漫画村「海賊版という認識なかった」Anitubeに毎月広告費1300万円~1500万円を支払っていた代理店が取材に応じた

「海賊版という認識なかった」 Anitubeに毎月広告費1300万円を支払っていた代理店が取材に応じた

 海賊版サイト問題で注目されている広告代理店のモラルと責任。複数の関係者へ取材を続けたところ、渦中の海賊版サイトに広告を配信していた代理店Z社が取材に応じ、Anitubeに月1300~1500万円の広告費を支払っていたことを認めました。また取材の過程でAnitubeの運営者が2017年10月に起訴されていたことも分かりました。

●Anitubeと密接な関係があった広告代理店Z社

 動画海賊版サイト「Anitube」は、政府から漫画村などとともにサイトブロッキング対象として名指しされた一つ。多くのアニメなどが無断で配信されていましたが、4月16日ごろからサイトへアクセスできなくなりました。

 サイトにはいくつかのWeb広告が貼り付けられており、広告料がAnitubeの運営費になっていたことは間違いないとみられています。

 広告代理店Z社はAnitubeと関わりを持っていた企業で、アドネットワークを経由してDMMのアダルト広告、NTTソルマーレが運営する電子書籍配信サイト「コミックシーモア」、アムタスが運営する「めちゃコミック(めちゃコミ)」のアダルト広告、リアズが運営するチャットアプリの広告などを配信していました。

 DMM、NTTソルマーレに関してはこれまでの取材で、掲載NGのサイトを記した「ブラックリスト」を広告代理店側に配布していることが分かっていますが、海賊版サイトは日々増えていっているということもあり、各広告代理店はリスト入りを免れたサイトに続々と広告を配信していたようです。さらに悪質な広告代理店では、ブラックリストを企業側から受理しているのに掲載を続けるといったケースもあるとのことで、広告代理店側のモラルが問われています。

●Z社「海賊版サイトと認識しておりませんでした」

 ねとらぼ編集部では社名があがったZ社に取材を交渉。なぜ海賊版サイトへ広告を配信していたのか、出稿主は海賊版サイトへ広告を配信しているという認識があったのかなどの質問をぶつけたところ、企業名を出さないことを条件に、取材に応じてもらうことができました。

――Anitubeとの取引が始まったのはいつ頃からでしょうか。

Z社:2014年からです。

――月にどれ位の広告費が支払われていましたか。

Z社:月によって変動はありますが、平均で月1300~1500万円程度の取引がありました。

――どういったいきさつでAnitubeと取引を始めることとなったのですか。

Z社:当時の担当者が退職しているため取引に至った経緯は不明です。申し訳ございません。

――Z社がAnitubeなどの海賊版サイトに広告を配信しているということは把握していましたか。

Z社:海賊版という認識はありませんでしたが、2018年2月にアニメ・マンガ海賊版対策協議会に委託された企業より弊社に問い合わせがあり、Anitubeは海賊版サイトの可能性が極めて高いと判断し、3月末にて取引を停止しました。

――編集部では一連の取材で、Anitubeはブラジルの「ANIGRUPO AGENCIAMENTO DE ESPACOS PUBLICITARIOS LTDA」という法人が運営しており、運営者についてはMaurilio Sueo Nos氏ではないかとみています。この情報についてはいかがでしょうか。

Z社:運営者であるかは把握しておりませんが、弊社が広告取引を行っていた際の担当者はご指摘の方で相違ありません。

――海賊版サイト等に広告が出てしまう可能性について、クライアントには説明していましたか。またクライアントから「Anitubeに出稿したい」など、海賊版サイトを指定して出稿するケースはありましたか。

Z社:海賊版サイトと認識しておりませんでしたので、弊社から特段の説明はしておりませんが、クライアントよりAnitubeと媒体指定されるケースもありました。

――社内で配信先の選定を行う判断基準などは存在しましたか。

Z社:弊社サービスをご利用いただくにあたりまして、利用規約に同意して頂くことで広告掲載が開始されます。しかしながら違法性のある、または違法性の高い媒体を全て排除できているわけではないため、著作権者等からの問い合わせ・通報を頂き次第、調査の上速やかに掲載停止の対応をとっております。

――結果的に海賊サイトに資金を提供し、著作権侵害のほう助を行っていたことについてどのように考えていますか。

Z社:結果的には海賊版サイトへの資金を提供していた形になってしまったことは事実ですので、今後は管理体制を強化し健全化を推進してまいります。

●海賊版サイトに広告を出して効果はあるのか?

