ワゴン車が大型トラックに追突され、「ライト点滅、止まれだと理解」東名の夫婦死亡事故

「ライト点滅、止まれだと理解」 東名の夫婦死亡事故

 神奈川県大井町の東名高速で6月5日夜、ワゴン車が大型トラックに追突され、夫婦が死亡し娘2人がけがをした事故で、一家のワゴン車の進路をふさいで停車させ、事故を引き起こしたとして逮捕された男が、逮捕前の任意の調べに「後ろからライトを点滅されたので、止まれということだと理解して止まった」と容疑を否認していたことが捜査関係者への取材でわかった。

 県警に自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)などの疑いで逮捕されたのは、福岡県中間市の建設作業員石橋和歩容疑者(25)。静岡市清水区の車整備業萩山嘉久さん(当時45)一家のワゴン車に後方から極端に接近したうえ、前に割り込んで減速し、車線変更をしても同様の妨害を繰り返した末、追い越し車線上に停車させたという。手前の休憩所で通行を妨げるように駐車していたのを嘉久さんから注意されたのが発端だった。

 石橋容疑者は県警の任意の聴取に、「注意されて頭にきて追いかけたが、速い速度ではない」と説明。嘉久さん側から促されて停車しただけ、との趣旨を述べていたという。逮捕後は容疑を認めているという。

 県警は、亡くなった嘉久さん、友香さん(当時39)夫婦の娘の聴取に加え、現場付近を当時走行していた車を洗い出し、運転者らへの聞き取りを通じて、「ライトが左右に何度も動くのをミラー越しに見た」との証言を得た。県警は、妨害行為があったことを裏付けるものとみている。

1カ月前も3台に走行妨害 東名夫婦死亡事故の容疑者

 神奈川県大井町の東名高速で6月、ワゴン車が大型トラックに追突され夫婦が死亡、娘2人がけがをした事故で、一家のワゴン車の進路をふさいで停車させ、追突事故を引き起こしたとして逮捕された男が、事故の1カ月前にも山口県下関市の一般道で、3台の車に同様の妨害行為をしていたことが、捜査関係者への取材でわかった。短期間に繰り返された点を県警は重視し、詳しく調べている。

 神奈川県警に自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)などの疑いで逮捕されたのは、福岡県中間市の建設作業員石橋和歩容疑者(25)。6月5日夜、静岡市清水区の車整備業萩山嘉久さん(当時45)一家のワゴン車の進路をふさいで下り車線に停止させ、後方から来たトラックの追突事故を引き起こした疑いがある。嘉久さんと妻友香さん(当時39)が亡くなり、高校1年と小学6年の姉妹もけがを負った。

 石橋容疑者は約1・4キロの間、後方から極端に接近し、前に割り込んで減速するなどの妨害を繰り返していた。手前の休憩所で通行を妨げるように駐車していたのを嘉久さんから注意され、腹を立てたという。

 捜査関係者によると、事故の1カ月近く前の5月8日夜、石橋容疑者は下関市の一般道で運転中、時速約10キロまで急に減速。追い越した車にクラクションを鳴らすなどし、進路をふさいで停車させ、窓をたたいたという。

 翌9日未明には、ゆっくり走行している際に追い越そうとした車の進路を2回妨害して停止させ、運転席のドアを3回蹴った。同日早朝にも、追い越そうとした車の方へ自分の車を寄せて衝突。手前の信号で青に変わっても10秒ほど発車せず、その後も遅めの速度で走行していたという。

 県警は、いずれも石橋容疑者がきっかけをつくって追い越しを誘った可能性もあるとみて、6月の事故と共通点がないか解明を進めている。

東名夫婦死亡事故、1.4キロ走行を妨害か 男を逮捕

神奈川県大井町の東名高速で6月、ワゴン車が大型トラックに追突され夫婦が死亡し、娘2人がけがをした事故で、県警は10日、一家のワゴン車の進路をふさいで停止させ、追突事故を引き起こしたなどとして、福岡県中間市の建設作業員石橋和歩容疑者(25)を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)と暴行の疑いで逮捕し、発表した。調べに対し、石橋容疑者は容疑を認めているという。

 県警によると、石橋容疑者は6月5日午後9時35分ごろ、静岡市清水区の車整備業萩山嘉久さん(当時45)一家のワゴン車の進路をふさぎ、下り線の3車線のうち最も中央分離帯寄りの車線に停車させ、後方から来たトラックの追突事故を引き起こした疑いがある。嘉久さんと運転していた妻友香さん(当時39)が死亡、高校1年と小学6年の姉妹もけがをした。

 捜査関係者などによると、手前の中井パーキングエリアで、ワゴン車の進路をふさぐように駐車していた石橋容疑者を嘉久さんが注意した。怒った石橋容疑者はワゴン車を追い、極端に接近して走行。さらに前方に割り込んで速度を落とし、ワゴン車が車線変更をしても同様に妨害する行為を約1・4キロの間繰り返した末、停車させたという。

