ラスベガス乱射で59人死亡・数百人負傷、米史上最悪
米ラスベガスの音楽フェスティバル会場で、現地時間の1日午後10時(日本時間2日午後2時)過ぎに銃乱射事件が発生、少なくとも59人が死亡し、525人以上がけがを負った。
近年の米国史上最悪の銃撃事件となった。
警察は、犯行に及んだのはネバダ州内の高齢者居住地区に住むスティーブン・パドック容疑者(64)と特定、単独で行ったとの見方を示した。
過激派組織「イスラム国」(IS)が関与を認めたが、米当局者らは犯行声明を裏付ける証拠はないとした。
米当局によると、同容疑者はマンダレイ・ベイホテルの32階の部屋から、来場者ら2万2000人に向けて数分間発砲した。
警察が部屋に突入する前、同容疑者は自殺した。郡保安官によると、部屋からライフル10丁以上や複数のマシンガンなどがみつかったという。
ISと関連のあるAMAQ通信は「ラスベガスの攻撃はISの兵士が実行した」とし、この人物は「数カ月前にイスラム教に改宗していた」としている。
一方、郡保安官は同容疑者の信仰は分かっていないと説明した。
米政府高官2人はロイターの取材に、同容疑者はテロリストと疑われる人物のデータベースで見つからなかったと指摘。当局者の1人は、精神的な問題の既往歴があったと信じる根拠があると語った。
トランプ大統領は「悪の権化による仕業」と非難した。4日にラスベガス入りし、被害者や家族、救助隊員らと会う考えを示した。
銃撃は9月29日─10月1日の3日間にわたって行われていた、カントリーミュージック・フェスティバル「Route 91 Harvest」最終日の夜に起きた。
<複数の銃>
パドック容疑者の弟であるエリック・パドック氏によると、容疑者は政治的、宗教的組織には所属しておらず、精神疾患の病歴もないという。父親は銀行強盗として米連邦捜査局(FBI)の「10大重要指名手配」リストに載せられていたこともあったもようだ。
エリック氏は容疑者について「裕福な男」だとし、ビデオポーカーや船旅が好きだったと話した。フロリダ州からネバダ州に引っ越した後、静かな生活に落ち着いていたと思っていたという。
ネバダ州は、米国で銃規制が最も寛容な州の1つであり、所有者はライセンスの取得や銃の登録が不要となっている。
容疑者が前週木曜から在室していたホテルのスイートルームからはライフル16丁、望遠鏡のほか、マシンガンに改良しようとしたと思われるものが見つかった。スーツケースも10個以上あった。
郡保安官によると、容疑者は「ハンマーのようなもの」で部屋の窓ガラスを割り、そこから発砲したという。容疑者の自動車からは、爆発物に利用される複合肥料の硝酸アンモニウムが発見された。
警察は、ラスベガスから約145キロメートル北東のネバダ州メスキートにある容疑者の自宅で、少なくとも18の銃火器、爆発物、大量の弾薬を発見した。
メスキートにある銃販売店店主は声明を発表し、パドック容疑者は「必要な身元調査や手続きをすべてクリアしていた」と説明。「不安定さや不健康さを感じさせることは一度もなかった」と述べた。
捜査当局は、容疑者のガールフレンドとされるマリルー・デーンリー氏を聴取する意向だ。郡保安官によると、同氏は東京に滞在しているとみられる。
ラスベガス乱射、民主党は銃規制強化を要求 共和党は規制に沈黙
米ラスベガスで1日に起きた銃乱射事件では死者が少なくとも59人に上り、米国史上最悪となったが、政治家の反応はこれまでの銃撃事件と変わっていない。民主党が銃規制の強化を訴える一方、共和党に規制強化を支持する動きは見られない。
共和党のライアン下院議長は2日、犠牲者を追悼し、祈りを捧げると表明。
共和党のマコネル上院院内総務は国を挙げた追悼を呼び掛けた。
これに対し、民主党からは祈るだけでは十分ではないとして、銃規制の強化を求める声が上がった。クリス・マーフィー上院議員は銃購入者の身元調査に関する新たな法案を提出する方針を表明。下院のペロシ院内総務は銃販売におけるチェックを強化する法案の可決を求めた。
ホワイトハウスのサンダース報道官は会見で、トランプ大統領が事件を受けて銃規制の強化を望む可能性はあるかと問われると「近日中に協議が可能な事柄だと考える」と回答。政権としては、今回のような事件の再発を止められない法律が作られることは望まないと述べた。
ラスベガス銃乱射 一目散に逃げたジェイソン・アルディーンに「臆病者」の声
米ラスベガスで発生した銃乱射事件から2日経った。死者は59人に増え、米メディアは個別の乱射事件としては「史上最悪」であると報じている。
現場となったのは、カントリーミュージックのイベント「ルート91ハーベスト・フェスティバル」。隣接するホテルの32階から銃弾が降り注いだその瞬間、ステージではカントリーの大物ジェイソン・アルディーンがステージに上がっていた。
アルディーンは事件の数時間後に「ラスベガスのために祈りを」と文字を入れた写真をInstagramに投稿し、「今日あったことは、恐怖などという言葉では言い表せない。何と言えばいいのかまだわからないが、俺とスタッフたちはみんな無事だということを伝えておきたい」とメッセージを発信した。
会場に居合わせた目撃者によると、アルディーンは銃声を聞くや否や、一言も発することなく舞台袖に逃げていったという。そんな彼を「臆病者」と断ずる声が上がっている。
「ジェイソン・アルディーンは、観客に『逃げろ』とさえも言わず、臆病者のように走り去っていった。本当にこの国を愛しているのか?」
「ジェイソン・アルディーンが何も言わないでステージから降りたなんて信じられない。彼が注意を促していれば、救われた命があったかもしれないのに」
一方で、銃声が鳴り響く中で平静を保っていられるはずがない、とアルディーンを擁護する人々も大勢いる。
「彼には妻子がいるんだ。しかたないだろう」
「臆病だって? 銃弾が飛んでくれば俺だって伏せるよ。彼は軍人じゃないんだ。ギターで銃弾を撃ち返していたらかっこよかっただろうけどね」
図らずも世界的な“時の人”となってしまったアルディーンのもとには、様々な言葉が届いたことだろう。これを受けてか、再び長文のメッセージをInstagram経由で送っている。
「この24時間、いろいろな感情が俺に押し寄せてきた。恐怖、怒り、痛み、同情心……。他人の命を奪おうとする人間の気持ちは、俺には到底わからない。この国、この世界では最近何かが変わった。それを目の当たりにするのは恐ろしいことだ。この世界は、子どもを安心して育てられない場所になってしまった。あの日、俺たちは民主党でも共和党でもなく、白人でも黒人でもなく、男でも女でもなかった。俺たちはみんな、人間なんだ。アメリカ人なんだ。そして今、一つになって立ち上がる時なんだ。それが、この国を今までよりも良くする唯一の道だ。(中略)このあまりにもひどい事件の犠牲者とその家族を思うと、本当に胸が痛む。あなたたちの苦しみを取り去る言葉を持ち合わせていないことが残念でならない。これだけは覚えておいてほしい。俺はあなたたちと共にある。一つになって、憎しみを捨てるときが来たんだ」