異端のゲーム機「任天堂スイッチ」は本当に便利なのか?
任天堂の新ゲーム機「Nintendo Switch」は、据え置き型ゲーム機でありながらタブレット端末のように携帯できる異端のガジェットだ。自腹で購入したライターのジャイアン鈴木氏が、ガジェットオタクの視点からレビューする。
●据え置き機? それともタブレット端末?
2017年3月3日に発売された「Nintendo Switch」は据え置き型のゲーム機だ。
もちろんNintendo Switchは一見タブレット端末のような本体だ。テレビや周辺機器と接続するための「Nintendo Switchドック」、取り外し可能な分割コントローラー「Joy-Con」で構成され、基本となる「TVモード」以外に、外出先などで「テーブルモード」「携帯モード」で利用できる。
しかし、任天堂はあくまでもNintendo Switchを据え置き型ゲーム機として位置づけている。実際、2017年2月1日に開催された任天堂の経営方針説明会で、君島達己社長は携帯ゲーム機であるニンテンドー3DSの後継機を検討していると語っていた。
一方、コントローラーを取り外すとNintendo Switchはタブレット端末にしか見えない。またiFixitの分解記事によれば、Nintendo SwitchのSoCはTegra X1をカスタマイズした「NVIDIA ODNX02-A2」、メモリーはサムスンの2GB LPDDR4 DRAM「K4F6E304HB-MGCH」を2枚、ストレージは東芝の32GB eMMC「THGBMHG8C2LBAIL」を搭載していることが判明している。スペック的には2015年12月8日に発売されたグーグルの10.2インチAndroidタブレット「Pixel C」に非常に近い。
さらにアルバム内の画像にコメントを追加してTwitterやFacebookに投稿したり、ニンテンドーeショップからゲームを購入したり、ゲームニュース内の記事や動画を見るだけならコントローラーは一切必要ない。このときの使い勝手はタブレット端末そのものだ。乱暴に言えば、Nintendo Switchを据え置き型ゲーム機として成立させているのは、コントローラーとドックの存在ということになる。
●「Joy-Con」が成功の鍵を握る
それではハードウェアをより詳しく見ていこう。Nintendo Switchの本体サイズは173(W)×101(H)×13.9(D)mm、重量は約297g。ディスプレーのサイズは6.2インチ。実際に手に持ったときの感覚としては、多少ディスプレーのベゼル(枠)が広いが、最近はやりのファブレット(6インチ以上のスマートフォン)といったところだ。
6.2インチディスプレーの解像度は1280×720ドット。ただし、ドックを経由してテレビに出力する際には1920×1080ドットで表示される。フレームレートは60フレーム/秒と公表されているが、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」は30フレーム/秒にとどまっている。とは言っても、映像の美しさとフレームレートのどちらを優先させるかはゲームごとに異なって当然だ。
本体上面には電源ボタン、音量ボタン、ヘッドホンマイク端子、ゲームカードスロット、前面にディスプレー、明るさセンサー、スピーカー、両側面にはJoy-Conを装着するためのレール、底面にはUSB Type-C端子、背面にはスタンド、マイクロSDカードスロットが用意されている。
ドック内部には本体接続端子、背面カバー内にはACアダプター接続端子、USB端子×1、HDMI端子、左側面にはUSB端子×2が備えられている。ちなみに現時点ではUSB端子はすべてUSB2.0で動作しているが、背面カバー内のUSB端子のみアップデートでUSB3.0に対応する予定だ。外付け大容量ストレージや1000BASE-T対応の高速有線LANアダプターなどの装着を想定していると思われる。
Joy-Conはある意味、Nintendo Switch最大の売りだ。振動だけでなく触感を伝える「HD振動」に加えて、本体右側に装着するJoy-Con(R)には底面にモノの形や動き、距離を検出する「モーションIRカメラ」が搭載されている。ローンチタイトルの「1-2-Switch」では両機能を活用したミニゲームを楽しめる。
Joy-Conは前述の通り左右をふたりで分け合って操作することが可能で、加速度センサーやジャイロセンサーもそれぞれに搭載されている。筆者はJoy-Conを両手に持って殴り合う格闘ゲーム「ARMS」の発売を楽しみにしているが、このようなJoy-Conの特性を生かしたゲームがどのくらい発売されるかが、Nintendo Switchの成功の鍵を握っている。
HOMEメニューはニンテンドー3DS時代よりシンプルな画面構成となった。ゲームのサムネイルの下に、ゲームニュース、ニンテンドーeショップ、アルバム、コントローラー、設定、スリープのアイコンが並ぶ。コントローラーでも画面タッチでも操作可能で、デザイン的に洗練されているが、ぱっと見、タブレット端末的なユーザーインターフェースとなっている。