 その後、車を降りて嘉久さんの腕や胸ぐらをつかむ暴行を加えた疑いもある。その直後にトラックが突っ込み、ワゴン車は中央分離帯に激突したという。

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“あおり運転”など摘発3632件、今年上半期

“あおり運転”など適切な車間距離をとらなかったことで摘発されたケースが、今年上半期、全国で3600件あまりにのぼったことがわかりました。

 今年6月、神奈川県の東名高速で追い越し車線に止めさせられた夫婦が死亡した事故で、過失運転致死傷などの疑いで逮捕された石橋和歩容疑者(25)は、事故の直前に夫婦の車に極端に接近するなど“あおり運転”をしていた疑いが持たれています。

 警察庁によりますと、こうした“あおり運転”など適切な車間距離をとらずに摘発された件数は、今年1月から6月までに全国で3632件にのぼったということです。また、適切な車間距離をとらなかったことが原因で起きた事故は今年上半期で837件と、去年の同じ時期と比べて大幅に増えたということです。

 警察庁は、「あおられるなどした場合は、安全な場所に退避して110番してほしい」としています。

危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪を分ける「法律の壁」

東名高速道路で運転妨害を繰り返したうえに、追い越し車線に車を停車させ、追突事故を引き起こし夫婦の人命を奪った事件。逮捕された石橋和歩容疑者(25才)。その逮捕容疑は「過失運転致死傷罪」だ。

 同罪は「7年以下の懲役または禁錮もしくは100万円以下の罰金」と定められている。これは通常の人身事故と変わらない刑罰で、罰金刑で済む可能性すらある。交通事故に詳しい東京永田町法律事務所の加藤寛久弁護士が解説する。

「交通事故には、最高20年の有期刑を科す『危険運転致死傷罪』があります。ただし、これを適用するには、運転手の行為が酩酊運転、高速度運転、未熟運転、妨害運転等に該当しなければならない」

 一見すると石橋容疑者の行動は「妨害運転」に該当しそうだが、司直の見解は異なる。

「危険運転致死傷罪が成立するのは、先の危険運転で“人を死傷させた”ケースです。今回の事故でいえば、石橋容疑者が妨害運転をしたと認定されても、彼自身が死傷させたと判断できるかどうか。ここに法的な難しさがあるんです。今後の捜査次第で危険運転致死傷罪に該当すると判断できる可能性もあるが、現時点では難しい。このため、警察は刑の軽い『過失運転致死傷罪』で逮捕したのだと思います」(加藤弁護士)

 石橋容疑者が危険運転致死傷罪での逮捕ではなかったことについて、「事故のきっかけを作っておいて、なぜ?」と疑問が噴出している。『バイキング』(フジテレビ系)でも、坂上忍(50才)が「法の矛盾を痛感する」と憤り、山本譲二(67才)も「殺人だと思う」と断言した。

 過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪を分ける「法律の壁」は、これまで何度も議論となってきた。

 2000年4月、神奈川県座間市で検問から猛スピードで逃走した車が歩道に突っ込み、通行中の大学生2人を即死させる「小池大橋飲酒運転事故」が発生した。運転手は飲酒していた上、無免許だったにもかかわらず、判決は業務上過失致死罪で懲役5年6か月。

 これに対し、遺族の母親が、「人を殺めながら窃盗罪(10年以下の懲役)より軽い罪なのはおかしい」と法改正を求める署名を始めた。

 前年(1999年)には一家4人が乗る乗用車に飲酒運転の12トントラックが追突し、女児2人が死亡する「東名高速飲酒運転事故」が起きており、相次ぐ悪質な事故とそれに見合わぬ刑罰に国民の不満が爆発。遺族は37万人超の署名を集め、2001年11月、危険運転致死傷罪が成立した。

 以降、悪質な交通事故が同法で裁かれるケースは確かに増えた。2006年8月、福岡県福岡市の「海の中道大橋」で、会社員の乗用車が飲酒運転の車に追突されて博多湾に転落。同乗していた3人の子供が亡くなる事故が起きた。当時22才の運転手に同法が適用され、最高裁で懲役20年の刑が確定している。

東名死亡事故石橋容疑者 女性と一緒だと態度がひどくなる

 今年6月に東名高速道路で妨害行為をしたうえに、追い越し車線に被害者の車を無理やり停車させ、追突事故を起こさせたとして、神奈川県警は10月11日、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで石橋和歩容疑者(25才)を逮捕した。

 この事故で亡くなったのは、萩山嘉久さん(享年45)。幼い頃から車好きだった嘉久さんは、自動車メーカーに10年間勤めた後、自動車整備会社を設立。27才の時、仕事で出会った妻・友香さん(享年39)と結婚し、2人の子宝にも恵まれた。嘉久さんの母・萩山文子さん(77才)は語る。

