【激震・朴政権】外堀埋まる朴槿恵大統領 混乱収拾狙うも焼け石に水
機密資料の漏洩疑惑で窮地に立たされている韓国の朴槿恵大統領は2日、黄教安(ファン・ギョアン)首相ら3閣僚を更迭した。疑惑に端を発する混乱を人事刷新で収拾させる構えとみられる。しかし、大統領や側近が関わった不祥事に対する反発は強まる一方で、朴氏の外堀は埋まりつつある。
朴氏が黄氏の後任に指名した金秉準(キム・ビョンジュン)・国民大学教授は、左派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で副首相などを務めた。首相任命に向けた国会での同意を念頭に、過半数を握る野党の支持が期待できる金氏に望みを託したとみられる。
しかし、最大野党「共に民主党」や第2野党「国民の党」は、一方的な人事だと猛反発。国会の人事聴聞会のボイコットを決めるなど、金氏の首相人事は早くも宙に浮いた格好だ。
与党セヌリ党の内部でも、朴氏に近い李貞鉉(イ・ジョンヒョン)代表の辞任要求をはじめ、非主流派が「親朴派」の執行部の退陣を要求しており、朴氏には冷ややかだ。
韓国では現在、朴氏が何を言おうと反発が起きる状況にある。メディアは連日、友人の女性実業家、崔順実(チェ・スンシル)氏の国政介入疑惑にからみ、崔氏に機密資料を漏洩した朴氏を非難する報道を続けている。
野党と協調する「挙国一致中立内閣」の発足を目指すセヌリ党だが、攻勢に出る野党との協議は平行線をたどっている。世論の動向次第では来年末の次期大統領選をにらみ、党内の親朴派までが朴氏に見切りをつけ、大統領の弾劾へと向かう可能性もある。
韓国の大統領は内乱罪などを除いて在任中は訴追されないが、退任や弾劾後の起訴は可能だ。機密資料漏洩は「大統領記録物管理法」に抵触しており、朴氏が今後、責任を問われるのは必至。国会で弾劾訴追案が提出、決議される可能性は否定できない。
ただ、現在の韓国は、疑惑をめぐる朴氏への批判や反発、議論が繰り返されている状態で、肝心の国政は事実上の停止状態に陥っている。政治の長期停滞は避けられない情勢だ。
朴大統領親友の逮捕状審査へ=秘書室長に左派政権元高官―韓国
朴槿恵韓国大統領の親友、崔順実氏(60)をめぐる疑惑で、検察当局による崔氏の逮捕状請求を受けて、ソウル中央地方裁判所は3日午後3時(日本時間同)ごろ、逮捕状を出すかどうかを決めるため、崔氏に対する審査を開始する。
検察によると、容疑は職権乱用の共犯と詐欺未遂。崔氏は大統領府の安鍾範・前政策調整首席秘書官(57)と共に、企業に圧力をかけ、大統領府の後押しで設立した「ミル財団」「Kスポーツ財団」に対する巨額の資金拠出を強要した疑いがある。
また、崔氏が経営する会社に研究事業を行う能力がないにもかかわらず、この会社が7億ウォン(約6300万円)規模の事業を手掛ける計画を「Kスポーツ財団」に提案し、研究費をだまし取ろうとしたとされる。
検察は2日深夜、安氏を職権乱用の容疑で拘束、本格的な取り調べを始めた。韓国メディアによると、安氏は「朴大統領の指示を受けて財団を設立し、企業から寄付金を集めた」と供述しており、大統領に対する捜査が行われるかどうかが焦点となる。
一方、朴大統領は3日、大統領秘書室長に韓光玉氏(74)を起用することを決めた。韓氏は左派系の金大中政権で大統領秘書室長を務めていた。
朴大統領は2日、左派系の盧武鉉政権で副首相などを歴任した金秉準氏(62)を首相に抜てきしており、保守政権の中枢に左派政権の元高官を据え、中立色を打ち出す狙いがあるとみられる。だが、野党は一連の人事に反発しており、事態収拾の見通しは立っていない。