部下にイラッ!怒りたい時の対処法には4つのパターンがある
皆さん、こんにちは。澤です。
今回は「アンガーマネジメント」を解説するシリーズの最終回です。
怒りの正体は「べき」という言葉に集約することができ、自分の中の「こうすべき」「こうあるべき」という思考が周囲の認識とズレる際に怒りが生まれることをお伝えしました。
また、三重丸は「自分と同じ」「自分と違うが許容範囲」「自分と違う・許容できない」の3つの領域(図では円)から構成されており、ふたつ目の「自分と違うが許容範囲」の領域を広げていくことが大事だと説明しました。この領域が広がることは、他人との価値観の違いを受け入れられるようになることで、それはグローバル人材としての成長に不可欠な要素を手に入れることにつながります。ぜひ、「べき」にとらわれない思考を心掛けてみてくださいね!
さて、今回はいよいよ最後の暗号「分岐」(上の図では右端)を扱います。「分岐」は、皆さんの行動に影響します。
暗号3:分かれ道・行動のコントロール
自分の「べき」と現実の間にギャップがあるときに怒りを感じるということは既にお伝えしましたが、今回は、自分が「こうあるべきである」「こうするべきである」と感じる人・物・出来事がどうしてそう感じられるのかということをもう少し整理したいと思います。
あまりピンと来ないかもしれないのですが、世の中にある様々な事象に対して人の感じ方には差があるのと同時に、その事象に対して自分が働きかけることができるかどうか、そして事象が本人に与える影響にも大きな差があります。それらが全く整理されずにごちゃ混ぜになると、「損をする怒り」を感じたり、後悔する行動を起こすことになります。
怒りを感じる事象は、「コントロールができる」「コントロールができない」の2つに分けることができます。その分かれ道の先で、さらに「重要である」「重要ではない」に大別することができます。その振り分けをすぐに行うことによって、その後の発言や行動に大きな差が生まれます。これを日本アンガーマネジメント協会では「行動のコントロール」と呼びます。
何か怒りを感じるような出来事に直面した時は、すぐにそれに対する自分の感情の振り分け作業に入りましょう。具体的な手順を説明します。
最初の振り分けとして、その事象は「自分が何かすることによって、改善ができる」「自分が何かしたところで、変わらない」という2つのどちらに当てはまるのか、瞬時に考えてみましょう。怒りを感じたら6秒待ってピークをやり過ごし、許容できるものなのかどうかを見極め、さらに自分の行動で何かが変わるかどうかを見極めましょう。
この分岐のプロセスにおいて、ビジネスでありがちなパターンは、相手が「部下」「後輩」「目下の人」だった時には「変えられる・コントロール可能である」と考える人が圧倒的に多いということです。また、「自分が顧客である場合」にも、なぜか万能感を持ってしまう人が多いように感じます。特にそれは大企業には顕著に表れる傾向があり、私自身も非常に多くの現場を目撃しました。そのような方々が怒っているときは「金払ってるんだから、今すぐにやれよ!」とか、その手のセリフがよく出てきますね。
変えられるのか、変えられないものなのかを見極めたのち、次はその事象が重要なのかどうかを判断します。
起こっている事象を2段階に振り分けることで、最終的に4つのパターンに当てはまります。このパターン毎に取りうる対応が変わってきます。それぞれのケースについて考えてみましょう。
(1)変えられる・コントロール可能 & 重要である
これは、例えば「とても危ない」「大きな問題につながる」というような事態に直結するような場合ですね。
ビジネスシーンであれば、「セキュリティ上の問題となる」「コンプライアンス違反につながる」「その人のキャリアに大きなマイナスとなる」などが挙げられます。具体的な例を一つ考えてみましょう。
あなたの部下が、機密情報の入ったExcelファイルを無造作に添付してメールで送信していたとします。たまたま自分に届いていたからよかったものの、もしこれがアドレスの記入ミスなどで外部に漏れてしまったら、役員全員が記者会見をしなくてはならないくらいのマイナスの影響が考えられます。
これはまさに「そのような行動をやめさせる」というのがマネージャーでもあるあなたの仕事となりますし、「伝達手段としての怒り」を使う場面でもあります。しかし、ここでの怒りにありがちなセリフがあります。
「何でそんなことしたんだ!これが外部に漏れたらどうする気だ!」
「君は暗号化も知らないのか!そんなの常識だろう!」
「そもそも前から思っていたんだけど、肝心な時に君は失敗するな!」
これらのセリフは、何かを生み出すものでしょうか?単に自分の感情をぶつけているだけであり、今後の失敗を防ぐものでも相手の成長を促すものでもありません。
「変えられる・コントロール可能&重要である」場合の怒りのパターンで肝心なのは、一言で表すなら「具体的であること」です。「いつまでに・どれくらい・どのようにすれば」満足なのかを具体的に示すことが必須条件です。
例えば…
「これが外部に漏れたら、うちの会社は致命的なダメージを受けることになる。今日中に再発防止のためのアイディアを私に送ってくれるかな?」
「うちの会社のメール暗号化の仕組みは知ってる?設定してなかったら、今すぐ設定してからテストで私にメールを送ってくれる?」
「このメール、覚えてる?先月にも同じような失敗をしてたよね。何度も繰り返すと信頼を取り戻せなくなるから、今日の10時から対策のミーティングをしよう」
まどろっこしいようですが、ここで重要なのは「同じ失敗を繰り返させないこと」なので、時間を投資するしかありません。具体的なアイディアを与えることで、怒らなければならない場面が再発しないことを目指しましょう。