「夫婦仲がとてもよくて、一緒にいるときはいつもくっついていました。ふたりとも娘を溺愛していてね。休日はいつも家族で旅行していた。事故の1か月前にもディズニーランドに遊びに行っていました。嘉久は仕事がどんなに忙しくても運動会などの学校行事には必ず参加していたし、子煩悩な父親でした。私は女の子がいなかったから、友香ちゃんは実の娘のような存在だった。向こうも私のことを『マミイ』って呼んでくれて…。私は彼女に文句を一度も言ったことがなく、けんかをしたこともありません。本当に自慢のお嫁さんでした」(文子さん)

 娘たちにとっても自慢のパパとママだった。

「2人とも両親が大好きで、『パパとママを世界でいちばん尊敬している』と言っていました。よく『パパ、お仕事頑張ってね』というお手紙を書いていて、嘉久はその手紙を読み返しては、日々の仕事の活力にしていた」(文子さん)

 絵に描いたように幸せな家庭だった嘉久さん一家。それを一瞬で絶望のどん底に突き落とした石橋容疑者は、どんな人物だったのか。彼の素顔を探るべく、本誌は福岡県中間市に飛んだ。かつて筑豊炭田の一角として栄えたこの町で石橋容疑者は暮らしていた。

◆小学校卒業アルバムには無気力な言葉の数々

 自宅は築30年の木造アパート。1LDKで家賃は3万3000円。「石橋」と書かれた集合ポストは、花柄のシールで飾られている。石橋容疑者の知人が語る。

「和歩は男ばかりの3人兄弟の真ん中で、小さなころからガタイは大きかったけど、大人しい子やったけ。とにかく全然しゃべらんち。教室でも1人でぼーっとしとることが多かった。この辺りは中高でグレる子も多いんやけど、彼は髪も染めず、近所の学校に通っていた」

 小学校時代の卒業アルバムには、あどけない彼の姿が収められている。「おれ」と題した卒業文集にはこんな言葉が綴られていた。

《図工の時間、どうやっていいのかわからなかったので、なんにもしませんでした》
《6年生になってぼくはしゃべるようになりました。やすみじかんには、みんなといっしょにドッジボールもしています》

 続く自己紹介スペースに並ぶのは、無気力な言葉の数々。

《好きな授ぎょう ありません》
《あこがれの人 いません》
《しょうらいの夢 ありません》

 静かな人生が変化したのは、高校2年生の時。両親が離婚し、前後して石橋容疑者は学校を中退してしまったという。

◆怒鳴り散らし、小銭を投げつけてくる

「兄と弟は父親に引き取られて、和歩だけがこのアパートで母親と暮らすことになってな。母親は無職で、生活費はすべて和歩が出していたけん。2年前から建設会社で働き始めたんやけど彼女と同居するようになって無断欠勤が多くなった。その最中にあの事故を起こして入院したっち、会社はクビになったと聞いちょる」(前出・石橋容疑者の知人)

 報道で事故を知った知人の中には、直接石橋容疑者を問いただした人間もいた。

「『お前はなんてことをしたんや!』って怒ったんよ。そしたら彼は、『悪かったと思っとる』と言っとった。『向こうから絡んできたんや。思わずカッとなった』と弁明の言葉もあったち。うちら普段のあいつを知っとるけ、想像つかん部分もあるっち。近所の子供が熱出た時に車だしてくれたり、出張いうたら駅まで送ってくれたり。運転すると豹変する男もおるけど、和歩は違うち。いつも安全運転やったけ、同乗してた女にかっこつけようとしたんと違うか」

 この言葉を裏付けるのが、近所のコンビニ店員の証言だ。

「1人で来ると普通なのに、女と一緒やとひどい態度なんよ。やたらイキっとお、『なんでレジそんな遅いんか!』いうて怒鳴り散らして、小銭投げつけてくるち。いつも女があおるけん。もう殴るぞと思ったこと何回もあるち」

 友人らは“安全運転”だったと証言したが、この半年、石橋容疑者は常習的に走行妨害をしていた。

 事故1か月前の5月8日、車を運転中に突如減速し、追い抜いた車を追跡して停車させ、窓ガラスを殴打。直後にも走行妨害で別の車を止めさせ、運転席のドアを蹴っていた事実が報じられている。

「5月9日には、追い越そうとした車に自分の車を寄せて接触し、自動車運転処罰法違反容疑で書類送検されています。この時は起訴猶予処分でした」(地方紙記者)

 本誌・女性セブンは石橋容疑者の母親に話を聞こうと自宅アパートを訪れたが、終日留守。

「息子の逮捕後は逃げるように家出て行ったけ、今は誰もおらんち」(近隣住人)

 離婚した父親の住む実家も訪ねたが、取材に応じることはなかった。もし証言通り、同乗した女性の前でかっこつけるために起こした行動だったとしたら、あまりにも身勝手すぎる。

高速道路の事故防止、警察庁「緊急時の3原則」改めて呼びかけ

 高速道路での事故を防ぐため、警察庁は緊急時に停車した後は車内に残らないことなど、「緊急時の3原則」をホームページ上で改めて呼びかけました。

 今年6月、神奈川県の東名高速で夫婦が死亡した事故では、過失運転致死傷などの疑いで逮捕された石橋和歩容疑者(25)が夫婦の車の走行を妨害し、追い越し車線に止まらせた疑いが持たれています。

