長時間スマホで「IT眼症」!目の疲れ・頭痛・不眠、小中学生も多く、20〜30歳代に「スマホ老眼」

長時間スマホで「IT眼症」…目の疲れ・頭痛・不眠、小中学生も多く

 スマートフォンなどIT(情報技術)機器の長時間利用で目の疲れや頭痛、不眠などが起きる「IT眼症」が問題になっている。

 小中学生がなるケースも多く、専門家はスマホなどの適切な利用を呼びかけている。(岩浅憲史)

「ブルーライト」発する液晶画面、至近距離で凝視すると…

 東京都内の小学5年男児(10)は帰宅後、目から20センチほどの至近距離でスマホを持って友人とオンラインゲームを楽しむ。2時間近く熱中することもある。男児の母親(44)は「学校の授業でもタブレット端末を使う。目を酷使して健康に影響がないか心配」と話す。

 兵庫県姫路市のツカザキ病院小児眼科外来では最近、目の疲れや痛みを訴える小中学生らが増えている。同病院の小児眼科医で、川崎医療福祉大名誉教授の田淵昭雄さんによると、大半がスマホや携帯ゲーム機などの長時間使用によるIT眼症だという。

 IT眼症とは、至近距離でIT機器の明るい液晶画面を長時間凝視することで、目の疲れや頭痛、首や肩のこり、不眠などの症状が出ること。イライラなど心身のストレスを抱えることもある。

 IT機器の画面の光源はLEDが主流で、目を刺激する「ブルーライト(青色光)」を発している。画面との距離が近いほど、夜間や暗い場所ほど影響が大きいとされる。スマホやタブレット端末は、パソコンに比べて画面が小さく、顔を近づけて見がちだ。

幅広い世代で深刻化

 小中学生や高校生のインターネットの利用率は年々増加傾向にある。内閣府が2月に発表したネット利用環境の調査では、平日の1日に5時間以上利用する小学生は5・1%、中学生11・6%、高校生は26・1%だった。

 成人にも影響が広がる。化粧品大手ファンケル(横浜市)が2015年11月、20~60代の男女1万人を対象に行った調査では、「目の疲れを感じる」とした人は86%に上った。原因は、全世代で「スマホやパソコンの利用」が最多だった。東京都内の会社員(41)は、就寝前の暗い寝室で、動画投稿サイト「ユーチューブ」のゲーム動画をタブレット端末で見る。「目の疲れがひどく、寝付きも悪くなった」と話す。

 田淵さんは「IT機器が急速に普及し、場所や昼夜を問わず利用するようになった。IT眼症が幅広い世代で深刻化している」と指摘する。

「ダークテーマ」で目の疲れを軽減、背景の色を白から黒に…

 一方、IT機器の利用環境を改善する動きも出てきた。ユーチューブは3月中旬、アップルのiOS版でも画面の背景の色を白から黒に変更できる機能「ダークテーマ」を追加した。

文字の色は黒から白に…

 文字の色は黒から白になる。設定前に比べ設定後は目の疲れを軽減できる。

 グーグルなどの検索エンジンや、フェイスブックなども同様に変更できる。iPhone(アイフォーン)でも、調光機能のナイトシフトを利用できる。

 パナソニックは8月、パソコン利用者のストレス状態を内蔵カメラでチェックできる法人向けのサービスを始める。使用時間もグラフで可視化できる。150社以上から問い合わせがあるという。

 IT機器によるストレスの相談に応じている「九州インターワークス」(佐賀県)代表の古賀竜一さんは「タイマー機能を活用して長時間利用を防いだり、目に優しい調光や配色に設定したりするなどIT機器の利用環境の改善が必要」と指摘。目の疲れの軽減策としては「就寝前は利用を控えるなど生活習慣を見直してほしい」と助言する。

IT眼症を防ぐポイント

・暗い場所でごろ寝しながらIT機器の画面を凝視し続けない。ブルーライトをカットするメガネも有効

・IT機器を使い分ける。電話はスマホ、メールやSNSのやりとりは大画面のタブレット端末やパソコンで。緊急的な用件以外は即時に返信しない

・画面から目を50センチ以上離す。連続使用は30分~1時間程度。適度なストレッチや休息を

・画面の明るさを暗くしたり、ナイトモード機能などで背景の色を刺激の少ない黒に変更したりする

(田淵さんや古賀さんへの取材を基に作成)

20、30歳代に「スマホ老眼」

 20、30代なのに手元が見にくいといった老眼のような症状に悩む人が増えている。スマートフォンなどが関係しているとみられ、「スマホ老眼」と呼ばれている。新たな現代病という指摘もあり、目の酷使に注意が必要だ。

 「ふと腕時計を見たり、電車の中で路線図を確認したりするときに、文字がぼやけて判読しづらくなった」

 東京都内の商社に勤める男性(29)は話す。症状が出るのは主に夕方。週末に向かうにつれ、見づらさを感じる時間が増えるという。

 職場でパソコンを使うほか、外回りの際もスマホでのメール確認や情報収集に余念がない。仕事が終わっても、スマホは手放せない。

 近くのものにピントが合わないとは、まるで老眼のよう。年を重ねた人がなるものと思っていたが、こうした若者はほかにもいるのだろうか?

 みさき眼科クリニック(東京都渋谷区)院長の石岡みさきさんは「確かに増えている。医学用語ではないが、いわゆるスマホ老眼で、目の酷使が原因」と話す。

「手元が見づらい」「日によって同じ場所にあるものが見えたり、見えなかったりする」など、老眼の初期症状のような悩みを抱える20、30代の来院者は、2、3年前まで月に2、3人だったが、今は10~20人。視力には特段の異常はないが、ピント調節がスムーズに行えないのが特徴だ。

 近くを見る際は、毛様体という筋肉の働きで、レンズの役割を果たす水晶体の厚さを変える=イラスト参照=。老眼は加齢に伴い、水晶体が硬くなったり、毛様体が衰えたりして、ピント調節ができなくなる現象。40歳ぐらいから兆候が出る。

 一方、スマホ老眼は、医学的には「調節緊張」と呼ばれる症状だ。近くを見続けるなどした結果、筋肉が凝って、ピント調節ができなくなる。老眼ではなく、症状は一時的なことが多いが、重篤化すると、ピントが固定されたままになることがある。

 石岡さんは「パソコンでも同様の症状は起こるが、スマホの場合、短い距離で、小さな画面内の文字を凝視するため、よりなりやすい」という。

 眼鏡業界紙を発行する眼鏡光学出版(東京)が、眼鏡を日常的に使っている1万人に視力の状況を尋ねたところ、老眼の症状を訴える若者(10代後半~34歳)は、2012年の0・5%から、13年には6・7%に急増した。スマホ老眼との関連は定かではないが、スマホの世帯保有状況が40%台から一気に60%台に達した時期に重なる。

 眼鏡チェーンも老眼予防を呼びかけている。ビジョンメガネ(大阪府守口市)は今年、老眼予防につながるとされるストレッチや食事を紹介する社員向けマニュアルを作成。一部店舗で老眼症状のある来店者への助言に活用している。メガネスーパー(神奈川県小田原市)は今年、目の緊張をほぐすリラクゼーションルームを併設した新形態の店を都内に開いた。

 国際医療福祉大学熱海病院眼科講師の田野貴俊さんは「生活に溶け込んだスマホやパソコンが新たな現代病をもたらしているといえる。長時間の使用を控え、目のケアに関心を持ってほしい」と話している。

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