毎年百万円を投資に回せば、30年後に億万長者になれるかもしれない

毎年百万円を投資に回せば、30年後に億万長者になれるかもしれない その確率は30% 高いか低いか

そろそろ答えを出そう

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が去る7月7日公表した昨年度の業務概況書によると、2016年度の運用収益は2年ぶりに黒字に転換し、年度末の運用資産は過去最高を更新した。

 収益率は5.86%、収益額は7兆9363億円。資産別では国内株式が14.89%、外国株式は14.20%と2年ぶりのプラス。

 一方、国内債券はマイナス0.85%、外国債券はマイナス3.22%だった。この結果、16年度末の運用資産額は144兆9034億円。年度末として最高だった2年前の137兆4769億円も上回った。

 今回、投資収益が大幅に改善したのは言うまでもなくトランプ効果である。トランプ氏が掲げる大規模な経済対策への期待から米国株が急上昇。これに伴って円安が進んだことで運用収益が大きく伸びた。

 投資収益が拡大したのは喜ばしい限りだが、株価というのは上がる時もあれば下がる時もある。今後、日本の公的年金は、こうした株価の上限変動と向き合いながら、資産残高を増やしていくことが求められている。

 リスクを取って資産を増やしていくというのは、個人の資産形成についてもまったく同じである。インフレの足音が徐々に近づいている今、銀行預金だけに依存することは大きな損失となりかねない。市場が持つリスクと上手に付き合っていくことは、今後の人生設計における宿命ともいえるだろう。

 マネーシフト2回目は、公的年金の運用を参考に、寿命100年時代における投資のあり方について、もう少し詳しく掘り下げてみたい。(マネーシフト第1回はこちら)

最後の砦「公的年金」

 よく知られているように、日本の公的年金は、安倍政権の強い意向を受け、国債を中心とした安全運用から株式中心のリスク運用へと方針を180度変更した。

 公的年金は多くの国民にとって最後の砦となる資産であり、こうした大事な資産をリスク運用に晒してよいのかという点については今でも意見が分かれている。

 ただ、グローバルな金融市場の動きを考えた場合、長期的に日本はインフレになる可能性が高い。特にトランプ政権が掲げる経済政策がフルに実施された場合には、緩やかな円安が続き、それに伴って国内の物価はジワジワと上昇してくる可能性が高いだろう。

 こうした局面において、現金を保有していたり、債券中心の投資を行っていることは大きな損失になる。

 筆者は公的年金の本格的な株式シフトについて全面的に賛成する立場ではないが、公的年金の運用をある程度、リスク資産にシフトしていくことは時代の流れであることは間違いない。その意味で、年金という重要な資産を運用するGPIFの動向は、わたしたちの資産運用を考える上でも大いに参考となるはずだ。

 先ほど、GPIFの2016年度の運用収益が黒字になったと述べたが、2015年度は3.81%のマイナスであった。株式中心のリスク運用を行っている限り、こうした上下のブレについてはある程度、覚悟しなければならない。わずかのマイナスも精神的に耐えられないということになるとリスク運用を続けるのは難しい。

 一方、株式会社は利益を上げる続けることが宿命であり、企業というものが存続する限り、株式への投資は相応のリターンをもたらしてくれる。その意味では、今も昔も資産形成の基本は株式投資であり、その傾向は今後も変わらないだろう。

30年後にはなんと8300万円

 年金という、国民にとっての最後の砦となる資産がリスク運用にシフトしている以上、個人の資産形成が現金一辺倒ではバランスが取れない。

 これからの時代においては、できるだけ資産を分散することでリスクを押さえつつも、株式に対する投資を徐々に増やしていくのが望ましい。寿命100年時代における投資戦略の基本は、国内外の優良株に対する長期投資ということになるだろう。

 では株式中心のリスク運用を行った場合、どの程度の収益が見込めるものなのだろうか。寿命100年時代においては、まとまったお金をあるタイミングで投資するというのではなく、毎年、収入の中から一定金額を投資に回していくイメージになる。

 ここでは毎年100万円を30年間投資し続けるというケースを考えてみたい。

 毎年、100万円を銀行に貯金していけば、利子を考えない場合、30年後には3000万円になっている。ここでは3000万円という金額を基準に比較検討を行う。

 ちなみに、過去50年のデータを分析すると、日本株は平均すると約6%の利回りがあった。もちろんバブルの頂点など最悪のタイミングで投資してしまった場合にはこの数字は当てはまらないし、今後も同じ利回りが続く保証もない。

 だが先ほど説明したように企業は利益を上げることが宿命付けられており、普通に考えれば今後も同じような利回りが確保できる可能性が高いだろう。つまり、長期で投資をすれば、理論上、どこで買っても6%程度のリターンは得られそうだ解釈することができる。

 毎年100万円を積み立てるという先ほどのケースに6%のリターンを当てはめてみると、その結果は驚くべきものとなる。30年後の金額は何と8300万円を超え、億の単位が見えてくる。つまり、富裕層が持つ資産規模が視野に入り始めるのだ。

