東芝にくすぶる「新たな不祥事」の火種、どうやら冗談ではないらしい

東芝にくすぶる「新たな不祥事」の火種 どうやら冗談ではないらしい

アメリカのお墨付き

 「ウエスチングハウス(WH)は米国で原子力発電所を建設中であり、(親会社である)東芝の財政的安定が重要だ」――。

 経済産業官僚の目論見通りだっただろう。訪米中の世耕弘成経済産業大臣が日本時間の先週金曜日(3月17日)、ロス商務長官とペリー・エネルギー長官からこの言葉を引き出すことに成功したという。政府・経済産業省はお墨付きを得たと言わんばかりで、縮小したはずの東芝支援を復活させようと勢い付いている。

 主力銀行によると、東芝が完全売却も視野に入れて本体から切り離した「東芝メモリー」に、官民ファンドの産業革新機構や政府系金融機関の日本政策投資銀行(DBJ)が出資する案や、DBJが産業再生機構や東芝、東芝メモリーに融資する案が浮上している模様だ。

 長年にわたって経営の悪化を隠す粉飾決算に手を染めたうえ、それから2年経っても経営を立て直すどころか、一段と事態を悪化させた巨大企業に、庶民の税金などで集めた公的資金を野放図に投入するという。

 リーマンショック以降、米国では貧富の格差が拡がり続ける中で、公的資金が頻繁にウォール街の巨大金融機関やデトロイトの自動車メーカーの救済に使われて、蓄積された庶民の不満が人種差別と保護主義を標榜するトランプ政権誕生の原動力になった。

 欧州の極右政党の勢力拡大とともに、国際的な緊張に拍車をかける動きであり、憂慮せざるを得ない状況である。

 とはいえ、経営に失敗して市場から退場すべき巨大企業を安易に公的資金で救済することは、自由主義経済を歪める。

 このところ、民間経済への官僚支配を強化しようとする政府の傍若無人ぶりも目に余る。われわれ国民はそろそろ、はっきりとノーの意思表示を示して、こうした誤った政策に待ったをかける必要がありそうだ。

日経の不自然な記事

 筆者は、本連載の2月21日付コラム「許していいのか? 産省主導の怪しすぎる『東芝救済プラン』の中身」で、政府が東芝支援策として「東京電力・福島第一原子力発電所の廃炉予算を優先的に東芝が開発・販売する『廃炉ロボット』などの購入に充てるほか、耐用年限を迎えた全国各地の原発の廃炉作業に関連した発注の東芝シフトを電力各社に促して、東芝再建を支援する検討を密かに進めている」と書いた。

 その根拠は、昨年12月に巨額損失の発生が判明した際に、内部通報によって、「東芝の志賀重範会長と東芝の子会社ウェスチングハウスのロデリック会長がウェスチングハウス幹部に、東芝に有利な会計処理を迫る圧力をかけた」ことが明らかになっており、事態を憂慮した大物政治家がスキャンダル企業への国策支援を自重するよう経済産業官僚に釘を刺したとの情報だった。

 それゆえ、国策支援のメニューがこのロボット購入などに限定される方向と記したのだ。

 確かに一時、世耕大臣の発言もトーンダウンしていた。例えば、3月8日の衆院経済産業委員会では、産業革新機構の東芝に対する関与を問われ、「一般論だが革新機構は『企業救済機構』ではない」「(関与は)産業構造の革新につながることが条件」「救済の名目で活用することは難しい」と否定的な発言を重ねた。

 ところが、1本の新聞記事をきっかけに状況が一変した。

 その記事は、3月9日付の1面朝刊で日本経済新聞が報じたもの。「WH原発、米が総額83億ドル債務保証」と、あたかもWHが米政府の債務保証を受けているかのような印象を読者に与える見出しが付いていた。

 中身を読むと、「地元電力会社に対し総額83億ドル(約9500億円)の融資保証枠を設けて建設を支援している」と書かれている。本来ならば、地元電力会社(記事には名前がないが、ジョージア電力を指す)に対して「債務保証」という見出しを付けるべきところだろう。WHは、子会社がその原発の建設を請け負っているだけである。

 しかも不自然なのは見出しだけではない。

 記事には「東芝はWHの破綻処理も選択肢に原子力事業の再建策を詰めるが、頓挫すれば米国で国民負担が発生しかねない。東芝の経営再建の行方は米政府を巻き込んだ問題になる可能性がある」とか、

 「(東芝によりWHへの)破産法(適用)が申請され、原発の完成が大幅に遅れるような事態になれば、電力会社は借り入れた建設資金の返済が滞りかねない。保証を付けた米政府がその一部を肩代わりするリスクが高まる」などと、東芝・WH問題が日米間の外交問題になりかねないと懸念を煽る文言が列挙されていたのだ。

なぜそこまで東芝にこだわる?