OSはUNIX系のFreeBSDを基に作られており、機能はかなり絞られている。例えばAccessのウェブブラウザー「NetFront Browser NX」が搭載されているが、Twitter、Facebookとの連携や、ゲームニュースの表示に利用されているだけで、一般的なサイトの閲覧には利用できない。また、ニンテンドー3DSには搭載されているカメラ、サウンド、ビデオアプリなども含まれていない。だが、たとえ有料になったとしても、モーションIRカメラを利用したアプリなどのリリースに期待したい。
●ローンチタイトルは少ないが……
筆者はローンチタイトルの品ぞろえに不満を感じている。ニンテンドーeショップに並んでいるタイトルは3月15日時点で22本。うち1本は「Splatoon2」の体験版だ。また、ローンチタイトルにサードパーティーの独占ビッグタイトルがないのは今後の不安材料。サードパーティーのタイトル不足でプラットフォームとしては苦戦した「Wii U」の轍は踏まないでほしいものだ。
とはいいつつも、Nintendo Switchのビッグタイトル「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(任天堂)にどっぷりハマっている筆者は、いまのところ他のゲームを必要としていない。「オープンワールド」という言葉を避け「オープンエアアドベンチャー」とうたう本作は、練り込まれたストーリー、攻略しがいのある謎とアクションが秀逸。その上でやり込み要素がこれでもかと詰め込まれている。1日2時間程度のペースで遊ぶなら、最短でも1カ月、じっくり寄り道も楽しめば2~3カ月はプレーできそうだ。
今後、4月28日には「マリオカート8 デラックス」、春には「ARMS」、夏に「Splatoon2」、そして冬のさなかに「スーパーマリオ オデッセイ」が出るので、今年1年は上記の任天堂製ソフトでなんとか乗り切れそうだ。自社タイトルだけでライトなゲームファンを満足させられるのが任天堂の強みといえる。
さてIT系のライターである筆者は、さまざまなUSB機器を所有している。そこで手持ちのUSB機器を片っ端からNintendo Switchに挿してみた。成否は下記のとおりだ。
【認識する】
USBハブ(Type-A)
USBハブ(Type-C)
USB LANアダプター
USBキーボード
モバイルバッテリー
【認識するが使えない】
USBマウス
【認識しない】
Xbox One コントローラー
USBメモリー
USBカードリーダーライター
USBハブはType-A、Type-Cともにどちらも利用できた。ただし、Type-CについてはHDMI端子とSDカードスロットを備えた複合タイプの「HT-UC001」で試してみたが、USBキーボードに加えてUSB LANアダプターを装着したら電力不足となってしまった。
ただ、ACアダプターからType-C端子に給電すれば利用可能で、Nintendo Switch本体にも充電できた。HDMI端子とSDカードスロットは働かないが、給電しながらUSBハブ機能も利用できるので使い勝手は悪くない。
USB LANアダプターはWiiとWii Uの動作確認済みをうたうバッファローの「LUA3-U2-ATX」を使用したが、筆者の試した範囲では問題なく動作した。任天堂のライセンス商品として販売されているホリの「LANアダプター for Nintendo Switch」は、売り切れていたり、プレミア価格で販売されていたりするようだ。メーカーは動作を保証していないのであくまでも自己責任での利用になるが、実売価格1100円前後で入手可能な「LUA3-U2-ATX」は悪くない選択肢だと筆者は考える。
キーボードはロジクールの「K270」を使用した。プロフィールのニックネームや、TwitterやFacebookでの投稿の際にしかキーボードは使えないが、かなと英字、かなとカナの切り替えや、スペースキーで変換候補を選択可能で、十分実用的に利用できる。ゲーム中に撮影したスクリーンショットを長文とともにTwitterやFacebookにひんぱんに投稿するなら、安価で小型なUSBキーボードをひとつつないでおくと重宝する。
モバイルバッテリーはNintendo Switchを充電することも、ドックに接続してモバイルバッテリーを充電することも可能だ。これはドック自体がUSBハブとして機能しているので当然の結果だ。
少々不思議な挙動が見られたのがUSBマウス。今回はロジクールの「M185」を使用してみたが、マウスカーソルも出ず、左右ボタンを押してもまったく反応はなかった。しかし、USBマウスを動かすとNintendo Switchが暗転から復帰するので認識自体はしているようだ。