 Z社の回答では「海賊版サイトと認識していなかった」とのことですが、中には海賊版サイトと知っていてあえて出稿していた代理店もあったといいます。なぜ広告代理店はリスクを負ってまで海賊版サイトに広告を出稿するのか。こうした状況について、ある関係者は前述のZ社の内部事情について「2~3年前ごろのAnitubeは非常に費用対効果の高いサイトと認識されていた」と語ります。

 例えば“バナーを1クリックされたらいくら”という単価の広告の場合、クリック後の成約率(発火率)の高さによって広告単価が決まるため、調子の良いものの場合、1クリック20~30円程度の単価のものがあったとのこと。仮に押し間違いなどでバナーがクリックされたとしてもその後の発火率が低ければ結局単価は上がらないため、結果的にAnitubeは成約率が非常に高いサイトであったということになります。

 いずれにせよ無料視聴をうたうAnitubeなどの海賊版サイトをきっかけにオンラインゲームコンテンツや電子コミックビジネスの顧客が増えていたのだとすれば皮肉なことです。

●漫画村問題で注目を集めた裏広告

 漫画村問題の露見とともに注目されているのが「裏広告」です。裏広告は2016年前後に「アドフラウド」という名前で話題になったもので、ユーザーが見られるページの表面には何の広告も表示されていないのに、管理者モードなどで確認してみると、ページ内に“見えない広告”が表示されている状態を指します。

 4月18日に放送されたNHK クローズアップ現代+「追跡! 脅威の“海賊版”漫画サイト」で、漫画村でも裏広告が存在していたと取り上げられると、「実際には表示されていない広告に広告料が支払われていたのでは」とする疑惑が持ちあがり、詐欺にあたるのではないかと物議をかもしています。

 関係者に「裏広告は誰が仕込んでいるのか」を聞いてみたところ、主にはメディア側(海賊版サイトなど)だろうとの回答。広告代理店側が裏広告に関与していたとなると出稿企業からの信用をなくしてしまうため、積極的に裏広告を出すことは考えにくいとのことでした。

●Anitubeの運営者、現地で起訴されていた

 また一連の取材の過程で、2016年に日本のアニメ制作会社がブラジル・ウベルランジア警察に対して、Anitubeに関する権利侵害の告発を行っていたことが分かりました。コンテンツ海外流通促進機構CODAによると、運営者は2017年10月4日に現地の刑事裁判所へ起訴されたとのこと。5月8日時点ではまだ公判は開かれていない状態ですが、起訴後もサイトが閲覧できない状態になった4月16日ごろまで更新を続けるなど、悪質性は高いとみられます。

 またAnitubeと同じくサイトブロッキングの名指しを受けた動画サイト「MioMio」についても、運営者が中国・国家版権局により特定されているとCODAは述べています。権利者によりすでに投訴(陳情のこと)が行われており、日本の関係機関は情報開示を求めているとのことです。

 ねとらぼ編集部では引き続き、広告代理店と海賊版サイトとの関係性や問題の解決にはどのような取組が必要なのか取材を続けていきます。

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漫画村との取引否定していた広告代理店、一転して「深く反省」 関係者は「海賊版と手を切れば仕事ない」と証言

 海賊版サイト「漫画村」などに広告を配信していた広告代理店・A社グループの幹部が、社員への一斉メールで海賊版サイトへの関与を認めていたことが分かりました。同社は2018年4月、ねとらぼ編集部の取材に対し「漫画村には関与していません」と回答していました。