 この記事を受けて、政府・経済産業省は各方面で「国際問題化の懸念があり、当事者任せにはできない」「日本政府が関与する必要がある」と言い始め、世耕大臣が2人の米長官の言質を引き出したことを受けて、さらに勢い付いたのである。

 しかし、原発の建設は民間企業の契約だ。米政府の債務保証とは無関係の日本政府がいそいそと米政府にお伺いを立てに行くこと自体が不自然である。

 これでは、いったいなぜ、政府・経済産業省はそこまでして、東芝を支援したいのかという疑問が沸くのは当たり前だろう。

 ちなみに、新たに支援の対象に加えようとしている「半導体・メモリー」について、政府・経済産業省や財界は「技術漏えいが問題だ」と主張している。が、東芝の半導体の売上高は米インテルや韓国のサムスン電子などに大きく後れをとっており、世界シェアは9位に過ぎない。

 今さら流出を懸念しなければならないような先端技術を東芝が保有しているとは考えにくい状況だ。

 こうした政府・経済産業省の東芝贔屓は、以前から囁かれていた。筆者も2012年5月15日付「国有化の裏で東電が構築を目論む、NTTが27年前に放棄した『私的独占網』とは? で東電問題の観点から書いたが、実は政府・経済産業省は、東京電力の再建に絡めて東芝に不自然な肩入れをしていた。

 東京電力はこの頃、経済産業省の出先のような存在だった原子力損害賠償機構の指導の下で、無線を使って家庭や事業所の電気料金を自動的に検針・集計・請求するシステムの構築を計画していた。

 しかし、肝心の技術仕様について、関係者から「東電と関係の深いメーターメーカーしか入札に参加できない」「競争メカニズムが働かず、通信市場のインターネットのような市場が生まれにくい」「コストが高騰するのは確実」といった批判が噴出した。

 すったもんだの末、最終的に、このシステムを受注したのも、その後のスマートメーター端末の入札でも、圧倒的な強さを見せたのは東芝だったのだ。

 当時、事情通の間では、「三菱重工業の買収希望価格(3000億円)の約2倍の高値でWHを買い取った東芝に対して、経済産業省が借りを返そうとしている」との噂がまことしやかに流れ、真偽が取り沙汰されるような状況だったのだ。

東芝が抱える不祥事の火種

 いずれにせよ、自由主義経済の下では、経営は自己責任だ。清算目的でも再建目的でも、経営危機に陥って必要なら、東芝本体やWHを破たん処理して過去のツケを精算するのは当たり前のことである。

 企業規模が大き過ぎて連鎖倒産や雇用が危ぶまれるという理由(Too big to fail)で、政府が公的資金を投入することにうんざりしているのは、世界中の市民の共通の感情だ。イギリスのEU離脱、米トランプ政権成立、そしてオランダの保護主義・右翼政党の台頭などを見ても、そのことは明らかだ。

 さらに東芝問題で注意を要するのは、同社がまたしても新たな不祥事の火種を抱えていることである。

 その第一は、前述のように、WH子会社を巡る会計処理で東芝への影響を排除しようと内部統制をないがしろにしたとされる問題だ、内部通報で発覚し、今年2月に予定していた昨年4~12月期の決算発表を3月14日に延期せざるを得ない事態になった。

 そして第二が、ここにきて、新たに監査法人から、屋台骨を揺るがすほどの巨額の減損処理が必要になったのは、いつのことだったのかという疑問を突き付けられている問題だ。これが響いて、昨年4~12月期の決算発表を再度、4月1日に再延期せざるを得ない状況に陥ったのだ。

 この損失の発生時期について、公認会計士の間では「過年度に遡る可能性が大きい」とみる向きが多い。そうした見方が正しければ、一昨年に続いて、東芝は再び”粉飾決算”(金融商品取引法違反)に問われかねない。非常に深刻な状況にあると言わざるを得ないのだ。

 政府・経済産業省が東芝への一切の関与を自重すべきなのは明らかだろう。

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東芝経営危機はアメリカでどう報じられたか?

筆者の津山恵子氏はニューヨーク在住のジャーナリスト。ライター、作家、写真家の顔も持つ。アメリカの社会、政治、ビジネスを日本の読者に向けて執筆する。近著は「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。

「ウエスチングハウス、写真で見る130年の歴史」ーー。

東芝傘下の米ウエスチングハウスが米連邦破産法第11条の適用を申請した3月29日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が掲載したスライドショーだ。この特集で、ウエスチングハウスの破綻がいかにアメリカ市民にとってショックだったかがわかる。東芝の経営不振問題はCNNなどの米主要ニュース局が報じることはほとんどなかったが、ウエスチングハウスの破綻は、終日マーケット関連として報じた。

WSJでは、同社の前身ウエスチングハウス・エレクトロニクスを創立した発明家ジョージ・ウエスチングハウスの白黒写真が見られる。彼は1886年、自分の発明をビジネスにするための電力事業会社を立ち上げた。その後、電力送信網、テレビ・ラジオ放送網、家電などに事業を拡大。1969年には、月面探査機アポロが月面着陸した有名な動画を撮影したビデオカメラも供給している。スライドショーで見ると、アポロの宇宙飛行士がカメラを片手で持っており、当時としては驚くほど小型だ。

今回経営破綻したウエスチングハウスは、この伝統的な電機・電力総合事業の原子力部門が切り離されて、東芝が2006年に買収した原子力事業子会社だ。

米連邦破産法第11条の適用申請は、日本の民事更生法に相当し、債務を一掃して破産管財人のもとで再生し、会社自体は消滅しない。2008年のリーマン・ショックの後、自動車米最大手ゼネラル・モーターズ(GM)さえも申請し、現在はよみがえっている。借金をチャラにする限り、経営が破綻しなければ適用申請は不可能だ。

