LINEのAIスピーカーはGoogle、Amazonを超えられるか?
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回はAIと通信について話し合います。
■LINEのスマートスピーカー「Clova」発表
房野氏:LINEがスマートスピーカーの「Clova(クローバ)」をMWCの基調講演で発表しました。MWCでもAIが注目されていましたね。
石野氏:AIや音声認識を使ったサービスでは「Amazon Echo」が流行っていて、「Google Assistant」もローンチしている。その状況でのLINEの発表は「おおっ」と思いました。Google AssistantについてはMWCで話を聞いてきたんですが、彼らはアメリカからほとんど出ていなくて、他の国はどうなんだと聞いても、もう少し時間がかかるという。AIって単純に言葉を翻訳しただけだと超直訳になってしまって使えないし、現地のコンテンツも引っ張ってくることができない。スマホのメニューを翻訳する以上に時間がかかるのは事実。
LINEとNAVERが、それぞれ日本と韓国、さらにタイや台湾、香港でもメッセージプラットフォームとしてはそれなりに強いので、AmazonやGoogleが来る前に市場を取っておこうというのは、Yahoo!を持ってきた頃の孫正義社長の作戦に近い感じがちょっとします。面白い存在になりそうだと感じました。ただ、自社でスマートスピーカーを作るのはどうかな。スピーカーをLINEから買いたいかどうかは疑問に思いました。
石川氏:LINEの出澤剛社長が基調講演で言った「これからユーザーがどんどんスマホの画面を見なくなる恐れがあるので、我々としてはスマートスピーカーに参入する」という話が印象的でした。あれだけ生活に根付いているLINEですら、ユーザーが画面を見なくなることに恐怖感を抱いているということは、頭の隅に入れておいた方がいい。
Clovaは日本で、日本語のAIでスタートするけれど、GoogleもAmazonも、英語という巨大なプラットフォームでも、現状、あれくらいのことしかできていない。世界中から優秀な人を集めている会社ですら、あんな状況。LINEにも優秀な人たちがたくさんいるけれど、果たしてちゃんとまともに動くスマートスピーカーを作れるのか、そこは様子見というか、やれるものならやってほしいという思いです。
NAVERが韓国メインでやっていて、LINEが日本メインでやっているわけなので、日本語はLINEベースのノウハウだし、韓国語はNAVERベースで、そもそもベ-スが違う。同時開発していくところで開発能力が分散される。しかも、英語と違って難しい日本語と韓国語。まともに動くものを作るのは難しいのではないかな、というのが最初に見たときの感想でした。
石野氏:LINEよりNAVERががんばって作っているのかな、という感じはしますね。
石川氏:LINEベースでAIを作ったところでスタンプを送るだけじゃない(笑)
房野氏:この発表は、どういうスタイルで行われたんですか?
石川氏:「Conversational Commerce」というテーマの基調講演でした。いろんな人たちが登壇する場で、出澤社長が最後に出てきた。
石野氏:MWCの基調講演で、前に2、3人、ダラダラ話して、聴衆がだいぶ出ていった後に、LINEの出澤さんが登場したんです。コミュニケーションサービスのプレイヤーたちが、プレゼン資料も用意せずぺちゃくちゃしゃべって、つまらないなあと思いながら1時間半耐えた頃にやっと出てきたという感じ。
石川氏:対談スタイルだったけれど、話が見えなかった。Clovaはどうかなあ......。
石野氏:逆に、Google Home(Google Assistantを搭載するデバイス)とかAmazon Echoはどうですか。
石川氏:MWCで取材したときにも聞いたんだけど、Amazon Echoの場合はコマンドを入れる必要があるんです。「Alexa、○○して」「××して」というようにキーワードが必要なんです。でも、人間ってそんなこと覚えないじゃないですか。だから、コマンドを覚えてもらうように、毎週メールが来るんです。こんなことができますと啓蒙される。西田さん(ジャーナリストの西田宗千佳氏)も言っていますが、スマホでアプリのアイコンを見ても起動しないのと同じように、音声コマンドは覚えないので発しないという状況なんです。
Google Homeはその辺り、どうなのかと聞いたら、Google Assistantの担当者は「会話」だと言っていた。言えば応える、質問したら答えるので大丈夫、会話で対応できる、ということでした。自然な会話で対応できる能力があるGoogleの方が上なのかなと。しかも、スマホに向かってもパソコンに向かっても、Google Homeのスピーカーに向かってもクルマの中でも、同じ話が会話として使えるのがGoogleのメリット。AmazonはAmazon Echoという1端末だけなので、そこも大きな違いだという話をしていました。
バックボーンに何を持っているかで、LINEがどう評価されるか見えてくるかなと思います。なんだかんだいってAmazonで買い物ができればそれで良かったりするし、Googleは会話して検索できればそれで良かったりするし。
石野氏:そのためにスピーカーを2個も3個も置かない。AmazonやGoogleがスピーカーを提供するのは、ストリーミングサービスがあるからなんですよね。LINEにもLINE MUSICがある。AIを強調してなんでもできるとマーケティングするとズッコケちゃうんで、最初は“しゃべると聞こえてくるストリーミング用スピーカー“みたいな打ち出しにした方が、一般の人は付いてきやすいと思いました。
房野氏:ユーザーとして期待できることは何でしょう?
