豪州の中華系社会が変容?「台湾は中国の一部ではない」中国人が台湾人を解雇!中国新移民急増で広がる愛国主義

豪州の中華系社会が変容? 「中国人が台湾人を解雇」 中国新移民急増で広がる愛国主義

 「台湾は中国の一部ではない」と言っただけでバイトを解雇された-。ある米紙記事が伝えた逸話が、オーストラリアの中華系社会に波紋を広げている。多文化主義をうたう豪州では中華系も例外ではなく、「中台の政治的立場の違いを生活に持ち込まない」(台湾人企業家)ことが慣例だったためだ。報道の背景からは、急増する中国移民の「愛国主義」が、中華系社会を変容させ始めている現状が浮かぶ。

 「台湾は中国の一部?」「いえ、絶対に違います」

 米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT、電子版)は2月18日、シドニー発の記事で、バイト初日に無線機越しに中国人マネジャーと会話を交わしたワーキングホリデー中の台湾人女性(29)が直後に解雇されたと紹介。「豪州では台湾に忠誠を誓うと職を失う」と台湾人への嫌がらせ事例について報じた。

 この逸話は、女性が1月、フェイスブックの台湾人向けグループに投稿したもの。これを中台双方のメディアが中国語で報道し、NYT紙が再取材に基づき中英両文で報じたことでさらに広まった。

 舞台となったシドニー郊外の街バーウッドは、人口の45%が中華系で3割以上が中国大陸生まれの移民。最近オープンしたという問題の火鍋店を訪れると、店員も客も中国大陸なまりの中国語を話していた。マネジャーを名乗る男性は「記事はフェイク(偽物)」と主張。女性は産経新聞の取材に「この件についてコメントしない」と回答した。

 一連の報道について、豪州で暮らす台湾人企業家らは「従来の移民社会では考えられないひどい話だ」と憤りを隠せない一方、「初めて聞く事例」と口をそろえる。別の台湾人は「いかにもありそうな話なので、ネットで拡散したのではないか」と首をひねった。だが、豪州台湾同郷会の幹部は「中国の台頭を背景に中国からの移民の間で民族主義、愛国主義が強まっている」と話した。

 報道の影響は在豪台湾人社会にとどまらない。中華系市民が多数参加しシドニーで今月14日に開かれた会合で、この逸話は「豪州の民主的原則への重大な違反だ」(大学教授)と指摘された。

 中華系社会では、豪州社会に溶け込む努力をしてきた中国共産党に拒否感を持つ層と、新たに移民し本国に愛着を持つ中国出身者との間で分断が生まれつつあるようだ。2016年に企画された毛沢東の死去40年記念コンサートを中止に追い込んだ中華系団体「豪州の価値守護連盟」(AVA)の広報担当ジョン・ヒュー氏は「少数の親北京派が中華系豪州人社会を乗っ取ろうとしている」と訴えた。(シドニー 田中靖人)

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