手持ちでスローシャッターが切れるオリンパス「E-M1 MarkII」は“化け物”である
控えめにいっても、「OM-D E-M1 MarkII」は化け物である。
特に手ブレ補正、AF、連写の3つがすごい。
オリンパスのフラッグシップモデル「E-M1」の後継機で、発売から3年たち、価格も上がりボディもちょっと大きく重くなったので当然それなりに進化しててしかるべきではあるが、それにしてもである、1秒以上のスローシャッターを手持ちで撮れるようになるとは思わなかったのだ。
AFと連写も速くなった(これは今のハイエンドミラーレス一眼のトレンドだ)。コンティニアスAFを実用的に使えるレベルに達したのだ。
そしてプロ向けのフラッグシップモデルとしていろいろ進化した。
これは注目すべきカメラである。
手持ちで夜景撮れる超絶手ブレ補正
とりあえずこれをどうぞ。
手持ちで、どこかに寄りかかったり腕をどこかでささえたりせず、普通に仁王立ちし、息を止めて5秒間ぐっと集中してファインダーを覗いて撮った夜景写真である。
「手持ちで5秒!」。三脚いらず。
絞り優先でF8まで絞り込んで5秒。5秒集中するなんてなかなかつらいのであるが、ほとんどぶれてない写真を撮れた。
今までどんなカメラでも1秒以上のスローシャッターで手持ちで撮るなんてできなかったもの。
びっくりですわ。
ただ当然ながら条件はある。
E-M1 MarkIIのセンサーはボディ内の5軸手ブレ補正機構で支えられている。さらに、一部のレンズはレンズにも手ブレ補正機構を持っている。そのレンズ(今回は新しい12-100mm F4 PROレンズを使用)と組み合わせると、両者の手ブレ補正機構がシンクロし(シンクロ手ブレ補正)、6段分の手ブレ補正が可能になるのだ。
手ブレ補正機構内蔵レンズ(ただしオリンパスのもののみ。パナソニックのレンズには未対応)とE-M1 MarkIIの組み合わせが必要だ。
実はE-M1もボディ内手ブレ補正を持っているし、シンクロ手ブレ補正に対応しているのだが、両者で撮り比べたところ、新しいE-M1 MarkIIの方が圧倒的にブレが抑えられた。
その差はおそらくシャッター機構の違いにある。
E-M1 MarkIIの方がシャッターによる微妙な振動が小さいのだ。シャッター音も小さくて振動が少ない。「フローティングシャッター構造」を採用することで、シャッターショックが伝わりづらくなっているのだ。実際に使ってみてもE-M1に比べてシャッター時に手に伝わる振動が激減している(ついでにシャッター音もいくらか静かになった)。かくして、E-M1 Mark IIは手ブレ補正が超強力なのである。
だからこんな風に手持ちでも光跡を撮れるし。
望遠ではどうか。さすがに100mm(200mm相当)の望遠だとちょっとぶれちゃうが、手持ちで1.3秒である。1秒くらいならいけそうかも。
そんなわけで、E-M1 MarkIIのボディ内手ブレ補正は強力で、レンズ内にも手ブレ補正を持っている「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」(あるいは「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」)と組み合わせると超強力である。
暗所での手持ち撮影が多いなら、「12-100mm F4.0 IS PRO」レンズはぜひ買っておきたい。
E-M1 MarkIIはプロ仕様に進化した
E-M1 Mark II + 12-100mm F4の組み合わせで最初に驚いたのが手持ち夜景撮影だったのでいきなりその話をかましてしまったが、もちろん夜景専用カメラではないのである。
初代のE-M1はフラッグシップ機であったが、E-M1 MarkIIはそれをさらに超えてプロ仕様に進化した。がっしりした作りの、ミラーレス機としては大きめのハイエンドカメラ。グリップもしっかりしてるしシャッターの感触もいい。
センサーは2037万画素と画素数は少し増えている。当然ボディ内手ブレ補正搭載。
シャッタースピードはメカシャッター時で1/8000秒まで。電子シャッター時(静音モード)は1/32000秒まで上げられる。電子シャッター時は無音で撮れる上に手ブレもしづらいのでうまく使い分けるといい。
AFは像面位相差AFで121点。初代のE-M1も像面位相差AFを持っていたが、AF-Cモード時しか働かず、それもAF追従性能はいまひとつで実用的にはちとつらかった。
