人間よりも精度が高い「ダイヤモンド鑑定AI」 その仕組みとは
指輪やペンダントといった、高価な宝飾品に使われるダイヤモンド。一度でも購入した経験のある人なら覚えていると思うが、重さや色、透明度(内包物やキズ)といった条件で、細かく値段が分かれる。“一般人”が見ても、その差はおおよそ分かりにくい……というか、まず分からない。特に透明度については、判断基準すらも曖昧だ。
こうした差を判別し、品質を証明する鑑定書を作るのが「鑑定士」と呼ばれる人々だが、最近はその鑑定を人工知能(AI)に任せる動きも出てきている。
●人間よりも高い精度を誇る「ダイヤモンド鑑定AI」
宝飾品店チェーンを展開するケイ・ウノは、2018年4月20日にAIが鑑定したダイヤモンドの販売を始めた。このダイヤモンドには、宝石鑑定の専門機関である中央宝石研究所が発行する鑑定書のほかに、イスラエルにあるダイヤモンド鑑定システム大手のサリネ・テクノロジーが発行する紙とデジタル鑑定書「Sarine Profile(サリネプロファイル)」を発行する。サリネプロファイルはスマートフォンやタブレットで確認できる。
ケイ・ウノでは、サリネ・テクノロジーの代理店であるAPと協力し、2017年4月にサリネプロファイルを導入した。他の製品との色の比較や、ダイヤモンドを360度回転して見ることができる「3Dルーペ」、内包物の詳細な位置を示す機能など、デジタルならではの見せ方が特徴だ。
AIによるダイヤモンドの鑑定は、サリネ・テクノロジーの研究所「Sarine Diamond Lab」で行われている。鑑定の対象となるのは主に色と透明性の2つで、画像解析によって判定が行われる。「国や地域、個人によって鑑定結果が異なるケースがあることから、安定した鑑定が求められていた」(AP 経営戦略室 室長 伊藤拓也氏)という。サリネ・テクノロジーの検証によると、鑑定士とAIによる鑑定の誤判断率は、透明度においては鑑定士が7%で、AIが3%だったと発表しており、精度においてはAIが人間を上回るようだ。
このAIの教師データ(正解の基準となるデータ)は鑑定士の判定だ。サンプル数は約1万5000件とのことだが、1人の人間が行ったのでは偏りが生じるため、同じサンプルに対して複数人で鑑定を行い、意見が割れたものに対しては「平均値をとった」(伊藤氏)という。複数人のノウハウを合体させることで、AIの判断に客観性を持たせる――いわば“合議制”のようなシステムといえるだろう。
●味の素が1年かけて開発した「献立提案AI」
味の素が2018年3月に公開した「献立提案AI」もプロの判断を基に生まれた人工知能だ。自社レシピサイト「AJINOMOTO PARK」において、サイト上でユーザーが1品のレシピを選ぶと、主菜、副菜、汁物から適切な2品を加え、計3品の献立として提案してくれる。
レシピ名、食材、栄養成分など、同社が蓄積した約1万レシピのデータベースを活用し、栄養基準や季節、調理器具の重複制限、料理ジャンルの統一といった要素のほか、彩りや味のバランスといった、感覚的な要素も踏まえたのが特徴だという。
彩や味のバランスについては、「栄養士などの資格を持つ担当者が、数値化や言語化できないことも含んだ形でOKかNGかをラベル付け」(味の素)しているとのこと。これを教師データとして学習させているそうだ。今後もシステムが出してきた献立案に対し、担当者がジャッジをし続けることで、精度を高めていく考えだ。
同社によれば、このシステムはグループ会社の協力の下、自社で開発しており、開発期間は約1年だったという。
サリネ・テクノロジーと味の素、両者の事例に共通するのは、判断基準が曖昧だったり、個人差があったりして、数値化しにくいような問題に対して、熟練者の判断や感覚を教師データとし、機械学習を用いたアプローチで精度を高めていこうとしている点。TensorFlowを用いたきゅうり分別の事例もコンセプトはほぼ同じだ。
(一般人が分かるような形で)数値化できないが故に、精度が100%になることはないものの、これまでデータ化や分析の対象とならなかったものを“強引”にデータ化し、ビジネスチャンスを見いだす方法として、機械学習というのは、非常に有効なアプローチといえるだろう。
