アブない「光の凶器」高出力レーザーポインター 悪質ネット販売摘発も…「モグラ叩き」状態

アブない〝光の凶器〟高出力レーザーポインター 悪質ネット販売摘発も…「モグラ叩き」状態

風船が割れるほどの威力を持ち、目に入れば失明の恐れもある〝光の凶器〟が堂々と売られていた。インターネット上で違法な高出力レーザーポインターを販売したとして、大阪、京都など全国7府県警が7月、消費生活用製品安全法違反容疑で10業者を一斉摘発、うち4人を逮捕した。販売品の中には、光線の熱で風船が割れるなど通常の数百倍の出力を有する違法品もあった。ただ、摘発しても次々と違法品が出回る「モグラ叩き」状態。全国の空港などでは航空機の操縦席に向けてレーザーが照射される事件も相次いでおり、警察当局は違法品が悪用されているとみて今後も取り締まりを続ける方針だ。

鳥撃退、猫のおもちゃ…

 「カラスや害鳥の退治」「飼い猫のおもちゃ」「たばこに点火」…。ネット上にあるレーザーポインターの販売サイトには、用途としてこんなうたい文句が並んでいる。

 元々、プレゼンテーションや教育現場で、図表やプロジェクターの映像などを指し示すのに使われるレーザーポインター。軽くて持ち運びやすく暗い場所でも使えるうえ、差し棒では届かない遠距離も指し示せる利点があり、用途は広がっているとされる。

 今回、違法業者が摘発されたきっかけの一つは、平成27年10月に伊丹空港で発生したレーザー照射事件だ。着陸しようとした全日空機のコックピットに緑色のレーザー光が照射されたのだ。万が一、パイロットの目に入れば失明の恐れもあったという。

 全日空機は当時、高度300メートルの上空を飛行中だった。

 通常のレーザーポインターの場合、光の届く範囲は100〜200メートル。犯行には違法な高出力レーザーが使われた可能性が高く、こうした違法品がインターネット上で販売されているとの情報をつかんだ大阪、京都両府警は捜査を開始した。

「小遣い稼ぎの感覚」

 両府警は、ネットパトロールなどで違法商品を販売している業者を特定し、実際に製品を購入して違法性の裏付けを進めていった。数メートル先から風船に向かって照射すると、光線の熱で風船が割れるなど「国の安全基準の数百倍の出力」(捜査幹部)のものもあった。

 今年7月、両府警は業者が点在する栃木、群馬、静岡、和歌山、香川の5県警の協力も得て、各拠点を一斉捜索。最終的に10業者の男女計13人を摘発し、うち4人を逮捕した。

 捜査関係者によると、容疑者らは海外のオークションサイトで落札したり、中国から安値で買い付けたりするなどした製品を1本数千〜数万円で販売。昨年12月以降だけで計約7200本を売り上げ、計約1840万円の利益があった。

 「安く仕入れて高額で販売できた。小遣い稼ぎの感覚で、利益を得られると思って軽い気持ちで始めた」。逮捕された業者の一人は調べに対し、こう供述したという。

使用や所持は規制なし

 レーザーポインターをめぐっては過去、子供が誤って目に照射する事故や、スポーツイベントなどで観客が選手に向けて光線を照射する問題が国内外で相次いだ。このため平成13年に消費生活用製品安全法の規制対象となり、販売される商品の出力は1ミリワット未満とする安全基準が設けられた。

 ただ、高出力レーザーポインターを個人で使用したり、所持したりすることを規制する法律はない。今回摘発された業者のように海外のサイト経由で入手する行為は罰せられないのが現状だ。

 ネット上の通販サイトではいまなお、「ボール紙を切断」「風船を瞬間的に爆破」などと、高出力であることを売りにする製品の広告が並んでいる。大阪府警幹部は「正直、モグラたたき状態だ」とため息をつく。

自衛隊機や米軍機も標的

 こうした違法製品を使用したとみられる航空機などへの照射事件は後を絶たない。

 国土交通省によると、民間機へのレーザー照射は平成22年7月からの6年間で194件。昨年10月に伊丹空港で発生した事件は、大阪府警が威力業務妨害容疑で捜査している。

 「被害」は民間機にとどまらない。防衛省によると25年4月から今年6月末までに、同厚木基地に所属する海上自衛隊のP3C哨戒機など自衛隊機に64件、米軍機に対しても同様のレーザー照射が107件あった。

 27年12月には、米海兵隊のヘリコプターにレーザー光線を当てたとして、沖縄県警が威力業務妨害容疑で男を逮捕した。調べに対し、男はレーザーポインターを使ったことを認めており、違法製品が犯行の温床となっている実態が浮き彫りになった。

 航空関係者は「着陸はパイロットにとって最も集中するタイミング。光線が直接目に入らなくても気が散って操縦がおろそかになる恐れがあり、危険物を積むこともある軍用機なら危険性はなおさら高い」と憤る。

 車や電車がターゲットにされるケースも少なくない。山口県周南市で27年11月、山陽新幹線の運転席にレーザーが照射される事件が発生したほか、今年2月には、回送運転中の路線バスにレーザー光線を当てたとして、大阪府警が威力業務妨害容疑で男を逮捕している。

摘発と法規制の両輪で

 被害拡大を受けて国交、防衛、経済産業の各省と警察庁は、平成27年末に連絡調整会議を立ち上げ、レーザーポインターの所持や使用の法規制も視野に検討を進めている。

 一方、大阪府警などは8月4日付で、ネットオークションの運営会社8社に対し、違法なレーザーポインターなどの有害製品が出品された際の通報と、削除を求める要請文を送付した。違法な製品を販売する業者を市場から閉め出すことが狙いだ。

 府警幹部は「悪質業者を市場から退場させ、違法製品の流通を防ぎたい」とし、「それでも違法製品の販売を続ける業者は、今後も積極的に摘発していく」と強調する。

 人体への危害だけでなく、一歩間違えば大事故につながりかねないレーザー照射。法整備と取り締まり強化という両輪による対策が急がれる。


「国の安全基準の数百倍の出力」?thinkおそらく、あれは「中国製」か。yell

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