●海賊版サイトへの関与否定も全従業員に対して「深く反省」メール

 社会問題となっている海賊版サイト問題では、運営者の責任はもちろん、サイトの運営資金を「広告収入」として間接的に供給していた広告代理店の責任やモラルを問う声もあがっています。

 編集部はこれまでの取材で、A社およびグループ会社のB社が、漫画村やAnitubeといった海賊版サイトの広告案件を多数取り扱っていたことを確認。取材を申し入れましたが、同社グループはこれまで関与を否定していました。

 ところが前述の記事を掲載してから間もなく、A社の常務取締役で、B社の代表取締役でもあるJ氏から、グループ社員に向けて「昨日晩に当社の海賊版メディアとの取組みについてのネット記事が出ています」とのメールが送信されていたことが編集部の取材で分かりました。

 メールの中でJ氏は、「4/16までに海賊版と確認出来る媒体社・レップ(※)・SSPへ停止措置を行いました」「今回の事は責任者である私のコンプライアンスに対する認識のあまさ、未熟さであったと深く反省し、真摯に受け止め、早々に媒体の掲載基準・審査機能の設置・運用と再発防止に取り組んでいきます」と、海賊版サイトへの関与を認めるとともに、グループ社員に向けて反省の弁を述べています。しかしいまだA社として対外的な説明や謝罪は行われておらず、内情を知る関係者らは、「従業員を引き留めるためのパフォーマンスだろう」と冷ややかな目を向けているようです。

(※)レップ……インターネット広告の取引で掲載媒体と広告代理店、広告主などを仲介する事業者。メディアレップともいわれる。

●関係者「全てを正したら会社として成り立たない」

 複数の関係者によると、A社グループでは従業員に対し休日に無償出勤をさせるなど、労働環境の悪さから退職者が続出していたとのこと。そんな中、海賊版サイトと同社グループとの関係が複数のメディアで示唆されたことにより、さらなる退職者が出ることを危惧したA社グループが反省の姿勢を示すことで、従業員に理解を求めようとしたのではないかというのです。

 確かにJ氏のメールには「従業員のみなさんはネット記事をうけ、心配と心労をおかけしてしまい申し訳ないと思っています。全力で問題解決・改善し、今後も働いてもらえる会社に向けて努めていきます」との文言が書かれていますが、関係者は「取引先のほとんどが海賊版サイトなのに、全てを正したら会社として成り立たない」と口をそろえます。

――前回の記事が掲載されて以降、A社グループ内で何か変化は起きているのでしょうか。

情報提供者1:最近テレビCMなどでよく見る電子コミックサイトなどから広告の配信停止を申し入れられました。表向きは「プロモーションの見直し」のための一時停止措置ですが、再開される可能性は限りなく低いでしょう。

情報提供者2:とはいえ社員に対しては表面的には何事もなかったかのようにふるまっているのではないでしょうか。

――海賊版サイトへの関与を認める社内一斉メールを送った後、本当にそうしたサイトとは手が切れているのでしょうか。

情報提供者1:実際のところ、海賊版サイトと手を切れば会社の運営は成り立たなくなりますから、難しいでしょうね。

情報提供者2:私も同意見です。A社グループには大きく分けて2つの営業部があり、片方の営業部は海賊版サイトや違法アダルトサイトの案件を、もう片方の営業部では誇張表現をしている化粧品や精力剤といった商品の広告を請け負っていました。もしも海賊版サイトや違法サイトに今後一切関わらないということになると、片方の営業部全体の仕事がほぼなくなってしまいますから、手を切るのは難しいのではないかと思います。

●求人広告とは異なる会社に所属させられる従業員

――情報提供者2さんはなぜ今回情報提供を決心されたのでしょうか。

情報提供者2:私が思うにA社グループは絶対に裁かれなくてはいけません。しかしこの集団を裁くためには、法整備が追い付いておらず、的確に動いてくれる方の手助けが必要だと考えました。

