セイコー、シチズン、カシオの3社がつばぜり合い「同門対決」にも注目、国内腕時計、驚きのエプソン参入

国内腕時計、驚きのエプソン参入…その狙いは? セイコーと「同門対決」にも注目

 セイコー、シチズン、カシオの3社がつばぜり合いをしてきた国内腕時計メーカーのなかに今秋、“新興勢力”が現れた。海外の高級腕時計に対し、国内メーカーは先端技術を生かした高機能腕時計で存在感を示してきたが、そこに割って入ってきたのが、セイコーエプソンだ。新腕時計ブランド「TRUME(トゥルーム)」を引っさげ、年末商戦で台風の目となれるか注目が集まっている。

 トゥルームは9月、6機種(メーカー小売り希望価格25万9200円と30万2400円)を発売し、12月には革バンドタイプの2機種(同25万9200円)を投入する。GPS(衛星利用測位システム)による時刻調整、ソーラー電池などを備えた高機能腕時計だ。セイコーホールディングスとゆかりが深いエプソンが発売するとあって、発表当初から「同門対決」と話題となっていた。

 プリンター大手として知られるエプソンだが、その前身は昭和17年、セイコーの腕時計部品を製造する会社として始まった。現在もセイコーの主力商品に大きくかかわる部品や製品の生産を続けている。ぜんまいで発電し、第3の駆動機構と呼ばれる「スプリングドライブ」、GPSソーラー腕時計「アストロン」を手がける「二人三脚」(広報担当者)の関係だ。それだけに、エプソンの参入は驚きだった。

 平成28年の腕時計完成品の総出荷額は2606億円と、外国人旅行者の「爆買い」が一服し、前年が新製品ラッシュだった反動から27年と比べ9%減だったが、4年前からは800億円近く増やしている。近年、各メーカーがGPS機能を盛り込むなど高機能化で販売単価が20万円台に上がり、出荷数量の増加は緩やかながら、出荷額を大きく伸ばす傾向が続いていた。

 トゥルームは、市場の牽引(けんいん)役となっていた高機能腕時計のシェアをねらった商品になる。エプソンは腕時計事業を強化する動きを続けており、その一つが、子会社の老舗時計メーカー、オリエント時計の統合だ。オリエントは明治34年創業のメーカーを起源に持つ。機械式では、ぜんまいの巻き具合を示す「パワーリザーブ」、ぜんまいの動きが表から見える「オープンハート」を取り入れるなど確かな技術力で一目置かれる存在だった。そんなオリエントを本社に組み込み、祖業である腕時計事業に回帰する本気度をうかがわせた。

 実は、トゥルームは単純な時計機能だけではない。本体単体で、高度や方位の計測できる。さらに、エクスパンデッド(拡張)センサーが付属する機種ならば、紫外線や気温、歩数などもアナログ針で表示することができる。平成24年から心拍計測やGPSによる距離測定などができるスポーツ向けのデジタル時計を展開しており、多機能ぶりを誇るトゥルームは、その進化形の一つとも言える。エプソンが持つ技術の粋が詰め込まれ、碓井稔社長は「エプソンにしか作れない、エプソンならではの腕時計がある」と自信をみせる。

 発売の出足は「計画通り」(広報担当者)というが、店頭では認知度が低く「指名買い」は少ない状況のようだ。ただ、取り扱う大手家電量販店、ヨドバシカメラの仕入れ担当者は「商品の魅力は非常にあるので、これからの訴求次第」と期待を寄せる。腕時計界の新星となれるか、真価が試される年末となりそうだ。

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