「単語力」を伸ばさなくても英会話はできる、これからは、英語が不可欠だ

「単語力」を伸ばさなくても英会話はできる

これからは、英語が不可欠だ。

そう言われ始めてから、はたしてどれくらいの時間が経っただろうか。会社からTOEIC受験を強制され、嫌々勉強しているビジネスパーソンも多いはずだ。しかし、「英語を使いこなせる日本人」は、なぜいまだにこれほど少ないのだろうか。
大前研一監修、ビジネス・ブレークスルー大学編の新刊『プロフェッショナル イングリッシュ』が刊行され、刊行記念イベントが行われた。執筆者のひとりであるスティーブ・ソレイシィ氏が紹介した、最強の「スピーキングトレーニング」の概要を紹介する。

まず、英語で話すときのことを想像してみてください。皆さんは、言いたいことをぴったり表す単語や表現を知らなかったり、とっさに思い出せなかった時にはどうするでしょうか。

 「英会話が苦手」という人の中には、単語や表現を知らないと頭の中が真っ白になって、「何も言葉が出てこない」という方も少なくありません。そういう方は、もしかしたら「自分が英語を話せないのは、単語力がないからだ」と感じているかもしれません。

 ですが、実は「ピッタリな英単語・表現」を探すより、知っている簡単な単語を使って「かみ砕き&言い換え」るほうが、はるかに伝わりやすくなります。

 実際、この「かみ砕き&言い換え」をマスターする、というか「別の言葉で言い換えて、かみ砕いて説明すればいい」ということに気がついただけで、それまでたどたどしくしか話せなかった人が、それをキッカケにスラスラと流暢に英語がしゃべれるようになった例を、これまでにたくさん見てきました。

 そのくらい、この「かみ砕き&言い換え」は、英語がしゃべれるようになるために重要で、有効なテクニックなのです。

「かみ砕き&言い換え」の極意

 そこで今回は、英語にしにくい日本語を「かみ砕き&言い換え」で、通じる英語にする方法をご紹介したいと思います。

■日本語には英語に直訳できない言葉がたくさんある

 日本で生まれ育った日本語のネーティブスピーカーである皆さんは、何かものを考えるときは母語である日本語で考えるはずです。英語をしゃべる時にも、慣れないうちはおそらく日本語で考えたことを、英語に直訳して(変換して)話そうとする人がほとんどでしょう。

 この「日本語で考え、英語に訳す」というプロセスの中に、実は英語が話せない人をつくってしまう大きな要因があるのです。

 改めて言うまでもありませんが、日本語と英語は「かなり違う」言語です。さらに、言語が生まれてきた背景である文化や習慣も、英語が母語として話されている国とは大きく異なります。そのため、自分が考えて、口に出したいと思った日本語に、「ピタリとはまる英語がない」ということがよく起こるのです。

 たとえば、英語で「会社の先輩」はどう言えばいいでしょうか。会社の先輩は、通常は「年上の同僚」なので「elder coworker」でよさそうです。実際、悪くありません。日本の学校英語ならおそらく「〇」がもらえます。

 ただ、日本語の「先輩」という言葉のニュアンスまで考えるとどうでしょうか。日本語でいう先輩というのは、ただ単に年長であるだけではなく、面倒を見てくれたり、いろいろと教えてくれたりと、尊敬の対象であることも少なくないはずです(もちろん先輩にもいろいろな人がいて、尊敬できない人もいるかもしれませんが……)。

 ところが「elder coworker」だと、自分との年齢の差だけが強調されてしまい、先ほど説明したようなその他の要素は伝わりません。これでは、相手と状況によっては説明不足になることもあるでしょう。

 ここで問題なのは、「elder coworker」と言うこと自体ではありません。何も補足をしないことが問題なのです。このような場合、日本語の持つニュアンスをより正確に伝えるために、その言葉の「定義」を、たとえば以下のような簡単な文で補足してあげるのが、真意をより正確に伝えるために有効です。

She’s older and more experienced than me.
(彼女は私より年上で長い経験を持っています。)

 また、直接的に年長であることを伝えずに、先輩であることを「ニュアンス」で伝えるという方法もアリです。

He has been in my company for 20 years. He knows these situations very well.
(彼はうちの会社で20年働いています。こういった事情をとてもよく知っています。)

さらにこんなふうにも言い換えられます

 さらに、そのものズバリの単語が思い浮かばないときは、否定文を使うというテクニックもあります。

She isn’t a beginner. (彼女は初心者ではない。)
She isn’t a rookie. (彼女は新人ではない。)
She isn’t new to this company. (彼女の入社は昨日今日ではない。)

 この例のように、「先輩」という日本語の直訳はわからなくても、「beginner」「rookie」「new」などの逆の言葉は割と簡単に出てくることがあるので、使い方次第で便利に活用できます。

 このように、身近な単語を使っていくらでも「補足説明」したり、「かみ砕いて」伝えたりすることができるので、日本語にピタリとはまる英語がなかったり、わからなくても問題ありません。

 単語よりも説明。それが「通じる英語」への近道です。これは単語だけではなく、文でも同じです。ネーティブがよく使う「会話例を暗記」するだけではなく、「(自分が言いたい)この内容を英語ではどう表現するのか」と考える姿勢が、英語を使ったコミュニケーションには欠かせません。

 英語が話せる人たちは、「この場合、ネーティブはどう言うのだろう」と、存在するのかもわからない正解を追い求めることはせず、補足説明を工夫して、確実に自分の言いたいことを伝えています。

■日本語独特の表現を英語にしてみよう! 