憧れのプレスバックスポンサー

東芝もアメリカ市場での存在感を少しずつ失ってきた。それを顕著に感じるのは、毎年1月、ネバダ州ラスベガスで開かれるハイテク家電市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」だ。私が初めてCESを取材した2004年、報道陣にタダで配られたプレスバッグは、ライトグリーンとクリーム色のエコカラーで、タイヤがついた小型リュックだった。報道陣にしか配られないが、広大なフロアを歩いていると、一般参加者から「それはどこに行ったら買えるのか」とよく聞かれた。

そのプレスバッグのスポンサーが東芝で、「TOSHIBA HD DVD」と大きなロゴが縫取りで書かれていた。当時の次世代DVDの規格で、ソニー/松下電器産業(当時)の「ブルーレイ」と激しい争いを繰り広げていた最中だ。CESに来る数千人にも上る取材陣が、「HD DVD 」のロゴ付きのスタイリッシュなバッグを持って会場を歩くだけで、とてつもないインパクトがあった。

しかし、2008年1月4日、CES開催に先駆けたプレスデーの日、DVD販売トップのワーナー・ブラザーズが、ブルーレイへの一本化を表明。常に午前中に設定され、多くの報道陣が詰めかける東芝のプレスイベントは、まるでお通夜のようだった。会見場で記者らの足元にあったのは、青とシルバーのプレスバッグで、この年も「HD DVD 」の縫取りがあった。直後の2月、東芝はHD DVDからの撤退を発表する。東芝はその後、プレスデーのイベントからも撤退した。

ターゲットとなるフラッシュメモリー事業

東芝がCESでの存在感が徐々に後退していく中でもなお、アメリカ人記者の間では、テレビの高級ブランド「REGZA(レグザ)」などへの評価は高かった。友人記者からは「なぜ、その技術力をもっとうまく宣伝できないのか」という声をよく聞いた。しかし、テレビが大量に売れる時代は過ぎ去っていた。CESでは、東芝の数倍の展示面積を持つ韓国のLG電子、サムスン電子などが、もっと消費者にアピールする「曲面テレビ」などを出し、テレビを見る楽しさをうまく見せる派手な展示をしている。

ウエスチングハウス関連の多額損失を穴埋めするため、東芝は世界シェア2位のNAND型フラッシュメモリー事業を売却することを発表している。NAND型フラッシュは、すべてのモノがインターネットにつながる「internet of things(IoT:モノのインターネット)」、サイバーセキュリティ、人工知能(AI)などのコアとなる技術で、今後の成長期待は極めて高い。買収に名乗りを上げているのが、アメリカの名だたる大企業だ。報道によると、アップル、グーグルの親会社アルファベット、アマゾン、投資会社シルバー・レイク・パートナーズ、半導体メーカーのブロードコムなどの名があがる。

かつて東芝は、CESでプレスデーの目玉だった。早朝のイベントに、世界中の記者が集まって発表を待ち、ムンムンとした雰囲気があった。ところが、アメリカの企業ウエスチングハウスの損失で、経営危機に陥った。一方で、同社の有力ビジネスが、アメリカのハイテク企業の「ターゲット」となっている。海外の企業を買収したものの、うまくガバナンスが働かず、経営危機の引き金となり、事業を売却しようとすれば、逆に海外企業の買収の「目玉」とみられる。技術力で優れたものを持ちながら、日本企業の事業の統率やマーケティングのまずさが日本の技術流出につながっている。

東芝「WH破産申請」で露呈した再生計画のウソ

3月29日、16時11分 

 一通のメールが届いた。

【東芝】記者会見のご案内
 日時 3月29日(水)17:45~18:30 受付開始 16:45

 30分で来い、というわけだ。

 16時50分に会見場(東芝本社)に到着。すでに会場は、報道陣で埋め尽くされていた。前方から10列目までの席には大手メディアの名刺が敷き詰められている。「花見の席取り」である。新人がいち早く会場に駆けつけ、名刺を置く。先輩記者たちは直前に悠然と現れ、最前列にどっかと陣取る。組織力のないフリーランスの悲哀を感じる場面である。

 机の上にはすでにニュースリリースが配られている。

「当社海外連結子会社ウェスチングハウス社等の再生手続の申立について」

 東芝の原発子会社ウエスチングハウス(WH)が、米連邦破産法第11条(通称チャプター11)の適用をニューヨーク州連邦破産裁判所に申請したのだ。事実上の倒産である。

 WHのチャプター11申請は日本のメディアで既定路線になっており、一部の新聞は「現地時間の28日に申請」と書いた。このため28日の夜、東芝担当記者たちは東芝からのメールを待っていた。だが待てど暮らせどメールはこない。

 夜があけた。まだ米国は28日だ。担当記者たちは早朝からメールを待ち続けた。

 それでも、やはり来ない。 

 前述の通り、メールが来たのは29日の16時。申請は24時間受け付けられるため、手続き上は問題ないが、ニューヨーク州も日付は29日になっていた。東芝、WHのドタバタぶりがわかる。

「WHを連結から外した」というレトリック

 まず断っておきたいのは、現時点で東芝はチャプター11の適用を申請しただけであり、裁判所に再生計画が認められたわけではないということだ。

 東芝が3月中のチャプター11申請にこだわったのは、今期中にWHを連結対象から外し「これ以上損失は拡大しない」と金融機関にアピールしたかったからだろう。しかし米国の裁判所はそんなことは知ったことではない。申請を受理するかしないかは、今後の裁判所の判断にかかっている。WHが提出する再生計画を裁判所が認めなければ、話は振り出しに戻る。あたかも既にWHを連結から外したかのような東芝のアピールは、紳士的とは言えない。