――労働条件についても問題があると聞きました。

情報提供者2:これに悩んでいる従業員は多いのではないでしょうか。例えば営業職で採用されたとしても、会社都合で別の部署に異動になる方もいますが、その際、事前になんの告知もされずにいきなり異動にされていたり。この他にも休日に無償出勤している人もいると言いますし、会社行事への参加も断れません。どれからあげれば良いのか考えてしまうぐらいです。

情報提供者1:求人については本当にひどいですね。ハローワークから面接にいって採用になったら、A社とは別の社名の会社に所属させられているなんてことはざらにあります。ペーパーカンパニーだらけですから。

――一番ひどいなと思うのはどういうところなのでしょう。

情報提供者2:人がどんどん入れ替わることに慣れてしまっていることではないでしょうか。あのような何の生産性もないどころか社会に悪影響を及ぼしている集団が企業として存続できないようにするための法整備、そしてこうした企業が「犯罪のほう助をしている」という明確な認識を世間に広めることが今は一番必要だと思います。

 ねとらぼ編集部では一連の取材内容を踏まえ、4月下旬から再度A社への取材を申し入れましたが、担当者の不在を理由に5月上旬まで回答はありませんでした。しかし、5月14日にA社の顧問弁護士より「A社として回答をする用意がある」との連絡があり、5月21日夜に回答書が届きました。

●広告代理店A社、ついに取材に応じる

――A社グループおよびグループ企業のB社は海賊版サイトに関わっていたのではないですか。

A社:当社は、「漫画村」等の海賊版サイトが2018年4月13日に政府によりブロッキングの対象として明示されたことを受け、当社が海賊版サイトに関与していないかの社内調査を開始すると同時に、4月16日までに海賊版サイトに関与しているおそれのある取引先等との取引を停止するよう措置を行いました。

 社内調査の結果、当社のグループ会社であるB社の運営するアドネットワークの一部配信先として海賊版サイトが存在したことが確認できました。もっとも、B社と海賊版サイトは、レップ社を介した間接的な関係であったことも同調査により判明しており、B社と「漫画村」は直接の取引関係にはございませんでした。

――直接的な取引関係にはないとのことですが、漫画村に対して、グループ全体で月にいくらの広告掲載費を支払っていたのですか。

A社:「漫画村」に対する取引の広告掲載費に関しては、直接取引ではなく、レップ社を介したB社のアドネットワーク上の取引であるため、純粋に「漫画村」に対して支払った広告掲載費を区別して算出することは不可能です。

 なお、「漫画村」との関係が確認されたレップ社に対しては、「漫画村」以外の掲載先を含め2017年4月から13カ月間で月平均250万円、総額で3200万円の取引実績がございました。

――4月にA社に対して取材した際には「A社は漫画村には関与していません」と回答していました。しかし実際には取引があったということで、実情と回答に齟齬(そご)が生じています。

A社:ねとらぼ編集部が当社に対して電話取材を行った2018年4月17日は、まさに当社としても社内調査の最中であり、電話回答をした責任者(※編集部注:既出の記事の名無し氏のこと)もある程度当社と海賊版サイトとの関与の事実を把握していたものの、社内調査のとりまとめ前に先行して外部に回答するわけにもいかず、会社を守るために反射的に拒絶反応を示し、否定してしまったとのことです。

 もっとも、当社としてはレップ社を介した取引とはいえ、海賊版サイトに広告を掲載していた事実が確認できたことから、今後に向けて深く反省し、この事実を真摯に受け止め、早々に媒体の掲載基準・ガイドラインの設定や審査機能を持った機関の設置・運用などの再発防止策に取り組んでまいります。

――今後も海賊版サイトとの取引は続く予定なのでしょうか。

A社:当社としては、今後海賊版サイトおよびこれに関連する会社との取引は行いません。前述の通り、当社は既に2018年4月16日までに海賊版と確認できる媒体社・レップ社・SSP社へ取引を停止する措置を行っております。

