中国人留学生殺人事件の裁判員裁判に中国メディアが殺到する異例の事態

中国:留学生殺人で東京地裁に傍聴殺到 司法違い感情論も

 東京で昨年11月に起きた中国人留学生殺人事件の裁判員裁判に中国メディアが殺到する異例の事態が起きている。東京地裁で開かれた20日の判決公判には35席の傍聴券を求めて中国メディアや中国人留学生ら294人が列を作った。一人娘を失った被害者の母親に対し、インターネット上で「一人っ子」世代の若者らの同情が集まったためだ。司法の独立など日本の法制度との違いから感情論も目立ち、国営メディアが沈静化に動いている。

 20日の判決は中国メディアがネットで速報し、中国から派遣された記者が地裁前から生中継で解説するなど大きく報道された。事件は東京都中野区のアパートで昨年11月、大学院生の江歌さん(当時24歳)を殺害したなどとして中国籍の陳世峰被告(26)を起訴。家令和典裁判長は、懲役20年(求刑同20年)の判決を言い渡した。江さんは陳被告の元交際相手の女性と同居しており、2人のトラブルに巻き込まれた。

 ネットニュース「梨視頻」日本編集部の周文晶編集長によると、11日の初公判で生配信した地裁前からのリポートは約1500万人が視聴したという。

 江さんの母親は死刑を求めて、東京の街頭やネットでの署名活動で450万筆以上を集めた。池袋などで署名活動に加わった上海出身の女子留学生(23)は「一人っ子政策が長く続いた中国は子どもが1人だけという家庭が多い。自分の親と重なり、かわいそうになった」と話した。

 王雲海・一橋大大学院教授(刑事法)は多くの中国メディアから「死刑判決を求める中国の民意がなぜ無視されるのか」と繰り返し尋ねられた。中国では「司法の独立は西側の誤った思想」(周強・最高人民法院院長)とされ、社会的に注目される事件では治安を重視する共産党の意向は無視できない。「『人民の意思』の名目で厳罰が科されることは珍しくない」という。

 死刑を求める世論が過熱気味なことから、中国共産党機関紙・人民日報も「素朴な正義感に価値はあるが、限界もある」と沈静化に乗り出した。

 中国人の海外留学生は2015年度で126万人、世界各国の留学生総数の4分の1を占める。海外で事件に巻き込まれる件数も多い。日本留学経験のある中国メディア記者は「外国との法制度の違いを読者に理解してもらう必要性は高まっているが、海外の情報を得にくい現状では容易ではない」と話した。【上海・林哲平、武内彩】

「遺族が哀れで仕方ない」

 東京地裁で20日開かれた判決公判。殺害された江歌さんの母親も傍聴した。法廷で検察官の後ろに座り、鋭いまなざしを陳世峰被告に向けながら、日本語と中国語の逐語訳で読み上げられる約40分間の判決文に耳を傾けた。

 初公判以降、陳被告が法廷で土下座してわびたり、被害者の母親が声を荒らげ抗議したりと、中国ではよく見られる法廷模様が繰り広げられた。ただし、ここは静粛が求められる日本の法廷。この日の公判では、家令和典裁判長が判決の冒頭、「判決宣告は厳粛なものなので、妨げになる言動は慎んでください」と傍聴席に呼びかけた。

 判決公判を傍聴した、生前の被害者を知る中国人女性(26)は「全く落ち度のない被害者が無残にも命を奪われたのに、日本で極刑が望めないのは遺族が哀れで仕方ない。公判中にまったく反省の色を見せない被告人の様子にも怒りが募り、これだけ多くの中国人が注目する結果となった」と憤りをみせた。【田中韻】

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