石野氏:家の中でしゃべるデバイスが出てくることかな......。
法林氏:以前、CESの回で話したことと同じだよね。そもそも、しゃべって操作するUIが日本人に合うかという問題、国民性の問題がある。MWCで話を聞いたけれど、Google Assistantは、結局やっているのは英語ベースで、日本語はどうするのか聞いたら、今度やるのはドイツ語だという。日本語の件でアナウンスすることはないということだった。
石野氏:言葉として直翻訳しやすいところからやっているような感じですね。
石川氏:あれだけ日本のメディアを呼んで説明しているってことは、たぶん日本語に対応しますよ。
法林氏:対応することは間違いないだろうけど、問題は、一般のユーザーがAIに対してイメージしているような動作をするものができるか。それは相当、難しいと思う。今の段階では、スマホでできることのバリエーションがちょっと広がります、というレベルでしかないのかな、と僕は思う。最後は、日本語を始め、さまざまな言語に対してどれだけインターフェイスをきちんとブラッシュアップできるかどうか。
石野氏:AIはシリコンバレーの一強にはならないかもしれないと、LINEの出澤社長がいっていたけれど、そうかもなと感じました。
石川氏:うーん、どうかなあ。ちょっと懐疑的なんだよな。
石野氏:Alexaブームがどこまで続くか、ということもある。
石川氏:あれは、あくまでアメリカの家がベース。家に大きな部屋がいくつもあって、各部屋で話しかけるからできる。例えば、スマホはリビングに置いてあるんだけど、ベッドルームで音楽を聴きたいから、部屋で1人でAlexaに声をかけるというケースがあるわけです。でも、日本の家は下手したら居間に何人もいる。そこにスピーカーがあったら、自分のLINEの着信が音声で発せられて、家族に聞かれて恥ずかしい、ということが多々ありそうじゃないですか。生活習慣や生活スタイルを理解しないでスピーカーをやりますと言っているので、それは違うんじゃないかな。
石野氏:確かに。メッセージが読み上げられたらヤバいですね(笑)
■AIで乗客を探すタクシーやバス
房野氏:日本ではドコモが「AIタクシー」や「AI運行バス」の発表を行いました。
法林氏:LINEの話よりも、タクシー配車の話の方が面白くてリアリティがある。投資信託も、AIで銘柄を選んで買うAIファンドみたいなものがあって注目を集めている。でも、関係者に言わせると、普通にETF(上場投資信託)を買えばいいんじゃないかという話もあり、そうかもしれないって思うところもある。
石川氏:若干、AIバブルになっている。なんでもかんでもAIっていうけれど、本当にそれはAIなのか。
法林氏:そうそう。
石野氏:ドコモのAIタクシーやAI運行バスも、AIは必要か? って感じ。
法林氏:実証実験では乗車数が増えたっていっていたね。
石川氏:あれって単に人の数が分かるからでしょう。
石野氏:モバイル空間統計データでわかる。実際、AIがどこで働いているのか、今ひとつ分からない。また、AIタクシーに関しては、発表会当日、山手線が遅延していたので、それを反映して数字は変わったのかと聞いたら、その機能は実装していないと。そこがAIじゃないかと思ったんですよ。タクシーの過去の乗車統計とドコモの統計データをかけ合わせただけで、AIはそこまでいらないんじゃないかと感じた。あと、IoTともいっているけれど、何がInternet of Thingなのか分からない。
石川氏:ツッコミどころが満載。荷物を運ぶドローンも。
法林氏:以前、ドローンの取材で“ラジコンの神“と呼ばれる人に、「ドローンなんて、たいして積載量ないんだから、荷物運ぶなんて考えは間違い」って言われちゃったからね。
石川氏:AI運行バスも、ドコモのシステムというより、未来シェアのシステム。
石野氏:未来シェア*はがんばっている。ドコモは統計データが使われているだけで、あそこまでドコモが主体となって発表会をすることに疑問が沸きました。+d(パートナー企業とのコラボによる取り組み)案件を無理に増やしている感じがちょっとする。
*未来シェア:北海道・函館のベンチャー企業。道路交通網における公共交通の利用要求に対し、リアルタイムに自動で配車を行う未来型交通システム「Smart Access Vehicle(=SAV)」の普及を担う
石川氏:そうなんだよね。AIというバズワードに乗ろうとしている感じがある。
石野氏:確かに統計データを売ることで儲かるかもしれないけれど、それって法人の営業だから。
石川氏:データアナリティクスじゃんって。まだ、KDDIの、トイレが節水できます(「KDDI IoTクラウド ~トイレ空室管理~」と「KDDI IoTクラウド ~トイレ節水管理~」)って方がリアリティがある。
石野氏:統計データを売る営業1件、1件に対して、バズワードを付けて発表会をしているような感じ。この関連の発表会では、囲み取材でキャリアはどこに関わっているんですかと、いつもしつこく聞くんですが、しつこく聞かないと分からないくらい関わっていないんですよね。バズワードを付けて話を盛っている感じ。
石川氏:そうそう。だから、報道の仕方もちょっと考えようと思っている。
