Excelとパワポの知識だけで業務アプリを開発できる「PowerApps」とは?自動でバージョン管理

Excelとパワポの知識だけで業務アプリを開発できる「PowerApps」とは

PowerAppsとは

 「Microsoft PowerApps」をご存知でしょうか? PowerAppsは、Excelのような関数とPowerPointのような操作だけで、コーディングすることなくアプリケーションが開発できてしまうサービスです。2016年10月に提供が開始され、日本語を含む42か国語に対応しています。

 PowerAppsの最大の特徴は、OSやブラウザーの種類を問わず、どの環境でも使える点です。さらに、PowerAppsで作成して保存したアプリは、Windowsはもちろん、Mac環境のブラウザー(IE、Edge、Chrome、Firefox、Safari)で動きますし、iOSとAndroidなら専用のモバイルアプリが提供されています。PC向け、モバイル向けにそれぞれ別のアプリを作成する必要はありません。

 PowerAppsでは、開発画面上でアプリUIの完成イメージを見ながら作成し、そのまま動作確認もできます。例えばボタンを作るには、PowerPointでスライド上に四角い図形を配置するのと同じ感覚で、クリック&ドロップするだけです。そのため、アプリの開発期間が非常に短くなります。次の動画では、PowerAppsを使って「牛丼注文アプリ」(オーダーをメールで送信)を6分間で作り上げる様子を紹介しています(2分に再生速度を上げています)。

PowerAppsでできること

 PowerAppsでは、「コネクタ」を使って複数のデータ元を1つのアプリ画面にまとめることが簡単にできます。「コネクタ」を活用し、200種類以上のデータと連携します。

 PowerAppsのコネクタは200種類以上あり、Microsoft系のOutlookやSharePoint、Azure、SQL Serverはもちろんのこと、kintoneやSalesforceなどの外部サービスもデータ元として利用できます。コネクタにないサービスは「カスタムコネクタ」を作って接続可能です。さらに、オンプレミス環境のExcelやSQL Serverなどのデータも、「オンプレミスゲートウェイ」をインストールすることで、PowerAppsのアプリで利用できるようになります。

 例えば、営業担当が今までカレンダー登録、出張申請、CRMのシステムをすべて別々に入力していて、さらに旅費計算のために乗り換え案内のサイトを見ていたとします。PowerApps利用すれば、これらの業務をすべて1つの画面にまとめてしまい、担当はスマホからすべて完結させることができるのです。

本当に「ノンコーディング」

 世の中には、「ノンコーディング」や「コーディングレス」でアプリ開発ができるというサービスがいくつかありますが、少し高度な仕組みや自分好みのカスタマイズを加えようとすると、JavaScriptなどのコーディングが必要になることが多いです。

 PowerAppsでは、JavaScriptではなく、Excelの数式バーに数式を入力するような操作感で、アプリの細かい動作を設定できます。次の例は「ボタンをクリックすると画面を移動する」という設定です。

自動でバージョン管理

 PowerAppsで作成したアプリは「保存」「発行」の2ステップでユーザーに展開します。まず、保存したアプリを自分で試してみて、動作に問題がなければ「発行」を押して、社内のユーザーに展開しましょう。

 保存したアプリは自動的にバージョン管理されるので、仮に発行したアプリで何か設定を間違えていた際は、ワンクリックで1つ前のバージョンに復元します。

PowerAppsのプランは3種類

 PowerAppsには、Office 365/Dynamics 365ライセンスで使える「無償プラン」、フル機能の「有償プラン」、無償で試用できる「コミュニティプラン」の3種類のプランがあります。

 Office 365やDynamics 365のライセンスをもっていれば、無償の「PowerApps for Office 365」プラン、「PowerApps for Dynamics 365」プラン利用できます。アプリの作成と実行だけに使う場合は、このプランで十分です。