製造業過去最悪の赤字額

 記者会見の出席者は綱川智社長、平田政善専務、畠澤守原発担当常務の3人。

 綱川社長は淡々とした表情でこう説明した。

「WHに対する親会社保証などを求められた場合、東芝の2017年3月期の最終損益は1兆100億円の赤字になる」

 そうなれば、09年に日立製作所が発表した赤字額7873億円を抜き、製造業として過去最悪の赤字となる。

「WH買収から10年余。東芝はどこで間違えたのか」と問われると、綱川社長は寂しそうな顔で言った。

「私にはわかりません」

 原発事業の暴走が引き起こした巨額損失の穴埋めに、自分が育てたメディカル事業を売却せざるを得なかった綱川氏の本音だろう。

「インペア」の予兆

 このタイミングでWHのチャプター11申請に踏み切ったことについて「金融機関から圧力があったのでは」と聞かれると、平田CFOの血相が変わった。

「絶対にありません」

 しかし平田氏の言葉を簡単に信じるわけにはいかない。粉飾決算騒動の最中に、東芝テックから呼び戻され、2015年9月にCFOに就任した平田氏は、この場所(東芝本社39階会議室)で、何度も嘘をついているからだ。

 2015年11月、平田氏はここで、こう言い切った。

「原子力発電関連などの社会インフラは当然、黒字にならないとおかしい。電力向けは送変電・配電のシステムなどの受注が増加している。ウエスチングハウスも減損の兆候はありません」

 1年半前に健全だった会社で、何が起きるといきなり倒産するのか。予兆は何年も前からあった。

「インペア、あるらしいぞ」

 東芝の原子力事業部門でそう囁かれ始めたのは2009年。「インペア」は「impairment(減損)」を指す。東芝がWHを買収したのは2006年のこと。3年後にはすでに社内で減損を意識していた。

 それから8年の長きに渡り、東芝は外部の目を欺き続ける。

 2012年3月末にはWHのCEO(最高経営責任者)に内定していたジム・ファーランドが突然、退職する。ファーランドは直前の3月まで、約1ヶ月かけて「次期CEOです」と、米国の電力会社で挨拶回りをしていただけに、業界にショックが走った。

「WHの内情はそれほどひどいのか」

 ファーランドの退職は「一身上の都合」とされ、会長の志賀重範が急遽CEOを兼務することになった。

 半年後の2012年9月、ダニエル・ロデリックがWHのCEOに就任する。ロデリックはゼネラル・エレクトリック(GE)で長く原発事業に携わった男で、業界では「やり手」と言われた。

 東芝はWHを買収した後、志賀ら数名の役員を送り込んでWHの立て直しと一体化を進めようとした。だが「自分たちは世界で最初の商用原発を動かした会社だ」というプライドに凝り固まったWHは、東芝を格下に見て言うことを聞かない。

 おそらく買収から6年以上、東芝はWHの実態を把握できていなかった。

「これでようやくまともになるかも」

 東芝社内に安堵の空気が流れた。しかし“ミイラ取り”のロデリック氏は、自らがミイラになってしまう。CEOに就任してしばらく経って、メディアに露出し始めたロデリック氏は「WHは米国、中国だけでなく、インドでもトルコでも順調に受注を獲得している」と言い始める。

「嘘つけ」

 事情を知る東芝社員たちは落胆した。「やり手」と期待されたロデリック氏も、実のところは原発事業からフェードアウトを始めたGEの「窓際族」であり、原発にしがみついて生きていくしかない男だった。

スポンサーありきの「再生計画」

「海外原発事業のリスクは遮断した」

 綱川、平田、畠澤の3氏は1時間半の記者会見でそう繰り返した。

 だが真に受けることはできない。

 裁判所に駆け込むだけで、10年余の失敗のツケを払いきれるとは思えない。世界各国で建設中の原発を放り出し「あとは知りません」という無責任が通るほど世界は甘くないはずだ。

「もしスポンサーが見つからなかったら再生計画はどうなるのか」

 記者会見の終盤で本質を突く質問が出た。

「今回、減損対象になった米国で建設中の原発以外の事業は順調なので(スポンサーの登場は)十分、見込みがあると考えています」

 そう答えた畠澤氏の顔は「燃料とメンテナンス事業は堅調で、減損の兆候はありません」と1年半ものあいだ言い続けた平田氏の顔に重なって見えた。二人とも、サラリーマンの役目に徹する「能面」のような顔をしていた。

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東芝決算、監査法人が意見不表明の理由・経緯を説明すべき=財務相

麻生太郎財務・金融相は12日午前の衆院財務金融委員会で、東芝<6502.T>が11日、監査法人の適正意見を得られないまま2016年4─12月期の決算発表を行ったことに対し、監査法人が意見不表明に至った経緯と理由について説明責任を果たすべきだ、と語った。鷲尾英一郎委員(民進)の質問に答えた。

