「非常事態宣言」のフジテレビ編成部長が4月改編会見で再度口にした剥き出しの危機感「変えなければ生き残れない」
フジテレビの番組編成をつかさどる編成部長の口から半年ぶりに危機感たっぷりの言葉が飛び出した。
5日、東京・台場のヒルトン東京お台場で開かれたフジテレビの4月の番組改編発表会見。宮内正喜社長(73)が2月の定例会見で「4月改編が最重要な改編となります」と予告した通り、21年続いた「とんねるずのみなさんのおかげでした」、22年続いた「めちゃ×2イケてる」などの看板バラエティ番組が3月いっぱいで軒並み終了。
この日、「みなおか」の後番組として坂上忍(50)の同局系ゴールデン初のMC番組「直撃!シンソウ坂上」、「めちゃイケ」の後番組として体験型バラエティ「世界!極タウンに住んでみる」など、次々と新番組が発表された。
今回の改編率(番組が変わる率)は全日(午前6時~深夜0時)28・2%、ゴールデン(午後7時から10時)29・8%、プライム(午後7時~11時)29・5%と大規模そのもの。一足早く2日に改編会見を行ったTBSの改編率が全日4・31%、ゴールデン9・05%、プライム15・0%だったことと比較すると、フジの“変貌率”がいかに高いかがよく分かる。
今回の改編スローガンは「変わる、フジ 変える、テレビ」―。会場には4月15日に初防衛戦を控えたボクシングWBA世界ミドル級王者の村田諒太(32)がサプライズ登場。集まった記者の度肝を抜いた。ポスターやCMのキャンペーンキャラクターを務めることが、この日電撃発表された村田は「素人なんで(CM映像は)恥ずかしいです」と照れながらも「フジさんとともに頑張って行きたい」と気合を入れた。
村田登場の興奮の中、今回の改編の意図を説明した番組編成の責任者・立本洋之編成部長の言葉もまた熱かった。「フジは変わらなければ、変えなければ生き残れないという決意表明を、この場でさせていただきます」とまず一言。
「4月改編は歴史的バラエティーが終了するという、いろいろな意味で大きな改編になりました。全社、不退転の決意で今回の改編に臨んでいます。簡単に好転しないとは思いますが、良くなるきっかけ作りとして、1%どころか0・1%でも視聴率を上げていきたいと思います」と続けた。
どうだろう。「1%どころか0・1%でも視聴率を―」という言葉に込められた必死な決意。同部長は昨年9月4日に行われた10月クールの改編会見でも「今、フジは完全に非常事態です。今の非常時に置いて何をするかということです」と同クールの大規模改編の意図を説明。私も「編成部長から飛び出した『非常事態宣言』 フジテレビは変われるのか?」という見出しの元、記事を書いた。
あの発言から半年。「非常事態」から「変えなければ生き残れない」へ。フジの危機感はより増していると感じたので、そのまま聞いた。「(昨年10月クールの)『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』などヒット作もあったが、この半年間、全体に視聴率は低迷。社内の危機感は増しているのか?」―
立本部長は「前回、記事にしていただいて、実はいろいろな所で『非常事態男』と言われるようになったんですけど…」と笑わせ、場をなごませた後、真剣そのものの表情で続けた。「危機感に関しては、ずっと全社員が持っていると思います。今、危機感を増しているかというよりも、常にその意識を持って取り組んでいかないと、もうどうしようもないという所ではないかと思っています」―。
さらに「今回、今までのキャッチコピーとは趣の違うシンプルでストレートなものにしたのは、もう飾ったり四の五の言っていても仕方がないということ。外に向けての決意表明もあるけど、中(社内)に向けての『もう後はないんだよ、しっかり再認識しよう』という意味で、あまりにストレートですが、あえて普通の言葉にしたんです」。会見に同席した数多くの社員に向けてかのように厳しい言葉を口にした。
編成全体を取り仕切る石原隆編成統括局長にも会見後、話を聞いたが、こちらはもっと辛辣(しんらつ)だった。「変えることが目的ではない。変えた後が重要なんです」。
石原氏と言えば、三谷幸喜さんの「王様のレストラン」や「古畑任三郎」始め「HERO」「やまとなでしこ」など数々のヒットドラマを生み出した元名プロデユーサー。「楽しくなければテレビじゃない」をキャッチコピーにしたフジの視聴率三冠王時代も肌身で知るヒットメイカーは今、危機感たっぷり。編成の最高責任者として会見にサプライズ登場した村田になぞらえ、「我々はチャンピオンどころか挑戦者。戦うしかないんです」と言った。
そんな石原局長が唯一こぼしたのが、バラエティへの視聴者、制作者双方の“見切りの早さ”。「昔のウチの(大ヒットバラエティ)『なるほどザ・ワールド』にしろ、『オレたちひょうきん族』にしろ、オバケ番組になったのは開始後1年が経過したくらいからでした。『料理の鉄人』も放送曜日を変えてからブレイクした。今はスタートの舵取り次第で勝負がついてしまったりする」とポツリ。
ただ、フジが優秀な制作陣を抱えているのはまた確か。石原局長は「バラエティは始まった時にいかにセンシティブ(敏感)なアンテナを立て、開始後に大事にメンテナンスするかが勝負。そこに作り手のセンスが現れるし、今のフジの若手にはそうした力のある者が大勢います」大柄な体できっぱりと言い切った。
この日、編成トップがそろって口にした「歴史的改編」を断行したフジテレビ。どの番組が移り気な視聴者の心をガッチリつかむのか。答えはもうすぐ出る。(記者コラム・中村 健吾)
