エイベックスが未払い残業代を支払いも…「残業」意識が希薄な音楽業界
音楽大手のエイベックス・グループ・ホールディングスで、従業員のおよそ半数に対し、総額数億円規模の未払い残業代があることが5月2日に分かった。
昨年2月に労働基準監督署から是正勧告を受け、全従業員1500人を対象に勤務状況を調べたところ、およそ半数で残業代の未払いがあったという。未払いはアーティストなどのマネージメントや音楽制作の部門で多く見つかり、総額で数億円規模。エイベックスは今年1月までの未払い分を今月中に支払い、2月以降についても随時支払うことにしている。
エイベックスのこの決断をどう評価すればいいのか? 古市憲寿が専門家2人に聞いた。
音楽業界は残業という意識をする人は少ないんじゃないですかね。朝の9時から夕方5時までにレコーディングすることってないですし、コンサートは夜にやるものだし、そもそも時間の感覚も違うと思います。一番大きいのは音楽業界で働いている人って、働いている理由が「音楽が好きだから」なんですよね。お金のことが一番の人っていうのはすごく少ないと思いますし、そういう意味ではすごくブラックな業界で、嫌なら辞めればいいっていうのが音楽業界なんで。
経営者からアルバイトまでそういう風に思っているのが音楽業界の普通の感覚だと思います。音楽っていうのはヒット曲が出る、スターが出るということがあるので、大成功したら経済的にも報われるっていうことをなんとなくみんなが能天気に信じているところがあるんですよね。好きだから貧乏でいいというだけではなくて、成功すると経済的なことも含めてサクセスできるということを信じているところがあって、こんな風になっちゃっているというのは言えるかと思います。
エイベックスは株式上場をしてしまった以上、ビジネス社会の慣習だけでなくメリットも享受しているわけで、社会常識を守らなければいけない会社になっているわけですよね。そういう意味では残業代の未払い分を払うのは至極当然のことだと思います。
高度成長期以降の日本の大企業の働き方っていうのが時代遅れになってきているじゃないですか。終身雇用で時間が決まっていて、ということよりも、能力給や年俸制とかに代わっていくなかで、もしかしたら音楽業界、エイベックスとかが正しい働き方をこの機会に考えてくれるんじゃないかと、楽天的ですけどそんな気もします。これからの働き方の制度検討もされると思いますので、そこは期待したいなぁと思います。
(今回のエイベックスの動きは)良い面と悪い面がありまして、良い面としては、恒常的に残業の多い業界の有名企業がこういう形で社名が出て、率先的に未払いの残業代を払ったということです。インパクトは大きかったですね。悪い面は、本来、残業代は残業を指示した時点で払うのが当たり前なので、払うべきものをようやく払ったので「よくやった」みたいに言われているのは違和感がありますよね。
未払い分の残業代の請求には時効がありまして、今は2年間しかないんです。これが民法の見直しで5年になるんじゃないかと言われたりするんですけど、残業代に関しては思い切って10年、20年とかにした方が取りっぱぐれはないんじゃないかと思います。
海外でいいなと思う働き方の仕組みとしては、「エリートクラスを狙う人」と「決まったことをこなすだけの人」で働き方が二極化していること。経営者を目指す人とか役員クラスを目指す人はエリートクラスを元々狙っていて、そういうルートでまず入社をしますし、残業という概念もなくて残業をさせ放題で、その代わり年収は何千万とか億単位だったりするわけですよね。一方で意思決定に関わらない単なるワーカー、決まったことをこなすだけの人は、残業をする奴は能力がないという扱いになって、そうすると定時に必ず帰りますし、残業しないのでワークライフバランスがしっかりとれていると。こういう風に二極化しているところが多いですよね。
労働基準法の適用を厳しくしたら、今アニメ業界とかがそうなっていますけど、社員として雇うんじゃなくてフリーランスとして雇う。「原画1枚描いたらいくら」という形で雇うようになっていて、それだとより守られなくなっちゃうから。音楽業界とかテレビ局は社員として雇わないでフリーランスという形で雇っちゃうケースが増えてくるんじゃないかなという気はしていて、それはそれで問題があるんじゃないかなと思いますよね。全部が厳しい法律でやっちゃうと難しいところがある。一方で悪徳経営者みたいな人もいるわけで、そこの線引きが難しいところですよね。
残業代?
残業代ってなんだ?![]()
