DeNAの謝罪会見、憤る被害者「賠償請求少なすぎ」「法的リスク甘く見過ぎ」 賠償の行方は?
運営するキュレーションサイト(まとめサイト)で無断転載などが社会問題化し、10サイトを公開停止しているIT大手・DeNAが13日、記者会見を開きました。DeNAは著作権侵害の被害申告が84件寄せられていることを明らかにしたうえで、賠償の個別相談に応じていく姿勢を示しました。注目されたDeNAの会見。盗用された被害者はどのように見ていたのでしょうか? 「本当に被害者の方を向いているのか」。「法的リスクを甘く見過ぎでは」。会見への感想を聞きました。
この日までに、弁護士4人でつくる第三者委員会が277ページにわたる原因究明の「調査報告書」をDeNAに提出しました。
調査報告書では10サイトで、無断転載の可能性がある画像が最大74万7643件、記事が最大約2万件あると指摘されました。
ふくらんだ被害件数に、記者会見したDeNAの守安功社長は「なるべく早く(被害者が)納得いく解決をめざしたい」と説明。被害者と個別に相談をして、賠償する意向を示しました。
社会問題化する前、DeNAは自社が「まとめサイト」を運営しているにすぎず、一般利用者の投稿記事の責任は負わないと主張してきました。
調査報告書ではさらに、社内のインターン生が書いた記事にクレームが来ても、社内でつくった記事であることを明かさず、責任を回避していた実態も明らかになりました。
社会問題化を受け、DeNAはこうした姿勢を転換せざるを得ない状況に追い込まれました。今回の会見では守安社長は「誰が書いたかに関わらず、ご迷惑をおかけしたので(被害者への賠償を)考えている」と表明しました。
ただ、賠償の時期については「個別に交渉していく」と述べるにとどめました。
旅先の写真などをDeNA運営の「MERY」に無断転載された20代女性は、会見を見て「賠償請求する人の少なさに驚いた」といいます。
万単位の権利侵害の疑いが指摘されたのに、被害申告は84件だけ。
「私も社会問題化前、企業に被害を訴えたら名誉毀損に問われるのではと思っていた。被害を言い出せない人が、まだ大勢いるのでは」と感じたといいます。
そのうえで「社会問題化した12月から待たされているので、相談を早く進めたいというのが一番。具体的なメドを提示して頂きたい」と話します。
化粧品ブログの画像をMERYに転載され、DeNAから謝罪を受けた30代の会社員女性は「今回、記者会見を行うことのお知らせもなかった。本当に被害者の方を向いているのか疑問に感じた」と話します。
「謝罪が社会に向けたアピールに終わらせて欲しくない。私たちが写真1枚撮るのに込めている、気持ちや労力を考えた対応をして欲しい」と話します。
DeNAが運営する「Find Travel」に無断転載された30代の写真家男性は「まとめサイトの法的リスクを甘く見過ぎではないか」と不満を語ります。
調査報告書にはDeNAがまとめサイトを傘下に収める際、社内で著作権侵害のリスクが議論されたと書かれていました。「リスクの存在が分かっていたのに、買収後になぜビジネスモデルの見直しをしなかったのか。疑問は解けていません」
DeNAはまとめサイト再開について、「全くの白紙」と強調しました。南場智子会長は「同じような形で再開することはありません。再開するにしても、キュレーションという言葉は使わないでしょう」と語り、後悔の色をにじませました。
DeNA、まとめサイト被害者に衝撃告白 「記事量産ノルマ」認める
無断転載が社会問題化したため「まとめサイト」の公開を止めているDeNAが、全国の被害者への謝罪行脚を進めています。3月をめどに、この問題を決着へと向かわせるのが狙いです。しかし、被害者の不信感は解けていません。ある女性が謝罪の場で追及したところ、DeNA社員が衝撃の「運営実態」を告白しました。
ふくらんだ不信感
今年2月、東京都内。貸し会議室で、30代の会社員ユキコさん(仮名)がDeNAの部長級社員ら2人と向き合いました。
ユキコさんは自分で購入した化粧品を、ブログで詳しく紹介してきました。
自分の記事の盗用に気付いたのは昨年1月のことでした。DeNAが運営する女性向けまとめサイト「MERY」に、リップグロスなどの写真が何枚も転載されました。ブログには化粧品を使ったユキコさん自身の顔写真も載せていたため、「勝手に使われるのは本当に怖かった」といいます。
抗議を続け、DeNAからは「ブログを使用禁止対象に登録した」と回答がありましたが、その後も無断転載は止まりませんでした。当時はDeNAが運営する「WELQ」(現在公開停止)などでの無断転載が問題化する前でした。
ユキコさんが「まとめ記事を投稿している利用者に、必ず転載許可をとるよう義務づけて欲しい」と求めても、既に対策はとっていると紋切り型の回答があるだけ。ならばと損害賠償を求めても、先延ばしにされてきました。
