日産、非常事態…突然に売上も利益も販売台数も同時激減…国内シェア1ケタ台転落で崖っぷち

日産、非常事態…突然に売上も利益も販売台数も同時激減…国内シェア1ケタ台転落で崖っぷち

連日、気温が35度を超える猛暑日が続くが、産業天気図は“冷夏”である。寒々としたニュースに事欠かない。

 燃費不正問題で国内販売が苦戦に陥った三菱自動車工業は8月1日、軽自動車の生産拠点である岡山県・水島製作所の従業員163人を、資本提携先の日産自動車の子会社・日産車体九州に派遣した。派遣は1年間の期間限定である。

 派遣するのは、すべて軽自動車を担当している従業員。日産車体九州では、大型ミニバンの組み立てラインなどに配置された。

 水島製作所は燃費不正問題を受け、不正の対象となった軽自動車の生産ラインを4月20日から7月3日まで停止し、この間、軽自動車を担当する約1300人が自宅待機となった。7月4日に生産を再開したが、スリーダイヤ・ブランドのイメージ悪化を受けフル稼働には戻っていない。

 日産が、三菱自の救済策として人員の受け入れを表明したわけだ。三菱自の子会社で、樹脂部品を造る岡山・水菱プラスチックも、8月1日から15人を日産の神奈川・追浜工場に半年間派遣した。

 三菱自は燃費不正問題発覚後の5月25日、日産と資本業務提携を締結。日産の傘下に入ることを正式に決めた。日産は8月末までに三菱自の資産査定を終え、10月に第三者割当増資を引き受ける。日産は2373億円を三菱自に出資し、議決権ベースで34%の株式を握り筆頭株主となる。

 今回の提携では、日産のカルロス・ゴーン社長兼CEO(最高経営責任者)は救世主のように振る舞い、三菱自の益子修会長兼社長は「ウイン・ウインの関係」と力説した。しかし、益子氏はゴーン氏の発言や行動をすべて追認するような態度を見せてきた。救世主の日産が、稼働率が落ち込んでいる三菱自の雇用を維持するために「人員の派遣を要請する」かたちにしたわけだ。

●燃費不正の影響で三菱自は赤字、日産は減益

 三菱自の2016年4~6月期連結決算の売上高は、前年同期比14%減の4287億円、営業利益は75%減の46億円、最終損益は1297億円の赤字(前年同期は239億円の黒字)だった。四半期決算で最終赤字は10年4~6月期以来6年ぶりのことだ。

 燃費不正があった軽自動車の販売を中止したため、国内の新車販売台数は44%減の1万台に落ち込んだ。中国やロシアでの販売も振るわず世界販売台数は16%減の22万1000台にとどまった。

 顧客や取引先への補償・賠償などで、通期で1500億円の特別損失が出ると想定している。このうち1259億円を4~6月期に前倒しして計上した。

 一方、日産も16年4~6月期決算は減収・減益に沈んだ。売上高は8%減の2兆6544億円、営業利益は9%減の1758億円、純利益は11%減の1363億円だった。

 三菱自と共同開発した軽自動車デイズシリーズの生産・販売の停止が大きかった。日産の4~6月期の国内の新車販売台数は25%減の9万台に落ち込んだ。国内シェアは前年同期の11%から8%の1ケタ台へ転落。通期で58万台とする国内販売目標の達成に赤信号が灯った。
 
●インドネシアで多目的スポーツ車の販売を強化

 三菱自は8月2日、燃費不正問題を受けて設置した特別調査委員会が提出した報告書を公表した。05年に、燃費測定方法が法規に従っていないとの指摘を新入社員から受けたが、改めなかったことが明らかになり、自浄作用が働かない経営体質が再び浮き彫りになった。

 そんな隠蔽体質は簡単に改まるとは思えない。それなのに、なぜ日産は2373億円も出して三菱自を傘下に収めたのか。ゴーン氏にははっきりとした狙いがある。共同開発した軽自動車デイズとデイズルークスは、日産の国内販売の4分の1を占める。三菱自が経営破綻する事態になれば、日産は深刻なダメージを受ける。

 三菱自からOEM(相手先ブランドによる製造)供給を受けていた軽自動車の生産拠点を獲得し、自前の軽自動車をつくるために救済に乗り出したという見方が一般的だ。だが、もっと大きな狙いは、三菱自の自動車を東南アジアで販売している三菱商事の販売網に日産製の自動車を乗せて売ってもらうことだ。

 ゴーン氏は「三菱グループの力を活用したい」とはっきり言っている。三菱商事が40%出資する三菱自のインドネシアの新しい工場が17年に稼働する。東南アジアで売れ筋の小型多目的車を、日産ブランドで生産するプロジェクトを練っているともいわれている。

世界販売台数1000万台を目標にする日産にとって、三菱商事の販売網は喉から手が出るほど欲しいところだ。三菱商事とのパイプをつなぐためには、三菱商事出身の益子氏を引責辞任に追い込むのは得策ではないと判断し、続投させることにした。10月に日産の出資が完了しても、益子氏は要職に残ることになるとの見方もある。もし、益子氏が退任する場合には、6月24日の株主総会後に副社長へ昇格した白地浩三氏が社長候補として最有力といわれている。その白地氏も、三菱商事の出身だ。

 三菱自は、販売台数の9割以上がアジアなど海外で、国内への依存度は低い。つまり、再生の切り札は東南アジアにある。

 益子氏は8月10日、インドネシアのジャカルタで開いた記者会見で、18年度をメドにインドネシアで乗用車を扱う販売店を現在の1.8倍にあたる140店に増やすことを明らかにした。17年春に現地で新工場を稼働するのに合わせ、多目的スポーツ車(SUV)や小型多目的車(MPV)の販売を強化する。

 国内の苦戦は長期化するとみられ、収益の柱である東南アジアでの基盤を固めるしかない。ゴーン氏と益子氏の狙いは一致している。すなわち、合言葉は「東南アジア」である。

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