――取引を停止した取引社数を教えてください。

A社:本件措置に伴い、取引を停止した取引先は28社(個人含む)です。また広告掲載を停止したメディア数は71メディアとなります。なお、掲載を中止したメディアのうち直近3カ月の取引実績のあるメディア数は48メディアあり、その内訳は、平均月取引高1万円以下の掲載先が26メディア、平均月取引高1万円以上10万円以下の掲載先9メディア、平均月取引高10万円以上の掲載先が13メディアでございます。

――漫画村騒動以降、海賊版サイトへの広告配信停止を申し出た出稿主はどの程度いますか。

A社:複数の出稿主様より海賊版サイトに該当するサイトへの広告があれば、配信を停止するよう指示をいただいております。

――「漫画村」の運営主を知っていますか。また編集部がA社グループと「漫画村」との窓口になっていたのは、どの会社なのでしょうか。編集部では都内の広告代理店X社であるとの情報をつかんでいます。

A社:当社は「漫画村」の運営主について一切面識がございません。また本件はあくまでも当社のコンプライアンスの問題であることから、当社は他の企業様に関してお答えできる立場にございませんので、出稿主様を含む取引先に関する個別の質問には回答いたしかねます。

――A社グループではアダルトサイトとの取引もあるようですが、違法アダルトサイトについては今後どう対応する方針なのでしょうか。

A社:当社としては、アダルトサイトか否かに関わらず違法サイトは掲載停止の方針でございます。

――間接的とはいえ、海賊版サイトに資金を供給していたことについてどう考えていらっしゃいますか。

A社:本件は、当社のコンプライアンスに対する意識の低さを深く反省し、真摯に受け止めております。当社としましては、本件を踏まえ、今後早々に媒体の掲載基準・ガイドラインの設定や審査機能を持った機関の設置・運用などの再発防止策に取り組んでまいる所存です。

――漫画村騒動を受け、今後社内の方針を転換する予定はありますか。

A社:これまでの回答と重複いたしますが、当社としては、今回の騒動を踏まえ、社内のコンプライアンスに対する認識を高めると共に、媒体の掲載基準・ガイドラインの設定や審査機能を持った機関の設置・運用などの再発防止策に努めてまいる所存です。

 漫画村騒動が持ち上がった際、「どうすれば海賊版サイトを撲滅させられるのか」が大きな議論を呼びました。運営者を特定して処罰を受けさせること、利用者に海賊版サイトを利用しないように呼び掛けること、権利者が運営者に対して削除を依頼すること。しかしそのどれもが何らかの壁に阻まれ、いまだ抜本的な解決には至っていません。

 そんな折、編集部では「海賊版サイトに資金を供給している広告配信事業」に注目し、広告主、広告代理店への取材を続けてきました。そのうえで見えてきたのは複雑化された広告配信の実態と、一部広告代理店や広告主の責任感のなさです。現行法上では、海賊版サイトに広告を出稿したとしても何らペナルティを負うことはなく、それどころか海賊版サイトとの取引で莫大な利益が生まれている場合も少なくないため、海賊版サイトに関与していることを把握していながらも、手を切ることができない企業が多いのが実情のようです。

 お金は「社会の血液」とも言われます。それは海賊版サイトにとっても同じで、広告配信費が得られなければ海賊版サイトの運営は立ちいかなくなることは目に見えています。今、この瞬間にも新たな海賊版サイトが生まれているという状況の中、今回取材に応じたA社グループを含め、広告代理店や広告主がもう一度モラルについて考え直すことが、海賊版サイト撲滅への大きな一歩になることは言うまでもありません。

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「どんな基準で黒とするのか」「責任は誰が」 海賊版サイト広告が停止しなかった理由を広告業界団体に聞いた 