一方、Xbox One コントローラー、USBメモリー、USBカードリーダーライターは装着してもまったく反応は見られなかった。Xbox One コントローラーが使えないのは当然としても、マイクロSDカードを抜く際には電源を切る必要があるのだから、Nintendo Switchのスクリーンショットの手軽な持ち出し先としてせめてUSBメモリーだけでも利用させてほしい。
さて新製品にはつきものの不具合だが、Joy-Conの接続不良は筆者の環境でも発生している。筆者はNintendo Switchを床に設置して2メートル離れた距離でプレーしているが、時折左のJoy-Conの接続が切れたり、反応が鈍くなることがある。1.5メートルまで近づけば接続不良は起きないのだが、それではソファーを降りてテレビに近づいてプレーしなければならない。
任天堂のサポートページにはJoy-Conの誤動作について回答が掲載されているが、筆者の環境はそれには該当していないように思う。いまはソファーから床の上に移動してプレーしているが、改善策として「Nintendo Switch Proコントローラー」の購入を検討しているところだ。
ガジェットオタクとしてNintendo Switchを見てみると、Joy-Conの合体機構、ドックによる拡張性などハードウェア的にそそられる部分が多い。「マリオカート8 デラックス」と同時発売される「Joy-Con ハンドル 2個セット」のような、さまざまなアクセサリーも登場するだろう。Joy-Conを銃としてゲーム内で扱うための合体アクセサリーなども期待できる。
一方、現時点のNintend Switchのソフトウェア面には、ガジェットマニアとしては満足できない。しかし半年~1年以内にこの点は大幅に改善してほしいし、されるはずだ。
Nintendo Switchは、Wii Uやニンテンドー3DSと比べて、ゲーム以外の機能は大幅にそぎ落としてリリースされている。だが、リビングの大型テレビと接続するセットトップボックスとしてYouTube、Netflix、Huluなどの動画視聴アプリを用意しないわけにはいかないだろう。そうしなければ、それらの機能を搭載しているPlayStation 4と戦えるわけがないからだ。
また、最近はスマホやタブレットでゲームをするのに慣れてはいたが、物理的なコントローラーが存在するゲーム機は操作性がいいと改めて感じる。スマホ向けゲームも独自のユーザーインターフェースを進化させてきているが、ゼルダの伝説のように多くの武器や能力をとっかえひっかえ駆使するようなゲームは、物理的なコントローラーがあってこそ快適に遊べる。
そんな理屈は抜きにしても、据え置き機と携帯ゲーム機を兼ねたNintendo Switchは単純明快に便利だ。外出時にはゲーム機を持ち歩かない筆者だが、思いのほか家庭内でNintendo Switchの携帯モードを活用している。
家族のいる筆者はテレビを常時占有できない。そのため、普段は大画面のTVモードで存分にプレーして、家族がテレビを見たいときは床に転がって携帯モードでプレーするという利用スタイルが実にしっくりと来る。
PlayStation 4やゲーミングPCほどのハイパフォーマンスを備えていないNintendo Switchは、それらと同等のリッチなグラフィックのゲームはプレーできない。しかし、ゲームの本質的な面白さはグラフィックのクオリティーに左右されるわけではない。パフォーマンスをある程度割り切りつつも、Joy-Conにより新たなゲームの楽しさを創出し、さまざまな利用スタイルで楽しめるNintendo Switchを歓迎する人は多いはずだ。
任天堂新型機「スイッチ」は革新的なのか
極めて任天堂らしく、そして新しい
2017年1月13日、東京・有明の展示場「東京ビックサイト」でイベントを開催し、新型ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」を3月3日に2万9980円で発売すると発表した任天堂。良い意味で、「任天堂がヘンなものを出してきたぞ」とワクワク感を抱かせる発表会だった。ただしその源泉は、ネーミングの由来にもなっている、シーンによって遊び方を「スイッチ(転換)」できることではない。
新型機最大の特徴は、「持ち運べる据え置き型」。本体は6.2インチのタッチスクリーンやスピーカーと一体となっており、テレビに接続して従来の据え置き型のように遊べる一方、本体をドックから外し、容易に持ち運び、携帯型ゲーム機のように楽しむこともできる。
この日の発表会では発売日や価格のほかに、対応タイトルなどの発表も相次いだ。これが失敗したらもう次はない、という気合いと覚悟で臨んだのだろう。ソフトが続かず苦戦したWii Uの反省からか、現在開発中の対応タイトルは80以上と潤沢。ゲーム好きの「コアゲーマー」がソニーやマイクロソフトのゲーム機へと流れた反省を生かしてか、コアゲーマーを意識した品揃えと演出も目立った。
発表会開始前の演出はDJがテクノ音楽を奏で、レーザー光線を多用するなど、スタイリッシュでクール。「ゲーム人口拡大」戦略を強調し、ファミリーや子ども向けの演出が目立った従来とは趣が異なる。
任天堂自身もスイッチ?