 「有償プラン」が必要になる利用シーンは、kintoneやSalesforceといったMicrosoft製品以外と連携する「コネクタ」を使う場合や、テスト環境と本番環境と分けて管理したい場合、PowerAppsで提供しているCommon Data Serviceというデータベースを利用する場合などです。

 PowerAppsを1人で試しに使ってみたいケースでは、無償の「コミュニティプラン」があります。コミュニティプランでは、テスト環境で最上位の有償プランと同じフル機能が利用できます。ただし、作成したアプリを他のユーザーと共有できない制限があります。

 どのプランにもPowerAppsに加え、Microsoft Flowも含まれていますので、別々で購入する必要はありません。まずは、コミュニティプランでPowerAppsを試してみてください。

 PowerAppsの詳しい使い方は、Microsoftのこちらのサイトに掲載されています。また、筆者の個人ブログでは、PowerAppsのアプリに地図を埋め込む、チャットボットアプリを作るといった実用的なアプリの構成例と開発手順を紹介していますので、参考にしてください。

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 ASCII Team Leadersでは、2018年5月14日に、PowerAppsのハンズオンイベント「PowerAppsで誰でもノンコーディング開発!みんなの苦行「経費精算」を楽にするアプリを作ろう」を開催します。プログラミングの知識は必要ありません。企業の経理部門の方、業務で使うアプリケーションを自ら開発したい事業部門の方、ノンコーディング開発に興味をお持ちの方など、誰でも参加できるイベントです。ご参加をお待ちしております(※応募者多数につき、参加枠は抽選とさせていただきます)。

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Excelとパワポにも機械翻訳機能が登場

 Office 365を使いこなして仕事を早く終わらせたい皆様にお届けする本連載。今回はExcelとPowerPointが実装した翻訳機能に注目する。

機密情報を扱う社内ユーザーも安心の翻訳機能

 Microsoftは2017年4月から、翻訳エンジンを統計的機械翻訳(SMT: Statistical Machine Translation)から、深層学習を用いたニューラル機械翻訳(NMT: Neural Machine Translation)に切り替え、その成果をMicrosoft TranslatorやOffice 365などに展開した。2017年11月にはWordが翻訳機能を標準搭載。そのほか、同社の実験的プロジェクト「Microsoft Garage」として、PowerPointのプレゼンテーションに字幕追加や文字列翻訳を行う「Presentation Translator」に活用している。

 Microsoftの開発陣はPresentation Translatorについて、「騒々しい環境での認識レベル向上や、アクセント付き音声の認識など機能を高めつつ、会話の内容に含まれた意味や意図を理解する次のステップを目指す」と述べていたが、一定の目処が立ったのか、バージョン1803(ビルド 9126)のExcelとPowerPointに、Wordと同じ翻訳機能を搭載した。

 基本的な機能はWordのそれと同じく、選択したセル内やプレゼンテーション内の文字列を任意の言語へ翻訳する。翻訳エンジンはMicrosoft Translator APIを使用しており、翻訳可能な言語は60種類以上。最新の情報はWebサイトで確認できるが、ニューラル機械翻訳に対応するのは日本語を始めとする22言語に限定される。また、Wordと同様に翻訳機能を使用するにはインテリジェントサービスが必要だ。

 文章を扱うWordはともかく、ExcelやPowerPointに翻訳機能が必要かと疑問に感じる方もおられるだろう。だが、ダウンロードした他国語の資料に目を通す場合、ウィンドウを切り替えずに単語を調べられるのは便利だ。PowerPointにしても、Presentation Translatorは聴講者向けに音声翻訳し、文字列全体を翻訳するものだが、今回実装した翻訳機能はスライド制作者や挿入する文字列を他言語化する際にも役立つ。

 ちなみにOutlook向け翻訳機能である「Translator for Outlook」は以前から公開しており、これでOffice 365は全方位的な翻訳機能を供えたことになる。なお、本翻訳機能はNo-Traceオプションが有効なため、機密性の高い書類作成などにも利用可能だ。

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