麻生氏は、監査法人による意見不表明は「制度上認められている」としたが、金融・資本市場への影響について「受けとめはいろいろある」と指摘。「企業と監査法人において、意見の不表明に至った経緯、理由について、投資家に対してしかるべき説明責任を果たすよう、しっかり対応してもらうことが大事だ」と強調した。

また、麻生氏は地銀の再編が進んでいる背景を問われ、「地域によって事情は違う。経営の自主判断によるもの」と述べた。超低金利政策が金融機関の収益基盤を脅かしているとの指摘に対しては、金利は安い方が企業にとっていいとし、「銀行のために経済があるわけではない」と語った。

黒田東彦日銀総裁は、人口減少など地域経済の構造的な問題や、低金利環境の長期化による利ざや縮小によって地域金融機関の基礎的な収益力がすう勢的に低下していると指摘。こうした中で「経営統合が収益基盤を強化するための選択肢の1つになっている」との認識を示した。

焦点:東芝のWH切り離し、損失上限は不透明 半導体売却にも影響か

東芝(6502.T)が経営危機脱却への切り札として、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)の連邦破産法11条の適用申請に踏み切った。1兆円の巨額最終赤字と引き換えに、WHを自社の連結決算の対象から外し、米原発建設プロジェクトからの追加損失を被る危険性を最小限に抑え込む狙いがある。

とはいえ、原発の発注元である電力会社から東芝に賠償を求める訴訟リスクもくすぶっているとの指摘も関係者から聞かれる。巨額の追加損失リスクが意識されることで、経営危機からの脱却へのもう一つの関門となる半導体メモリー事業の売却交渉にも影響が及んでいる。

<海外原発から撤退、リスク消滅を強調>

「原子力の海外事業はほぼ撤退。そのリスクはなくなった」─。29日夕、WHの同11条の適用申請を受け、本社での会見に臨んだ東芝の綱川智社長は淡々とした口調で語り、結果的に東芝を存亡の危機に追い込んだ10年前のWHの買収については、「非常に問題な(経営)判断だった」と総括した。

再建型破たん処理の手法で、日本の民事再生法に相当する破産法11条を申請したWHは、東芝グループを離れ裁判所の管理下のもとで再建を進める。米国2カ所で建設中の原発4基のコストが想定を大幅に超過したことが経営難の引き金となった。

<追加損失、今回が「上限」と強調>

東芝はWHの債務に対して今年2月末時点で6500億円の債務保証をしているが、WHの経営破たんにより、その全額を引き当て計上する。それを含め、従来3900億円とみていた東芝自体の最終赤字額は1兆0100億円に拡大する見通しだ。年度末の債務超過の予想額も2月時点の1500億円から6200億円に拡大する可能性があるという。

それでも、今回のWHの11条申請で、米原発事業をめぐる損失の「上限」が見えたと東芝経営陣は強調する。

この日の記者会見で、原子力部門担当の畠沢守・執行役常務は、親会社保証の全額引き当てとWH破たんに伴う貸倒引当金などによる追加損失の見通し(約6200億円)について、それが上限かとの質問に「そのように考えている」と述べた。

しかし、WHが破たん処理過程に入り、有力なスポンサーが現れなかった場合、原発建設が滞り、原発を発注した電力会社2社から、親会社だった東芝が損害賠償を請求されるリスクも否定できない。

電力会社などからの訴訟リスクの有無について畠沢氏は「当社の観点からはないと考える」と述べる一方で、相手の出方に左右される訴訟リスクについて、その可能性を断定することはできるのか、との質問には、「相手のことの回答は難しい」と明言を避けた。

<予断許さない米電力による訴訟リスク>

ある東芝幹部は「親会社保証はあるとしても、電力会社から訴えられる危険性も排除できない」との見方を示す。さらに、電機産業の内情に詳しい業界関係者は、東芝にとって一段と厳しいシナリオを示す。

「WHが11条の適用を申請することで完工は不透明だ。従業員が流出すれば、工事も遅れる。シェールガスが安い中で、コスト高の原発は競争力がないから、建設が中止になるかもしれず、電力会社側が原状回復を要求してくるかもしれない」。

訴訟によるそうしたリスクは「約8000億円かかる可能性もある」(同関係者)との見立てだ。

<半導体売却、台湾勢排除の論理とは>

追加の損失のリスクは、債務超過解消に残された唯一のカードである半導体メモリー事業の売却交渉にも影響を与えている。

「経済産業省は、外為法の規制を通じて東芝の半導体売却の対象国を相当厳しく規制する」─。29日に東芝が入札を締め切ったメモリー事業の売却交渉をめぐり、今月上旬、同省関係者は指摘した。この入札では、昨年シャープ(6753.T)を買収した鴻海精密工業(2317.TW)、台湾積体電路製造(TSMC)(2330.TW)の台湾勢2社も関心を示している。

その後、台湾や中国勢に東芝のメモリー事業が渡ることを阻止しようと動く日本政府の意向を伝える報道が相次いだ。国の安全保障に係る重要技術の海外流出を阻止すべく、外為法に基づく規制に経産省が乗り出すというものだ。

鴻海の事情に詳しいある専門家は「鴻海はいくらでもカネがある」と指摘、今回の入札でも競合他社に比べても相当に高い金額を提示しているとみられている。背後に中国政府の存在を指摘する見方も根強い。