 この事件を受けて、警察庁は19日、高速道路で緊急事態に遭遇し、停車せざるを得なくなった場合、1.路上に立たない!、2.車内に残らない!、3.安全な場所に避難する!、という3原則を守るようホームページ上で改めて呼びかけました。警察庁は「高速道路では、路肩であっても停車するのは危険」としていて、3原則を守ったうえで、発煙筒や停止表示板を活用するようすすめています。

「悪質な暴走運転」で息子を亡くした遺族が、いま知ってほしいこと

なぜ「故意」ではなく「過失」なのか

 東名高速下り線でワゴン車が大型トラックに追突され、萩山嘉久さん(45)、友香さん(39)夫妻が死亡した事故。4か月たった10月、ワゴン車の進路を塞いで停止させ、追突事故を引き起こしたなどとして、福岡県の建設作業員・石橋和歩容疑者(25)が、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)などの疑いで逮捕された。

 夜の高速道路、しかも追い越し車線に無理やり車を停止させ、被害者の胸ぐらをつかむという悪質な行為……。この身勝手で通り魔的な犯行が、「故意」ではなく「過失」として処理されようとしている現実に、怒りを覚えた人は多いだろう。

 石橋容疑者はこの事故の1カ月前にも3台の車に対して、進路妨害、幅寄せ、接触、窓を叩くなどの行為を繰り返していた。また、日本テレビの報道(2017.10.16)によると、石橋容疑者の車に同乗したことのある知人女性(20)からは、「普段は普通の人なんですが……」と前置きしたうえで、以下のような驚くべき証言も出ている。

 「(石橋容疑者は運転時)座席を倒して足伸ばしてハンドル操作していた。足でハンドル操作したり、今回(の事故)とちょっと似てて、あおったり(前の車が)遅かったり、自分の思い通りにいかない時に、相手の車に向かって窓を開けたりして暴言はいたり、窓を開けて『なんなのお前』みたいな。

 『調子のんなよ』的なことは前にも言っていました。結構スピードも出していました。常にそういう運転しかしてなかったんで、それしか印象になかったです。いつかこういう事故・事件に遭うと想像していた」

ハロウィンの夜に、息子を失った

 「足で運転? テレビのニュースでこの話を聞いたとき、なぜ周囲の人たちがその時点で運転をやめさせることができなかったのか……、本当に悔しくてなりません」

 そう語るのは、愛知県名古屋市の眞野哲(さとし)さん(56)だ。

 6年前のハロウィンの夜、眞野さんは極めて悪質なドライバーに、当時大学生だった息子の命を奪われた。眞野さんは語る。

 「私も毎日のように仕事で車を運転します。絶対に事故を起こさないとは言いきれません。でも、これだけははっきり言えます。それは、私自身、 “足”で運転などしないということです。もちろん、飲酒運転や無免許運転も。こうした、運転をなめきった悪質ドライバーは、公道を走らせてはいけないのです」

 長年にわたって交通事故を取材してきた私に、眞野さんから送られてきたメールを初めて受け取ったときの驚きを、私は今も鮮明に記憶している。

 <初めまして、名古屋市に住む眞野哲と申します。昨年(2011年)の10月30日、自転車で横断歩行を走行中の長男・貴仁(19歳)が、飲酒、無免許、無車検、無保険、一方通行を無灯火で逆走していたブラジル人にひき逃げされ、亡くなりました。加害者は息子に衝突する直前、他の車と衝突事故を起こして逃走中に息子をはね、その後も、さらに民家に車をぶつけて逃げ続け、約1時間半後に逮捕されたのです>

 これを「事故」と呼んでよいのか……。あまりにも悪質なその内容に、何と返信してよいのか戸惑うほどだった。

 事故を起こしたM被告(当時47)は、ブラジルで生まれ、32歳のときに日本に入国。以降、派遣労働者として部品会社などを転々としていた。

 この夜はハロウィンということもあり、M被告は車を運転し、名古屋市中区のディスコへ出かけた。本人の供述によると、この店で友人数名とテキーラをショットグラスで6杯、ビールをジョッキで3杯くらい飲んだという。

 午前0時45分頃、ディスコを出て、近くの店を数軒のぞくなどしていたが、次は名古屋市内から少し離れた小牧市内のナイトバーへ行こうということになり、午前3時半頃、再び車を運転して走り始めた。

 前車に追突する事故を起こしたのは、その途中のことだった。

 飲酒していたこともあり、警察に捕まるのが怖くなったM被告は、車のライトを消し、速度を上げてとっさに逃走。そして午前3時49分、名古屋市北区清水の交差点にさしかかったとき、一方通行を逆走し、今度は自転車に乗って横断歩道を横断していた貴仁さんに衝突したのだ。

