東芝は、米原発子会社ウェスチングハウス(WH)に米連邦破産法

東芝、今月中のWH破産法申請で最終調整

東芝は、米原発子会社ウェスチングハウス(WH)に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を、今月中に申請させる方向で最終調整に入った。WHで追加の損失が膨らむリスクを今年度中に取り除き、新年度以降の経営再建を確実にする狙いだ。

 「損失は増えてもクリアになる。年度内に申請できるかどうかの違いは大きい」。東芝幹部は、WHの破産法適用を月内に申請する意義をこう説明した。

 早期の申請は、WHの損失拡大を懸念する主力取引銀行からも求める声が強まっていた。申請で東芝に対する債権を確実に回収できるとの思惑に加え、「今年度中に損失を処理し、新年度に『V字回復』する」(主力行幹部)とのシナリオを描いている。

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東芝は本当に虎の子の半導体メモリー事業も手放してしまうのか

「あらゆる可能性を否定しない」(綱川社長)

 東芝が半導体メモリー事業と原子力発電事業の2枚看板を下ろす決断をした。2016年4―12月期に原子力発電事業で7125億円の損失を計上する見通しとなったことが引き金を引いた。資本増強のため半導体メモリー事業は完全売却を含めて手放す方針を打ち出し、原発事業では海外展開を大幅に縮小する。東芝は何の会社になるのか。将来像はみえない。

 東芝は半導体メモリー事業を分社し、外部から出資を受け入れる方針を1月27日に示した。その際、受け入れ比率は20%未満に抑えると説明していた。それが14日には過半以上の売却も検討する方向に転換。同日の会見で、完全売却の可能性を問われた綱川智社長は「あらゆる可能性を否定しない」と答えた。

 20%未満では出資元企業のうま味が少ないことから、特に金融機関からは受け入れ比率引き上げを求める声が高まっていた。東芝は十分な資金を調達し、3月末の債務超過を回避するため引き上げを決断したとみられる。

 一方、今回の損失発生源である原発事業。米原子力子会社のウエスチングハウス(WH)が15年12月に買収した原発建設・サービス企業「米CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)」の資産価値を見直した結果、損失が膨らんだ。米国の4機合計のコスト見積もりで61億ドル(約6920億円)の増加が主な要因だ。

 対応策として海外のプラント新設事業では土木建設から撤退し、機器供給やエンジニアリングなどに特化する方針を示した。また現在、東芝はWHの株式の87%を保有するが、「パートナーを探し、東芝の持ち分を50%以下に減らすことも考える」と綱川社長は説明した。

 東芝は不適切会計問題を契機としたリストラを経てエネルギー、社会インフラ、半導体を中核3部門とし、中でも半導体メモリーと原発を成長エンジンに据えた。綱川社長は「基本路線は変わらない」と説明したが、2本柱を失えば屋台骨が揺らぐ。今後の看板事業はみえず、経営再建に暗雲が立ち込める。

<解説>
 半導体メモリーも基本的に収益変動が大きい。今後、継続的に数千億単位の設備投資も必要になる。中途半端に事業を保有するならすべて売却する、という考え方もある。東芝が「社会インフラ」の会社として生き残っていくのであれば、医療機器事業より半導体メモリーを売却する方が得策ではなかったか。半導体の事業売却で一定の資金を得ても、WHを手放さない限り、巨額損失リスクを抱えるという根本的な問題は解決しない。

東芝「巨額損失」の起源を考える

原子力事業での損失額が7000億円規模に膨らむ見通しも出てきた東芝。半導体メモリー事業の分社を中心に「会社のカタチ」が大きく変わらざるを得ない。財務基盤が痛んだきっかけを考えると、2005年から09年まで社長を務めた西田厚聰氏時代に踏み込んだ米ウエスチングハウス(WH)の巨額買収と、リーマン・ショックによる急速なキャッシュフローの悪化という問題に行きつく。

 西田氏の経営哲学は「二律背反の克服」だ。「利益優先かシェア(規模)優先か。かつてはどちらかを選択すれば良かったが、パラダイムが変わり、二律背反という本質的な課題を解決しないと勝ち残れない」(西田氏)というものだ。個性的で強烈なリーダーシップを持つトップとしてメディアも西田氏を賞賛した。