E-M1 MarkIIは基本が像面位相差センサーが121点となり、一瞬でピントが合う。
連写は最高で約18コマ/秒。電子シャッター時は最高で秒60コマ/秒(ただしフォーカスと露出は1枚目固定)。
さらに、半押しで撮影をはじめ、シャッターを押し切った瞬間から最大14コマ分遡って撮れるプロキャプチャーモードも搭載。簡単にいえば、電子シャッターを使い、バッファーに画像を溜めて、シャッターを完全に切ったらバッファーに残っている画像を吐き出すという機能だ。一瞬を捉えたいときにいいが、バッファーのデータを一気に書き出すので高速なSDカードじゃないとつらいかも。
とにかくAFが速いのである。
まだ暗い場所ではときどき迷ったり、高速な被写体をAF追従で撮るとときどきはずすころもあるが、全体としてはすごく快適。さらに細かい事だが、コンティニアスAF時の被写体追従感度調整やAFリミッター機能(撮影時の距離をある程度限定することでAFをより速くする)も持っており、上手に設定することでより快適なAF追従連写撮影が可能だ。
EVFのブラックアウトも少なくて気持ちよく撮れる。
続いて人物撮影の話。瞳AFがよく働くのでポートレートは非常に撮りやすい。ISO感度はよりノイズが少ないISO lowにセットした。
ISO感度はISO200から25600まで。さらにISO LowとしてISO64も指定可能だ。ISO Low時はISO200時よりノイズは減るがハイライト部のダイナミックレンジが狭くなるので注意。
ISO感度別にチェックしてみた。
ISO1600からノイズが気になり始めるが、ISO6400までは被写体に寄っては実用的かなという感じ。ファインダーをのぞいたまま、背面モニターをタッチパッドとして使うAFターゲットパッド機能も装備。AFエリアをぐっと小さくすればこんなシーンでもピンポイントでAFを合わせられる。
操作系は前モデルのE-M1と基本的に同じ。ダイヤルやボタンの位置もほぼ同じだ。ボタンがいっぱいあり豊富なカスタマイズ機能を持っているので使いやすいよう設定しちゃえばよい。
ファインダーは大きくて見やすく、撮影時のブラックアウト時間も短いし、タイムラグも短くなった。動きのある被写体を撮影すると体感できるレベルで違う。これはよい。
背面モニターは3.0型で2軸のバリアングル式だ。E-M1は上下のみ稼働するチルト式だったが、E-M1 Mark IIはE-M5 Mark IIやPEN-Fと同様、いったん外に開いてから回転させるバリアングル式となった。
バリアングル式はいったん横に開くという動作が必要なことや横位置撮影時に光軸とモニターがずれることなど欠点もあるが、縦位置のローアングル撮影は容易になる。
細かい撮影機能でいえば、センサーを微妙に動かしながら連写して合成することで高解像度な絵を作るハイレゾショット、フォーカス位置を変えながら連写して合成することで被写界深度の深い写真を撮る深度合成モードなど凝った撮影も対応しているし、動画も4K対応した。
と、手ブレ補正もAFも連写も一気にレベルアップしたE-M1 Mark IIだが、プロ仕様というだけあり、それ以外にも進化してる。まずメディアがSDカードのデュアルスロットに。プロ仕様といったら欠かせない機能だ。
ミラーレス一眼の欠点だった電池の持ちもバッテリーを大きくなって容量アップ(1220mAhから1720mAhへ)。バッテリー残量表示も%表示となって分かりやすくなった。
公称で約440枚。一眼レフに比べるとまだ少ないが、別途パワーバッテリーホルダーを付けることで補える。
不評だったUSB端子はこれから普及するUSB C-Typeに。USB充電には残念ながら未対応だが、C-Typeを採用したのはUSB 3.0のためという。USB 3.0でつなげばより高速な転送が可能になる。
AFが速いとか連写に強いとか手ブレ補正が強力とかそういう撮影性能のみならず、ボディの頑丈さや信頼性といった面でも強化されているのが注目点だ。
最後にいつものガスタンクを。レンズは12-100mm F4で。
つまるところ、ミラーレス一眼もここまできたか、と思わせてくれるハイレベルなカメラの登場である。
それなりの価格ではあるし、マイクロフォーサーズ機にしては大きくて重めだが、レンズも含めたシステムとして見ると十分コンパクトだし、撮影性能や頑丈さといった面でもファインダーのレスポンスでも十分「プロでも使えるミラーレス一眼」といっていい。
おそろしいカメラが出てきたものである。