 日本で暮らしていると、「おもしろいなぁ」と思う日本語に出合うことがよくあります。一例をあげると、皆さんも日常会話でよく使う、「よろしくお願いします」という言葉がその典型例です。

 この言葉には思いやりのニュアンスが含まれていて、私にはとても「日本的」な感じがします。

 この言葉は日常のさまざまな場面で登場します。しかし、この言葉には、たとえば「おはようございます=good morning」のように、「1対1」で対応する英語の定番表現がありません。しかし、「1対1」で対応する英語がないからといって、表現できないとは思わないでくださいね。

 英語を話すときも、自分らしさを出せるようにしたいものです。そこで、少々工夫が必要になります。

 みなさんだったら、「よろしくお願いします」を英語でどのように表現するでしょうか。少し考えてみてください。

 この後、私の考えた「よろしくお願いします」を表す英語の例を挙げてみますが、私の例を見る前に、まずは自分なりに、いくつかの表現を口に出して話してみてください。答えを考えるにあたっては、「正解はひとつではない」ということを覚えておいてください。

 では、やってみましょう。

【日本語】 よろしくお願いします。
─1分でいくつかの表現を話してみましょう─
ヒント:きちんと表現するにあたり、何に対して「よろしくお願いします」と言いたいのかを考えるとうまく表現できます。

解答例は次ページ!

 私が考えた「よろしくお願いします」の言い方は、以下のとおりですが、先ほども述べたとおり、正解はひとつではなく他にもさまざまな言い方があるのを理解したうえでご覧ください。

【解答例】
I’m looking forward to next week. (来週はよろしくお願いします。)
I’m looking forward to working together. (今後ともよろしくお願いします。)
Could you take care of that for me?  (あの件をよろしくお願いしますね。)
Could you take care of that customer for me?  (あちらのお客様をよろしくお願いします。)

 いかがでしょうか。ポイントは「よろしく」という日本語の言葉に含まれる真の意味を理解することです。まず、何について「よろしく」なのか。あるいは、裏に隠された意味は何か。直訳を探すのではなく、自分が今言おうとしている日本語はどういう気持ち、意味を伝えようとしているのかを考えて、「英語をつくる」ことを心がけることが大事です。

 そうすることによって、どんなに日本的な言い回しで、ピタリとくる英語が存在しない日本語でも、英語で言えるようになります。

■英語⇒日本語から、日本語⇒英語への転換の時

 英語が話せない理由として、語彙力の不足を挙げる人がたくさんいますが、それって本当にそうなのでしょうか?  私は大いなる疑問を持っています。

 英語の語彙には2種類あります。ひとつは見たり聞いたりすると、意味がわかる語彙。これを英語では「receptive vocabulary」といいます。もう1種類は「productive vocabulary」といって、自分で実際に書いたり、話したりするときに使える語彙のことです。

 日本の学校教育では、「receptive vocabulary」を増やすことにばかり熱心ですが、英語が話せるようになるためには、「productive vocabulary」を増やすことが重要です。

 「productive vocabulary」を増やすのに、私がお勧めしているのは、皆さんが日本語の会話でよく使う言葉を英語で言えるようにしておくことです。

 多くの人が日本語の会話でよく使う言葉、たとえば「懐かしい」を英語で表現するとどうなるでしょう?  多くの人が「1対1」の直訳で「nostalgic」という単語を思い出したのではないでしょうか。

 しかしすでに説明したように、すべての日本語の単語や表現にピタリとはまる英語があるわけではありません。ですから、単語1語ではなく、文章で表現したほうがいいのです。

 「懐かしい」だったら、私はこんな風に言います。

This brings back memories.(これは懐かしい)
This song brings back memories.(この歌懐かしい)

 日本では、単語のカードを作るとき、英語を見てどういう意味かを考える「英語⇒日本語」の順番で作る人が多いようですが、これからは順番を「日本語⇒英語」に変えてみてください。これだけで、皆さんの英語プロデュース能力はぐんと高まります。

 特にこのカードを利用して、皆さんが日本語で使っているコアフレーズを英語で言えるようにしておくと、英語を話す能力もあっという間に伸びます。ぜひ、やってみてください。

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