 しかし、M被告は倒れている貴仁さんを放置したままさらに走り、道路わきの民家に衝突する事故を起こして逃げたが、約1時間半後、逮捕された。

 衝突の衝撃で36メートル先まで飛ばされた貴仁さんは、全身を強く打ち、病院に運ばれたが脳挫傷で間もなく死亡した。

危険運転として立件できない歯がゆさ

 眞野さんは振り返る。

 「加害者は無免許でした。運転免許は母国でも一度も取得したことがなかったそうです。にもかかわらず、元妻名義の乗用車を事故の3年ほど前から日常の足とし、前年の6月にはすでに車検も自賠責保険も切れていたことを知りながら、保険料を払うお金も、車検を受けるお金もなかったため、そのまま乗り続けていたのです。もちろん、任意保険などかけているわけがありません。加害者が逮捕されたときの所持金は7千円。これが彼の全財産だったのです」

 日本の法律をあざ笑うかのようにすべてを無視し、ハンドルを握り続けていたこの加害者の悪質さは、私が過去に取材した数多くの事件の中でも、「最悪」といえるレベルのものだった。

 ところが、これほど悪質な事故でも、検察は「危険運転致死罪」(最高刑懲役20年)での立件を見送った。検察官はその理由を遺族である眞野さんにこう説明したという。

 「この事件には危険運転にあたる要件はひとつもない。検察官は私たちにそう言いました。無免許でも長い間乗っていれば技術がある。一方通行逆走は信号無視ではないので危険運転の構成要件は満たされない。飲酒に関しても、逮捕後、片足で立てたから飲酒の影響はなかったと言い切りました。外国人ということもあって、通訳を呼ぶために3時間以上もかかっており、各種検査はその後に行われていたのです……。どうしても納得できませんでした」(眞野さん)

 結果的に、「自動車運転過失致死罪」(最高懲役7年)で起訴されたM被告は、懲役7年の実刑判決を受けた。

音楽にのってジグザグ運転

 通常では考えられないような理不尽な事故は、全国各地で発生している。しかし、「危険運転致死傷罪」や「未必の故意」で立件されるケースは極めて稀だ。2010年12月26日、東京都大田区田園調布で起こった死傷事故も「事故」とは呼びたくないような、極めて悪質な行為が引きがねとなっていた。

 現場付近に住む加害者の男(当時20)は、車内でかけていたラップ音楽に合わせてクラクションを鳴らしながら幹線道路でジグザグ運転を繰り返し、途中で制御不能となって、ほぼ直角の状態で、歩道で信号待ちをしていた4人の歩行者に突っ込んだのだ。

 事故から約1時間半後、9歳の男の子が死亡。重体だった6歳の男の子も、4日後に亡くなった。そして、子供たちと一緒にいた祖父母も、脳内出血、腰や足、腕など全身を骨折する重傷を負い、約半年の入院を余儀なくされた。

 突然命を奪われた2人の子どもは仲のいい従兄弟同士。冬休みを利用して祖父母の家に遊びに来ており、ちょうど犬の散歩から帰宅する途中の出来事だった。

 加害者の男は、事故直後の取り調べに対して、

 「遊びで蛇行運転をし、友達を喜ばせようと思った」

 と供述。制限速度をはるかに超える時速95キロで走行していたこともあり、交通事故の中では最も重い「危険運転致死傷罪」(最高懲役20年)で起訴され、裁判員裁判が開かれた。

 しかし、その供述は大きく変化する。結果的に加害者は、

 「蛇行運転は覚えていない。時速は70キロ程度で、単なるハンドル操作のミスによる事故だった」

 と主張を翻したため、裁判の途中で「自動車運転過失致死傷罪」に訴因が変更され、事故から約1年後、懲役15年の求刑に対して懲役7年の判決が言い渡された。結果的に、「危険運転」ではなく、「過失」と判断されたのだ。

 この加害者もまた、死亡事故を起こす前からルールを無視した過激な運転がたびたび目撃されていたという。

悪質ドライバーを生まないために

 不幸な偶然が重なって起こる事故と、悪質なドライバーが起こすべくして起こしている事故とは、明らかにその質が異なっている。悪質なドライバーが引き起こす事故は、いずれも加害者に遵法精神と命を重んじる心さえ備わっていれば、決して起こらなかったものばかりだ。

 無免許で飲酒運転をしたブラジル人に息子をひき逃げされた眞野さんは、現在、同じ体験をした被害者遺族と共に『全国悪質運転ZEROの会』を立ち上げ、交通事故防止の活動に力を入れている。

 そのひとつが、悪質ドライバーによる違反行為の通報だ。眞野さんは語る。

 「私は仕事で車の助手席に乗ることが多いのですが、目前で信号無視や一時不停止、あおり運転など、明らかな違反行為をしている車両を見つけたら、できるかぎりその状況をアイフォンやアイパッドで撮影し、証拠の映像を添えて警察に通報しています。

 すぐに捜査をしてくれることはなくても、東名の事故のように、過去に何度も同様の行為を繰り返していることがわかれば、警察も聞き流すわけにはいかないと思うのです。悪質な運転を繰り返すドライバーは、事故を起こす前に摘発しなければ、悲惨な事故がまた起きてしまいます」

