「爆学ブーム」に期待 「中国人ビジネスマン」向けツアーが盛況
訪日外国人客が増加する中、海外のビジネスマンが日本を訪れ、企業経営を学ぼうというニーズが高まっている。「ゴールデンブリッジ」社長の楊金峰さんは2014年以降、こうした新たなニーズを取り込もうと、中国人ビジネスマン向けに日本企業の施設見学や経営者との交流会などをプロデュースする事業を始めた。中国人ビジネスマンにとっては学びの機会となる一方、日本企業にとっても自社をPRできる場となることから盛況といい、「今後やってくるだろう“爆学ブーム”に乗りたい」と期待を寄せている。
◆中国人を対象に交流
楊さんは中国の大学で日本語を専攻し、現地の翻訳会社で勤務後の1993年に来日した。宮城県庁の嘱託職員を経て、フリーランスで通訳や翻訳の仕事を始め、2002年に家族の都合で移り住んだ大阪市内でゴールデンブリッジを立ち上げた。
当初は企業やイベントのパンフレットを中国語に翻訳する業務がメインだったが、関西経済連合会などの経済団体の会合で通訳を任されるようになると、次第に事業領域を拡大。中国人客らによる「爆買い」ブームの最中にあった14年からは、日本を訪れた中国人ビジネスマンと日本人ビジネスマンを引き合わせ、交流を深めてもらう「インバウンド事業」を始めた。
折しも経済発展著しい中国のビジネスマンの間では、米国や日本、ドイツの企業の経営手法を学ぼうというニーズが高まっていた。そこで、楊さんが注目したのが、日本に多く残る長寿企業と、高い技術力を支える匠の精神。「伝統や社会への貢献を重んじ、社員同士が家族のように接する日本独特のビジネス観は、中国人の目には新鮮に映るはずだ」と直感したという。
中国の経営コンサルティング会社やビジネススクールからの依頼を受け、関西にある企業の施設見学を斡旋(あっせん)する形で事業をスタート。それまでに培った人脈を駆使し、創業1000年以上の歴史を持つ京都の老舗和菓子店「一文字和助」への訪問や、「アメーバ経営」と呼ばれる経営手法が有名な京セラの施設見学、無印良品の元社長との座談会を実現させた。
◆チャンスさらに拡大
さらに、16年には旅行業登録を取得して観光業に参入し、観光地や名所旧跡を巡る従来のツアーとは一線を画したビジネスマン向けのツアーを企画。昨年は20団体、約400人の中国人ビジネスマンを日本に受け入れ、インバウンド事業を年間売上高約2億円の半分を占めるまでに成長させた。
日本政府は現在、訪日中国人客らによる「爆買い」が沈静化した現状を踏まえ、体験や思い出作りといった「コト消費」を促す観光資源の掘り起こしを急いでいる。楊さん自身も「交流ビジネスはまさにコト消費。今後、ビジネスチャンスはさらに広がるはずだ」とみており、新たな企画を打ち出す方針だ。
ツアーに参加した中国人ビジネスマンから、「日本人から多くのことを学んだ」と言われることが何よりうれしいという楊さん。「これからも日本企業の魅力を中国に発信していくことで、ビジネス分野での日中交流の架け橋になりたい」と前を見据えている。
