1億個売れた新型洗剤「精神的な時短」がヒットの鍵、成功のポイントが「時間の短縮」ではない

1億個売れた新型洗剤 「精神的な時短」がヒットの鍵

 世の中にあふれている「時短」をうたう製品の中で、ヒットした商品を分析していくと、成功のポイントが「時間の短縮」ではないことが見えてくる。3回にわたり人気時短製品が生まれた背景を見ていく特集。朝専用シートマスク「サボリーノ 目ざまシート」に続いて取り上げるのは、発売3年間で約1億個以上を売り上げたジェルボール型洗剤。ヒットの秘密は、作業時間の短縮ではなく、多くの人たちが感じていた面倒な作業を解消した点にあった。

■時短という言葉の裏に隠れたニーズ

 「時短できる洗剤」としてヒットした例で記憶に新しいのは、P&Gのジェルボール型洗剤だ。指でつまんで直接洗濯機の中に入れるだけなので、計量が不要。2014年に発売し、3年間で約1億個以上を売り上げた。しかし、よく考えてみると、液体洗剤の計量にかかるのは短く、それほど時短効果があるとは思えない。実はこの商品がヒットした要因は、時短という言葉の裏に隠れたニーズをとらえたことにあった。 

 「計量すること自体が手間だと感じている人は多い。液体洗剤の詰め替えが面倒と話す人もいる。洗剤を投入するときや詰め替えるときにこぼしてしまったら拭く手間もかかる」とプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン アジアファブリックケアの木葉慎介本部長は話す。つまり、洗濯のプロセスから「計量」という行為自体をなくして効率化し、洗濯をスマートに行いたいというニーズがあったのだ。

■毎日洗濯しない人が増えている

 さらに同社は17年9月上旬に黄ばみや黒ずみを落とす機能を強化した「アリエール ジェルボール3D(以下、ジェルボール 3D)」を発売した。ヒット商品を終売して新商品を投入した理由を、ジェルボール3Dを開発したP&Gイノベーション合同会社研究開発室の大武秀稔氏は「ここ数年の洗濯環境の変化に合わせた」と説明する。 

 「ここ5年間で、毎日洗濯せずにある程度たまってから洗う人が増えた。洗濯にも効率化を求める人が増えてきたように感じる」(大武氏)。そこで同社は時間がたって落としにくくなった汚れに着目。黄ばみや黒ずみを同社従来品よりも落とすとうたった商品を開発したことで「これまで自分で予洗いやつけおき洗いをしていた人に支持してもらえるのではないか」と大武氏は話す。これも洗濯の効率化というニーズへの対応といえるだろう。

■家事に求める「精神的な時短」とは?

 先ほどの例によって、家事における時短ニーズは単なる時間短縮ではなく効率化やスマートさにあることが分かった。
 さらに、ライオン リビングケア事業部の鈴木彩子ブランドマネージャーは「ユーザーが家事に求めるのは『精神的な時短』。作業時間を短くすればいいというわけではなく、スムーズにストレスなく家事ができることが重要」と話す。同社が17年9月に発売した「CHARMY Magica速乾+(以下、Magica 速乾プラス)」は、食器洗い用洗剤にすすいだ後の食器を素早く乾かす成分を配合。「食器洗いの時短」をうたっている。 

 同社が食器を手洗いする人について調査したところ、食器を洗ってからふきんで拭く人は全体の54%で、水切りかごなどで自然乾燥させるのではなく、乾かして食器棚にしまうところまでを手早く進めたいと考えている人が多いことが分かった。同時に食器を拭く行為そのものやぬれたふきんの手入れがストレスと話す人も多いことを実感し、速乾タイプの洗剤を開発したという。 

 「Magica 速乾プラスをモニターに使ってもらったところ、『今まで3枚使っていたふきんが1枚で済むようになった』『コーヒーを1杯飲む余裕ができた』という声が挙がった。食器を拭くかどうかには年代によって差はなく、キッチンをきれいに整えたいという意識が高い人が多いように感じる」と鈴木ブランドマネージャーは話す。 

 ロボット掃除機などの便利な家電の登場により、昔と比べて「時短」できているように見える今どきの家事事情。だが、日常に不可欠な行為に時短を求める人にとって、単に作業時間を短縮することだけでなく手間を軽減することが重要なのだ。

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