 眞野さんは、自身の体験をもとに、命の尊さや交通事故被害の現実を学校などで講演する活動も続けている。

 危険な運転は、いつかは重大事故を引き起こす。悲惨な事故で被害者を生む前に、非常識な悪質ドライバーをいかに減らしていくべきかを真剣に考えなければならない。総選挙が近づいているが、国会議員にはこうした交通事故問題にもぜひ真剣に取り組んでもらいたいと思う。

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東名夫婦死亡「ただの事故じゃない」遺族の言葉にハッと

 6月6日の朝日新聞夕刊はベタ記事で神奈川県大井町の東名高速で車4台が絡む事故があったと報じていた。ワゴン車が大型トラックに追突され、萩山嘉久さん(当時45)、友香さん(当時39)夫婦2人が死亡し、娘2人もけがを負った。この記事にはこんな一文がある。

 「事故当時、追い越し車線にワゴン車と乗用車が停止しており、萩山さん夫妻と乗用車の男女の計4人が車から降りていた」

 高速道路上に車2台が停止しているという異常な事態。「停止していた理由」は何か――。

 「追い回され、車線変更しても前に入られブレーキ。最終的に停車」

 事故直後、萩山さんの長女から真っ先に連絡を受けた嘉久さんの親友、田中克明さん(46)のタブレット端末にはこんなメモが残っていた。田中さんはとっさの判断で記録をとった。翌朝、駆けつけた病院で警察官に訴えた。「これはただの事故じゃない、犯人を捕まえてくれ」

 記者は9月中旬、嘉久さんの母・文子さん(77)の自宅を訪ねた。亡くなった2人の写真が並べられた仏壇前で、思い出をぽつりぽつりと口にする。小さい頃から車が好きで、念願の自動車修理工場を開いたばかりだったこと、事故の2日前、次女の小学校最後の運動会を家族で応援したこと――。目を潤ませながら語るその声は、外の雨音にかき消されそうだった。

 1年目の記者にとって、悲しみの癒えない文子さんの話はあまりに重く、気持ちが暗く沈んだ。うなずきながら耳を傾けるのが精いっぱいだった。

 最後に文子さんは言った。「ただの事故じゃないって、取材してくれてありがとう」。この言葉にハッとなった。伝えなければ「ただの事故」として見過ごされるのだと。

 10月になって一家のワゴン車の進路を妨害し、無理やり停車させて事故を引き起こしたとして、建設作業員の男(26)が逮捕された。「駐車の仕方を注意され、言い返してやろうと思った」

 この逮捕以降、「あおり運転」に社会的な注目が集まった。それに伴い、ドライブレコーダーを設置する人も増えた。カー用品大手「オートバックスセブン」(東京都)によると、神奈川県内では9月に約1200台だった販売数が、10月には約3500台、11月には約3700台と急増した。

 「これを機会に、無謀な行動をする人が減れば、うれしい」。男が起訴された後、萩山さんの高校1年の長女は、こうコメントを出した。社会全体の「目」が増えることで、危険な運転をする人が1人でも少なくなることを願ってやまない。(佐藤栞)

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「やめて」と制止も被告止まらず 同乗の女性証言 東名あおり事故公判

 神奈川県の東名高速であおり運転により停車させられた車がトラックに追突され夫婦が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた石橋和歩被告(26)=福岡県中間市=に対する裁判員裁判の第5回公判が7日、横浜地裁(深沢茂之裁判長)であり、被告の車に同乗していた元交際相手の女性への証人尋問があった。女性は「罪をつぐない、二度としないでほしい」と語った。

 死亡したのは静岡市清水区の萩山嘉久さん(当時45歳)と妻友香さん(同39歳)。検察側によると、被告は昨年6月5日夜、東名パーキングエリアで嘉久さんに注意され、夫婦や娘2人が乗る車を追跡。あおり運転で高速道路上に停車させ、そこに後続のトラックが衝突し、夫婦が死亡、娘2人もけがをした。

 同乗女性の証言によると、一家の車に向かっていく被告に、女性は「やめて、危ないから」と止めたが、反応はなかった。被告が嘉久さんにつかみかかると、子供の泣き声が聞こえた。女性が「子供がいるからやめて」と制止すると、暴行をやめた。証言を聞く中、被告はメガネを外し、目元をぬぐうような仕草をみせた。

 石橋被告は昨年10月に逮捕されたが、女性は「事故から逮捕までの数カ月間に(被告は)10回以上、交通トラブルを起こしていたと思う」と語った。【木下翔太郎、中村紬葵】

注意され「カチンときた」 東名あおり事故、被告人質問

 神奈川県大井町の東名高速で昨年6月、あおり運転で停止させられた車がトラックに追突され、萩山嘉久さん(当時45歳)と妻友香さん(同39歳)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた石橋和歩被告(26)=福岡県中間市=の裁判員裁判が5日、横浜地裁(深沢茂之裁判長)であり、被告人質問が始まった。石橋被告は弁護側の質問で「(萩山さんから注意され)とてもカチンときた」とあおり運転をした理由を語った。

