ヘッドフォンでも迫力満点で映画を楽しむ方法
仕事を終えて帰宅するともう深夜。映画を見たいと思い立っても、家族や近所の目が気になってそうそう音量は上げられません。そんな人も多いのではないでしょうか。今回は、周囲を気にせずに使えるヘッドフォンで映画を楽しむ方法を紹介します。
パナソニック「RP-WF70」は4月下旬に発売予定
●サラウンドヘッドフォンを使ってみる
家電店に行くと、映画向けのサラウンド対応ワイヤレスヘッドフォンが売られています。これらは基本的に、人間の耳が音を捉える仕組みを利用した“頭部伝達関数”をもとに作られたバーチャル(擬似)サラウンド技術を採用しています。代表的な製品は、ソニーの「MDR-HW700DS」、パナソニック「RP-WF70」など。このうちソニー製品は、9.1chに相当するバーチャルサラウンドが楽しめるというもの。またパナソニック製品は7.1ch相当ですが、先日リニューアルを発表したばかり。装着性の向上などグレードアップを果たしています。
これらのサラウンドヘッドフォン、音に包まれるような感覚は得ることができますし、思わぬ方向から音が聞こえたときはけっこう面白いです。音に包まれる感覚としては一般的なサウンドバーよりは上。といっても実際にいくつものスピーカーをそろえた環境には遠く及びません。
また、これらの製品は家庭のテレビやBlu-ray Discレコーダーとの接続を前提としたもので、音声入力はHDMIや光デジタル端子が中心です。スマートフォンやタブレットとの組み合わせについてはほとんど考えられていませんので、例えばスマホのアプリで動画配信サービスを利用するといった場合には使いづらいスタイルとなっています(アナログRCA-ステレオミニケーブルを用意すれば接続は可能)。
そもそも「ワイヤレスヘッドフォン」といっても入出力端子や回路基板の入ったボックスとヘッドフォンの間を無線接続する方式なので、ポータブルではなく“据え置き型”です。スマホユーザーが親しんでいるBluetoothヘッドフォンとはコンセプトから異なる製品ですので、混同しないようにしましょう。
●迫力だけと割り切れば重低音ヘッドフォンもあり
映画館の音響を考えたとき、サラウンドの包まれ感とともに重要なのが重低音です。アクションシーンを盛り上げ、観客を映画の世界観に引き込む重要な手段。なにより、近年はクラブ音楽などのトレンドにのって重低音に着目したヘッドフォンが増えています。これを利用しない手はありません。
重低音ヘッドフォンといえば、オーディオテクニカ“SOLID BASS”とソニーの“EXTRA BASS”が双璧。どちらも豊富なバリエーションを持っていますので、普段使いにちょうどいい製品を選び、映画視聴時にも活用するという使い方がおすすめです。
そのほかの重低音モデルとして、JVCの「XX」シリーズとSkullcandyの「Crusher」を挙げておきたいです。中でもCrusherは、低域の強調と同時にヘッドフォン自体が振動するというユニークなギミック付き。この極端な低音がけっこう映画視聴に合います。考えてみれば、映画館の低音ってかなりの量感を持っているので、極端なくらいでちょうどいいのかもしれません。
●普通のヘッドフォンで本格サラウンドを体験?
普段、使用しているヘッドフォンが活用できて、本格的なサラウンド感を楽しめる技術もあります。それが「DTS Headphone:X」(以下、ヘッドフォンX)。DTSという社名は、映画館やDVD/BDで見たことがあるのではないでしょうか。いわゆるサラウンドフォーマットを作っている会社です。
ヘッドフォンXは、あらかじめ映画などの音声に処理を加えることで、バーチャルな11.1chサラウンド音場を作り出します。それもヘッドフォンの“脳内定位”ではなく、自分の周りをスピーカーが取り囲んでいるかのように感じられる不思議な技術。思わず「どこから音が出てるの?」と言いたくなるほどのサラウンド感が魅力です。
そして最大の特徴は、既に触れたように特別なヘッドフォンが必要ないこと。デコーダーも一般的なBlu-ray Discレコーダーが普通に搭載しているDTSデコーダーで対応できるため、ユーザーは追加投資の必要がありません。なお、2013年の技術発表後、“ヘッドフォンX対応”をうたうヘッドフォンが一部メーカーから発売されましたが、技術に最適化したチューニングという意味であって必須ではありませんので注意してください。
このようにハードウェア面では手軽に使えるヘッドフォンXですが、実はソフトウェア――つまりコンテンツがとても限られています。既に世に出ているのは、劇場版作品のBlu-ray Discがメイン。例えばBD版「暗殺響室」(スペシャル・エディション)や「アンフェア the end」「ガールズ&パンツァー劇場版」(特装限定版の特典)や「劇場版 進撃の巨人 前後編」(初回特典として収録)など。現在のところ、特典としてヘッドフォンXの音声信号が収録されるケースが多いようです。
以上、ヘッドフォンを使い、映画を迫力のある音で楽しむ方法を3つ紹介しました。それぞれの特徴をまとめると以下のようになります。個人的に推したいのはヘッドフォンXですが、やはり対応コンテンツの少なさがネック。今後の展開に期待したいと思います。
重低音が足りない? よろしい、ならば「クラッシャー ワイヤレス」だ
正直「Skullcandy」(スカルキャンディ)ブランドのヘッドフォンはイロモノだと思っていました。今でもイロモノだと思ってますし、同じように捉えている人は多いはず。なにしろ、ある会社の製品担当者と会ったとき、「弊社製品はイロモノだと思われているかもしれませんが……」と切り出したのですから、まちがいありません。
そもそも製品名がおかしいです。「Crusher」(クラッシャー)ですよ。頭に装着するヘッドフォンの名前が「破砕機」(直訳)って怖すぎるじゃないですか。ドクロマーク付いてるし、色も妙に派手だし、装着してみたら耳の周りで何かが激しく蠢(うごめ)いているし……これ、なんてホラー?
