Suicaを搭載するiPhone7というFintech的イノベーション
新製品であるiPhone 7 / iPhone 7 plusでSuicaが使えるようになります。
モバイルSuicaに慣れている人には朗報ですね。僕もガラケーをSuica専用端末にしていたので、毎年買っているiPhoneで一個にできるのは経済的にも嬉しいです。
さて、iPhone 7ですが、どうにも進化がイマイチな印象を持っている人が多く、評判はイマイチです。
マニアの人たちの前評判がイマイチだったので売れないのかなぁと思い、金曜日の予約サイトに繋げたら、繋がらない繋がらない。
日本向けのiPhoneは特別にFelicaチップが搭載されているそうなので、台数が少ないことが予想されます。それ故に希少価値があるところまでは予想可能でしたが、昨年のiPhone6sの時は余裕で購入できたApple Storeが繋がりにくかったのは以外でした。なんだかんだ買ってる人が多い予感がします。
この記事を読む人の中には、iPhone7どうしようかなぁと思っている人もいると思いますが、上の記事のように、世間では進化が少なすぎて、この先ヤバイんじゃないか?と思っている人たちもいるようです。
買うか買わないかは別に好きにしてください、という話ですが、一つだけ、マニアの人の発言を見ていて思うのは、常に破壊的イノベーションを求められるアップルへの期待は大きくて大変ですね、ということ。
破壊的イノベーションというのは、まだ市場が成熟していない時、もしくは成熟しきった市場を破壊する時に行われるものです。
今回のiPhoneは、もはや成熟したiPhone製品と、ガラケー時代に作り上げたSuicaというある意味成熟しているインフラに乗って、
「普及しているiPhoneをより便利」
にしたというのが本来の論点でしょう。そして、Suicaの後ろには、ちゃんとApple Payが控えているわけです。
iPhone6にNFCが搭載された時には、この機能を一般の開発者は使えないことで、それまで続いてきたNFC派によるNFC待望論がすっかり鳴りを潜めてしまいました。おかげで、iPhoneにNFCが搭載されていることはすっかり忘れられています。
その間にアメリカでは、NFCを活用したApple PayやAndroid Payが、日本の都心で言うところのSuicaのコンビニ払いのようなリアル決済の立ち位置を作ってきていて、現金を持ち歩かなくても困らない世界がきています。
現金を安全に取り扱うコストが高いアメリカでは、お店側もなるべく現金を使わない方が安全面で合理的ですし、信用の社会インフラになっているためクレジットカードが普及しているわけですが、Apple Payはクレジットカードの扱いをもっと便利にした形での支払い方式として普及し始めているそうです。
ところが日本は、
・安全が確保され現金を持ち歩くリスクが低い
・移動が電車で、かつ元国営企業がインフラを握っている。
・テクノロジー大国
でもある日本ではSuicaと戦っても、ソニーが作ったFelicaチップによる国産電子マネーには性能面で叶わないです。
しかも、交通インフラはすでにFelicaで構築されているので、そこに乗るのは事実上不可能です。なにより性能に劣るNFCだけではSuicaのように混雑する自動改札では使えません。無理してNFCで頑張っても、Suicaに勝てません。
要は、人口密度が高い日本の都会では、通信速度が高くないとユーザ体験が低くなる以上、JRが担いでいるFelicaじゃないと性能面で勝てないし、そもそもJRが交通インフラを握っている以上、ビジネス的にSuicaに対応しないと勝負の土俵にも乗れないわけです。
これまでユーザ体験で世界をひっくり返してきたアップルにとっては、技術は最低限追いついていないと逆転はできないわけなので、今回の策が最もクレバーと言えるでしょう。
それ故に、iPhone7が日本のFelicaチップを搭載したことは、「よくそこまでやったな」というのがマニアの感想ではないでしょうか?
(実際のところは、NFC typeFというFelica仕様を国際標準化させたことでの関係者様の勝利なのでしょう。)
もちろん、日本市場におもねったように見えていることそのものがiPhone限界説に繋がるのはわかりますが、破壊的イノベーションによる市場の攻略は終わっており、継続イノベーションによる収益サイクルに入っている以上は、現状改善に徹して面を広げていくのは重要なことでしょう。
そもそもクレジットカードの上に乗っているApple Payは、それだけで一定以上の信用を持っている人しか使えませんので、日本国籍さえあれば10万円のスマホを無金利分割で買えるぐらいの信用大国で、だいたい誰でもクレカを持てて、さほど悪い人も多くない日本がターゲットになるのは当たり前な気がします。
マニアが期待してるハードウエア的なイノベーションは、Apple Watch3.0以降あたりに期待するか、敷居の下がったIoTを自分で作っていくほうがおすすめです。是非、素敵なアイディアをカタチにしてアップル社に買収されたりすると良いと思います。ポストスマホはどの会社も困っているハズなので。
さて、話を戻すと、Suicaは特定用途には非常に便利ではありますが、Suicaが使えるのは特定企業との提携に限られています。例えば、タクシーのSuica支払いは、個人事業主である個人タクシーでは使えません(そもそも端末が80万円もするとかなんとか)。UBERが個人タクシーへのイノベーションを実現したりなど、世界的な動きから類推すると、決済において大企業のコンプライアンス基準では興味を持たない取引エリアをApple Payも巻き取っていくことが期待されます。また、店頭にある既存の電子マネー端末をアップグレードすることで、Apple Payにも対応していくことを考えると、どこまで国内でApple Payが広がるかが楽しみです。
最後に繰り返しになりますが、
iPhone単体で見ると、一見進化がなさそうに見えますし、実際の所、スマートフォンという「小さなパソコン」と言う製品ジャンルが行き着くところまで行き着いているのは間違いないと思います。僕が買うのも、iPhone7 plusに搭載されているカメラが使っているDeep learningという最新AI技術に興味があるから、に他なりません。
しかし、日本市場が世界のiPhoneマーケットの中で強みとしている「(かなり)誰でも持っている端末」を活用した、Apple Payによるインフラのイノベーションがどこまで成功するのか?という視点で見ると、これまで仕込んできたものが、ここでようやく表に出てきたと考えることも可能です。それがFelicaチップを搭載してまでも、日本の社会インフラに切り込んできた部分は、純粋に楽しみたいかなと思います。
p.s.日本交通さんがApple Payに対応されるそうですが、Suicaってチャージしなきゃいけないのと、夜中に電車動いてない時にチャージできないんですよね。Apple PayならSuicaのようにクレジットカード決済ができるので、いいところついてきたなぁと思います。iPhone持ってる人は、深夜のタクシーの列で、Nのマークを選んで乗る光景も増えそうですね。
