<米国輸入制限>日本は対応に苦慮 EUや中国は報復検討

<米輸入制限>日本は対応に苦慮 EUや中国は報復検討

 トランプ米大統領が表明した鉄鋼・アルミニウム製品の輸入制限を巡り、日本政府は日本製品を対象外とするよう求めてきたが、米国はすべての国を対象とする姿勢を示している。欧州連合(EU)や中国は報復措置を検討するが、安全保障面からも日米関係を重視する日本は強硬措置は避けたい考えで、対応に苦慮している。

 米政権幹部のナバロ通商製造業政策局長は4日のテレビ番組で、鉄とアルミに高関税をかける輸入制限について「(企業が)事業を継続できるよう、特例として例外措置の手続きが行われる」と述べ、一部製品を対象から外すことを示唆した。一方で「現時点では国単位の例外措置はない」と明言した。

 日本は、米国の同盟国として国単位で輸入制限の対象外とするよう要請してきた。ロス商務長官は別のテレビ番組で、多数の国々から例外扱いについて協議の申し入れがあったと明らかにしたうえで「大統領が判断する」と述べた。トランプ氏はその後、「友人も敵も長年にわたり米国に乗じてきた」とツイッターに投稿するなど、すべての国を対象にする姿勢を崩していない。

 菅義偉官房長官は5日の記者会見で今後の対応について、「措置の内容や日本企業への影響を十分精査した上で、まず米側と協議する」と述べた。日本が輸出する鉄鋼製品の多くは「米企業が生産できない高付加価値品」(日本鉄鋼連盟)のため、製品ごとの例外措置が適用される可能性もあり、まずは米国の出方を見極める考えだ。

 EUや中国は米国への報復措置を示唆しているが、安全保障と経済面での協力を両輪として米国との良好な関係を築く安倍晋三政権は「両国間の摩擦は避けたい」のが本音だ。このため「貿易戦争の阻止が最優先」(交渉筋)として、米国に輸入制限を発動しないよう説得を続ける方針。中国の過剰な鉄鋼生産の是正を求める姿勢は日米欧で一致しており、米欧間の対立が激化しないよう調整に入ることも検討している。

 ただ、トランプ氏は今秋の中間選挙をにらみ、支持層へのアピールのために輸入制限発動が不可欠と判断している模様だ。ナバロ氏は正式発表が来週にずれ込む可能性を指摘したが、鉄鋼関連工場が国内で最も多い米東部ペンシルベニア州での下院補選(13日)までには発表するとみられ、説得は容易ではない。【中井正裕、ワシントン清水憲司】

 ◇主要国のコメント

◇3月1日

 ◆米国 トランプ大統領

「国防のために鉄鋼・アルミ企業が必要だ。両産業は保護され、再び成長していく」

 ◆欧州連合(EU) ユンケル欧州委員長

「われわれの利益を守るために断固とした対応をとる」

◇2日

 ◆日本 河野太郎外相

「日本からの鉄鋼の輸入が米国の安全保障の妨げになるとは思っていない」

 ◆中国 華春瑩(か・しゅんえい)外務省副報道局長

「国際貿易秩序に深刻な影響をもたらすことになる」

 ◆米国 ホワイトハウス高官

「例外なく幅広く関税を課す。例外扱いの審査は行われるが国単位ではない」

◇3日

 ◆日本 世耕弘成経済産業相

ロス米商務長官と電話協議「日本の強い懸念を伝えた」

◇4日

 ◆米国 ナバロ通商製造業政策局長

「(米企業の)事業継続のため、特例として例外措置の手続きが行われる」

◇5日

 ◆日本 菅義偉官房長官

「措置の内容や日本企業への影響を十分に精査した上で米側と協議する」

米国鉄鋼・アルミ輸入制限…トランプ氏表明 中国を標的

トランプ米大統領は1日、鉄鋼製品に25%、アルミニウム製品に10%の関税をそれぞれ課す輸入制限を発動する方針を表明した。来週、大統領令に署名する。対象国は明言しなかったが、主な標的である中国だけでなく、現時点では日本も含まれる公算が大きい。米メディアによると、米通商拡大法232条に基づく輸入制限発動を正式に決めれば1982年以来36年ぶり。対象国の反発は必至で、世界的な貿易摩擦に発展する可能性が高い。

 トランプ氏は1日、ホワイトハウスで国内鉄鋼・アルミ企業幹部らとの会合を開き、「国防のために鉄鋼・アルミ企業が必要だ。両産業は久しぶりに保護され、再び成長していく」と語り、来週、輸入制限の発動を命じる大統領令に署名する考えを明らかにした。

 米商務省は1月、国内関連産業の維持には生産拠点の稼働率を80%以上に高める必要があるとの報告書をまとめ、全輸出国を対象に鉄鋼には最低24%、アルミには最低7・7%の関税を課すなどと明記した複数案をトランプ氏に勧告していた。同盟国など特定の国を対象外にすることもでき、正式決定までに発動内容が変わる可能性もある。また、米メディアによると、中国の習近平国家主席の経済ブレーンである劉鶴氏が訪米しており、圧力をかける狙いもありそうだ。

 トランプ政権は今年に入り、中国や韓国を主な標的に太陽光パネルや洗濯機の緊急輸入制限(セーフガード)発動を決定。続いて広範な産業に影響を及ぼす鉄鋼・アルミ製品の輸入制限に踏み切ることで、保護主義政策を本格的に実行に移すことになる。

 中国商務省は2月、「中国の利益に影響を与える場合、必要な措置を確実に講じる」として対抗措置の実施を示唆。日本や欧州も発動回避を訴えている。実際に発動を決めれば、中国などが米国の措置を不服として世界貿易機関(WTO)に提訴したり、これとは別に農産物など米国産品の輸入手続きを滞らせたりして事実上の対抗策に出る可能性がある。米中両国を中心に互いに貿易を制限し合う「貿易戦争」に発展する恐れも出てきた。

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