(2)変えられる・コントロール可能 & 重要ではない
自分が動くことで変わることはわかっているけれど、さほど重要なではないかな、という事象に関しては、「慌てず、余裕があるときにやればいい」という心構えで臨みましょう。重要ではないものに対してイライラするのは、正直ちょっともったいない時間の使い方ですので、怒りに反射することなく、遠慮なく「先延ばし」にすることを選びましょう。
ビジネスの場面でこのパターンに当てはまるのは、「部下のあまりよくない癖に気づいたとき」などがあります。
例えば、ちょっと机の上が乱雑とか、ちょっと遅刻することが多いとか。致命的なところまではいかないものの、やっぱり直してほしいと思うこともあるでしょう。その場合に下記のような言葉をつい言ってしまったらどうなるでしょうか。
「なんでちゃんと机の上を片付けられないんだ!そんなことだから仕事も雑になるんだ!」
「遅刻するのは社会人の基本のキがなってない!最低限のマナーすら守れないのか!」
これらの言葉をかけられて、相手が自分の行動をポジティブな気持ちで変えることは、まずなさそうですね。場合によっては、より大きな反発を招いてしまい、より一層イライラが増してしまうかもしれません。
果たして、ごちゃごちゃした机はあなたの人生に大きな影響を与えるものでしょうか?その人のプチ遅刻は、ビジネスに致命的な影響を与えるものでしょうか?もし答えがイエスなら、それは「重要である」にカテゴライズされ、具体的な解決策を考える価値があります。もし、「ちらかった机が視界に入るとイラッとする」とか「少しの待ち時間が気に食わない」という程度なら、「期限を設けずに改善を促す」というアプローチはいかがでしょうか。
「机の上が片付いている方が仕事の生産性があがるってレポートがあるみたいだよ。デキる人間の仲間入りする第一歩を踏み出してみたら?」
「君は得だね、遅刻をしなくなるだけで確実に評判が上がるんだから。今できていることが、相乗効果でもっと高く評価されるようになるかもね!」
しょうがないなぁこいつは…と思う相手に上のようなセリフが言えたら、それはそれでかっこいいと思いませんか?ぜひ試してみてください。
3)変えられない・コントロール不可能 & 重要である
変えることはできないけれど、重要度は高いというものはどんな事象が考えられるでしょう?これはかなりストレスフルな状況がいくつか例として挙げられます。
出張するための飛行機を予約しているのに、渋滞に巻き込まれたとか。超重要顧客向けのプレゼン当日に、列車が人身事故で全く動かないとか。
これはどうやってもコントロールのしようがありません。動かない車列の中でやたらとクラクションを鳴らしたところで、車がスムーズに流れ出すことはありませんし、駅員さんに「電車を早く動かせよ!」と詰め寄ったところで、事故の処理が速く終わることもないでしょう。
もちろん、「こんなことなら電車で行けばよかった…」という悔しい気持ちや、「アポの時間に遅れたら今までの努力がパーだ…」という焦る気持ち、これらの一次感情で心が満たされてしまうのは仕方がありません。それはそれで自然な感情ですから。しかし、そのまま二次感情の「怒り」爆発させてしまうのではなく、ここはひとつアンガーマネジメントを発揮してみましょう(※一次感情・二次感情については第10回の記事で説明しています。詳しくは、こちらをお読みください)。
ではどうすればよいでしょうか。怒っても何も解決しないなら、とにかく「今何ができるのか」に集中するしかないですね。
渋滞で動けないなら、その間にスピーカーホン機能などを使って、予約時間をずらせないか試みたり、電車が動かないなら、ほかの同僚に代わりに行ってもらえないか打診したり、いざとなったら電話で超熱演してプレゼンしたり(相手のIT環境によってはSkypeなどのツールを使うことだって一つの手段ですね)。
コントロール不可能な状況において、ベストの行動ができるのは、まさしく「デキる」グローバル人材といえるでしょう。何しろ、世界には日本のような安定したインフラがない国がたくさんあり、その中でも大活躍している人材が大勢いるのです。ちょっとした交通インフラのトラブルなどに負けず、できる限りのことをしてみましょう。
(4)変えられない・コントロール不可能 & 重要でない
では最後は「変えられないし、かつ重要でない」というものについての対処法です。これはとても簡単です。「放っておく」、これに尽きます。
このカテゴリに入るものは、どんなものが考えられるでしょうか?例えば芸能人のゴシップ。本当にどうでもいいですね。だれが浮気しようと、だれが離婚しようと、実にどうでもよくないですか?(笑)。それなのに、妙にその事象に対して怒る人もいます。
「あーゆー浮気の仕方とか、許せないんだよね~~~!おまけにあのインタビューの答え方!本当に腹が立ってくる!」とか、別にその人は身内でも何でもないんですし、そこまで怒らなくても…と思います。
そんなことより、もっと考えることやもっと楽しめることは世の中にたくさんあります。できる限り放っておいて、自分に人生を生きましょう。
ちなみに、この「放っておく」技術が高くなると、前回ご紹介したふたつ目の暗号「三重丸」のうち二番目の丸にあたる「自分と違うが許容範囲」の領域が広くなります。ここが広くなれば、違う価値観をたくさん受け入れることのできる、魅力的なビジネスパーソンになることができるでしょう。
さて、3週にわたってアンガーマネジメントの「三つの暗号」をご紹介してきました。いかがでしたでしょうか?
アンガーマネジメントは、誰でもできるメソッドですし、人生を豊かにするためにとても役に立つ考え方です。ぜひ活用してみてください。