任天堂が用意する同時発売のソフトのタイトルも、人気ゲームシリーズ「ゼルダの伝説」の新作や、新手の格闘ゲーム「ARMS」などが並び、コアゲーマーを強く意識している。Wii Uでヒットした「スプラトゥーン」の続編を今夏に、冬には「スーパーマリオ」の最新作を発売予定で、ゲーム好きには骨太に映るラインナップだ。
外部のサードパーティーも骨太。既に世界有数のゲームスタジオ、米ベセスダの参入が発表されており、コアゲーマーを沸かせている。2015年11月に発売された「Fallout 4」は初日の出荷が1200万本に達するなど、同社はゲーム業界を左右する存在となっているが、Wii U向けには1つもタイトルを提供していなかった。今回のベセスダ参入は、任天堂がコアゲーマー向けに注力した象徴とも言える。
過去の轍は踏まないと任天堂自身も"スイッチ"した印象。ただしこれだけでは、「任天堂はマイナスを潰しただけ」と映り、インパクトは小さい。
スイッチの目玉と言える「持ち運べる本体」も、昨年10月の発表時、さほど世間に驚きを与えなかった。画面付きコントローラーが目玉だったWii Uの延長線上のように見えてしまったからだ。価格も安いわけではなく、高くもない無難なライン。そのためか市場も落胆の色を隠さない。発表日、任天堂の株価は前日比5.75%安と値を下げた。
しかし。それでもスイッチに、何か革新的な出来事を起こしそうな可能性や匂いを感じた。それを醸すのは、スイッチする本体ではなく、コントローラーである。
「スイッチは、コアゲーマーを満足させられるゲーム機ではあるが、最先端のグラフィック技術が詰まったマシンではない。あくまで、新しい遊びを追求するマシン。あのコントローラーがそれを物語っている」
ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するカドカワの浜村弘一取締役は、こう話す。
13日の発表会では、「Joy-Con(ジョイコン)」と呼ばれる着脱式コントローラーの詳細も明らかとなった。小型ながら、動きを検知するモーションセンサーを内蔵するコントローラーは、それだけではなく、様々なギミック(仕掛け)を内包する。任天堂がプレゼンテーション映像の中で最も強調していたのが、今回、家庭用ゲーム機としては初めて導入する「HD振動」という機能だ。
コントローラーが振動すること自体は古い機能で、多くの家庭用ゲーム機が取り入れている。ただし、スイッチのそれは違う。プログラミングによって複雑で微細な振動を自在に表現できる。中の小型モーターが回転し、携帯電話のようにブルブルと振動する従来機とは異なるのだ。
「1-2-Switch」という新感覚の体験
例えばデモ映像では、コントローラーを縦に持ち、揺らすと、まるでグラスの中の氷が「カラン、カラン」とぶつかりあうような振動を伝えられるとしていた。振動ではなく「触感」。音や映像が合わされば、本物のグラスを握っているような感覚が得られるとする。
「HD振動は、VR(バーチャル・リアリティー=仮想現実)技術の一環としても研究開発が進められているもの。コントローラーの振動を体験に変えるもので、これは感動する技術」。前出の浜村取締役はこう捕足する。習うより慣れろ、ということで実際に体験した。
体験会の会場に入ると、まず目の前にドンと大きなセットが飛び込んでくる。「1-2-Switch(ワン-ツー-スイッチ)」という、スイッチと同時発売される任天堂のタイトルを試遊できるブースだ。
コントローラーのギミックを生かした様々な新しい遊び方のミニゲームが詰まったパッケージで、まずはHD振動を確かめるために、「カウントボール」というミニゲームを選択した。行列に並び約1時間半、ようやくブース前に辿り着くと、説明ビデオが流れ、解説している。
「ジョイコンを傾けると箱の中に玉が入っているような振動が伝わります。その振動を頼りに玉の数を当てましょう」。実際にコントローラーを持ち、シーソーのように傾けると、確かにパチンコ玉のようなものがコントローラーの中でいったり来たりする感触があった。しかも、コツン、コツンと何個か入っている。予想した個数の分、スティックを押し、置くと正解がスイッチの画面に現れる。
ブースにいた対戦相手の役者は「4」、記者は「3」と予想。正解は「2」だった。とてもリアルな感触だが、とても微細なので、当てるのが何とも難しい。時間制限が迫ると焦って勢いよく傾けてしまい、それがさらに予想を困難にする。地味だが新鮮な体験だった。
新手のコントローラーとワン-ツー-スイッチによる新感覚の体験はこれにとどまらない。
「ミルク」というミニゲームは、牛の乳搾りをして、その量を競うゲーム。ジョイコンを乳首に見立て、握る。上から下げながら、同時に指も折ってボタンを押して絞る。すると先のHD振動により、まるで乳がぴゅーっと噴出しているような感触を感じることができた。
ジョイコンの先端には「モーションIRカメラ」という赤外線カメラも仕込まれている。これを活用したミニゲームが「イーティングコンテスト」、つまり大食い競争ゲームだ。ジョイコンをホットドックに見立て、口の前に置き、ひたすら口をぱくぱくする。その動きをカメラが検知し、食べた量を判別する。
