任天堂のDNAを全て継承! 新ゲーム機「Nintendo Switch」が“スイッチ”したいものは何

任天堂のDNAを全て継承! 新ゲーム機「Nintendo Switch」が“スイッチ”したいものは何か?

 2016年夏にリリースされ、日本中で大ブームを巻き起こした「ポケモンGO」をはじめ、現在のゲーム市場を牽引しているのは「スマホゲーム」である。世界的にも、もはやPCゲームを抜いてスマホやタブレットのゲームアプリが全盛となっている現状の流れに対して、真っ向から挑もうとしているのが任天堂だ。2017年3月3日に発売する家庭用の新型ゲーム機『Nintendo Switch』で対抗する。

 Nintendo Switchは、同社が2012年から販売してきた「Wii U」の後継となる新型ゲーム機だ。Wii Uと同様に、据え置き型ゲーム機としてテレビに接続して遊べるが、それだけではない。本体に備わった液晶モニターを利用してテーブルの上で遊べたり、外に持ち出せるモバイルゲーム機にもなったりと、プレイスタイルを自由に“スイッチ(切り替え)”できるようになっている。

 スイッチできるのは、遊び方だけではない。実際に手に取り、体験してみると、「もっと大きな何か」をスイッチできる可能性まで感じさせる。それはいったい何か――。17年1月13日に開催されたプレス発表会を子細に振り返りながら、任天堂が何を目指そうとしているのかを探っていこう。

●“世の中の流れを切り換える”という強烈な意思表示

 「Switch(スイッチ)」という単語からは、任天堂のさまざまな“思惑”が読み取れる。特に顕著に感じるのが、“流れを切り換える”という意志だ。これまで、ファミコンやゲームボーイ、3DS、Wii…など、世界中で大ヒットした数々のゲーム機を生み出し、ゲーム業界を牽引してきた同社が、「失敗」とまで言われたWii Uを乗り越え、急成長するスマホゲームに流れるユーザーに対してどうアプローチするのか。

 1月、東京ビッグサイトで開催されたプレス発表会の会場では、開始前からDJがテクノミュージックを大音量で流し、レーザー光線が飛び交うクラブイベントさながらの演出のなか、カウントダウンに続いて“カチッ”というスイッチ音で発表がスタートした。この演出一つとっても、Nintendo Switchで遊び方だけでなく、「ゲーム業界、ひいては世の中の流れ」そのものまで変えたいという任天堂の“気合い”がヒシヒシと感じられた。

「任天堂のDNA」が全て組み込まれている

 Nintendo Switchの特徴は、前述したようにプレイスタイルをスイッチできることだ。基本の商品構成は、6.2インチのタッチパネル液晶を備えた黒く四角い「Switch本体」と、その本体をテレビに接続する際に使う「Switchドック」、グリップ型コントローラーである「Joy-Con(ジョイコン)」、ジョイコンを手に持って遊ぶときに使うJoy-Conストラップ、左右一組のJoy-Conをひとつのコントローラーとして使えるようにするJoy-Conグリップとなっている(その他、HDMIケーブルやACアダプターなども同梱)。

 これらを必要に応じて組み合わせることで、(1)据え置き型としてSwitchドックを介してテレビに接続して遊ぶ「TVモード」、(2)液晶画面付きの本体をSwitchドックから引き抜き、背面のスタンドを利用して立てて遊ぶ「テーブルモード」、(3)Switch本体の左右にJoy-Conを取り付けてモバイルゲーム機として遊ぶ「携帯モード」――という3通りのプレイスタイルを選択できる。

 ソフト開発の責任者を務める同社取締役企画制作本部長の高橋伸也氏によると、こうした多彩な遊び方ができるNintendo Switchは、「これまで任天堂が提供してきた数々のゲーム機のDNAをしっかり受け継いだゲーム機」だという。

 「ファミリーコンピューター(1983年)には、2つのコントローラーが付いていました。ゲームボーイ(89年)はビデオゲームを外に持ち出せるようにし、スーパーファミコン(90年)でABボタンに加えてXYボタンとLRボタンを加え、ニンテンドー64(96年)では、世界で初めてアナログ入力のできる3Dスティックを付け、コントローラーを振動させる振動パックを開発しました」

 「ゲームキューブ(2001年)には持ち運び用の取っ手を付け、ニンテンドーDS(04年)では画面をタッチスクリーンにして、Wii(06年)ではWiiリモコンを使ってモーションコントロールができるようになりました。Wii U(12年)のゲームパットでは、テレビの前から離れてゲームができるようにしました」

 高橋氏が挙げた「ゲーム機のイノベーション」の要素がNintendo SwitchにはDNAとして組み込まれているわけだが、それらの中でも特に受け継いだDNAの影響を色濃く反映しており、実際にNintendo Switchの要(かなめ)となっているのが、手のひらで包み隠せるほど小さなコントローラー「Joy-Con」なのだという。

