キヤノンの「EF24-105mm F4L II」、一新した定番ズームの実力

「EF24-105mm F4L II」、一新した定番ズームの実力

キヤノンの「EF24-105mm F4L IS USM」といえば、2005年9月に初代「EOS 5D」とともにデビューし、ベストセラーとなったレンズだ。この11月、EOS 5Dシリーズの最新モデル「EOS 5D Mark IV」が登場するとともに、このレンズも「EF24-105mm F4L IS USM II」へとリニューアルした。

 旧モデルは、僕も仕事から作品までフル活用した思い出深いレンズだ。発売当時はスペックも描写性能も満足度が高かったと記憶しているが、初代は1200万画素だったEOS 5Dも、いまや5000万画素強のモデルが登場する時代になった。2014年には、シグマがまったく同じスペックのレンズを発売して高い評価を得ていただけに、やや時代遅れの感も否めなかった。

 僕の知り合いの職業カメラマンを見渡すと、今でも旧モデルを使用している人が少なくない。旧モデルは中央部こそシャープなものの、周辺部の画質が心許なく、周辺減光も激しい。オールドレンズのような味があるともいえるが、仕事で使うにはちょっとクセが強すぎる。今回のリニューアルを待ちに待っていたプロやハイアマチュアも多いのではないだろうか。

 EOS 5D Mark IVに装着して実写をしてみると、旧モデルとの描写性能の差は一目瞭然。EOS 5D Mark IVに旧モデルを装着して使った経験はないので、実のところ主観でしかないのだが、初代EOS 5DやEOS 5D Mark IIに旧モデルを装着して撮影した画像とは、カメラの進化を差し引いても明らかに次元が違う。

 撮影した画像を拡大すると、単焦点レンズ並みの繊細さも感じられる。絞り開放から高い解像力を発揮し、絞るとさらにキレが増していく。明るさはF4と、ズームとしてはいわゆる“小三元”にカテゴライズされるが、フルサイズ機に装着すればボケの量は決して小さくない。IS(手ぶれ補正機構)を搭載していることや、105mmまで伸びることを考えれば、これ1本で旅行に出かけてもいいし、明るい単焦点レンズと併用する使い方もアリだと思う。

最新のコーティング技術で、とにかく逆光に強い

 近年は、レンズの設計・製造技術が格段に向上しており、ひと昔前ではありえないスペックのレンズが各社から登場している。その背景には、歪曲などの収差をカメラ内やRAW現像で補正できるようになったこともあるだろう。しかし、デジタル処理がいくら進歩しても対処できないのが逆光だ。フレアやゴーストはレタッチである程度目立たなくすることはできるが、コーティングという基本的な技術がモノをいう。

 キヤノンの資料によると、このレンズでは2015年2月に発売した「EF11-24mm F4L USM」で新たに採用されたASC(Air Sphere Coating)によりゴーストを抑制、とある。そういえば、ちょっと前はSWC(Subwavelength Structure Coating)というのがあったけれど、あれはもうやめたの?と思ったら、SWCと組み合わせることで強い効果を発揮するのがASCらしい。SWCはナノレベルのくさび状で、斜め方向から入り込む光の反射を抑制。対するASCはコーティング膜の中に空気の球を敷き詰め、垂直に近い光の反射を防ぐという。

 旧モデルも、当時のズームレンズとしては優秀だったものの、光源が写り込むと不自然なゴーストがよく出ていた記憶がある。しかし、II型はきわめて優秀だといえる。かなり意地悪な状態に持ち込んで、ようやく目立たない程度のゴーストが発生する程度だ。逆光のライティングを積極的に生かしたい人には最適の1本といえる。

同じ焦点距離をカバーする廉価版との選択が悩ましい

 旧モデルからスペック面で大きく改良した点といえば、IS(手ぶれ補正機構)がシャッター速度約2.5段分から約4段分に向上したことが挙げられる。ただ、今回試用したレンズは開発途中のベータ版で、ISの仕上がりは最終版ではないとの注意書きがあったので、働きを評価することは控えたい。とはいえ、常識的に考えて製品版は旧モデルよりも手ぶれ補正の効果が向上していることは間違いないだろう。

 レンズの全長は旧モデルよりも11mm、重さは125g増えているが、フィルター径が77mmで変わらないのは評価したい。風景撮影でPLフィルターを常用する人にはうれしい点だろう。旧モデルでは幅が狭くて操作しにくかったズームリングも、ぐっと広くなった。

 キヤノンのフルサイズ向け標準ズームは、24-70mmがF2.8LとF4L ISの2種類あり、24-105mmは廉価版のF3.5-5.6 ISもある。実に贅沢なラインアップで、選択肢が多いのがよいともいえるし、悩ましい部分でもある。明るさを取るのならEF24-70mm F2.8L一択だが、最新のEOSは超高感度での画質もすばらしいし、大きなボケが欲しいのであれば単焦点レンズもいろいろ選ぶことができる。70mmと105mmの視覚効果は数値以上に差が大きく、またISを搭載しているという点で、僕個人はEF24-105mm F4L IS USM IIを推したいと思う。

 むしろ、比較対象として悩ましい存在が、廉価版のEF24-105mm F3.5-5.6 IS STMだ。焦点域は一緒で、ISも搭載する。違いは、明るさと距離目盛りの有無、個人によって受け止め方が違う描写性能だ。直接比較したわけではないのであくまで個人的な印象となるが、廉価版でも比較的新しい設計だけあって、よほどシビアに画質を追求しなければ十分満足できると思う。反面、EOS 5D Mark IVやEOS 5Ds/5Ds Rといった高画素モデルとの組み合わせだと、わずかな甘さが気になるかもしれない。カメラの性能を存分に引き出すためにも、予算が許せば今回紹介するF4L IS IIをお薦めしたい。

鹿野貴司(しかのたかし) 写真家

1974年東京都生まれ。雑誌や広告のほか、カメラ・レンズのカタログなど、幅広い撮影を手がける。仕事でデジタルを使い倒す一方、フィルムをこよなく愛し、ハッセルブラッドやローライフレックスで作品を撮り続けている。9月下旬には3冊目の写真集「山梨県早川町 日本一小さな町の写真館」を平凡社から発売。個人ブログは「とれどれぐさ」。

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