そう、クラッシャーという名前は、イヤーパッド自体が揺れて頭に振動を伝える珍しい機構に由来しています。大きなマグネットを持ち、入力された音声信号の低域のみ(55Hz以下)に反応して激しく揺れる、音よりも振動に特化したスピーカー「クラッシャーユニット」。それがハウジングの中に仕込まれています。
左ハウジングの側面――手を伸ばしたときの後ろ側にスライダーがあり、ここで重低音と振動の度合いを調節できます。一番大きくしたときは、まさに重低音マシマシ&振動ブルブル。逆に一番小さくすれば普通のヘッドフォンに毛が生えたレベルにまで落とせますので、普通に音楽を聴くことも可能です。
とはいえ、クラッシャーはやはり、ドコドコと迫り来る重低音に身を任せてタテノリで楽しむのが正しい使い方でしょう。普通のヘッドフォンでは低音が足りない、体を震わせるような重低音を楽しみたいという人にはもってこい。ライブ会場のアリーナ席……というよりPA機器の前にいるような感覚を楽しめます。
良い意味で普通になりました(外観のみ)
そんなクラッシャーですが、実はワイヤレス版が追加されます。Bluetooth 4.2対応の「Crusher Wireless」(クラッシャーワイヤレス)は、デザインが随分と大人しくなり、文字通り大人でも使えそうな雰囲気。とくにブラックはスカルマークもグレーになって控えめ。誰が装着していても普通のワイヤレスヘッドフォンにしか見えません。
内蔵のダイナミックドライバーは40mm径となり、合わせてクラッシャーユニットも新開発。反応する周波数帯を45~75Hzに広げ、揺れ方の強弱も幅が広がりました。例えるなら、クラッシャーはバスドラムにだけ反応するけど、クラッシャーワイヤレスはそれに加えてタムやギターのベースにも反応するといったイメージ。まあ、実際にはそんな単純ではありませんが、要するに振動する場面が増え、分かりやすく強弱がつくわけです。
さらに従来のクラッシャードライバーは左右にあっても同じ動き方をしていた(=モノラル)のですが、今回はステレオ化を実現。左右の音声信号に個別に反応します。オーディオ・ビジュアル的にいえば2.2ch仕様ですかね。
音質面では、特殊な低音を除けば意外と普通。低域が膨らんでドコドコ&ボワボワするのは本当に好き嫌いが分かれるところですが、従来機同様に調整できますし、音楽の重低音再生以外にも面白い使い方ができます。
例えばスマホで見る動画。クラッシャーワイヤレスなら、Youtubeのどうでもいい動画やいらないCMも無駄に大迫力で楽しめます。ゲームも同様で、「Pokemon Go」などは起動直後から一大スペクタクル。ポケストップを回すという行為が大冒険に変わります。まあ、すぐに慣れますけど。
一番気に入ったのは、huluやNetflixで映画や海外ドラマを見るときに使うこと。映像コンテンツなら常時激しく揺れるわけではありませんし、逆に盛り上がるシーンにはBGMやSEが入るため、クラッシャーワイヤレスが揺れて一緒に盛り上げてくれます。正直、音楽用として売るより、「映画向きの2.2chヘッドフォン」のほうが適しているんじゃないかと思えます。
クラッシャーやクラッシャーワイヤレスがヘッドフォンとしてイロモノであることは間違いありません。でも、突き抜けたイロモノはマニア以外の人の心にも響くもの。とりあえず面白い製品であることは間違いありません。
もう1つ重要なのは、やはり従来のクラッシャーに比べてデザインが普通になったこと。ブラックのほかにホワイトもあり、モバイル環境でも映画を楽しみたい人はもちろん、おっさんだけど重低音大好きという人でも安心して使えます。
クラッシャーワイヤレスの発売は4月7日。週末から店頭で展示が始まるらしいので、興味のある方は試聴してみてはいかがでしょうか。きっと震えますよ(文字通りの意味で)。