 後任社長に原子力畑の佐々木則夫氏を選んだ西田氏は、当時から「後継候補は数人いた」と話していた。交代当時の事業環境が違っていたならば、後任人事や現在の景色は大きく変わったものになっていたかもしれない。

 巨大企業の東芝は、組織的に物事が動く側面と、経営トップの個性が方向性を決める二律背反のガバナンス(企業統治)を内包する。西田・佐々木時代は、より「経営トップの個性が方向性を決める」方へ振れた。もちろんそれ自体が悪いことではないが、東芝のような大企業でリーダーシップを発揮させるガバナンスの仕組みが追いついてなかった。

 日刊工業新聞では節目節目で東芝の経営にフォーカスしてきた。今回、西田氏が社長を退任する直前の2009年4月に特集した記事から、巨額損失問題の起源を考える。

攻めを貫いた「西田経営」が残したもの

 東芝が大きな転換点に差しかかっている。「攻めの経営」を貫いてきた西田厚聰社長が6月末で会長に退く。半導体などへの巨額投資は世界同時不況で裏目に出た。大手電機の中でも財務内容は最も厳しい。次期社長として収益回復と構造改革を託されたのは、原子力事業を躍進させた佐々木則夫副社長。復活へのシナリオを検証する。

 昨年末から市場で東芝の自己資本の脆弱(ぜいじゃく)さが話題になっている。09年3月期の当期純損失予想は2800億円で、09年3月期末に自己資本比率は8%台に下がる可能性が高い。「とにかく金をできる限り集めろ」(同社幹部)という大号令がかかり、年度末に向けた運転資金に大きな支障は出なかった。

 「東芝さんは本当に資金余力がないんですね」―。昨年から買収交渉が続く原子燃料工業。同社の親会社である住友電気工業と古河電気工業の関係者は、金額提示の低さが合意の阻害要因になっているという。

 もはや時価発行増資やCB(転換社債型新株予約権付社債)などのエクイティ・ファイナンスなしでの財務の立て直しは困難というのが共通のコンセンサス。焦点は金額。最低3000億円、08年度の業績着地次第では5000億円という数字も考えられる。

【追記】約3000億円の公募増資と劣後債1800億円を合わせて5000億円規模の資本増強を実施。10年3月期末の自己資本比率は14・6%(※減額修正前)に回復した。

 一定の増資が成功しても財務基盤は安泰ではない。まず期間収益のV字回復が期待薄なこと。さらに繰り延べ税金資産の取り崩しや年金積み立て不足のリスクもある。監査法人は、繰り延べ税金資産の取り崩しで09年3月期に巨額赤字を計上する日立製作所と同じ新日本監査法人だ。

 東芝は1月末に発表した収益改善策で、固定費を08年度比で3000億円削減。2010年3月期には営業損益で最低でも黒字転換を目指している。本来ならNAND型フラッシュメモリーは、収益の戻りが早い事業。減産効果でスポット価格は反転しているが、大口顧客の動きは鈍い。しかも投資が抑制される中で、需要回復期に韓国サムスン電子に競争力で後れをとる可能性もある。

買収後もWHをコントロールできず

 原子力事業を中心に社会インフラは安定収益が見込めるのは確か。原子力ではカザフスタンの国営企業と提携するなど原料からアフターサービスまでの一貫体制を築きつつある。米ウエスチング・ハウス(WH)買収の投資回収期間も当初の17年から13年に短縮。しかし原子力が収益に本格的に貢献するのは、早くて2012年以降だろう。

【追記】佐々木体制で当初、原子力事業を2015年度に売上高1兆円、39基の新設受注を目標に掲げていたが、東日本大震災の発生で状況が一変。その後、売上高目標を8000億円に切引き下げ、時期も先延ばしにした。

 自力成長を待つ余裕はない。そこで考えられるのが、優良事業や子会社の売却で現金を得るという選択肢。東芝テックや東芝エレベータなどは保有株の放出でそれぞれ300億―500億円程度の現金が入るとみられる。ただ現時点で「(これらの)売却の予定はない」(東芝首脳)という。

 もう一つ注目されるのが原子力事業のハンドリング。WHに対しては現在、子会社を通じ67%の株式を保有している。WHの資本を触媒に東芝連合の形成に動けば、短期・長期でメリットを享受する戦略も可能だ。今回、蒸気発生器などを調達するIHIの社外監査役に、西田社長の腹心である能仲久嗣副社長を送り込むことを決めた。まさに両社の連携強化は、佐々木次期社長の手腕が生きる場面だ。