ワン-ツー-スイッチには、かつての「Wii Sports」のように、コントローラーを振り回して遊ぶ卓球ゲームや、相手の動きをいかに上手にマネするかを競うダンスゲームなども収録されている。
こうしたミニゲーム自体が革新的だと言うつもりはないし、ゲームソフトとして大ヒットするような類のものでもない。あくまでジョイコンを使った新しい遊びを紹介する「ショーケース」。だが、今後何か斬新な遊びの提案が出て来るかもしれない、という可能性を感じさせるに十分なものだったと言える。
ジョイコンには、ほかにも電子マネーなどで使われている非接触ICの「NFC機能」もある。これらジョイコン内蔵のギミックにタッチスクリーンが合わされば、無限の新たな遊びを提案することができるだろう。
そして、一連のミニゲームを通じて、少なくとも、「画面を見ないテレビゲーム」という斬新さも発見できた。大勢が集まるパーティー会場など、これまでビデオゲームが進出し得なかった場所やシーンでも活躍するかもしれない。
出落ちで終わったWii U
ハードの性能や分かりやすい機能を前面に押した時、往々にして任天堂は爆発力を発揮できない。「3DS」では「立体視」、Wii Uでは「画面付きコントローラー」がそれに当たる。言い換えれば、ハードの仕組みそのものに驚きを求めた場合は、「出落ち」で終わり、爆発力を生まない。
スイッチも、仮にコントローラーのギミックがなく、単に持ち運べる据え置き型ゲーム機だったら、Wii Uや3DS同様、出落ちパターンに陥るかもしれない。しかしスイッチは、前述のように、何か得体のしれない要素や可能性、余地を残している。
スイッチは革新的なのか。まだ現段階でそうと断言することはできない。しかし、何やらDSやWiiと似た雰囲気を感じるのだ。
ハードとソフトが一体となって、新たな娯楽体験や驚きを消費者に与えることが任天堂の本分。かつての「脳トレ」や「Wii Sports/Fit」のようなソフトがあって初めて、爆発力を生むことになる。それを一番よく知っているのは任天堂自身。ジョイコンのギミックを生かしたキラーソフトの開発は、既に始まっているに違いない。
任天堂がスイッチでコアゲーマーへ近寄ったのも事実だろう。だが、「驚きを生む」という、任天堂の不文律でもある娯楽屋の矜持は失っていない。それがジョイコンのギミックであり、ワン-ツー-スイッチに現れている。
その意味で、スイッチは極めて任天堂らしく、そして新しい。
「スイッチは昔から変わらぬクラシックな任天堂そのものであり、それでいて全く新しい何か」。ベゼスダゲームスタジオの著名プロデューサー、トッド・ハワード氏も、発表会で流れたビデオメッセージでこのように語っている。
体験会でひときわ大きく目立つ場所に設えてあったワン-ツー-スイッチのブース。「ゲーム人口拡大は、まだまだ諦めていませんよ」。スイッチの開発に携わり、道半ばで逝去した岩田聡前社長のメッセージを感じたような気がした。
子ども熱狂 任天堂Switchはゲーム画面の前を変える
夢中度はDSやポケモン発売時に匹敵
任天堂の新しい家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」はきわめて興味深いマシンです。これは「勝ち組」になるマシンだ! と断言していいでしょう。後世に「ゲームの新しい世界を切り開いたね」と評価されるゲーム機として名を残すと思います。なにしろ、1月14、15日に開催された一般向けイベント「Nintendo Switch 体験会 2017」での子どもたちの反応が、すこぶる良かったからです。
業界人向けに行われた13日の体験会会場では、正直、「可もなく不可もなく」くらいの反応が大勢を占めていましたが、いざ一般消費者たちの体験会になると、反応は全く違いました。こんなにも笑顔で、飛び跳ねるように夢中にゲームを楽しむ子どもたちの姿は、最近のゲーム体験会場では見たことがありません。
反応の熱さは「ニンテンドーDS」や「ポケモン」発売時並み
大人たちがなまじ知識を持っているため、「過去のゲームと比べ、どこがパワーアップしたか?」と相対的にゲーム機の良し悪しを判断しようとするのを尻目に、シンプルに「面白いかどうか?」という基準で判断する子どもたちが、そこに込められていた新しい魅力に気付いた、ということでしょう。
実は過去にも、このような現象が何度か起きたことがありました。13年前(2004年)の「ニンテンドーDS」の発表時や、21年前(1996年)の『ポケットモンスター』発売時です。どちらも大人たちの反応は鈍かったのですが、子どもたちから人気に火がつき、全世界的ヒット商品になりました。そんな経験からも、大人が反応せず、しかし子供たちが夢中になるゲームは、ヒットする可能性が高いと予測していいのです。
では、大人たちが気付かず、しかし子どもたちが気付いた「新しい魅力」とは何なのか? その概略を解説していきましょう。
高機能かつ超軽量のジョイコンがすごい!