風向きが変わったのは昨年冬、まとめサイトが社会問題化してからです。
「直接お会いして、ご説明したい」
今年1月末、DeNAから面会の申し出がありました。
「愕然とした」謝るDeNA社員
「対応のメール履歴を見て、正直愕然としました」。面会の冒頭、DeNA社員はこう陳謝しました。「問い合わせに定型メールのような形で返したりと、質問に真摯に答えているような部分が感じにくい」。
非を認める一方で、DeNA社員からは要求もありました。「面会の内容を録音しないで欲しい」。ユキコさんはこう言って断りました。「あなた方がこれまで私のお願いを、しっかり聞いてくれたことがありましたか?」。
ユキコさんはずっと気になっていたことを質問しました。MERYでは、どんなずさんな記事の作られ方をしていたのか。
DeNA社員はこう答えました。
利用者からの投稿以外にも、インターン生として女子大学生らを集め、「ある程度の時間の中で、何本記事を書くようなことを、一定程度やっていたというのはあるのではないかと考えています」。
記者会見でも認めてこなかった「執筆ノルマ」の存在を語りました。限られた時間内に記事を書くよう組織内で求めていた――それは無断転載の増加に直結する運営手法です。
「4月再開」本当か?
ユキコさんの元には、ウェブ広告業界などの友人から不穏な情報も聞こえてきていました。「MERY側が4月にも運営再開すると言っている」。まだ賠償問題も決着していないのに、そんな方針が決まっているのか――。
ユキコさんの質問に、DeNA社員は「4月再開は、今時点ではありません」と断言しました。
しかし重ねて聞いていくと、回答があいまいに。「復活しないかというとお答えできないのが正しい情報でして。今時点では再開したいと思っている人も当然いますが、意思決定としてはなされていなくて。再開するにしてもかなりハードルが高いと思っている」
賠償問題、結論出ず
最後にユキコさんにはDeNA社員から、A4用紙4枚の「社内調査に関するご報告」が示されました。
調査の結果、ユキコさんの写真4枚が確かにMERYに転載されていました。しかし書かれた事実関係はそれだけで、補足欄に「ご対応は、社内で検討させていただいております」とあります。賠償の可否は「3月をめどに決める」とDeNA社員は強調しました。
「(無断転載の)問い合わせが少ない数ではない状況に来ていて、具体的な請求金額を提示されている場合、されていない場合、色々ある中においてどういう対応をすべきなのか検討している段階。単純に時間がかかっている状況がございます」
面会終了後、ユキコさんは記者に語りました。「愛情を込めて書いた文章や写真をパクられて、やめてって言っても、ずっと終わらなくて。それで今回も結論が出なかった。ずっと我慢している人たちは、私の周りにもたくさんいるんです。DeNAはそういう子たちの気持ち、分かってくれているんでしょうか」
MERYに似たサイトが次々登場する状況も、変わって欲しいといいます。
「様々な会社に削除依頼を出し続けて、まるで『パクられ地獄』です。DeNAが責任ある対応を示すことで、ほかのサイトの方針転換にもつながって欲しい」
ようやく声あげられるように
DeNAは「社内調査に関するご報告」を持って、全国の被害者との面会を進めています。旅先の写真などをブログに載せていた20代のカナさん(仮名)も、MERYに画像を無断転載されました。
DeNA社員から面会で「大切な作品を我々の方が使用してしまいまして、大変申し訳なく思っております」と謝られましたが、カナさんは「賠償の話になると、のらりくらりと避けられている気がする」。
ブログには訪問者が文章をコピーすると、メールで通知される仕組みを導入していました。
記事の大半を一気にコピーしていく人が連日のように現れました。カナさんのメールボックスには通知メールがずらりと並んでいます。
DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言
命や健康に関わる情報を扱っていながら、専門知識のない人たちが記事を執筆しているメディアがある。東証一部上場企業・DeNAが運営する医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」だ。
その記事はどのように書かれているのか。複数のライターや現役社員がBuzzFeed Newsの取材に証言した。
誰でも記事を書ける「キュレーションメディア」を謳うことで、DeNAは記事の内容に責任を負わないとしている。各記事の末尾にはこう記されている。
当社は、この記事の情報及びこの情報を用いて行う利用者の判断について、正確性、完全性、有益性、特定目的への適合性、その他一切について責任を負うものではありません。この記事の情報を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。