【追記】WHの経営陣とうまくコントロールできない場面も多く、IHIとの関係も深まっていない。WHの株は大株主の米ショーグループが売却した分を東芝が引き取り、現在は87%に高まっている。 

半導体の収益変動と再編に翻弄される

 「日本の半導体産業の生き残りも考える。日本は企業数が多い」―。1月29日、収益改善策の発表と同時に飛び出した西田社長の半導体再編への意欲。システムLSIとディスクリート(個別半導体)事業は他社との再編を念頭に分社も辞さない考えを表明した。

 原子力を中心とした社会インフラと半導体は成長の両輪のはずだった。ところが今や赤字を垂れ流す半導体事業のテコ入れは最大の懸案事項。すでに事業売却に動いている富士通、赤字子会社を抱えるNECなどの首脳からも、再編に対し以前よりも柔軟な発言が聞こえるようになった。

 半導体の売上高で世界3位の東芝。ここ数年、日本の半導体産業をリードしてきたが「現時点で東芝に再編の主導権があるとは到底思えない」と国内半導体大手幹部は指摘する。

 まず候補に挙がっているのはNECエレクトロニクスとのシステムLSIの事業統合。先端プロセスを共同開発しており理想的な組み合わせに思える。ただ、今のところ東芝はシステムLSI事業を連結対象から外す考えはなさそうだ。当然、他社との激しい競争は続き、また東芝の財務体質の抜本的な改善にもつながらない。

 持ち分法適用会社にしたとしても、09年3月期に巨額赤字を計上するルネサステクノロジの二の舞になる可能性は高い。ルネサスは結局、親会社の日立製作所と三菱電機が増資を引き受ける。赤字事業を本体から切り離す際は、応分のリストラ原資を新会社に持たせる必要があるが、東芝は1000億円以上の損失を一気に拠出する資金力はないと見られる。

【追記】NECエレクトロニクスはこの直後に、ルネサステクノロジと電撃経営統合し現ルネサスエレクトロニクスが誕生した。そのルネサスも経営危機に陥り、官民ファンドの産業革新機構が救済することになる。東芝はシステムLSIの再編に乗り遅れ、ファブレス化を徐々に進めていった。

 「まずは各社が独力で業績を改善させてからではないと再編どころではない」(NEC幹部)というのが現実だ。西田社長が半導体や原子力など中核事業に集中投資した金額は1兆5000億円超。逆に東芝セラミックや東芝EMI、大型液晶パネルなど撤退・売却した事業は約5000億円に達する。

 事業ポートフォリオの入れ替えを積極的に進め「見きり千両」と称された。しかし最近は富士通からハードディスク駆動装置(HDD)事業、パナソニックとの中・小型液晶の共同出資会社を100%子会社することを決めたが、両事業とも収益は厳しい。「東芝が進むべき方向の『選択と集中』からかけ離れている」(証券アナリスト)。

 佐々木次期社長はどこまで事業の入れ替えに踏み込むのか。半導体部門は、依然として社内での発言力は大きい。6月末以降、西田社長は執行役を外れ、取締役会の議長として経営を監督する立場になる。だが、当分は重し役として佐々木氏と二人三脚で改革の道筋を指示していかざるをえないだろう。

【追記】中小型液晶事業は、ソニー、日立製作所と統合し、これも産業革新機構の支援のもと“日の丸液晶会社”ジャパンディスプレイが誕生した。東芝はその後も、スイスのスマートメーター会社ランディス・ギアの買収でも、産業革新機構と共同投資するなど同機構との深い関係を指摘する声も多い。

 「社長業は疲れるよ」―。昨年暮れも押し迫ったころ、ポツリともらした西田社長の本音。すでに自身は社長交代を決断、次期候補の佐々木副社長にも打診していた。でも外では強気の西田節は相変わらず。

佐々木体制にも引き継がれた“トップダウン”

 05年6月に社長就任後、4年間、全力で駆け抜けてきた自負がある。就任前、5兆円台で停滞していた売上高を一気に7兆円後半まで引き上げた。そして昨年、2011年3月期に売上高10兆円を目指す中期経営計画を策定。ライバルである日立製作所を射程に入れたまではよかった。

