韓国車1、3位でトヨタ4位!米新車品質調査の要因

韓国車1、3位でトヨタ4位!米新車品質調査の要因

J.D. パワーは6月22日に、「2016年米国自動車初期品質調査(Initial Quality Study、略称IQS)」の結果を発表しました。この調査は、2016年型の新車を購入もしくはリース契約をした8万人以上のユーザーを対象に、購入/リース後90日間での新車の品質を調べた調査で、今年で30回目となります。

ランキング対象となった33ブランド中、韓国系ブランドの起亜が初めて1位になったことで、大きな注目を集めました。日系ブランドでは4位にトヨタ、10位に日産がランキングされました。

車は「壊れない」ことが当たり前にランキング上位は「使いやすい車」へ

 1987年にこの調査を開始した当初は、不具合といえば「パーツが壊れた」「動かない」といったことが主でした。その後、車の品質はどんどん改善され、「壊れない」ことが当たり前となり、今では車の操作性といった観点、すなわち使いにくい、わかりにくい、期待したように機能しないといった「ユーザビリティ面での不具合」が主となっています。つまり、新車の品質に関する課題は「壊れないこと」から「使いやすいこと」に移ってきているのです。

 実際に調査の回答で得られた不具合のうち、「故障」や「誤作動」など製造に起因する不具合は33%に過ぎず、64%が「使いにくい」「操作しづらい」「わかりにくい」といった設計に起因する不具合でした。

 また、どのような領域で不具合が多く発生しているかというと、「オーディオ/コミュニケーション/エンターテインメント/ナビゲーション(ACEN)」という車載マルチメディア領域での不具合の発生が全体の24%を占めましたが、これは2013年以降一貫した傾向となっています。中でも「車載音声認識システムが認識しない/誤った認識をすることがよくある」と「車載ブルートゥース(Bluetooth(R))での携帯電話/デバイスのペアリング/接続不良」が不具合としてあげられるトップ2となっています。これに続く不具合指摘項目は「風切り音がうるさすぎる」「内装材にすりきず/汚れがつきやすい」でした。この上位4項目は2013年以降、変わっていません。

 米国では平均で平日1日3時間以上、週末でも1日約2時間、1週間を合計すると19時間以上、車の中で過ごしているという調査結果があります。これだけ車の中で長い時間を過ごすために、車載マルチメディアシステムが非常に重要となっており、車の中でもインターネットや人とつながっていたいと考えている人が多く、この領域の機能の充実や使い勝手のよさが期待されています。

日系メーカー高評価へのカギは、「強みを活かしつつ、米国ユーザーのニーズに応えること」

 米国初期品質調査では、ブランド別、モデル別の初期品質のみならず、生産工場ごとの不具合指摘件数を算出しています。今年の調査結果では、レクサスES並びにレクサスRXを製造するトヨタ九州第2ラインと、レクサスESを製造するトヨタ自動車のジョージタウン3工場(米国ケンタッキー州)が、不具合の最も少ないモデルを生産して同率で世界1位となりました。なお、この算出を行う際の不具合指摘件数には設計不具合は含まれず、製造不具合のみに基づいています。トヨタ九州工場第2ラインは2000年、2001年及び2011年にも世界第1位となっており、5年ぶりに返り咲きました。

 北米ではトップ10のうち6工場が、アジア太平洋地域では7工場がレクサスもしくはトヨタ車を生産する工場で占められました。トヨタは欠陥や故障のない自動車を生産するという大きな強みを持っています。しかし、その一方で、近年、起亜ソウルを生産している韓国の光州第1工場も初期品質の高い車を生産しており、昨年はアジア太平洋地域で1位、今年は3位という結果となっています。

 初期品質という面では、現在、車載マルチメディア(ACEN)の領域で使いやすい設計となっていること、及び製造不具合である欠陥や故障が少ないことというのが、重要なポイントとなっています。トヨタは欠陥や故障が少ない車を製造するという点では非常に大きな優位性を持っているので、次は設計面で強みを築くことが必要だと考えられます。

【調査概要】J.D. パワー「2016年米国自動車初期品質調査」当調査は、2016年型車を購入もしくはリース契約した8万人以上の対象者に、購入(またはリース)後 90 日を経てから調査した回答を基にしている。本調査は、8カテゴリーに分けられる233の質問から構成され、自動車メーカーに不具合の特定を促し、車の改善に役立つ情報を提供することを目的としている。本調査は、2016年2月から5月にかけて実施された。

日本車の危機、米国で走れなくなる懸念…次世代車で圧倒的敗北、日本全社でたった1車種

●経産省に集まったドイツPHEV軍団
 
 次世代自動車の覇権は、どうやら広くは欧州車、狭くはドイツ車に握られたようである。少なくともプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の実権は日本にはない。

そのことを紛れもない事実として表すイベントが開催された。2カ月あまり前の5月16日、G7激励のために東京から三重県津市まで、およそ400キロメートルをキャラバンする「EV・PHV東京-伊勢志摩キャラバン」(主催:次世代自動車振興センター、共催:三重県)である。このイベントのために日本にある電気自動車(EV)、PHEV、燃料電池車(FCV)が、経済産業省中庭に集まった。そのほとんどが欧州車であり、中心はドイツ車であった。