 一方で石橋被告は「こういう事件を起こして申し訳ないことをしたと思う」などと謝罪の言葉を述べ、涙を拭ったり、はなをすすったりするような場面もあった。

 石橋被告はこの日、これまでの公判と同じく眼鏡をかけ、黒のジャージー姿で出廷。弁護側から萩山さん一家の車を追いかけた理由を問われ、「むかついて追いかけたと思う」などと述べた。目的を問われると沈黙し、「文句を言おうとしたのか」と問われると「思った」と短く答えた。また、車を追い越し車線に停車させた危険性については「その時は何も考えていなかった」と述べた。

 また、萩山さん夫婦や遺族への思いを問われると、はなをすすりつつ「本当にすいませんでした」と謝罪の言葉を述べた。

 被告弁護側はこれまでの公判のなかで、危険運転致死傷罪について「停車後の事故には適用できない」と無罪を主張。監禁致死傷罪は、現場に停車させた時間が短く拘束の度合いも薄いなどと適用に疑問を呈している。【木下翔太郎、杉山雄飛】

東名事故誘発 あおり公判 「パトカーにも幅寄せ」検察指摘

神奈川県内の東名高速で昨年6月にあおり運転で停車させられた車がトラックに追突されて夫婦が死亡した事故などで、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた石橋和歩被告(26)=福岡県中間市=に対する裁判員裁判の第4回公判が6日、横浜地裁(深沢茂之裁判長)であった。検察側は、被告が昨年5月、山口県内の中国道で、パトカーに対して幅寄せなどのあおり運転をしていたことを明らかにした。

 6日は東名の事故と別の3事件に関する審理があった。被告は昨年5月と8月、山口県を走行中に別の車をあおり運転で停止させ、運転手に降車するよう強要したとする2件の強要未遂罪、昨年5月に同県で別の車のドアを蹴ったとする器物損壊罪で起訴された。被告側は強要未遂罪について否認している。

 弁護側の被告人質問で、被告は昨年8月の事件は交通のトラブルが理由とし、「カチンときたが東名の事故の後なので我慢しようとした。しかしクラクションを鳴らされたので止めてやろうと思った」と説明。一方、降車を強要していないとして起訴内容を否認した。

 この事件で被害を受けたという男性の証人尋問もあった。男性は被告から「人を殴るために生きている」などと脅されたと述べた。【木下翔太郎、中村紬葵】

東名あおり2人死亡事故初公判  弁護側は無罪主張「停車後の事故、危険運転ではない」

神奈川県内の東名高速で昨年6月、あおり運転で停車させられた車がトラックに追突され、夫婦が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた石橋和歩被告(26)=福岡県中間市=の裁判員裁判の初公判が3日、横浜地裁(深沢茂之裁判長)であった。危険運転致死傷罪を巡り、停車後の事故に適用できず無罪とする弁護側と、被告の妨害運転は事故と因果関係があり危険運転に当たるとする検察側の主張が真っ向から対立した。判決は14日の予定。

 死亡したのは静岡市清水区の萩山嘉久さん(当時45歳)と妻友香さん(同39歳)。起訴状などによると、被告は昨年6月5日、高速のパーキングエリアで嘉久さんに駐車方法を注意された後、一家4人が乗った車を乗用車で追い、あおり運転で一家の車を追い越し車線上に停止させたところ、約2分後にトラックが追突。夫婦を死亡させ、同乗の娘2人にけがをさせたとされる。

 冒頭陳述で、検察側は被告の車の全地球測位システム(GPS)の解析などから作製した図を示し、被告の車が一家の車の前に割り込んで減速し、車間距離5メートル前後まで接近する妨害運転が4回あったと説明。一家の車を停車させた後、被告が「殺されたいか」などと言って嘉久さんの胸ぐらをつかみ、車外に引きずりだそうとしたことを明らかにした。

 検察側は、被告の妨害運転行為は、低速走行や道路上での停止が禁じられた高速道という特殊性を考えると、危険運転に該当すると指摘。高速道で停車させれば重大事故が生じる可能性は容易に想像できると述べ、被告の運転と事故には因果関係があると主張した。

 これに対し、弁護側は事実関係はおおむね認めた上、危険運転致死傷罪については、停車後の事故には適用できないとして無罪を主張し、暴行罪のみが成立すると述べた。

 検察側は予備的訴因に監禁致死傷罪を追加した。弁護側は、停車させた時間が約2分間と短いことなどから争う姿勢を示している。これに対し検察側は、同罪は監禁時間が数分間でも判例上成立すると指摘した。

【木下翔太郎、杉山雄飛】

東名あおり事故初公判 死亡夫婦の次女の供述「パパとママが死んでしまいました」

 「6月5日、パパとママが死んでしまいました」。石橋和歩被告(26)に対する裁判員裁判で、萩山嘉久さん夫婦の次女の供述調書が読み上げられた。次女(当時11歳)は「(両親に)帰ってきてと言っても無理なのはわかっている。逆ギレしてパパとママを死なせてしまうのはおかしい」と訴えた。