 「ここまで半導体が悪いとは…」。この1年、西田社長から何度となくこの発言が繰り返された。03年以降、半導体が東芝の営業利益の5割以上稼ぐ年もしばしば。昨年、NAND型フラッシュメモリーの2工場同時着工を表明したのは、新世代光ディスク「HD―DVD」からの撤退という悪材料をかすませた。商機を見込んだ決断だった。

 「リスクとならないことが最大のリスク」―。この言葉が“西田経営”の極意を端的に表している。社長時代に半導体の設備投資に1兆円以上を注ぎ込み、二つの新工場では総額1兆7000億円の投資を計画していた。業績悪化は世界同時不況の影響としても、財務の悪化はリスクをとっての結果だ。

【追記】NAND型フラッシュメモリーは値崩れを起こさないよう生産調整するなどで立て直し新工場も稼働。首位サムスンに肉薄するほど今は収益の柱になっている。

 半導体の不振と対照的に存在感を高めてきたのが社会インフラ事業。社長の座を射止めた佐々木副社長は、WH買収で実務を取り仕切った。買収当時、WHの税引き前利益は1800万ポンド(当時レートで約38億円)。のれん代を含めても企業の評価額は2000億円程度で、東芝が買収に注ぎ込んだ5000億円に「信じられない」(国内原子力メーカー幹部)という声も多かった。

 「縮小均衡では事業の発展性がない。この機を逃せば逆に買収されると思った」。西田社長にWH買収を強く進言したのが、佐々木氏だった。原子力畑一筋の経歴を不安視する向きもある。しかし「西田さん以上に懐の深さがある」(東芝関係者)。

【追記】上記の佐々木評と、佐々木氏の社長時代の幹部人事や管理などは随分と異なるものだった。

 早くから西田社長の才能に気づき社長候補として育ててきた西室泰三元社長(現東京証券取引所会長)はかつて「西田君は頭が良すぎる」とよく口にしていた。自分の目で確かめないと気が済まない性格で決断もトップダウン。

 西田社長は3月18日の交代会見で「業績悪化の責任は感じているが今回の交代とは関係ない」と引責を否定した。「喫緊の課題は収益改善」(佐々木氏)―。佐々木体制は、いろいろな重荷を背負ってスタートする。

【追記】佐々木氏の後任には西田氏が指名した調達部門の田中久雄氏が就任。妥協の産物の人事で、その後、西田氏(当時・会長)と佐々木氏(同・副会長)の対立が先鋭化していく。現在、歴代の3社長は「不正会計」問題で違法性が問われている。

東芝の損失が膨張する米原発“契約”の中身

東芝が米原子力発電事業で7000億円規模の損失を計上する可能性が高まった。何が要因となったのか。関連資料を探ると、建設プロジェクトのコスト超過分を東芝側が負担する「固定価格オプション」というキーワードが浮かび上がる。また足元では工事の遅延リスクが顕在化しておりコストは上昇傾向にある。固定価格オプション、コスト増という二重苦で東芝側の負担が膨張していく構図が鮮明化している。

 東芝は米原発事業子会社のウエスチングハウス(WH)を通じ、米国で二つの原発プロジェクトを進める。米スキャナ電力のVCサマー発電所(サウスカロライナ州)の2、3号機、米サザン電力のボーグル発電所(ジョージア州)の3、4号機の建設だ。

 2016年末、両プロジェクトにおいて、米CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)買収を巡る2000億円超の減損や建設コスト増により、7000億円規模の巨額損失が生じるリスクが明らかになった。

東日本大震災により状況が一変、訴訟合戦に

 「固定価格オプション契約を有効にし、プロジェクトの残りのコストが固定されるよう契約を変更する」―。スキャナ電力が16年5月に公表した報道資料にはこんな記載がある。

 これまでの工事費に5億500万ドル(約564億円)を上乗せする契約変更に応じるが、その後の超過コストはすべてWHが負担することになるとの内容だ。同オプションはどんな経緯で設定されたのか。

 WHが両プロジェクトを受注したのは08年。それから3年後に起きた東日本大震災により状況が一変した。東京電力の福島第一原発事故により、米国でも安全規制が強化され大幅な設計変更が必要になった。

