果も、0-3。
ここで全員に火がついた。「俺家からコントローラー持ってくる」吉田君がそう言って、家から出た。
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プリンが華麗に戦うなんて見たことがなかった。みんなT君と一緒にプレイしたくてしかたがなかった。
コントローラーが増え、一度に4人で対戦ができるようになった。でも誰もTくん君のプリンに歯が立たない。弱小キャラが最強になった瞬間だった。この日も結局3時間が経っていた。
「ご飯食べていく?」
T君のお母さんが言う。みんなは頷き、カレーを食べる。食事の時間は、質問合戦だった。
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「なんでそんな上手いの!?」「あれどうやってやんの?吹っ飛ばすやつ」
みんなそれぞれ、聞きたいことが山ほどあったのだ。
結局、ご飯の後にも1時間ほどゲームをやって、家に着いたのは21時だった。親父にしこたま怒られた。
翌日から、T君はプリン師匠と呼ばれるようになった。
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「明日も来ていいですか?」と聞くと、T君のお母さんはいつも快諾してくれた。「あの子のことありがとう」なんて言わない。
だからこそ、T君の家に行くのは、「不登校児に会う」よりも「プリン師匠に会う」気持ちが強かった。スマブラが強いってことは、それだけでヒーローなのだ。
プリン師匠の教えのもと、スマブラの腕をあげた。攻撃するタイミングをしっかりと見極め、無駄な隙を与えない。ジャンプの大きさも考える。
自分のキャラがダメージを食らうと、ついつい「いてっ!」と声が出る。でも、プリン師匠はいつも無表情だった。実力差がありすぎたのかもしれないけれど、集中しきっている様子だった。
ゲームは、ただ楽しむだけじゃない。しっかり考えてこそ、強くなれるものなんだ。そんなことも自然と知っていった。
ついにプリン師匠から1機奪うことに成功した。その瞬間、彼の顔が悔しそうに歪む。感情的にならないT君の表情は、脳裏に焼き付いた。
どれくらい彼の家に通ったことだろう。友だちになれた気がして嬉しかった。
師匠が学校に来た!
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その日の朝、いつものように俺は「プリン師匠の家、今日誰が行く?」なんて話をしていた。
朝礼の時に、先生が言った。
「今日から、T君が登校を再開します」
そう言うと、T君が扉を開け、教室に入ってきた。
家で見るT君より少し小さく見えた。だが、それは紛れもなくT君、いやプリン師匠だった。
「あ!プリン師匠!」
「師匠!」
俺たちがそう言うと、師匠は少し笑った。
T君が学校に来たことで、他のクラスのスマブラ勢の家にもT君を連れていけるようにもなった。
だが、結局T君よりスマブラが強い人は、一人も学年にいなかった。
T君は卒業する頃には、学年で有名人だった。
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T君は「スマブラが強い」ことで、自然とクラスに馴染んでいった。その他にも『マリオカート』をはじめ、いろんなゲームを一緒にしたけれど、どれも強かった。
ゲームにはゲームのルールがあり、他には何もない。だからこそ、言語の壁も、体格差も、年齢も、学校での立ち位置も関係なくコミュニケーションがとれる。
T君とも、言葉を交わす前に、ゲームで拳を交えたのだから。
ゲームの可能性。えっ、あの人にも届いたの…?
ゆうやんさんの「プリン師匠とスマブラ」をめぐるツイートは、またたくまに拡散した。そして思わぬ人から反応が届く。
スマッシュブラザーズの生みの親、桜井政博さんだ。ゆうやんさんのツイートに「プリン師匠……」と感慨深そうに言葉を重ねた。
まさか自分の思い出が、神様のような存在に届くとは、夢にも思わなかった。
「新しい友達が作れたのは桜井さんの作ったスマブラがきっかけだし、時が流れた今でも、スプラトゥーンが今の小学生の間で流行っていて、俺がそうであったように、スプラトゥーンをきっかけに友情が日々生まれているはずです」
スマッシュブラザーズの製作中の2015年、任天堂の岩田聡社長が他界した。悲しみに明け暮れる中開発を続け、最新作発表にこぎつけた背景がある。発表当日、今作でも開発を担った桜井さんは「今日だけは少し泣いてもいいですか」とツイートしていた。
ゲームは楽しい。でもそれ以上に、いろんなことを教えてくれた。それは大人にになっても変わらないと、ゆうやんさんは言う。
「ゲームは、自分の成長を実感できる場所でもあります。だからそこに自分の居場所を見つけやすい。だから『実生活が嫌になった時に、その助け』になってくれます」
ゲームは、今日も多くの友情を生んでいる。