 PHEVに関していえば、日本製はあるにはあったが存在感は薄く、東京での展示だけでキャラバンには参加せず、津市で鈴木英敬三重県知事の歓迎の挨拶を拝聴することは叶わなかった。しかも集まったPHEVはみな重量級の車であったにもかかわらず、途中で充電もほとんどせず優秀な燃費を示した。ここに集合したPHEVのEV航続距離、ハイブリッド時の燃費、車重は以下のとおり。

・アウディA3 Sportback e-tron(52.8km、23.3km/l、1570kg)
・VW ゴルフGTE(53.1km、23.8km/l、1580kg)
・ポルシェ パナメーラS E-hybrid(36km、12.3km/l、2095kg) 
・BMW X5 xDrive40e(30.8km、13.8km/l、2370kg)
・BMW 225xe アクティブツアラー(42.4km、17.6km/l、1740kg)
・BMW 330e(36.8km、17.7km/l、1770kg)
・BMW i8(35km、19.4km/l、1490kg)
・ボルボ XC90(T8 Twin Engine)(35.4km、15.3km/l、1850kg)
・メルセデスベンツ C350e(30.6km、17.2km/l、1780kg)
・トヨタ プリウスPHV(旧型 展示のみ)(26.4km、31.6km/l、1410kg)
・ホンダ アコードプラグインハイブリッド(公官庁フリートユーザーにリース 展示のみ)(60.2km、20.2km/l、1740kg)

 これら以外にもEVとFCVがあったが、FCVは展示のみのであった。

 また、国内ですでに販売されているが、キャラバンに参加せず展示もなかったPHEVは以下のとおり。

・VWパサート GTE(51.7km、21.4km/l、1720kg)
・メルセデスベンツ S550e(33.0km、13.4km/l、2330kg)
・三菱自動車 アウトランダーPHEV(60.2km、20.2km/l、1850kg)

 ちなみに、近々に新たに発売されるPHEVは以下である。

・トヨタ プリウスPHV(新型今秋発売予定)(60km、37.0km/l、1510kg)

●ヨーロッパ14車種vs.日本1車種
 
 ドイツ勢としては、BMWが4車種、VW、アウディ、ポルシェのVWグループで4車種、メルセデスベンツが2車種の計10車種が、PHEVとして名乗りを上げている。さらに高級PHEVのポルシェ・カイエンPHEV、ポルシェ918PHEV、今秋には上陸するBMWの7シリーズのPHEVを加えると13車種となる。これにボルボを加えるとヨーロッパ勢は14車種を上陸させることになる。

 そればかりか、メルセデスベンツは17年までにあと8車種のPHEVを追加する。また、BMWは全車種に投入するとしているが、これは蒙古襲来か黒船来航である。

 一方、迎え撃つ日本勢は現在のところ、三菱自動車のアウトランダーPHEV、トヨタのプリウスPHV、ホンダのアコードプラグイン・ハイブリッドのたった3車種にすぎない。だが、プリウスPHV(旧型)はまもなく生産中止で、アコードプラグイン・ハイブリッドはそもそもフリートのみなので、ほとんど生産されていない。つまり、現役はアウトランダーPHEVの1車種のみなのだ。

 ヨーロッパ14車種vs.日本1車種の戦いは、神風でも吹かない限りヨーロッパの圧勝である。もっとも、PHEVの知名度は低く、その内容はもちろん名前さえ知らない人たちがほとんどで、まだ販売台数は上向いてはいない。この知名度の低さこそが、実は神風かもしれない。日本の市場は守られているが、それで果たして済む話なのだろうか。

●日本勢に立ちはだかるCO2規制

 EU(欧州連合)のCO2規制は、2021年に1km当たり95gとなる。ガソリン車で燃費に換算すると、リッター24.4kmである。重量車でこの規制をクリアするにはPHEV化が得策である。また、米国では18年モデルイヤーからカリフォルニア州を初めとして10州で、PHEVの販売が義務化される。ZEV規制の強化だ。 

 これまでは米国ビッグスリーと日本のトヨタ、日産、ホンダだけが対象であったが、メルセデス、BMW、VWそしてマツダとスバルも対象となる。PHEVを売らなければ、義務台数違反1台につき5000ドルものペナルティが科せられるのである。

 EUの自動車メーカーは、EU域内のCO2規制と米国のZEV規制に見事に対応しているといえる。果たして日本勢は、特にマツダとスバルはどうするのだろうか。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)

【解説】PHEV
PHVともいう。「プラグイン」が電気コンセントにプラグを差し込むという意味なので、車外の電源から車載の電池を充電でき、その電気でも走れるハイブリッド車(HV)のことである。電池容量がHVの数倍あるので、電池の電気エネルギーだけで走れる距離が長く、その場合は走行中にCO2を排出せず、燃料の消費もない。CO2削減、燃費向上が可能で、環境と経済の両面で好ましい次世代車である。なお、HVは外部電源からは充電できない。

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