極小サイズに機能満載、魅惑が詰まったJoy-Con

 「ゲームにとって、コントローラーはとても大切」と、そのJoy-Conについて説明するのは、Nintendo Switch総合プロデューサーの小泉歓晃氏だ。

 本体から取り外して握ると、子どもの手のひらでもすっぽり収まってしまうほど小さいJoy-Conだが、ゲーム機のコントローラーとして標準的なボタン類をしっかり備えている。他のゲーム機のように、Joy-Con単体(左右一対のどちらか一方だけ)で様々なゲームを遊べる。つまり、ファミコン同様、Nintendo Switchには最初からコントローラーが2個付いていることになる。

 他社のゲーム機が(オンラインプレイは別として)現実空間ではひとりで没頭して遊ぶ方向に進む中、任天堂は友達や家族にこのJoy-Conを手渡して「リアル空間で一緒にゲームをプレイする楽しさ」を本気で取り戻そうとしているように見える。ちなみに、同社はこのJoy-Conを分け合って遊ぶスタイルを「おすそわけプレイ」と呼んでいる。

 Joy-Conを分け合って遊べるようにはなっているものの、二つセットで使うことも考えて、左右のJoy-Conはそれぞれ異なる機能も備えている。具体的には、右(手に持つ側)のJoy-Conには家のマークが描かれたホームメニューに戻るボタン(HOMEボタン)のほか、近距離無線通信(NFC)のリーダー/ライター機能を搭載しており、同社のゲーム連動フィギュア「Amiibo(アミーボ)」のデータの読み書きなどができる。

 また、モノの形や動き、距離などを高い精度で検出できる「モーションIRカメラ」も搭載する。ジャンケンのグー、チョキ、パーといった手の形や動きを読み取ったり、かざした手までの距離を計ったりすることが可能なため、これまでにないユニークな操作を実現できるという。それにしても、こんな極小コントローラーによくぞNFC機能やモーションキャプチャー用カメラなどまで搭載できたものだと筆者はとても驚いた。

 一方、左のJoy-Conには、HOMEボタンに相当する位置に四角いボタンが付いている。これは、ゲーム画面を撮影するための「キャプチャーボタン」だ。現状は静止画のみのキャプチャーだが、将来的には動画撮影にも対応するという。

 キャラクターを操作するためのボタン類のほかに、左右両方のJoy-Conが共通して搭載しているのが「加速度センサー」と「ジャイロセンサー」だ。これにより、左右で独立したアクションコントロールができる。両手でそれぞれを握って動かせば、左右別々のアクションを関知して複雑な手の動きをそのままゲーム内のキャラクターに伝えられる。

グラスに氷を入れたときの微細な揺れまで体感可能

 最近のゲーム機のコントローラーでは珍しくなくなった「振動」機能だが、Nintendo Switchはこれにも並々ならぬ力を入れている。「HD振動」と呼ぶ繊細で表現力豊かな振動を実現する機能を搭載しているのだ。「敵に攻撃を受けたらブルブル震える」といった、これまでの大味な振動ではなく、たとえば「グラスに氷をコロンと入れたときの揺れ」といった、繊細な感触まで再現できるという。

 こうした新しいセンサーやデバイス、技術の搭載により、単にゲームを操作するだけでなく「Joy-Conそのものがプレーヤーに語りかけてくる表現力を持ちました」と小泉氏は語る。

 実際に触ってみると、NINTENDO64の振動パックやWiiリモコンとは全く異なる進化を遂げていることがすぐわかった。振動は大きくないのに“妙なリアリティ”があり、とても新鮮な感覚だった。この感覚を活用したどんなゲームがこれから出てくるのか。とても楽しみである。

 Joy-Conに関しては、性能とは直接関係ないところにも同社のこだわりが不思議な魅力となって端々に感じられる。その一つが、Joy-ConをSwitchドックやJoy-Conグリップに取り付けるときの“カチッ”という感触だ。実に他愛もない話だが、これが大変に気持ち良い。

 他のゲーム機では感じたことのない、「ブロック遊び」や「パズル」のような、組み立て、組み換え、形を変えてさまざまな使い方をする、モノとしての存在感と楽しみ。そうしたものがNintendo Switchには間違いなくある。

 ゲーム機なのに、ソフトではなく本体そのものだけでも「欲しい」と感じさせられたのは、本当に久しぶりだ。このモノとしての魅力こそが、任天堂のゲーム機のDNAが結実している証拠なのかもしれない。

 ただし、やはりゲーム機はゲームソフトがあってこそ成り立つもの。Nintendo Switchは、どんな新しいゲームソフトで我々を楽しませてくれるのだろうか。さらにその先には、ゲームという枠さえ飛び越えて、未知の体験を我々にもたらしてくれる可能性もあったりするのだろうか。後編ではその辺りを探ってみたい。

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