 漫画村をはじめとする海賊版サイト問題を巡って、これらのサイトに広告を出稿していた「代理店」を問題視する声が大きくなってきています。特に「漫画村」と深いつながりがあった広告代理店A社については、ねとらぼ編集部の取材により、業界団体「日本インタラクティブ広告協会(JIAA)」に加盟していたことが分かっています。

 こうした海賊版サイト問題について、これまで業界団体はどんな取り組みを行ってきたのか。そしてなぜ海賊版サイトへの広告出稿を防ぐことができなかったのか。JIAA、そしてJIAAと連携して違法サイト対策の検討を進めていたという「コンテンツ海外流通促進機構(CODA)」に、これまでの取り組みや現状の課題について聞きました。

海賊版サイトはなぜここまで広まってしまったのか、JIAAに聞く

 JIAAは「インターネットが信頼される広告メディアとして健全に発展していくためにビジネス環境を整備すること」を目的に、1999年5月にインターネット広告推進協議会として発足。2010年に一般社団法人に移行した後は、広告代理店や出版社など254社(正会員222社、賛助会員25社、準会員9社/2018年5月15日現在)が加盟しています。

 JIAAに聞いたところ、団体として違法サイトや著作権侵害サイトへの対策はこれまでにも行ってきたといいます。既に効果をあげているものとしては、「児童ポルノ」や「危険ドラッグの取引」「拳銃の売買」などの、明らかに違法なサイトへの対策。これについては警察庁とも連携し、違法なサイトには広告が配信されないような措置を講じているとのこと。

 一方で、「著作権侵害サイト(アプリ)」への対策についても、日本音楽著作権協会(JASRAC)や日本レコード協会(RIAJ)、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)などから協力依頼があり、かなり早い段階(2007年ごろ)から、情報共有や対策の検討などを行ってきたといいます。ただ、こちらはあくまで情報共有や注意喚起の段階で、対応については会員各社の判断に委ねるという形。広告配信停止などの措置を要請するまでには至っていませんでした。

2014年から対策検討も、なぜ今日まで「出稿停止」に至らなかったか

 この中で、音楽や映像の著作権侵害については2014年にCODAから広告出稿抑止の依頼があり、侵害サイトの情報提供を受けるなどの対応を進めていたといいます。しかし、児童ポルノなどの違法行為に比べて著作権侵害は判断が難しく、具体的な方策の実施は難航。2016年には経産省からも依頼があり、インターネット広告配信についての大規模な実態調査を実施しましたが、その結果「アドネットワーク(※)やアドエクスチェンジ(※)が利用されている現在の広告配信状況では、侵害コンテンツのある特定のページについて広告出稿を停止することは容易ではない」という課題が浮き彫りになったそうです。

※アドネットワーク:従来はバラバラに存在していたインターネット広告をまとめて「ネットワーク」として管理することで、広告主や広告内容に応じて最適なサイトに自動で広告を配信する仕組み
※アドエクスチェンジ:複数のアドネットワークを結ぶ入札システムのようなもの。どの広告枠にいくらで掲載するかを他の広告主と競い、最適な出稿単価で最適なサイトに自動で出稿してくれる仕組み

 さらに画像の場合、音楽や映像などよりも権利侵害の線引きが難しく、同じサイト内でも「このページには著作権侵害画像が含まれているからアウト」「このページはセーフ」など判断が分かれる場合があります。このとき、現在主流となっている広告配信の仕組みでは、「このサイトのこのページは広告を表示させないが、このページは許可する」といった個別運用が難しい、というのが大きな理由。また、かといって「1つでも著作権侵害画像が含まれていたらそのサイトの広告全てをブロックする」というのも現実的ではありません。

 その後、2017年の時点でひとまず「CODAが著作権者からの情報提供に基づいてブラックリストを作り、それをJIAAの会員社に共有する」という方針が決定されましたが、実際に運用しようとすると今度は「どのような基準でブラックと判断するのか」「誰がそのリストに対する責任を負うのか」という問題がでてきました。