しかし、BuzzFeed Newsの取材に応じた社員やライターは、実態はWELQ編集部、つまりDeNAの事実上の指導のもとに大量の記事が書かれている、と証言した。
10月時点では、8000文字前後の記事が、毎日およそ100本も掲載されていた。それらの記事は、医療関係者のチェックを経ず、検索上位に大量に並ぶ結果となっている。
「キュレーションメディア」で誰でも投稿できると説明しつつ、ウェブ検索結果の上位にくる記事の書き方をマニュアル化している。複数のライターが、それを元に記事を書いたと証言した。
記事の大量生産を可能にする方法とは
現役社員やライターがBuzzFeed Newsに証言したのは、次のような内容だ。
まず、WELQの運営元であるDeNAは、データ分析により検索エンジンで上位を狙える記事のテーマ・構成を決める。
次に、クラウドソーシングサービスで見つけた外部ライターに、WELQ編集部が配布するマニュアル通りに執筆するよう求める。外部ライターの採用は、主に「クラウドワークス」「ランサーズ」「シュフティ」といったクラウドソーシングのサービスを利用している。
記事の編集、公開作業はDeNAが担う。大量の外部ライターを抱えることで、記事の量産化を可能にしている。
これが一連の流れだ。
ライターとのチャットを入手
DeNAは各クラウドソーシングサービス運営会社に案件を委託。募集画面では社名を伏せ、外部ライターが案件に応募したタイミングで社名を明かしている。
審査時には、一定期間に執筆可能な記事本数などを問うアンケートと、執筆能力を測るテストを実施。合格者とは、グループチャットツール「チャットワーク」を通じて直接やりとりする。
以下に掲載するのは、BuzzFeed Newsが入手したWELQ編集部とライターとのチャットワークでのやりとりだ。身元の特定を避けるため、一部修正している。
ライターに求められている能力は
外部ライターに、医療に関する知識を求めているのか。
WELQでの外部ライター経験があるAさんは、「アンケートにそういった項目があったかもしれませんが、記憶に残らない程度。医療の知識や経験は聞かれなかったと思います」とBuzzFeed Newsに話す。
また、WELQなどDeNAのキュレーションメディアプラットフォーム事業(DeNAパレット)に携わる現役社員Bさんも「最低限の文章を書いたことがあるか、こういう(キュレーション)業務が大丈夫かとか。そんなに(審査をして)人を選んではいない」と証言している。
BuzzFeed Newsが入手したWELQの外部ライターリストには、このようなプロセスで集まったとみられる1500件以上の会員IDが記されている。
編集部がテーマを準備、チェックして公開
DeNAと外部ライターは、記事管理ツール「パレットワークス」を通じて原稿をやりとりする。
外部ライターは記事を書くにあたり、DeNAがあらかじめ用意した「テーマ」の中から好きなものを選ぶ。DeNA社員のBさんによれば、このテーマは、Googleをクロールして他のウェブページから取得したワードから導き出したものだ。
記事の書き方は、外部ライター向けのマニュアルに記されている。表紙には、医療情報が専門性が高いこと、法的に扱いが難しいことが明記されている。
医療系記事は専門性が高く、法律的観点からも表現方法などが細かく規定されているため、ライターの皆様にはなるべく簡単に執筆いただけるようにマニュアルを作成いたしました。
DeNAはこのマニュアルで、記事の執筆時に「参考」にすべきサイトを案内している。本文をそのままコピペするのは禁止し、「文章が重複しないようにご自身の言葉でリライトをお願いします」と、引用ではなく、わざわざリライトを指示している。
記事をどのサイトから引用しているか追跡を難しくするためだと見られる。本来は適切に引用すべきところを、引用でないかのように見せかける悪質な行為と言える。
そのほか、「参考サイトの文章を、事実や必要な情報を残して独自表現で書き換えるコツ」や「参考サイトに類似しない本文作成のコツ」などの項目もある。外部ライターに対して、こんなアドバイスをしている。
外部ライターはこうしてまとめた記事を、パレットワークスを通じてDeNAに納品する。DeNAが内容をチェックし、記事を公開する。
誰でも記事を公開できる「キュレーションメディア」でありながら、外部ライターに記事を発注し、ライター自身にはその記事を公開する権限がない。
DeNAは、書き方を指南し、記事のキーワードを指定し、書き方をマニュアル化し、ライターにお金を払い、最終的な編集・公開を担っている。
こうして公開された記事に対して、DeNAは「キュレーションメディアで誰でも投稿できるから、記事に責任がない」と表明してきた。
大量の記事がこの手法で作られた?