1億円が見えてくる…

 当然だが、この数字はいわゆる「捕らぬ狸の皮算用」である。株式投資にはリスクが伴うので、確実に6%のリターンが保証されるわけではない。では、実際にはどの程度の金額になるのだろうか。

 先ほど筆者は、日本株は過去50年の平均で約6%程度のリターンがあると説明した。一方、日本株の過去の平均的なリスクは±25%程度である。リスクというと一般的には危険性という意味で使われているが、投資理論の世界では少しだけ定義が違っている。

 投資理論におけるリスクという概念は、1年間のうちに株価が上下変動する幅のことを示している。25%のリスクと言えば、厳密には統計学上の1σ(約68%)の確率で株価が上下25%の範囲内に収まることを意味している。

 基本的に株価は毎年6%ずつ上昇するものの、毎年25%のブレが生じる可能性があるという意味だ。上にブレれば、期待収益よりもさらに大きな金額になるし、下にブレれば期待収益を下回ることになる。

 投資する期間が長ければ長いほど、こうした株価のブレの影響を小さくできるので、平均的なリターンに近づいていくことになる。最終的な金額がいくらになるのかについては、ちょっとしたシミュレーションを行ってみた。

 パソコン上で一定の確率分布で乱数を発生させ、何千回も試行を繰り返すというモンテカルロ法という手法を用い、30年後の資産分布を推定した。

 結果は、6%の利回りで投資を続けた場合の金額である8300万円を超える確率は30%ほどになった。

 また、何もしないで貯蓄だけを続けた場合の金額である3000万円を超える確率ということになると、こちらは70%に達する。一方、3000万円を下回ってしまう人も30%ほど出てくる結果となった。

 整理すると、約3分の1の人が億近い資産を作り、3分の1の人は貯金するよりも資産を増やしている。そして残りの3分の1の人は、残念ながら貯金するよりも金額を減らしてしまっている。

 3分の2の確率で資産を増やすことができ、しかも3分の1は億近い資産となる一方、3分の1は元本割れとなる。この現実をどう解釈するのかが、まさに投資の醍醐味である。

 チャンスが大きいと感じる人はぜひ投資に取り組んで欲しいし、逆に怖いと思うのであれば、あまり欲は出さずにコツコツと銀行預金を続けるのがよいだろう。最終的に投資を行うかどうかは個人の価値観次第である。

資産形成で大事な2つのポイント

 上記はあくまでシミュレーションだが、現実はどうだったのだろうか。1985年から2015年まで毎年100万円ずつ株式投資を積み重ねたケースについて検証を行った。

 実際に投資を行う場合、日本株一本に絞るのはリスク管理上、好ましくないことから、公的年金を参考に資産の分散を行ってみた。ここでは日本株(TOPIX)と米国株(S&P500)に分散投資し、ヘッジとして金を購入したケースを想定している。

 公的年金は金は保有しておらず、その代わり債券でリスク・ヘッジをしているが、個人の場合、債券投資は割に合わないので、株式と金のみの構成とした。資産構成の比率は日本株が50%、米国株が30%、金が20%。毎年100万円ずつ追加投資を行い、株式からの配当はすべて再投資に回したと仮定する。配当の税金は考慮していない。

 1985年から現在までということになると、80年代のバブル経済とその崩壊、2000年のITバブルとその崩壊、そしてリーマンンショックなど、あらゆる山と谷を経験することになる。

 株式などに投資せず、銀行の定期預金だけに頼った場合、30年後の2015年には利子を加えると約3400万円になっている。利子がない場合と比較すると300万円のプラスである。もっとも1980年代は数%の利子がついていたのでトータルで300万円も利子がもらえたが、今後は難しいかもしれない。

 一方、銀行に頼らず、株式投資を続けた場合の資産残高は、バブル崩壊後に多少、銀行預金を下回ったものの、時間が経つにつれて残高は銀行預金を上回った。

 最終的な金額は8400万円となり、これは銀行預金だけに頼った場合の2.5倍である。先ほどのシミュレーションでは6%利回りで得られる金額(8300万円)を超える確率は3割と説明したが、現実はちょうど同じような金額に落ち着いていたのだ。

 注目すべきなのは、バブル崩壊やリーマンンショックにおける資産残高の推移である。バブル崩壊では、残念ながら一時期、銀行預金を下回ったが、ITバブル崩壊やリーマンンショックでは銀行預金を下回らなかった。これは過去の利益の蓄積が大きいことに加え、金という代替資産がうまく損失をカバーしたからである。

 長期的に株式に対して積立形式で投資を続けることは、資産形成において重要な役割を果たすことがお分かりいだけるだろう。大事なことは、日本株だけに頼らず、外国株も含めたポートフォリオを組むことと、長期で投資に取り組むことの2点である。

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