上手く怒られるための3手法、妙に丁寧なメールは赤信号!
皆さん、こんにちは。澤です。
過去5回にわたって、アンガーマネジメントをテーマにお送りしました。怒りを感じるメカニズムと、怒りの感情に振り回されてしまわないための考え方やメソッドについてお伝えしました。読者の皆様から、いろいろな形でフィードバックをいただきました。
「6秒待つことを実践してみたら、いろんな変化が自分に起きた」
「怒りが沸いた状況の棚卸をしてみたら、自分の中にすごくたくたんの『べき』があることに驚いた」
「いろんなことに対して怒っていたけど、自分で優先度付けをしたら『放っておく」のも一つの手だと理解した」
アンガーマネジメントは、日々の練習がものをいうものです。ぜひとも継続して意識していただければ、記事を書いた者としてはとても嬉しく思います。
さて、今回は皆さんが「怒られる側」になった場合の対処を扱います。おそらく、この記事を読んでくださっている方の全員が、仕事やプライベートで何かの形で「怒られる」という経験をしているのではないでしょうか。
怒られて嬉しかったり楽しかったりする人は、あまりいないと思います(学びがある、ということはあると思いますが)。でも、どうしたって怒られてしまう機会は発生するでしょう。
小売業なら、買った商品に傷がついていたと怒られたり。
製造業なら、説明書通りにデバイスが動かないと怒られたり。
IT業なら、仕様書のパフォーマンスが出ないと怒られたり。
どの業界でも怒られる機会はいくらでも転がっています。では、どうすれば「うまく怒られる」のでしょうか?アンガーマネジメントの知識も活用しながら、いくつかのTipsをご紹介していきたいと思います。
● うまく怒られるための 3つの行動原則
「あ、自分は今怒られているな」と思ったら、行動原則があると私は定義しています。その原則を3つお伝えします。
(1)相手の第一次感情に注目する
まずは、相手の第一次感情に目を向ける習慣づけをしましょう。怒っている言葉や表情などに気を取られすぎたりその内容ばかりを追っても、あまり意味がありません。
怒っている人の第一次感情にどんなものがあるのかを見極めましょう。こちらは後で詳しく触れます。
(2)相手をコントロールしようとしない
怒っているときは、脳がほかのことを処理できない状態になっていることが多々あります。もしくは、非常に稚拙な反応しかできない状態になり、なだめるためにこちらがコントロールしようとしていると感じた瞬間に、さらなる怒りを引き出してしまう可能性があります。
アンガーマネジメントの基本理解でもある「過去と他人は変えられない」ということを思い出しましょう。
(3)怒っている相手にアンガーマネジメントを勧めない
これ、ホントにやめてください(笑)。でも、ついやってしまう人がいるのも事実なんです。
怒っている人は、理性的な選択をすることができない状態である場合が多いです。そんな人にアンガーマネジメントをうかつに勧めると、アンガーマネジメントそのものを否定しにかかってくるかもしれません。そうなると、その人は二度とアンガーマネジメントに近寄らなくなるリスクがあります。ぜひ、お勧めするなら平常時にお願いします。
では、私が考える「怒られるための3つのテクニック」をご紹介したいと思います。
● テクニックその1 「でも」「しかし」「そうではなくて」をいきなり言わない
相手がカンカンに怒っているとき、「あれ?この人は前に言ったことと違うこと言ってるぞ」とか「うーん、明らかにこれは誤解だなぁ」とか気づいてしまうこと、ありますよね。その時、ついつい相手の話を遮ってしまった経験はありませんか。
<会話例>
A:「なんでこんなに価格が高いんだ!こっちには予算がないことくらい分かるだろう!」
B:「しかし、先日お客様が『まずはフルセットの価格を知りたいからその見積もりを作ってほしい』とおっしゃったもので…」
A:「なんだと?こっちに非があるとでも言うのか?証拠はあるのか?もういい、取引は白紙だ!」
こんな感じでしょうか。怒っている相手は、以前に軽い気持ちで口約束をしたのかもしれません。ただ、この会話の時点では明らかにあなたの見積書に対して不満を爆発させており、以前のことなど忘却の彼方です。
怒りの感情に支配されているときに、「過去に起こった事象の正確な説明」は、素直に受け取れない場合があります。小売業などの接客マニュアルには、「まず謝る」と書かれているものが多いようです(私が学生時代にやっていたアルバイトでも、そのように学びました)。
これは、相手の言葉をいったん受け止めるという姿勢を示すことです。怒っている相手との会話をするためには、「傾聴」の姿勢が大事になります。もちろん、とても理不尽なことで怒っていたり、支離滅裂なことを言ったりしている場合もあります。そのような場合にも、「聴く」という行為は大事です。
これは決してきれいごとで言っているわけではなく、ビジネス上の戦略にもつながるからです。
相手の「怒りポイント」を知ることで、その後のビジネスの障害をあらかじめ取り除くことにつながります。
営業担当者であれば、次の担当引き継ぎの時に「あちらの部長さんはこう会話するのが怒らせないコツだよ」と申し伝えることもできるわけです。あるいは、もう取引先としては魅力的ではなかったり、社内であれば非常に問題のある言動をする人だったりする場合には、相手の言葉をしっかりと聞いておくことで、論理破綻や不正確な理解による暴言などの証拠を押さえることもできます。
さすがに録音するのはいろいろ差し障りがあるかもしれませんので、あとで当日の会話に関する確認をメールで知らせる際に「このようにおっしゃっていましたが…」と明記&周知するという手が使えます。その時に「おれはそんなこと言った覚えはない!」といった回答が得られれば、実質的な「発言撤回」を得たという証拠になります。