 そもそも著作権侵害は親告罪であり、また正当な“引用”である場合もあるため、厳密に言えば権利者でさえ権利侵害を断定することはできません。CODAはリストの作成・提供はするものの、実際に会員各社がそれに基づいて広告ブロックを行い、何らかの問題が生じた場合、責任はどこが負うのか。結局、この議論に時間を費やし、実際にCODAが一定の基準に沿って悪質だと判定した侵害サイトのリストがJIAAに手渡されたのは2018年2月に入ってから。また、「このリストを根拠に出稿停止などの運用を行ってもいい」という合意が得られたのも、4月下旬にさしかかってからだったといいます(なお実際の運用については2018年5月からを目指しているとのこと)。

 つまるところ漫画海賊版サイトが猛威を奮っている間、業界団体側は対応策についてずっと検討はしていたものの、広告を停止するなどの対策は(あと一歩のところまで進めていながら)何もできていなかったということになります。

CODAはどうやってブラックリストを作ったのか

 JIAAに続き、CODA側にも話を聞きました。

――海賊版サイトの広告問題を把握したのはいつごろのことでしょうか。

CODA:2012年、YouTubeが投稿動画に広告収入を得るサービスを個人に公開したころより違法アップロードに広告を付ける問題が一般化したように思います。

――これまで海賊版サイトに対してどのような対策を行ってきたのでしょうか。

CODA:次のような対応を取ってきました。

  • 自動コンテンツ監視・削除センターを通じた継続的な削除要請の実施
  • 諸外国政府・取り締まり機関を通じた行政・刑事手続きなどの権利行使
  • 直接的な侵害対策のほか、広告業界への広告掲載の停止要請と検索事業者への侵害サイトの結果表示抑止の要請、セキュリティ関連企業と協力した注意喚起メッセージの表示などの間接的な対策
  • 一般消費者に対する広報啓発

――いろいろと対応を取られているんですね。海賊版サイト撲滅に向けた障害や課題はどのようなところにあるのでしょうか。

CODA:海賊版サイトは、国境や言語の壁を越えて瞬時に拡散されますが、その侵害に対して取るべき対策は国や地域によって異なります。また近年では、海賊版サイトの匿名運営を保証するサービスも登場するなど、侵害行為者に対する直接的な対策は困難を極めます。そこでCODAは、広告業界や検索サービス事業者、セキュリティ関連企業などに協力いただき、「間接的な」侵害対策にも力を入れていますが、費用と時間、そして労力を要するものです。
 CODAでは、日本コンテンツの海外、特に東アジアを中心とした正規流通の阻害要因となっている海賊版問題を喫緊の課題として捉え、情報の収集分析、産業界における情報の共有および効果的な解決策の検討、解決策の1つである共同エンフォースメントなどを、主な事業として実施しています。

――問題のあるサイトなどのリストをJIAAに渡すことになったと聞いていますが、具体的にはどのようなリストなのでしょうか。

CODA:CODAを含む著作権関連団体9団体が、著作権者からの削除要請にも応じない悪質な侵害サイトをリスト化しているものです。

――サイトの違法性についてはどのように判断しているのでしょうか。

CODA:CODAのリストについては、基本的には日常的に行っている削除センター等を通じた削除要請業務の中で、削除に応じない悪質なサイトなどを対象としています。また、権利者から削除要請に応じない旨の情報提供があったサイトで、かつ悪質なサイトも含めております。

――リストの運用に至るまでには少し時間を要したという意見もあります。

CODA:どのような情報が必要かという項目のリストアップなどの協議に時間を要しました。今後、運用の中で問題が生じた場合は、コンテンツ業界と広告業界で協力し解決していきたいと考えています。

――海賊版サイトを監視するチームの規模や予算はどの程度なのでしょうか。

CODA:大変申し訳ありませんが、公表しておりません。

――「漫画村」「Anitube」「MioMio」の各運営者を把握していますか。

CODA:「Anitube」につきましては、運営者に対し、権利者が告訴(ブラジル・ウベルランジア警察)を行っており、被疑者宅の捜索、刑事裁判所に起訴も行われているため、把握しております(ただし、現在は逃亡中と聞いております)。「MioMio」については、運営者に対し、権利者が行政投訴(中国・国家版権局)を行っており、国家版権局は運営者を特定しております。現在、国家版権局に対して運営者の情報をCODAにも開示するよう要請しています。

