新入社員が電話を取れない意外な理由:電話対応が苦手になった2つの理由

新入社員が電話を取れない意外な理由

いま、オフィスにはあなたと新入社員の2人だけ。そんなとき、オフィスの電話が鳴りました。ところが、新入社員は一向に電話に出ようとはしません。

 あなたならどうしますか。電話に出るよう新入社員に指導するでしょうか。

 あなた「なんで電話に出ないんだい」

 新入社員「なんて言って出たらいいのか分かりません」

 あなた「会社名を名乗って普通にでればいいだろ」

 新入社員「『普通に』って……どういう風に言うんですか」

 あなた「いいからさっさと出ろ!」

 新入社員「……」

 これはある中小企業の社員から聞いた話です。

 この新入社員はどうして電話に出られなかったのでしょうか。会社の電話に出るのが初めてだったのでしょうか。

 新入社員にとって、あらゆる仕事が初めてのことばかり。それはいつの時代も同様で、初めての仕事は誰であれ戸惑います。やってみる前から苦手意識を持ってしまうこともあるでしょう。

 しかし「電話対応」に関しては少し話が違います。昨今の新入社員の間で電話に対して苦手意識を持つ人が増えている背景には、時代の変化が大きく影響しているからです。

 今回は新入社員が電話対応に苦手意識を持つことになった、その原因について考えていきたいと思います。

電話対応が苦手になった2つの理由

 新入社員研修や就職支援をしていると分かりますが、驚くほど電話対応が苦手な若者が増えています。それも電話対応自体が苦手というだけでなく、電話に出ること自体が苦手という声も聞きます。

「電話対応をしながらメモを取るなんて、マジで神です!」という声もありました。

 その理由は実に単純です。単に固定電話に出た経験が少ないからです。ですので、私は対応能力というより経験値の差だと思っています。実際にアルバイトなどで繰り返し電話対応をした経験がある場合には、そこまで電話対応に対しての苦手意識は持っていない人がほとんどです。

 苦手意識が生まれた背景は大きく2つあります。

 1つはそもそも「家に固定電話がない」から。携帯電話の普及に伴い、家に電話がない家庭が昔に比べてとても増えています。インテルセキュリティとMMD研究所の調査によると、年代別で固定電話を持っていない割合は20代で38.4%、30代で35.8%、40代で11.4%、50代で4.5%、60代で4.9%です。現在の20~30 代に関しては、必ずしも固定電話が必要ではないことがわかります。

 もう1つは「家庭で子どもに電話を取らせなくなった」ことです。警視庁では、オレオレ詐欺や架空請求等の振り込め詐欺、振り込め類似詐欺を合わせた特殊詐欺の認知件数を公開しています。平成27年は認知件数で1879件、被害額で67.3億円だそうです。これは都内のみの結果ですから、その件数と被害額には驚きます。昨年の被害額80億円から見ると減少しているものの、決して少ない額ではありません。

 こうした電話での犯罪から子どもを守る方法として、例えばNTTドコモでは非通知の電話はつながらないサービスなどを展開していますが、最終的には「子どもに固定電話を取らせない」という対策が最もシンプルで効果的になってきます。つまり、固定電話がある家庭であっても電話は取ったことがない子どもがこうして増えているのです。

 子どもへの連絡は固定電話ではなく、携帯電話やスマートフォンを持たせればいいだけです。子どもは携帯電話には出ることになりますが、番号が通知されている人からの電話です。

「はい、◯◯です」ではなく、「はーい」と名乗らずに出ればいいわけです。誰からの電話かは一目瞭然なので構える必要もありません。良い悪いではなく、そういう環境で彼らは育っているのです。

 新人研修や就職支援でも、先述のように電話対応については苦手意識、場合によっては恐怖心すら抱いている若者を多く見受けます。また、電話対応の仕方自体は頭に入っていたとしても、明るく元気に応対するとなると、切り替えられない場合もあります。自分では明るい声を意識しているものの、他者から見ると全く明るく聞こえない場合も。電話対応が新人にとって1つの課題となっているのです。

 これまでアルバイト経験などの中で電話対応をしたことがない若者や、新人研修などを特に設けていない企業では、この部分のフォローが非常に重要です。電話に出たがらない新人は、何も面倒臭がって電話を取らないわけではありません。

 ですので「いいから受話器を取れ!」と根性論で片付けるのも危険です。冗談ではなく、まずは電話機自体に慣れさせることから始めなければなりません。社内電話、内線、外線、あらゆることに慣れざるを得ない環境を作ることが大切です。

 単に経験が少ないがゆえに生まれる問題ですので、やり続けることでクリアできます。新人に気を使っていては、いつまで経っても彼らは恐怖心や苦手意識を克服できません。実は電話対応そのものよりも、苦手意識や恐怖心をクリアすることの方が重要な最も重要な問題なのです。

「『電話する』とメールしてから電話ください」マイペースな若者は変えられるか

 苦手意識、恐怖心から行動しない背景には、自分のペースでやり続けたいという彼らの潜在的な思いがあるようです。

 学生であれば、アルバイトは自分のスケジュールに合わせて申請できます。就職活動を始める時期も自分で決めることができますし、極論で言えば学校を卒業するまで就職活動を始めなかったとしても特にペナルティはありません。家族からガミガミ言われることはあるでしょうが、その家族も「卒業して就職しない位なら専門学校に行きなさい」と就職を強制しないケースも少なくありません。

 就職支援をする中で、なかなか就職ができない若者の特徴としてよく見受けられるのが「自分のペースで就活を続けたいので」という考え方です。自分のペースが悪いわけではありません。自分のペースだと、変化に対応しにくくなることが問題なのです。

 自分で困難な課題に立ち向かえれば力となりますが、彼らの多くは困難な課題を後回しにしたい気持ちからマイペースになりがちです。この場合、恐怖心や苦手意識が成長を阻害するものとなります。

 3年程前、ある場所で就職支援をしていた時の話です。急な確認要件があり、20代前半の支援対象者である男性の携帯電話に連絡をしたところ、電話には出てもらえずにメールをいただいたことがあります。

「電話するというメールをしてから電話してください。礼儀を守ってください」

 こんな内容でした。特に早朝でも深夜でもない時間帯だったことから、驚いて周りの若者に聞いてみたところ、彼らの間では電話をする前にメールで許可を取るのは当たり前だという話が返ってきました。「もちろん仕事では別だと思います」という声もありましたが、世代間ギャップを感じたエピソードでした。

 携帯電話やメールが当たり前になり、「電話」というコミュニケーションに対する重要度も変わってきている中ではありますが、先ほどの彼らが言っていた通り「仕事では別」です。もちろん職場によって電話を受ける量や比率も異なると思いますが、先輩や上司は「電話を取る環境」に彼らが適応できるように指導していきましょう。

 環境に適応することについては、新入社員だけでなく私たちも意識しなければなりません。例えば社内システムが大幅に変わった、手作業だった伝票をパソコンで管理するようになった。こういった環境の変化に対して「昔の方が良かった」と考えるのではなく、環境に適応する努力が重要です。

 新入社員の場合、電話対応が環境に合わせて成長していく良いきっかけになります。そのためにもまず、先輩社員や上司が彼らを成長させる責任がある、という意識を持っていただきたいですね。


「いいからさっさと出ろ!」

新入社員「……」

僕も「……」yell

🍎たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は子供、その名は名馬鹿ヒカル!🍏