鴻海は、中国本土に多数の工場を抱えて、同社に東芝のメモリー事業が渡れば、対中国で優位に立つ日本の技術分野の流出が現実になりかねない。

とはいえ、東芝が米国での原発の追加損失リスクを払しょくできない以上、メモリー事業に最も高い値段を提示した相手に売却することは、現実味を伴ったシナリオだ。 

「事情を察知した経産省は、東芝のメモリー事業の売却で、台湾・中国勢を排除すべく、外為法による規制に乗り出した」と、前出の業界関係者は指摘している。

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東芝、監査意見なしでの決算発表 綱川社長らが経緯を語る

2017年4月11日、東芝が監査法人からの意見なしで決算発表を行ったことについて記者会見を開きました。会見冒頭では、綱川社長より今回の経緯について発言がありました。

今回の経緯

司会者:ただいまより、2016年度第三四半期の決算に関します説明を始めさせていただきます。

最初に本日の出席者をご紹介申し上げます。代表執行役社長、綱川智でございます。代表執行役専務、平田政善でございます。社会取締役で監査委員会委員長、佐藤良二でございます。

それでは、まず綱川より冒頭お話を申し上げます。

綱川智(以下、綱川):綱川でございます。本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は2度にわたり、178期、第三四半期報告の提出延長に伴い、延期しておりました第三四半期決算について発表させていただきます。

独立監査人からは、第三四半期の、四半期連結財務諸表に対し、結論を不表明とする、と四半期レビュー報告書を受領しております。

当社といたしましては、監査人のご理解を得るべく、最善を尽くしてまいりました。監査委員会からも、一連の捜査はすべて完了し、調査の結果、2016年度第三四半期以外の期で、CB&Iストーン・アンド・ウェブスター社に関わる損失を認識すべき、具体的な証拠は発見されず、また、「具体的に修正を行うべき重要な事故はなかった」、との結論に至った旨の報告を受けておりますが、このような結果になり、誠に遺憾であります。

監査人から、具体的に修正を行うべき重要な指摘を受けていない以上、四半期報告書の提出期限の延長申請を改めて提出させていただいたとしても、今後、独立監査人から適正意見の表明をいただける目途が立たないことから、これ以上、株主・投資家をはじめとする、ステークホルダーのみなさまにご迷惑・ご心配をおかけすることはできませんので、極めて異例ではございますが、独立監査人からの結論の不表明という状態で第三四半期決算について公表させていただくことといたしました。

これまで、株主・投資家をはじめとする、ステークホルダーのみなさまには、決算ができない状況が続き、またこのような事態に至ったことに関しまして、大変なご迷惑・ご心配をおかけしておりますことを、心からお詫びを申し上げます。

本日、まず、これまでの四半期報告書提出期限延長の理由となった調査の概要及び結果につきましては、取締役監査委員会委員長の佐藤からご説明させていただきます。

東芝が置かれている状況

続きまして、2016年度第三四半期決算につきましては、代表執行役専務の平田からご説明させていただきますが、佐藤からの説明の前に、私から当社の状況についてかんたんにご説明を申し上げます。

まず、事業の状況についてですが、当社事業は、巨額の損失原因となった海外原子力事業を除き、概ね順調に推移しております。

なお、海外原子力事業につきましては、3月29日にご説明差し上げた通り、ウェスティングハウス社等が米国連邦倒産法第11章に基づく再生手続き申し立てを行ったため、当社の連結対象からは除外されております。この非連結化は海外原子力事業のリスクを遮断することを目指す当社の方針にも合致すると判断しております。

また、当社は財務状態の改善に向けて、2016年度に約1600億円の保有資産の売却を行うとともに、役員の報酬返上、役職者の給与減額、役職者・一般者の給与減額、諸手当・日当などの削減といった緊急対策等のあらゆる施策を実施してまいりました。

加えまして、メモリ事業のマジョリティ譲渡を含む外部資本導入を検討しており、2017年4月1日付けでメモリ事業の分社化を完了し、現在、譲渡先の選定プロセスを進めております。

当社としては、このような施策の実施に加え、メモリ事業の事業価値も考慮すれば、実質的には十分な財務的基盤を保持しているものと考えております。

資金の状況について

次に、資金の状況についてご説明いたします。

これまで当社はメインバンク、準メインバンクのみなさまをはじめとする借入先金融機関様から支援・協力を継続して得るべく、誠実に説明を重ねてまいりました。メインバンク、準メインバンクのみなさまを中心に、引き続きのご支援をいただいております。今後、資金面の不足の事態にいたらないよう、万全の体制を構築し、必要な措置を講じてまいります。

最後に、2016年度通期の決算手続きについてご説明をいたします。2016年度第3四半期決算手続きの延長により、年度決算に関する監査手続きは時間を要するものと考えておりますが、5月中には決算内容を公表する予定であります。

当社は、社会インフラ、エネルギー、電子デバイス、ICTソリューションといった注力事業を中心に、たしかな技術で持続可能な社会に貢献していくことが我々の社会的使命であると認識しております。この社会的使命を完遂するために当社は全力を尽くします。

決算延長により毀損した信頼の回復に向け、引き続き誠心誠意全力で取り組んでまいりますので、ご支援、ご理解をいただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。それでは、佐藤からご説明をいたします。