最大の注目ポイントは、ジョイコンと呼ばれる、2つでワンセットのコントローラーです。
いずれゲーム売り場などでNintendo Switchが試遊できるようになったら、ぜひ格闘ゲーム『ARMS』を体験してみてください。両手にジョイコンを握り、自分の手をパンチするように動かすと画面内のキャラがパンチを出す――というシンプルな格闘ゲームてす。『Wii Sports』の味わいを残す格闘ゲームだと思っていただければ、およそのイメージはつかめるかと思います。
いざプレーすると、ジョイコンの軽さに驚かされるはず。重量はおよそ50g。水でいうと大さじ3杯ちょっとの重さしかないため、握っていることすら忘れそうになるのです。これまでのゲームのような「コントローラーを振っている」という感覚は消失し、ただ「自分がパンチを出すと、ゲーム画面の中のキャラがパンチするんだ」という、直感的なプレー感覚に包まれていくのです。なるほど、子どもたちが夢中になるのも当然だ、と実感できるでしょう。
これほど軽量なのに、ジョイコンには無数の新機能が込められています。例えばHD振動(より詳細な振動)という機能を搭載しており、ジョイコンの中にボールが入っているかのように錯覚させるような感触すら、きちんと伝えてくるのです。またモーションIRカメラも搭載し、カメラの前にあるモノの形や、その距離を認識します。
これらの機能を活用しているのがパーティーゲーム『1-2-Switch』。なんと“テレビ画面を見ない”で遊ぶゲームです。用意されているのは、拳銃の早撃ちや卓球といったさまざまなミニゲーム。対戦する相手と向き合ってプレーするうちに、画面は意識から消えていき、ときどき画面を見ればいいや、という気分になっていくのです。これも子どもたちには人気でした。
かくして、Nintendo Switch体験会の会場には、ゲーム画面を見ることなく、しかしゲームに夢中になって笑顔を浮かべる子どもたちがいるという、なんとも不思議な光景が広がることになったのです。こんな光景、これまでのゲーム体験会で目撃したことがありません。
VRとは真逆 人と人をダイレクトにつないでいく
このように、Nintendo Switchには、「コントローラの存在すら、忘れてしまおう」「楽しいのなら、いっそゲーム画面すら見なくてもいいよね」と提案するゲームが用意されています。それらに子どもたちが夢中になっていた体験会の光景は、きわめて衝撃的なものでした。
なぜなら、それはゲームの常識をひっくり返す光景だからです。ゲームの歴史は、いかにプレーヤーに没入してもらえるか? そのためには画面の中に広がる世界をどうやって魅力的にするか? を考え続けてきました。その究極形が、ゲーム世界の中に飛び込んだかのような体験をプレーヤーに提供するVR(仮想現実)です。
Nintendo Switchはその真逆です。ゲーム世界を魅力的にするのもいいけど、ゲーム画面の前――つまりプレーヤーがいる世界を、魅力的で楽しい空間にするのも素敵だよね! と提案し、子どもたちの心をつかんでいたのです。それはスマートフォン向けゲームアプリ『ポケモンGO』が、私たちがいる世界そのものを楽しい空間にして、多くの人を夢中にさせたことと、方向性は同じかもしれません。
さて、Nintendo Switchは、従来のようにテレビの大画面を使って遊ぶのみならず、マシン本体(これも軽い! およそ300g)に液晶画面がついているため、外出先に持ち出してテーブルに置いて遊ぶことが可能。さらに、本体にジョイコンを装着すると、そのまま携帯ゲーム機のように手に持って遊ぶこともできます。
このように、自宅のみならず、あらゆる場所に設置できるゲーム機を用意し、同時にゲーム機のある場所そのものを「楽しい空間にしてしまうソフト」を用意してきたことの意味は、とてつもなく大きいと言っていい。Nintendo Switchが普及したならば、それはあらゆる場所に持ち運ばれ、そこが楽しい空間になり、そこには体験会にいた子どもたちのような笑顔が広がっていくことになるからです。ほんと、なんとも興味深いゲーム機が登場したものです。
マリオ後出しは計画通り!? 「Switch」成功への戦略
仲間同士の対戦がブームになる
先日、任天堂が新型の家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」の詳細を発表した。価格や発売タイトル、スマホ連携などの付加機能の有無に注目が集まったが、「サプライズに欠け、物足りない」「マリオなど任天堂のタイトルが本体と同時発売でないのは残念」「任天堂は家庭用ゲームをあきらめたのか?」といったネガティブな意見が大勢を占めた。だが筆者は、任天堂が過去の失敗をもとにしっかりと戦略を立てており、「Nintendo Switchは間違いなく成功する」と感じた。