 調書の中で、次女は「うちの車にどんどん近づいてくる車が左側から来た」など、被告の車に追いかけられる状況を説明した。一家の車は高速道路上で停車させられた後、被告が近づいてきて、嘉久さんを車外に引きずり出そうとした。「ママは、やめてくださいと言っていた」。それから数分後。「ドカーンという音と衝撃を感じた。パパもママもいなくなっていた」

 被害者の家族らは、被害者参加制度で傍聴した。事故の瞬間のドライブレコーダーの画像が証拠として示されると、身を乗り出して画面を見つめた。一方、黒いジャージー姿で入廷した石橋被告は終始、無表情だった。

 閉廷後、嘉久さんの母文子さん(78)は記者会見し、被告側が危険運転致死傷罪は無罪と主張していることに「信じられない」と話した。公判で事故の詳細な状況説明を受け、「泣かないつもりだったが、泣いてしまった」と語った。

 石橋被告が正面にいた。「本当は顔も見たくないが、ずっとにらんでいた」と話す文子さん。今回の判決が厳しければ、あおり運転が減るかもしれない。「息子たちは命は落としてしまったが、裁判が良いきっかけになれば」と願った。【木下翔太郎】

東名あおり事故 遺族「なぜあの場所に停車させたか」

夫婦死亡で危険運転致死傷など 横浜地裁で12月3日初公判

 神奈川県大井町の東名高速で昨年6月、あおり運転で停車させられた車がトラックに追突され、萩山嘉久さん(当時45歳)と妻友香さん(同39歳)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた石橋和歩被告(26)の裁判員裁判が、12月3日から横浜地裁で始まる。初公判を前に、嘉久さんの母の文子さん(78)が胸中を語った。【木下翔太郎】

 静岡市清水区で自動車整備店を経営していた嘉久さんは、故障で立ち往生した車を無料で修理するような優しい性格だった。あの日、石橋被告に遭遇しなければ「今も好きな作業を(車の油で)真っ黒になってやっていたのに」と思う。

 事故時に着ていた嘉久さんの衣類が手元に戻った。事故の衝撃で靴下に穴があき、シャツには血がにじむ。だが「嘉久が戻ってきた気がして心が落ち着いた」と言う。しばらく玄関のそばに置き、外出の際に「行ってきます」と声をかけ、寂しさを紛らわせた。

 起訴状によると、石橋被告は昨年6月5日午後9時35分ごろ、下り線のパーキングエリアで嘉久さんから駐車方法を注意されて立腹し、一家4人が乗ったワゴン車を乗用車で追跡。進路に割り込んで減速するなどのあおり運転によってワゴン車の進路を塞いで中央分離帯そばの追い越し車線に無理やり停止させ、後続のトラックによる追突事故を引き起こした。その直前には、車を降り嘉久さんの胸ぐらをつかむなどの暴行を加えていたとされる。

 当時は高校1年と小学6年だった夫婦の娘2人も車内にいてけがをしたが、事故直前の状況を詳細に警察へ証言し、立件につながった。現在は友香さんの両親の元で暮らしている2人を、文子さんは「両親を亡くした悲しみを背負って生きていかないといけない」と思いやる。

 弁護側は、停車後の事故には危険運転致死傷罪を適用できないと主張する。だが、文子さんは「追い越し車線で停車させたら大変な事故が起きることくらいわかるはず」と憤る。

 事故後も各地であおり運転のトラブルが後を絶たず、被害者が亡くなるケースも起きている。文子さんは「危険運転が認められなければ、あおり運転をする人はなくならない」と考える。被害者参加制度を利用して公判に参加するつもりだ。「なぜあんな場所に停車させたのか」。被告が何を語るのかに注目している。

争点は「あおり運転に危険運転致死傷罪を適用できるか」

 公判では、石橋被告のあおり運転行為に危険運転致死傷罪を適用できるかが争点になる。神奈川県警は自動車運転処罰法の過失運転致死傷容疑で被告を逮捕したが、横浜地検は危険運転致死傷罪の構成要件である「通行妨害目的での著しい接近、重大な交通の危険を生じさせる速度での運転」にあたると判断し、同罪で起訴した。最高刑は過失運転致死傷罪が懲役7年、危険運転致死傷罪が懲役20年で、量刑の差は大きい。

 ただ、横浜地裁での公判前整理手続きで、地裁が危険運転致死傷罪の適用に疑問を示したとされる。地検は同罪が成立しない場合に備え、「追い越し車線上に停止させ、その場にとどめたことが事故につながった」として監禁致死傷罪を予備的訴因に追加した。

 これに対し、弁護側はあおり運転行為は認めた上で、停車後の事故に危険運転致死傷罪を適用できず、監禁致死傷罪も「停車させた時間が短く、監禁の認識があったか疑問」と主張。両罪については無罪であり、暴行罪が相当としている。

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