ヤマトの決断で景気向上&給料UP? 佐々木俊尚が予想する「バラ色の未来」

ヤマトの決断で景気向上&給料UP? 佐々木俊尚が予想する「バラ色の未来」

宅配便最大手のヤマト運輸は16日に労使交渉を行い労働環境を改善することで妥結した。時間帯指定サービスについては、「正午~午後2時」は廃止し、労働が過密な「午後8~9時」は「午後7~9時」に拡大する。他に労働時間の見直しや賃上げも行われる。何度も話題になった一連の問題は、これですべて解決するのか、ジャーナリスト佐々木俊尚が専門家に聞いた。

佐々木俊尚の印象

いろいろ改善されてはいるんだけど再配達をなくすにはどうしたらいいんだろうね?場合によっては玄関に荷物を置いておくことも、もっとやってもいいんじゃないのかな。

あるメディアがヤマト運輸に、荷物を玄関に置いておくのはいいんですかって聞いたら「ダメです」という答えだったそうです。でも、ドライバーさんと直接やり取りすると、人によってやってくれたりするんだよ。

そういう適当な仕組みでいいんじゃないのかな。盗まれたらどうするんだとか、汚れたら~濡れたら~とか怒る人が多いから厳密にやらなくちゃいけないわけでしょ。だからみんな怒らないようになれば、それで済むんじゃないの?そのぐらいの鷹揚さが我々の社会には必要じゃないのかなって感じはします。

この問題は何度も取り上げていますが、今日は、労使合意で果たして抜本的な問題が解決するのかどうかを探っていきたいと思います。

本当なら「Amazon値上げ」で問題は全部解決

いまヤマト運輸で荷物一個当たりの平均運賃単価は約570円だと言われています。これは個人からAmazonのような大口顧客も含めた平均です。これを一律に値上げするのではなく、私は最大顧客のAmazonだけ上げればいいと考えています。

Amazonは年間3億個の荷物があり、一個当たり平均250円で請け負っていると言われています。平均の半分の価格なんですよ。例えばAmazonを500円にすれば、実はヤマトの問題はすべて片付いてしまうんです。250円を500円にすると750億円の増収効果が見込まれます。ヤマト運輸には5万4000人のセールスドライバーがいると言われてますから、750億円を5万4000で割ると約140万の年収改善余地となるんですね。統計によれば、日本のセールスドライバーの平均年収は388万円で、全産業平均は489万円となっています。仮にヤマトのドライバーの給与が140万増えたとすると、他の運輸業者はもちろん全産業平均よりも高くなるのでヤマトはドライバーを集め放題になるんです。

Amazonはババ抜きの「ババ」

一個250円なんて単価のAmazonの荷物は、宅配業者にとってはババ抜きのババです。佐川急便は2013年にAmazonの荷物を手放し、年商・売り上げはもちろん減ったんですけど、営業利益は改善したそうです。このとき、ヤマト運輸の社長がAmazonの仕事を同じ条件で全部もらってきて、会社で誇らしげに報告したんですが、社員たちは一様にがっかりしたそうです。

ヨドバシカメラと同じ道を目指す?

Amazonはコストアップの分をどうにか回収しないといけません。値上げをすることとなったら一般消費者の方にツケが回ってくると思います。 

今、Amazonは都内を中心に、独立系の運輸会社をまとめあげようとしていますが、会社規模が小さいのでいくらやっても算数が合わないでしょう。それより自分たちでやったほうが早いので、私は将来的にAmazonは独自のデリバリーを始めると推測しています。日本ではヨドバシカメラが全部自家配送していて非常にうまくいっています。ヨドバシカメラにできている事なら、Amazonほどの企業ができないはずがないでしょう。

どこもAmazon荷物を請け負わない

日本の運送業の給与が低いのはいろんな事情がありますが、その一つに、運送料はマケてもらって当然という消費者の意識があったのは事実でしょう。もう一つは、80~90年代とずっと働き手が豊富な時代が続いたため、市場シェアを抑えるため、どうしても値引きが必要だったという事があるでしょう。

これまでは一社が料金の値上げを要求しても、他社がすぐ後釜を埋めてしまうという問題がありました。しかし、今ヤマトがAmazonに値上げを要求していますが、他社が「今まで通り請け負います」とは言えないと思います。

戦後初の大きな変化

私は、今回の決定は画期的だと思っています。

今まで、日本の労使は戦後からずっとシェアを拡大することをやってきたわけです。どんなに薄利であっても、売り上げを上げて利益を出す。多少現場が無理をしてでも最終的には勝つんだというスタンスだったんです。それが、従業員の負担を軽減する方向に舵を切った。場合によってはAmazonと決裂するかもしれない、売り上げが下がるかもしれない。それよりも現場の満足度を上げる事を選んだのは、戦後初じゃないでしょうか。この変化の意義は大きく、他社にも広がると思います。 

ただし、今回のヤマトの労使が合意に至った変化が同業他社に広がったとしても、抜本的な人手不足の解決は難しいと思います。例えば、政府が音頭をとって宅配ボックスを普及させるとか再配達を有料化するとか抜本的な取り組みが必要でしょう。宅配ボックスに関して言えば、逆に再配達を有料化してしまうと一気に普及すると思います。

佐々木俊尚のまとめ

宅配料金を値上げすると、当然Amazonの料金にも跳ね返ってくる可能性がありますAmazonが自分で吸収してくれるんならいいけど送料無料はやめますというかもしれない。そうなったとき、値上がりした分を我々がどう引き受けるかっていう話になる。

これは値上がりしていいんじゃないかなって思います。

値上がりすると、物価が上がって、給料も上がる。どうしてかというと、物価が上がると、宅配のコストが高くなるわけだから、宅配ドライバーの給料が上がります。ドライバーの給料が上がると、より物を買うようになります。より物を買うようになると、高くても買うようになります。物価が上がって給料が上がるという繰り返しによって景気が良くなっていく。

このサイクルこそが「インフレターゲティング政策」というアベノミクスの本質なわけです。

今まで、アベノミクスはうまく機能してないと言われてきたんだけど、実はまだ前哨戦だった可能性はあるんじゃないのかな。これから給料も物価も上がり始めるところに来ているんじゃないかなって思うんだよね。城さんも、ある種の変化が起きているというような話をされていましたが、これからの社会は結構いい方向に行くんじゃないかと思います。

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