ビッグタイトルの発売を分散して本体が買えない事態を防ぐ
発表会で多く聞かれたネガティブな意見が、本体と同時発売となるゲームソフト(ローンチタイトル)の少なさだ。
任天堂のローンチタイトルは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』と『1-2-Switch』の2つしかない。オリジナルタイトルとして注目が集まる『ARMS』は春発売予定で、人気シリーズの強化版『マリオカート8デラックス』は4月28日発売だ。Wii Uで大ヒットした『スプラトゥーン』の続編『スプラトゥーン2』は今夏発売で、大本命となる『スーパーマリオ オデッセイ』はなんと冬のリリース予定となっている。つまり、任天堂のビッグタイトルで本体同時発売となるのはゼルダだけなのだ。
マリオなど人気シリーズの新作を楽しみにしていた人にとっては不満の残る内容といえるが、任天堂は2つの狙いであえてローンチタイトルを抑えたと考えられる。
まず1つが、Nintendo Switchの発売直後に品薄で買えなくなる状況を避けたかったのだろう。1月21日の予約状況を見ると、かなりの数が発売日に用意されるとみられるが、ローンチタイトルに任天堂の人気タイトルが集中すれば何としても発売日に入手したいと考える人がさらに増え、需要が供給数をはるかにオーバーしかねない。そうなれば「買いたいのに買えない」という状況が広がり、任天堂やNintendo Switchに対する不満が高まるだけでなく、「わざと品薄にしているのだろう」とあらぬ疑念を抱かせることになりかねない。
任天堂の歴代ゲームハードは「品薄」との戦いだったといえる。古くは初代「ファミコン」が大ブームになった際は、不人気ソフトとセットでないと本体を売らない「抱き合わせ」で販売する小売店が続出し、任天堂に不満が寄せられた。2005年に『脳トレ』でニンテンドーDSが大ブームになった際、当時出たばかりのニンテンドーDS Liteが手に入らない状況が長く続き、任天堂が「品薄商法では」などと批判された。最近では、小型ファミコン「ニンテンドー クラシックミニ ファミリーコンピュータ」が話題になって品薄になり、「転売目的の人は買えているのに」とSNSで不満が広がった。
もしNintendo Switchが品薄になれば、興味を持っていた人の購買意欲が薄れて商機を逃してしまうだけでなく、不満や批判につながりかねない。品薄をきっかけにNintendo Switchのイメージやブランドが低下するのを避けるべく、大ヒットが間違いない『マリオ』や『スプラトゥーン』などのタイトルをあえて本体と同時発売にしなかったのだろう。
インターネットやSNSでは「Nintendo Switchはスプラトゥーン2が発売したら買う」「マリオが出るまでは待ちでいいかな」といった声が少なからず散見され、Nintendo Switchの購入タイミングがうまく分散しているように感じられる。スプラトゥーン2のリリースは夏の予定で、Nintendo Switchの発売から4カ月は稼げることから、そのころには生産が進んで潤沢な在庫を確保できるはずだ。
任天堂のソフトしか売れない状況に歯止めをかけたい
2つめの狙いとして、任天堂はサードパーティー製のタイトルが売れない状況に歯止めをかけたかったのではないだろうか。
任天堂のゲームハードは、ニンテンドーDSやWii、Wii Uにおいて「売れるのは任天堂のゲームソフトだけで、サードパーティーのソフトはサッパリ売れない」という状況が続いている。初代ニンテンドー3DSを発表した2010年の「任天堂カンファレンス2010」でも、当時の岩田 聡社長が任天堂が取り組むべき課題として挙げていた。
任天堂が社運を賭けるNintendo Switchの発売にあたり、スーパーマリオやマリオカート、スプラトゥーンなどのビッグタイトルがローンチタイトルとして並べばインパクトは大きく、スタートダッシュには有利となる。本来ならば、そうするのが理想的だ。だが、Nintendo Switchをともに盛り上げようとするサードパーティーの存在を無視することはできない。