怒っている人を相手にするときは、まず受け止める。しんどいかもしれませんが、これが必勝法といってもいいかもしれません。
● テクニックその2 謝りすぎない
前段で「まず謝る」とは言ったものの、謝りすぎるのは避けた方が賢明です。あまりに謝りすぎてしまうと、思ってもみない二次災害につながることがあるからです。
ただただ謝る姿を見ているうちに、攻撃本能が目覚めてしまい、さらなる罵詈雑言を投げかけてくる人がいるのも事実です。あるいは、つい過度に謝罪を続けてしまったばっかりに、割に合わない条件でオーバーコミットを求められたりすることもあります。
謝罪は、相手の怒りのピークをやり過ごし、次のステップに進むための準備です。もちろん、自分に非がある場合に謝罪するのは当然のことです。また、原因がはっきりしていない場合にも、ビジネスの場においては謝罪をしておく方がいろいろとスムーズに進むことが多いようです。
謝る、という行為は「相手が受けた不利益や、不快な思いに対して共感すること」と言ってもいいでしょう。共感は、人を動かす原動力になります。共感できることを探すためにもまず謝罪して相手から第一次感情を説明する言葉を引き出しましょう。
人の怒りは、一次感情によって引き起こされます。そして、その一次感情は外から見えないものです。相手の言葉によって知る必要があり、その一次感情を知れば具体的な解決策や、相手のもっともかけてほしい言葉などが分かるかもしれません。
<会話例>
A:「この前契約したクラウドサービス、全然動かないじゃないか!」
B:「大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません。さぞかしお困りだったことでしょう。よろしければ、どのような状況で動かなくなった教えていただけますか?」
A:「役員向けの説明の場で動かなくなったんだよ!おかげで恥かいたじゃないか!」
B:「弊社サービスをご紹介していただいたというのに、ご期待にお応えできず、本当にすみませんでした。もしよろしければ、次回は万全を期すために弊社エンジニアを控えさせていただくことはできませんでしょうか?トラブルが少しでもあれば、必ずリカバリーできるように準備いたしますので…」
もちろん、この提案が受け入れられるとは限りません。ただ、相手の「恥をかいた」という一次感情に対する共感を示す提案として「二度と恥をかかせないようにサポートする」という提案をすることができます。
謝罪の際に気を付けなくてはならないのは「怒りの原因への完全同意」と取られるような言い方をしないことです。これはオーバーコミットを強要される原因となります。
<会話例>
A:「この前契約したクラウドサービス、全然動かないじゃないか!」
B:「大変ご迷惑をおかけして申し訳ありません。クラウドサービスが動かないのは、本当にあり得ないことだと思っております」
A:「本当にそう思うんだな?であれば、稼働率100%を保証する、という契約書を作れよ?」
B:「いや、それは…」
A:「お前が今ありえないって言ったんだろうが!」
あぁ、IT業界にいる身としては、あるあるな会話すぎて恐ろしくなってきました…。謝罪がかえって怒りを増長してしまうパターンです。
謝りっぷりがいいことは、プラスに働くことが多いと私は考えています。また、謝ることは「負け」ではありません。より関係をスムーズにするための潤滑剤になることだってあります。怒り方と同様、謝り方も日々練習しておきたいものです。
● テクニックその3 怒りの前兆に敏感になる
会話やメールのやり取りの中で、怒り爆発の前兆が表れてくることがあります。会話中であれば、貧乏ゆすりやきつい視線、腕組みや天井を見上げるしぐさなど。メールであれば、妙に丁寧すぎる言い方や、いつもと違う言葉遣い、こちらの言葉を無視するような書き方など。
これらは、一次感情がすでにいっぱいになっている証拠であり、場合によってはすでに感情のコップが溢れて、コップのふちからすでに垂れ始めている状態かもしれません。
こうなったら、まずは緊急警報発令です。もう相手はこちらの話なんて聞いていませんし、メールもまともに読んじゃいません。
この時は相手の怒りへの対応を最優先事項にしましょう。相手が顧客であれば、
「なにか気になることがありましたら、ぜひおっしゃってください」
「もしよろしければ、率直なご意見を頂戴できますでしょうか?」
といった感じの対応になりますね。もし仮に相手が自分の部下や後輩だったとしても
「なんだその態度は!何か気に食わないことでもあるのか!」
と威圧的な態度で接するのは、まさに怒りの連鎖を生む行為といえます。部下たちは、よりいっそう心を閉ざしてしまい、さらにマネジメントが難しい状況になってしまう可能性があります。
アンガーマネジメントに興味を持ってくださっている読者の方であれば、
「もし何か意見があるなら、言ってごらん。言いにくいことなら、あとでゆっくり時間をとって聞くよ」
というように、相手と対立せずに寄り添う言葉をかけるのはいかがでしょう。そうすることで、部下は冷静さを取り戻し、自分の不満や問題を率直に伝えてくれるかもしれません。その時、あなたは「怒りの連鎖が断ち切られた瞬間」を感じることができるでしょう。
高ストレス社会において、怒りの現場を避けて通るのは極めて難しいものです。アンガーマネジメントの知識を得た読者の皆さんは、ぜひ怒りの連鎖を断ち切るという成功体験を通じて、より一層のキャリアアップにつなげていただければ幸いです。