「WELQに掲載されている(広告や連載を除く)記事の8〜9割は、外部ライターに書かせたものです」とDeNA社員のBさんは明かす。
実際にどれだけの本数が外部ライターによるものかは、確認できなかった。一般会員と外部ライターの記事本数の割合について、DeNA広報部は「非公表」としてBuzzFeed Newsに対し、具体的な回答を控えている。
DeNAからの発注でなく、誰でも登録できる一般会員として記事を書いても、報酬はない。それなのに、WELQには検索エンジンに上位にくる長文の記事が大量にある。報酬がないのに、医療知識のない一般会員が長文記事を書くとは考えづらい。
つまり、長文記事で検索上位に来るものは、編集部が外部ライターに依頼して書かせたものである可能性が高い。
「WELQのSEO施策」DeNAは社内表彰
「白血病」「ヘルニア」「吐き気」といったワードの検索結果で、WELQの記事は医療機関などのサイトを抑えてトップに表示される。
なぜ、上位に来るのか。その理由はSEO(検索エンジン最適化)施策にある。
SEOに詳しい辻正浩氏にWELQのマニュアルを分析してもらった。辻氏は「SEOが考えられています。現在の傾向をしっかりと取り込んだ内容です」と解説する。
しかし、マニュアルにすべてのノウハウが記されているわけではないという。
「SEO観点で難易度が高い部分は、触れられていません。おそらく、このようなマニュアルだけで記事が作られているのではなく、内製で改善しているか、さらに難易度が高い仕事をする外注が別にいるのでしょう」
「簡単な作業は切り分けて低コストで効率よく行うことで、大量生産の体制を作っていることがうかがわれます」
DeNA社員のBさんによれば、このSEOの仕組みは、Palette事業推進統括部 キュレーション企画統括部 グロースハック部が整えた。
DeNAの社内表彰制度で、2016年上期(4〜9月)にこのグロースハック部が、さらにその前の期には、WELQの立ち上げに携わった社員も表彰されているという。
改善策にも批判の声が上がる
運営体制への批判を受けて、WELQは11月25日、「公開されている記事」について、専門家に対する医学的知見からの監修の依頼を開始したと発表した。また、読者向けに「記事内容に関する通報フォーム」を設置した。
WELQが扱うのは命や健康に関わる情報だ。しかし信頼性が確認されていない、多くの既存の記事は、未だ公開されたままになっている。
この対応には、医療関係者やIT業界関係者、メディア関係者を中心に批判の声が多くあがっている。
DeNA「WELQ(ウェルク)」休止…まとめサイトの問題点と背景は
医療系サイト「WELQ(ウェルク)」をはじめDeNA(ディー・エヌ・エー)が運営するまとめサイトで不正確な記事や著作権無視の転用が次々と見つかり、休止に追い込まれた。
他社のサイトでも、正確性を欠いたり、無断転用されたりした記事が見つかり、対応に追われるなど、波紋が広がっている。背景には「広告至上主義」「検索サイトの上位表示テクニック」の問題がある。(ITジャーナリスト・三上洋)
不正確な内容、著作権無視の転用・盗用
大手IT企業・DeNAが12月7日に記者会見を開き、運営していた10のまとめサイト休止と、不正確な医療記事・記事盗用などについて謝罪した。会見の中でDeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏は、記事内容に問題があったこと、他サイトからの記事の不適切な引用があったことを認めて謝罪している。
きっかけとなったのは、医療系サイト・WELQの内容だった。10月末に「死にたい」というキーワードでGoogle検索すると、WELQの広告掲載記事がトップに表示されていることが問題になった。記事は転職サイトの広告に誘導するものであり、「死にたい」というキーワードで検索上位に表示されるようにページが作られていた。
この問題をきっかけに、WELQが詳しく調査されるようになる。医療に詳しいライターの朽木誠一郎氏、SEO(検索サイトの上位に表示されるための最適化)の専門家である辻正浩氏、ITコンサルタントの永江一石氏などが、WELQの内容や他のサイトからの転用や盗用などの問題を分析。その上でネットメディア大手のBuzzFeed(バズフィード)が、内部マニュアルを入手した告発記事を出した。
これらの追及によりDeNAは非を認め、記事の一部を削除したが、さらに問題がある記事・サイトが次々と発覚。最終的には、WELQや女性向け大手サイト・MERY(メリー)を含む、DeNAのまとめサイトすべてを休止することになった。