サードパーティーのローンチタイトルを見ると、『ドラゴンクエストヒーローズI・II for Nintendo Switch』『SUPER BOMBERMAN R』『信長の野望・創造 with パワーアップキット』『ぷよぷよテトリスS』『いけにえと雪のセツナ』『魔界戦記ディスガイア5』など、そこそこタイトルはそろっている。だが、前述の任天堂のビッグタイトルと比べれば知名度や人気に欠けるのは否めない。
この状況で自社のビッグタイトルをローンチで発売してしまえば、これらのサードパーティー製タイトルの注目度や販売は低迷し、Nintendo Switchに対するサードパーティーのモチベーションは大きく下がってしまうだろう。そうなれば、サードパーティー製のタイトルがサッパリ出なくなって早い段階で幕引きに追い込まれたWii Uの二の舞になりかねない。そこで、あえて自社のビッグタイトルの発売を急がず、サードパーティーに花を持たせたのではないだろうか。任天堂ファンにとってはいささか物足りない船出となるが、長い目で見ればサードパーティーのタイトルが充実し、好ましい流れにつながるのではないかと思われる。
新趣向のセンサーとHD振動を搭載したJoy-conはゲームの常識を変える
個人的に目を引いたのが、Nintendo Switchの小型コントローラー「Joy-Con」だ。Nintendo Switchの側面に装着したり取り外して使えるといった点は確かにユニークだが、筆者は別の部分にテレビゲームの遊び方や演出を大きく変えるほどのサプライズがあると感じた。発表会で初めて明らかにされた加速度センサーや明るさセンサー、モーションIRカメラといった各種センサー類と、HD振動機能の存在だ。
モーションIRカメラは、Joy-Conの後部に搭載した赤外線カメラにより動きや形、距離を把握する機能を持つ。モーションIRカメラを使って実際のモノを読み取り、モノの存在や空間を把握して利用するゲームが出る可能性は高い。
センサー類より注目したいのがHD振動機能だ。簡単に言えば、スマホでおなじみのバイブレーターによる振動をより細かくコントロールしてさまざまな表現を伝える機能で、触感のVRと言うべき存在だ。公開されたデモンストレーションでは、Joy-Conをガラスコップに見立て、氷を入れた感覚や水を注いだ際の感覚がリアルに手に伝わることを解説。Nintendo Switch本体と同時発売になる『1-2-Switch』には、Joy-Conをボールの入った木箱に見立て、ボールが転がる際の振動やボールがぶつかる衝撃をHD振動機能でリアルに表現し、ボールがいくつ入っているかを当てるゲームがある。これまでのどのゲーム機やスマホでも遊ぶことのできない内容であり、Nintendo Switchがゲームの常識を変えてくれそうだ。
スプラトゥーン2のローカル対戦が「モンハン」的なブームの再来を予感させる
Nintendo Switchは、家庭用テレビに接続して据え置き型として使う「テレビモード」に加え、内蔵バッテリーで携帯型ゲーム機として使う「携帯モード」と「テーブルモード」の3つの形態で遊べるのが特徴だ。「1台3役で遊び方を変えられるのは面白いね」程度に考えている人が多いかもしれない。だが、筆者は「携帯モードで外に持ち運べ、ローカル通信で最大8人が同時に遊べる」という点がNintendo Switch大ブレイクの鍵になるのではないかと感じている。
かつて、携帯ゲーム機で指折りの大ヒットとなったタイトルに、カプコンの『モンスターハンター』(モンハン)シリーズがある。一時期は、中高生を中心に小学生や社会人までもがファストフード店にたむろし、PSPを手に4人集まって狩りをする姿がそこかしこに見られた。モンハンがヒットした大きな要因は、ゲームの完成度の高さはもちろん、何より顔を合わせているリアルの仲間や友だち同士で対戦できる点にあった。つまり、ローカル通信で8人まで同時に遊べるNintendo Switchは、モンハンと同様に仲間で集まってリアル対戦を楽しみたい人にヒットする素地を備えているのだ。
そこでキラーコンテンツとなるのがスプラトゥーン2だ。前作のWii U版スプラトゥーンは1人でしかプレイできず、対戦はインターネット経由のオンラインバトルに限られた。自宅に遊びに来た友だちと対戦することはできず、そこがスプラトゥーンの唯一にして最大の弱点となっていた。だが、Nintendo Switchのスプラトゥーン2は最大8人までローカル通信で対戦できるので、Nintendo Switchを持ち寄れば仲間同士でバトルできる。まさに、モンハンブームの再来となりそうだ。