監査委員会の見解

佐藤良二氏(以下、佐藤):佐藤でございます。監査委員会としての見解と、四半期報告書提出期限延長の理由となった調査の概要および結果についてご説明します。

まず、監査委員会としての見解を説明します。

当社とウェスチングハウス社は、昨年12月より今月まで独立監査人との協議、および独立監査人からの示唆にもとづき、弁護士等の独立した第三者を起用して、ウェスチングハウス社のストーン・アンド・ウェブスター社買収に伴う損失に係る一連の調査を真摯に実施してまいりました。

3ヶ月以上にわたる調査において、一部経営者について、限定された範囲・期間で、不適切なプレッシャーとみなされる言動が認められました。この一部経営者については、ウェスチングハウス社の経営に関与させない等、抜本的な措置を講ずることを執行側に要請し、その後、措置が実施されたことを確認してります。

一方、不適切なプレッシャーとみなされうる言動が認められたものの、当社およびウェスチングハウス社の内部統制は有効に機能しており、財務諸表に影響を与えなかったと判断しております。

続いて、独立監査人によるレビューの結果についてです。

独立監査人からは、本日、2016年第1から第3四半期の四半期報告書について、大変残念ながら結論を不表明とする報告書を受領しております。独立監査人は、最終的な調査結果の評価が完了しておらず、その結果、四半期連結財務諸表の修正が必要となるか否かについて判断することができなかったとしています。

一方、監査委員会としては、2016年度第3四半期以外の期で本件損失を認識すべき具体的な証拠は発見できなかったと判断しており、一連の調査は完了したものと判断しております。当社は独立監査人の理解を得るべく、これまで多岐にわたる調査を実施し、最善を尽くしてまいりましたが、このような結果になりましたことは誠に遺憾に存じます。

調査の概要

続いて、調査の概要を説明いたします。これらの4つの調査は、3ヶ月以上にわたって行われました。調査においては60万通以上に及ぶメールの調査や、数十名を対象としたインタビュー調査を実施しました。

調査1では昨年12月にウェスティングハウス社が買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社に関して多額の損失を計上する可能性が判明したことを受け、2016年第3四半期より前の会計期間におけるCB&Iストーン・アンド・スター社買収に伴う損失の認識可能性の有無について調べました。

当社は、当社およびウェスティングハウス社の役員・従業員、合計15名に対してインタビューを実施するとともに、これらの役員・従業員らの電子メールのデジタルフォレンジック調査を実施した結果、当社およびウェスティングハウス社が2016年12月以前に財務諸表に織り込むことができるような角度をもって本件損失を認識しえたとの証拠は認められませんでした。

調査2では、ストーン・アンド・ウェブスター社の買収に伴う取得価格配分手続きの過程における、一部経営者における不適切なプレッシャーを存在を示唆する内部通報にかかる調査を実施しました。

調査では、内部通報にて言及された不適切なプレッシャーをかけたとされる者、目撃者などとされる者の合計25名に対するインタビューおよび、これら関係者の電子メールのデジタルフォレンジック調査を実施しました。

その調査の過程で、一部経営者による不適切なプレッシャーについて他の関係者からも供述があったため、当社、ウェスチングハウス社、その他当社グループ会社に調査範囲を拡大し、調査3を行うことを決定いたしました。

調査3では調査2の調査をさらに拡大し、一部経営者による不適切なプレッシャー等の存否やその影響範囲を調査しました。調査の過程で関係する役員および従業員、合計40名を超える対象者にインタビューを実施するとともに対象者60万件に及ぶ電子メールのデジタルフォレンジック調査を実施しました。

その結果、一部経営者につき、本件損失を不適切な程度まで低減するため、不適切なプレッシャーとみなされる言動が認められました。この一部経営者については、ウェスティングハウス社の経営に関与させない等、抜本的な措置を講ずることを執行側に要請した次第です。

調査4では独立監査法人からの示唆に従い、調査1の追加調査として、特定の4件の事象にかかる会計処理における本件損失の認識可能性の有無を調べるために、調査1で収集した電子メールを追加で調査した結果、当該事象4件についても、本件損失を認識した事実は確認できませんでした。

最後に本件調査の経緯についてご説明します。

ここにありますとおり、昨年12月末に損失計上の可能性について公表して以来、以降、3ヶ月以上に渡り独立監査人からいただいた度重なる示唆、ご指摘に対して監査委員会としては、真摯に調査を実施したうえで、すべて回答しております。監査委員会としては、一連の調査はすべて完了し、調査の結果、連結財務諸表の数値に影響をおよぼす事象はなかったとの結論に至っております。

私からの説明は以上です。

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「技術と人材を守るべき」 専門家に聞いた東芝“再建”の可能性〈AERA〉

 沈まぬはずの“電機の巨艦”が1兆円超の巨額損失の渦に飲み込まれようとしている。原因は原発事業の失敗だ。成長期や昭和のニッポンを力強く牽引し、明日は今日より豊かな生活をもたらした名門企業で、一体何が起こったのか。そのとき社員や関係者は何を見て、どう感じたのか。そして何が元凶だったのか。AERA 2017年4月17日号では「苦境の東芝」を大特集。

 日本のモノ作りの将来を、もう一度担いたい。その夢は叶うのだろうか。関係者やジャーナリストの分析を紹介する。

●「技術と人材を守るべき」(経済ジャーナリスト/磯山友幸 55)