また他社のサイトでも問題がある記事・サイトが続々と見つかっており、各社が対応に追われている。リクルートホールディングスでは9日に「アニプラ」など4サイトを、他のサイトからの画像転用があるとして非公開にした。サイバーエージェントも情報サイト「Spotlight(スポットライト)」の医療関連の記事で、内容の正確性を確認できないものの公開を取りやめた。10月にはヤフーも女性向けファッションサイト「TRILL(トリル)」で画像の無断転用があったとして記事を削除している。KDDI子会社が運営する「nanapi(ナナピ)」でも、医療や健康に関する記事をチェックするために非公開にした。
これらのまとめサイトの問題は、以前から指摘されていた。特に記事内容や画像を転用されたことへの抗議は何度も行われていたが、ライターによる指摘だったためか個別対応にとどまっていた。しかし今回は専門家やネットメディアが集中的に調査をし、企業全体の問題であることがわかったことでメディアが大きく報道。それにより各社がまとめサイト事業全体の見直しを始めている。
「工場」のように記事を大量生産
今回の事件の問題点は複数ある。筆者の視点と、会見での質問を含めて整理しておきたい。
★まとめサイト事件の問題点
●不正確な内容や荒唐無稽な記事が複数あった
WELQでは牛丼チェーン店、中華料理のチェーン店のブランド名を使って「●●●(ブランド名)アレルギー」をタイトルに付けた記事が複数あった。これはお米や肉などのアレルギーに関する記事と、チェーン店のメニューを無理に結びつけたもの。誹謗ひぼう中傷とも言えるもので、有名チェーン店の名前をタイトルに入れることで、検索キーワードからの閲覧数を増やすことが目的だったと思われる。この他にも検索数を稼ぐために、不正確・荒唐無稽な記事が複数あり、内容のチェック体制に不備があったことをDeNA社長も認めている。
●著作権を侵害する記事内容や写真の転用・盗用
WELQでは医師のブログの内容をコピペして利用していたほか、内容を改変して掲載していた。また女性向けサイト・MERYでも、他社の記事から写真や内容を勝手にコピーして使っていた。DeNA側がライターに渡しているマニュアルでは、他社のサイトを参考にすることを書いており、さらに同じ文章にならないように語尾を変えることを推奨していた(報道されているマニュアルについて、DeNA側が会見で認めている)。コピペで記事を作り、それがバレないように隠蔽することを推奨しているように見えるものだ。これについてDeNA社長は会見で「他サイトからの文言の引用を推奨していると捉えられかねない表現があった」として謝罪している。
●クラウドソーシングで専門ではないライターに「大量生産」させていた
ネット上で仕事を仲介するサービス、「クラウドソーシング」で記事を外注。「知識のない人でもできる仕事です」として、専門外のライターに記事を書かせていた。原稿料は異常なほど安く、500文字・1000文字で300円から500円程度、比較的単価の高い医療系でも1文字当たり0.5円程度だった。これは原稿執筆というより、コピペによるまとめ作業と言ったほうがよいだろう。記事を大量生産する工場のようであり、ライターにとっては内職のような作業であった。
●「プラットフォーム提供」でごまかして記事の責任をあいまいに
DeNAを始めとしたまとめサイト運営企業は、ほとんどが「プラットフォーム事業」として、サイトのシステムを提供すると称している。記事はあくまでライターが投稿しているもので、企業は責任を負わないという姿勢だ。しかしDeNAでは会社がライターを雇って書かせており、明らかに会社側の指示で記事を作っている。不正確な記事が存在していても、「当社はプラットフォームを提供しているだけです」と逃げて責任をあいまいにしていた。
この他にも、DeNAによるまとめサイト買収での経緯が不明なこと(コピペで記事を作っていることを把握していながら買収したのか?)、企業の法務担当者によるチェックが甘すぎることなどの問題点が記者会見で指摘されている。DeNAによる説明がさらに必要であろう。
信頼できない検索結果、サイトの信頼性が重要に
今回の事件の背景には、Googleを始めとした検索サイトの問題や、ネット広告がキーワードで表示されることなどがある。筆者が考える背景を整理しておく。
●「広告至上主義」で検索サイト上位表示=SEOだけを重視