 コスト増を誰が、どんな配分で負担するか。電力会社、WH、WHの協業相手で建設工事を担ってきたS&Wの間で訴訟合戦が起きた。

完工時期の2年延期と建設コストの上限77億ドル

 事態が動いたのが15年10月。WHが米CB&IからS&Wを買収し、工事まで一体的に進める体制を整える一方で、電力会社は建設コストの上乗せと完工時期の2年程度の延期を認める―。

 こうした条件で合意し、プロジェクトに発生したすべての訴訟や係争で和解した。そしてこの際、設定されたのが固定価格オプションだ。

 スキャナの場合、16年5月には「固定価格オプションを選択する」と題した報道資料を公表。その中で5億500万ドルという同オプションの価格を明らかにし、同年11月には公共事業の許認可に関わる「サウスカロライナ州公共サービス委員会」の承認を経て、同オプションを行使すると発表した。

 東芝は「当社から公にはしていないが、スキャナの報道資料は確認している」と固定価格オプションの存在を認める。スキャナによって再設定され、固定された建設コストの上限は約77億ドル。これを超えた分はWH・S&W側がすべて負担することとなり、東芝も巻き込む巨額損失リスクの芽が生まれた。

 もう一方のサザン電力とのプロジェクトを巡っても、同社が15年10月に米国証券取引委員会に提出した資料の中で「EPC(設計・調達・工事)契約を改定し、請負業者による契約価格のさらなる上昇を制限する」との記載を確認できる。

1日当たりのコストは、従来の3倍に!?

 固定価格オプションに伴って電力会社が再設定した建設コストの上限を超えなければWH側に追加負担は生じない。しかし状況は芳しくない。

 「ジョージア州公共サービス委員会」が開いたボーグル発電所プロジェクトに関する公聴会。16年11月公開のリポートを確認すると、原子力工学の博士号を持つ専門家らがさまざまな質問に答えている。

 「プロジェクトのスケジュールに対する評価は?」との質問には、「今のスケジュールのまま完工というのは非常にチャレンジング。マイルストーン(節目)達成は継続的に遅れている」と回答し、4カ月の遅れを指摘する声も紹介している。

 「完工予定日に間に合わない可能性は?」との問いに対しては、「間に合わせるため、17年9月まで必要となる1日当たりのコストは、従来の3倍を超えるだろう」。工事遅延と、それに伴うコスト上昇が避けられない実態が浮かび上がる。

VCサマー、1日約4300人の作業者を動員

 もう一方のVCサマープロジェクトの状況も楽観視できない。スキャナ電力が16年9月に公表した四半期リポートによると、S&Wを買収した後、WHが建設工事を発注した米フルアーが、16年7―9月に毎月約150人の新人を雇用したと報告し、それに伴う訓練を実施しているとの報告がある。

 米国での原発建設は30年超ぶり。業界関係者は「人材や教育関連のコストも膨らんでいる」と説明する。

 同プロジェクトでの各工程の遅れも見逃せない。例えば「2号機でのクレーン設置」が、作業完了予定の16年12月から10カ月遅れるとの見通しを示している。「クレーンがボトルネックになり、遅延が各種機器の据え付けに波及するリスクがある」(ファンド関係者)と指摘する。

 16年末、巨額損失リスクの発覚を受けて東芝が開いた会見。畠澤守執行役常務原子力事業部長は「今後、(建設コストが)際限なく伸びるということはない」と説明した。

S&W買収メリットをリスクが上回る

 しかしプロジェクト現場は、VCサマーの場合で1日に約4300人の作業者が動員されるというケタ違いの大きさ。各プロジェクトの1日当たりのコストについて最低500万ドル超との指摘がある。

 仮に100日の遅れが生じると5億ドル×2プロジェクト分で10億ドルの追加となる。この試算が正しければ、日々の工事遅延が東芝・WHを蝕んでいく状況だ。

 S&Wを買収した理由について東芝の綱川智社長は「あの時は、リスクを上回るメリットがあったと判断した」と話した。しかし現実にはS&W買収によって電力会社から引き出した建設コスト上乗せと完工延期という二つのメリットを、固定価格を超える超過コスト発生というリスクが上回っている。

 東芝・WHの損失はどこまで膨れあがるのか。

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