 3月末の記者会見も辻褄合わせに見えました。WHに破産法をかけたからといって、なぜリスクが遮断できると言い切れるのか。再生の絵が描けているとは思えません。

 東芝メディカルシステムズ売却前にWHの損失がわかっていたなら、東芝自体に会社更生法を適用し、採算部門を残し、再建策を取るべきだったでしょう。現在の事業売却は債権回収に回っているだけで、エレベーターや原発の再稼働で十数万人もの社員を養えるとは到底思えない。稼ぎ頭をここまで切り離したら、再建は極めて難しいでしょう。

 日本的企業が行き詰まるケースは今後も増えるでしょう。過剰に債務を抱えた会社の法的整備は、悪ではなく、必要であるはずです。日本では銀行と株主が守られ、社員がないがしろにされている。シャープは鴻海に売却されたが、本当に社員のためになったのか。東芝の存続云々ではなく、廃炉へ向けた原子力技術も含め、日本の技術や人材を守る視点が必要だと思います。

●「経営判断はまっとう」(静岡大学創造科学技術大学院特任教授/竹林洋一 65/1980~2002年在籍 研究開発)

 私が知る東芝は「まっとう」な会社です。1980年に配属された研究所は画期的な技術を研究開発し、事業部は社会に役立つ商品開発をする、本物のプロ集団でした。85年にMITメディアラボに留学し、人工知能の第一人者マービン・ミンスキーと知己を得ましたが、当時の技術トップや研究所の幹部の教養や知識は、彼らと対等に議論できるレベルでした。

 99年、異部門経験のため青梅工場の次世代パソコン開発部に着任した際の取締役は、後の社長の西田厚聰さんでした。国際感覚が豊かで、知性と教養がある経営者です。米国での打ち合わせで彼は私にこう言いました。「竹林くん、企業は成長だよ」

 西田さんは東芝成長のため、「選択と集中」で半導体とエネルギーに注力する戦略を取りました。PWRの原発技術を持つWHを買収し、世界で受注できる環境を整える。その当時の経営判断は、どう考えても「まっとう」です。成長にはリスクが伴うもので、結果からの批判をしてもあまり意味がないと感じます。2002年に大学に移ったので、その後は東芝で何が起こったのか把握していませんが、15年に発覚した不正会計と、今回の損失を一緒にすべきではないと思います。今の経営陣にはプライドが感じられないのが残念です。

 私自身は東芝で仕事をしたことを誇りに思っています。東芝が「まっとう」な企業であろうとした誇りは失ってはいけないと、強く思います。

●「役員一新せねば再生はない」(青山学院大学/八田進二教授 67)

 凋落の理由に指名委員会がある。前任の社長が後任の社長を選ぶと、恩義もあり自由にモノが言えなくなる。東芝は2000年にいち早く指名委員会設置に移行したガバナンス先進企業だったが、指名委員会は前任トップの指名を追認するだけになっている。

 東芝の場合、退任後も会長職や相談役などで影響力を持ち続ける。不正会計問題の引責辞任で田中久雄氏の後を継いだのが、室町正志前社長。指名したのは西室泰三元会長だ。室町氏は不正会計の社内調査の陣頭指揮をとったが、協力が得られず、数カ月で匙を投げ、第三者委員会ができた。こうした人をなぜ社長にするのか。東芝も、短期間で復活に成功したJALの例にならい、役員の一新と風土改革を断行しなければ再生はできない。

●「外部環境の変化に弱い」(エース経済研究所 アナリスト/安田秀樹 44)

 WH買収時点では、東芝も投資家の多くもリスクを認識できず、むしろ優良物件とみていました。ところが、震災と相次ぐテロで規制が強化され、状況は一変しました。液化天然ガス事業でも同様の事態が起こり得るとみています。原油価格が下がった結果、事業に見合う顧客を確保できていません。東芝側の費用は20年間で最大1兆円になる可能性があり、見積もりが甘い印象。日本企業は事業環境を安定的に捉え、変化を想定しきれない傾向が強い。失敗の元になっています。今後、東芝の中心事業となるのは外部環境の影響を受けにくいもの。債務超過を解決し安定成長企業へ脱皮できるかがカギでしょう。

●「日本の電機業界は役割を終えた」(元技術系社員/男性 52/1989~92年在籍)

 東芝危機の一番の原因は、国内電機メーカーの置かれた状況が変わったからではないか。現存の事業を守り、原発も頑張ろうとしたが、無理をしすぎた。電機メーカー大手は、アメリカはGE、ヨーロッパはシーメンスやフィリップスくらいしか残っていない。現在は複数の会社がひしめく日本もいずれ淘汰され、1社になるだろう。

●「半導体売却は致命的な損失」(中央大学/竹内健教授 50/1993~2007年在籍 研究開発)

 半導体事業の売却は、無念というほかありません。東芝の半導体の競争力は30年かけて培ってきたもの。今後も収益を上げ続けるだろう半導体事業の、日本で最後の勝ち組です。フラッシュメモリー市場には数社しか残っておらず、合従連衡を積極的に仕掛ける側のはずだったのに、原発事業の巨額損失で、競合企業に買われることになってしまった。分社化した東芝メモリが上場するまで、1年限定で国有化するなどして、対処できないのか。目先の資金繰りばかりしていて、戦略がなさすぎる。

 東芝メモリの経営権を失うことは、この分野の未来を失うことを意味します。日本が世界を主導するはずだったモノづくりがひとつ、終わろうとしているのです。

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