検索サイトでの表示位置が、広告収入に直結する。特にスマホ時代では画面が小さいこともあって、検索キーワードで上位に表示されるかどうかで、広告収入が大きく変わる。そのため「SEO(Search Engine Optimization)=検索サイト最適化」というテクニックが使われている。検索されやすいキーワードをタイトルや見出しに入れる、記事を長くする、参照リンクを張り巡らせるといったテクニックがある。WELQの記事は、これらのSEOが最優先されており、記事の内容は二の次になっていた可能性が高い。
●キーワードや内容で広告自動配信。単価が高いキーワードを狙う結果に
ネット広告の多くは検索キーワードやサイトの内容で、自動的に広告が配信されている。医療系のサイトでは、クリニックや薬品会社、エステや健康食品などの広告が表示される。これらの広告は、他のジャンルに比べて単価が高いため、医療系の記事・サイトを量産することで収入が大きく伸びる。WELQでは1日に100記事以上をアップしていたが、単価の高い広告で稼ぐために、内容を後回しにして記事を大量生産していたと思われる。
●著作権の意識が低い・メディアとしての自覚も足りない
今回の事件では、DeNAとライターどちらも著作権の意識が低かった。他の記事の転用・盗用をしていたり、写真を勝手に使ったりなどの行為がまかり通っていた。また記事の正確性をチェックしない、取材せずに臆測で書くなど、メディアとしての問題点もある。これはDeNAに限らず、他のまとめサイト・ブログなどの一部にも当てはまる話である。
一連の事件によって、ネット企業のまとめサイト事業では、記事の見直しや運営体制の再点検が行われている。しかし不正確な記事・コピペ中心のサイトは今でも大量にあり、改善しなければならないサイト・企業が複数ある。著作権をチェックし、内容に問題がないか確認してほしいものだ。そして筆者を含めて、メディアも自らの仕事を省みる必要がある。閲覧数重視でタイトルを過激にしていないか、内容が正確かを改めてチェックするべきだろう。
私たちユーザーは、検索サイトでの表示結果は信用できないもの、と考えておきたい。現状の検索サイトは、残念ながらテクニックだけで上位表示できてしまうためだ。検索サイトでの検索表示位置よりも、サイト全体の信頼度で情報を探すようにしたほうがいいだろう。
DeNAサイト休止、ネット検索の“盲点”とは
DeNAはキュレーションメディア(※)として運営する10サイトをすべて休止した。医療・健康記事の体裁を取りながら、肩凝りが「幽霊が原因のことも?」などと正確性や信頼性の乏しい記事を掲載したほか、他のサイトから無断で記事を転用したり、それらを組み合わせて一部だけ加筆・修正するなど、記事を粗製乱造していことが明らかになったためだ。
当然、同社も閲覧者にとって価値が低い情報を作成しているという認識は持っていたはずである。それなのに、こうした行為を繰り返したのは、SEO(検索エンジン最適化)と広告の組み合わせが、大きな売り上げをもたらすからだ。
※キュレーションメディア…ある視点やテーマに沿って、ネット上から情報を収集し、分類、整理して共有することにより、新しい価値を持たせるメディアのこと。美術館において、展示する美術品の選定やその展示方法などを考える業務のキュレーター(curator)が由来。
【お知らせ】WELQの全記事の非公開化について
株式会社ディー・エヌ・エー(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO:守安 功、以下DeNA)は、ヘルスケア情報を扱うキュレーションプラットフォーム「WELQ(ウェルク)」におきまして、医療情報に関する記事の信憑性について多数のご意見が寄せられたことを受け、検証および精査した結果、本日11月29日(火)21時をもって全ての記事を非公開といたしました。また同時に、現在WELQで取り扱いのある全ての広告商品の販売を停止いたしました。
ご利用いただいている皆様ならびに、広告主の皆様には、多大なるご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。
医学的知見を有した専門家による監修がなされていない記事が公開されていたことに関して、かねてより進めている医師や薬剤師などの専門家による医学的知見および薬機法※をふまえた監修体制を速やかに整えます。その上で医学的根拠に基づく監修が必要な記事においては順次監修を行い、皆様に安心してご利用いただける状態にしたのち、WELQ編集部名義で記事を掲載していく方針です。
医療情報以外の非公開化記事に関しては、WELQ編集部にて記事の品質を確認したうえで公開判断を行います。
株式会社ディー・エヌ・エー:当社運営のキュレーションプラットフォームについて
※ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)
