オバマ大統領「トランプ氏(大衆迎合主義者)は就任後現実に直面」当選後初の会見

オバマ大統領「トランプ氏は就任後現実に直面」 当選後初の会見

バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は14日、ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が次期大統領に選出されてから初めてとなる記者会見を行い、トランプ次期政権に対する悲観的な予測を戒める一方、大きな物議を醸した公約を同氏が実行に移そうとすれば現実を思い知ることになるとくぎを刺した。

 オバマ大統領は、何百万人もの移民を送還したり、北大西洋条約機構(NATO)や日本との相互防衛条約、イランの核開発に関する合意、地球温暖化に関する国際的な取り決めを破棄したりするのは、選挙期間中に熱弁を振るうほど簡単ではないと指摘。「米大統領職への就任に当たって、彼がどのような経験や思い込みを持ち込んだとしても、職に就けば目が覚めることになる」と語った。

 記者会見は時折、オバマ大統領がポピュリスト(大衆迎合主義者)の大富豪として知られるトランプ氏に向けて直接メッセージを送るような調子となった。「現実はおのずと明らかになる」とも忠告した。

 ホワイトハウス(White House)で先週、トランプ氏と会談した際に、自らの行動で市況や戦況、国民感情が動いてしまうことがあると助言したことも明かし、「トランプ氏には、今回の大統領選で激しい論争が起きて世論が分断されたことからも分かるように、自分の意思の表し方が大切だと念押しした」と説明した。

トランプ氏について「懸念しているかといえば、もちろんそうだ。彼と私は数多くの問題で意見を異にしている」とも吐露。それでも「連邦政府とわが国の民主主義はスピードモーター(高速のモーターボート)のようなものではない。オーシャンライナー(大洋を渡る定期船)だ」と表現した。

 オバマ大統領はその一方で、トランプ氏に政治経験がなく、過剰な知識が生み出す思い込みと無縁なことはかえって利点になるかもしれないとも指摘。「トランプ氏がイデオロギーを重視する人物だとは思わない。結局は実利的に行動する人物なのではないか」との見解を示した。

「負け」認めぬ野心の実業家=トランプの実像

米大統領選で予想外の勝利を収め、世界に衝撃を与えたドナルド・トランプ氏(70)。不動産業で一時代を築き、「野心的で卓越した実業家」と評される。半面、暴言をはじめとする横暴な振る舞い、激しやすい性格、敗北や失敗を認めないかたくななスタイルは、多くの米国人に反発や恐れ、不安を生じさせている。

 ◇父にたたき込まれた闘争心=少年時代、教師を殴打

 トランプ氏は第2次世界大戦直後の1946年6月、不動産会社の経営者フレッド・トランプ氏の次男としてニューヨークで生まれた。ドイツ移民の祖父は1885年に16歳で渡米、トランプ氏は移民3世に当たる。

 米ジャーナリストのマイケル・ダントニオ氏がまとめた評伝によると、フレッド氏の不動産ビジネスは戦後の住宅需要の増加も手伝い、トランプ氏が生まれたころにはニューヨークでも指折りの事業家に成長していた。トランプ氏はこれを基盤に事業を拡大し、莫大(ばくだい)な財産を築くことになる。

 フレッド氏はトランプ少年に非情なまでの競争心、闘争心を持てと教え、「食う側」「王」になれと言い聞かせたとされる。「いじめっ子体質で暴力的な少年になったのも当然かもしれない」。評伝はそう指摘している。

 自伝によれば、トランプ氏は小学生の時、音楽教師を殴ったことがあるという。「音楽のことを何も知らないくせに」と教師に反発したのが理由だった。「小学1年生のころの自分も今の自分も基本は同じ。性格はそれほど変わっていない」。トランプ氏はそう語っている。

 素行不良のトランプ少年は13歳の時、父の意向で軍隊式教育で知られる全寮制私学ニューヨーク・ミリタリー・アカデミーに転入させられた。体罰が日常茶飯事で、トランプ氏は「生き残ることを学ばねばならなかった」と振り返っている。同氏の特質の一つに「権威主義への傾倒」を指摘する声があるが、スパルタ教育が影響しているとも考えられる。

 トランプ氏は、ニューヨークの繁華街マンハッタン一等地での「トランプ・タワー」建築など、中核事業の不動産ビジネスの成功で広く知られる。「勝つためなら法の許す限り何でもする」と同氏は幾度となく語っている。

 一方、失敗した事業も多く、90年代から2000年代にかけてカジノ経営で4回、大きな破綻を経験した。だが、トランプ氏は「私は決して失敗したことがない。なぜなら失敗を常に成功に変えてきたからだ」と評伝の著者ダントニオ氏に豪語している。

 ◇「怒り」「恐怖」「疑念」に訴える=大統領の座「本人望まず」?

 トランプ氏は選挙戦中、有権者の怒り、恐怖、疑念に訴えるような急進的な公約や主張を、暴言を交えて繰り返し、支持を拡大してきた。ジャーナリストのリチャード・ダントニオ氏はトランプ氏の評伝で「ドナルドは常に挑発的で、熟慮を重ねるより、思ったままをあからさまに表現することで注目を集めてきた」と解説する。あるコラムニストは、トランプ氏が物事を深く考えたり、分析したりすることをほとんどせず、「ただひたすら相手にたたみかけるだけだ」と書いている。

 そもそも、トランプ氏はなぜ大統領選に出馬したのか。ダントニオ氏は、トランプ氏が野心を膨らませ、「21世紀を生きる人間が成し得る最大の偉業達成に乗り出した」と説明する。しかし、トランプ陣営の元関係者は、同氏がもともと大統領の座を望まないどころか、共和党の候補になるつもりも「全くなかった」との見方を明らかにしている。知名度を上げ、「実業家としての力を増すこと」が当初の目的だったが、事態は本人の予想を超えて進行したというわけだ。

 この関係者は陣営で一時、広報戦略を担当したステファニー・セギエルスキー氏。陣営を離反し、今年3月、米メディアに掲載された公開書簡の中で私見を述べた。2015年夏に雇われた際、「目標は支持率2ケタ。(党候補)2番手だ」とトランプ氏側に指示されたという。「ホワイトハウスを切り盛りすることだってできたかもしれない」。人々にそうアピールすることがトランプ氏の狙いだったと、セギエルスキー氏は見る。

 トランプ氏はすでに不動産王として名をとどろかせていた2000年にも、大統領選に「改革党」から出馬している。共和党支持からくら替えしての立候補だったが、党大会を待たず早々に選挙戦から撤退。評伝著者ダントニオ氏の見方では、真の目的は世間からより多くの注目を集めることだった。当時もやはり暴言を吐き、改革党のライバル候補について「彼はヒトラーが大好きだ」などと言い放っている。

 トランプ氏は04年から数年間、自らの下で勤務を志願する人をテレビに登場させ、成績が悪ければ「お前はクビだ」と言い渡すリアリティー番組「アプレンティス(見習い)」に司会・主人公として出演。絶大な人気を博し、エンターテイナーとしての地位も得た。番組の中でトランプ氏が口にする挑発的な発言は、選挙戦でのそれと酷似していた。トランプ氏に批判的な人々から見れば、同氏は自分を売り込み、名声を高めるため、テレビと同様に大統領選を利用したと映るかもしれない。

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