――「漫画村」については、警察の捜査が進められていたため、あえて対策を講じずに推移を見守っていたという情報があります。これは本当でしょうか。

CODA:漫画村の対策については、出版社へお尋ねください。申し訳ありません。ただし、一般論として、証拠の保全や隠滅の可能性を考慮して一つの有効な対策のために他の対策を留保するということはよくあることだと思います。

――出稿していた代理店の責任についてどう考えていますか。

CODA:もし、海賊版サイトと知って広告出稿を行っていたのだとすれば、侵害行為を助長しているともいえる大変悪質な行為であると考えます。が、他方で広告の審査の際には海賊版コンテンツを掲載せず、審査通過後に掲載するようなサイトもあり、難しい問題であると考えますし、今後は、コンテンツ業界と広告業界が連携することによって、このような事情を「知らなかった」ということをなくし、オンライン広告の健全化を図るために尽力していきたいと思います。

――海賊版サイトについてどのように考えていますか。

CODA:日本は、映画、アニメ、音楽、放送番組、ゲーム、漫画など、世界に誇るコンテンツを持っており、2002年には「知的財産立国」を宣言するなど、その力には大きな期待が寄せられています。
 コンテンツは、クリエイターや制作会社の大変な努力や製作費をもとに生み出されるものであり、その成果をすべて奪う海賊版サイトは決して許されるものではありません。
 CODAは、コンテンツを楽しむ皆さんに対して、無料だからといった安易な発想で海賊版サイトを視聴することによって、結果的に犯罪者の資金稼ぎに手助けしてしまうこと、そしてコンピュータウィルスやマルウェアなどに感染する危険も存在することなど、十二分に理解してほしいと思います。これら海賊版サイトを撲滅し、コンテンツ制作により生み出された成果が本来得るべき人たちのもとへ還元されるよう努力をして参ります。

 JIAAによると、こうした対策が後手にまわりがちな原因の1つとして「アドテクノロジーの複雑化」があるといいます。

 ごく初期のインターネット広告は、「ここのバナー欄を1月いくらで売ります」のような形で、サイト側が広告主と直接やりとりをして広告スペースを販売するシンプルな形でした。しかし現在の広告バナーは(ざっくりと言えば)「アドネットワーク」「アドエクスチェンジ」という仕組みにより、広告主側は特定のサイトを指定しなくても「この金額でこれだけ効果を出したい」と言えば、アドネットワーク上に無数に存在するバナーの中から、金額や要望に応じてもっとも効率のよいサイトに自動で入札し、瞬時にバナーを掲出してくれる仕組みになっています。

 この「アドネットワーク」「アドエクスチェンジ」の登場は大きな革命で、これにより広告の取引量は圧倒的に増えました。しかしデメリットとして、管理するサイトやバナーが増えすぎ、広告代理店すら自分が管理するサイトが違法であるかどうかを把握しきれず、今回のように「知らない間に海賊版サイトに広告が出てしまっていた」といった問題も引き起こすことになりました。インターネット広告が違法サービスの資金源になってしまっており、なおかつそれを容易に排除することができない背景には、単に代理店のモラル問題だけでなく、こうした技術面の問題もあるといいます。

 しかし、だからといってそれが「知らなかったし、どうしようもなかったから仕方ない」という免責の理由にはなりません。海賊版サイトによって著作権者や権利者が苦しんでいる一方で、運営者、広告代理店、そしてそこに出稿する一部の企業などが結果的に利益を得ているのは紛れもない事実であり、自主的な規制だけでは効力が弱く、限界があるようにも感じられます。一刻も早い抜本的な対策が望まれます。

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