伝家の「アメリカ放題」は、なぜ炎上したのか、終了わずか半月で無料キャンペーンを再開

伝家の「アメリカ放題」は、なぜ炎上したのか 終了わずか半月で無料キャンペーンを再開

ソフトバンクが大きな失態をしでかした。問題が起きたのは、申し込み不要・月額利用料無料で米国での音声通話・データ通信ができる期間限定のオプションサービス「アメリカ放題」。6月末に無料キャンペーンを終了し有料化したのだが、突然高額の通信料請求があったことにユーザーからの苦情が殺到。半月後の7月15日には「無料キャンペーン再開」を宣言した。しかも7月1日にさかのぼってキャンペーンを再開するというのだ。

 失態を認めて無料化したことは評価するべきだろう。しかし、問題はなぜこのようなことが起きたのか、だ。

ソフトバンクならではのキャンペーンだった

 そもそも「アメリカ放題 サービス開始記念キャンペーン」は2014年9月に開始した、ソフトバンクの全顧客が申し込み不要・月額利用料無料で米国内での音声通話・データ通信をできるオプションサービス。ソフトバンクの米子会社スプリントの通信網を使うことで実現したものだった。米国の通信会社を傘下に持たないNTTドコモやKDDIにはないサービスであり、いわば"伝家の宝刀"だ。「渡米することが多いので、『アメリカ放題』のあるソフトバンクにした」という顧客が存在するほど人気化した。

 ソフトバンクは「『アメリカ放題』の認知度向上のために申し込み不要・月額利用料無料のキャンペーンをしてきたが、認知度は十分高まった」と判断し、6月末にキャンペーンを終了することを決定した。

 データ通信量が月5ギガバイト以上で契約している顧客の場合は、7月1日以降も申し込み不要・月額利用料無料で米国での音声通話・データ通信ができる。それに対し、月5ギガバイト未満で契約している顧客や、1時〜21時まで国内通話し放題の「ホワイトプラン」を契約している顧客は、「アメリカ放題」に申し込めば月額980円、契約しなければ1日に一度だけでも通話やデータ通信をすれば1日2980円(「海外パケットし放題」の25メガバイト以上の料金設定。25メガバイト未満は1980円)の利用料金がかかるようになった。

 顧客専用サイト「My Softbank」やSMSでのお知らせで、7月に入ってから「数日で数万円」という高額な利用料金になっていることに気づいた顧客が驚き、ソフトバンクの相談窓口に問い合わせた。そのやりとりがインターネット上で公開されると、「自分の利用料金もすごいことになっている」との書き込みがなされ、"炎上"した。

 顧客の中には「キャンペーン終了を知らせるSMSはきていない」とする者もいる。ソフトバンク側は「6月7日からホームページでキャンペーン終了を告知。6月24日時点で米国にいる顧客全員にSMSで告知、24日以降には米国在住であるかどうかを問わず全顧客にSMSで告知した」という。

5ギガ以上の顧客にも高額の利用料金

 ただ、システムトラブルにより、5ギガ以上の料金プランの顧客にまで高額の利用料金が表示され、このことが混乱を招いたとする。後者の事例の件数を会社側は明らかにしていないが、「そんなに多くはないはず」だという。

 ソフトバンクは7月15日のニュースリリースで「十分な告知期間を設けられたなかったことなどでお客さまを混乱させてしまったことを踏まえ、(キャンペーンを)再開することとしました」とした。会社側は「7月1日にさかのぼってキャンペーンを再開することで、5ギガ未満やホワイトプランの顧客に高額の利用料金を請求することはない」と説明している。5ギガ以上の料金プランの人に高額な利用料金を請求する予定はそもそもないが、システムの不具合が7月15日時点で完全復旧していないので、顧客専用サイトには高額な利用料金が表示される可能性はあるという。

 再開された無料キャンペーンがいつ終了するかは未定だが、今度終了する際は十分な告知期間を設けるつもりだとしている。ただ、認知度向上という当初の目的が達せられているという認識に変わりはないという。そうであれば、今回の騒動でさらに認知度が向上したことは間違いないため、無料キャンペーンは早晩終わるとみられる。「十分な告知期間」がどのくらいの期間を指すのかは不明だが、ホームページで1カ月足らず、SMSで数日間という今回の告知期間よりは長く設定する、ということだろう。 

 問題は、システムトラブルによって発生した5ギガ以上のプランにおける誤表示だ。これは会社にとっては想定外の出来事だったというが、多くのユーザーは、料金請求の正確性に対し、不信感を持ったはずだ。当然のことながら、今後の新規顧客の獲得や既存顧客の繫ぎとめにも少なからず影響が出るだろう。今回の失態で失ったものは決して小さくはない。

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