英国車ロールスロイス、MINI、ジャガーが消える? 気になる「Brexit」の影響

ロールスロイス、MINI、ジャガーが消える? 気になる「Brexit」の影響

英国のEU(欧州連合)離脱、いわゆるBrexitの是非を問う国民投票は、離脱を求める票が残留を上回る結果となった。EUは対応を協議し、英国と約2年間の離脱協議が始まる見通しだ。EUを離れた英国は、独自に各国との貿易交渉などに取り組むことになる。

問題はBrexitが現実のものとなると、英国の自動車セクターにどのような影響を及ぼすのか。日本でもロールスロイスやMINI、ジャガーなど一定の英国車ファンを有するだけに、今後の展開が気になるところだ。

■Brexitは英自動車セクターに大打撃

Brexit問題が英自動車セクターに及ぼす影響として想定されるのが、自動車を輸出する際の関税率だ。EU内の貿易取引で無関税を享受してきた英自動車セクターには大打撃となる。EUがWTO(世界貿易機関)の枠組みで約束している最恵国関税が適用されるとすれば、自動車には10%、自動車部品は5%まで関税率が跳ね上がることになるからだ。

英国の自動車産業における2014年の乗用車総生産台数は約150万台だったが、このうち80%の120万台が輸出され、その50%がEU向けであるという。英国の調査会社が、自動車工業会の会員企業204社に向けてアンケート調査を行ったところ、77%が残留支持であったのも当然といえよう。

■離脱協議の長期化も得策とはいえない

もちろん、英国の国民投票法上では、離脱派が勝利したとしても、必ずしもそれが決定というわけではない。

当面は、EU条約第50条に基づいた「脱退通告」がいつになるのか見届ける必要がある。また、「脱退通告」の前に下院で採決がとられる可能性もある。「脱退通告」がなされて初めて、2年後のEU法の英国への適用停止期限へのカウントダウンが始まるわけで、情勢はなお流動的だ。

「脱退通告」を巡る交渉では、脱退日や移行期間についてはもちろん、英国に住んでいるEU市民やEUに住む英国民の処遇などを含めた新協定について考慮されるだろう。自動車など個別のセクターの協定・条件について協議されるのは、かなり先の話となる。

離脱派の中にはEUと非公式に協議し、ある程度目処が立ったときに「脱退通告」をすれば良いのでは、との意見もある。しかし、協議の長期化で英国の自動車セクターの先行きに不透明感を残し続けることは、必ずしも得策とはいえない。

■考えられる「3つのオプション」

EUによる新協定として考えられるものは、主に3つのオプションがある。

ひとつ目がカナダ・オプションで、EUとの新しい包括経済協定を目指すものだ。カナダとEUのCETA(包括経済協定)の40近い交渉項目は経済に関するものばかりで、租税や社会保障、移民などは含まれていない。

2つ目がノルウェー・オプションで、これはEEA(欧州経済領域)に加盟することで、単一市場へのアクセスを確保し続けることだ。しかし、EEA協定はEU法とほぼ同じ内容のうえ、EUの政策決定には関与できず、EU予算への拠出が求められる。これならば、EUに残留した方が良いともいえるオプションだ。

3つ目がスイス・オプションで、EFTA(欧州自由貿易協定)に加盟した上で、EUと個別協定を結ぶ方法だ。貿易協定を土台として、それ以外は個別合意を結ぶやり方なので、人間の移動、司法・警察、税制、年金といった分野まで交渉が及ぶ可能性もある。しかし、この合意は、金融セクターが含まれていない。

以上を考えると、カナダ・オプションが最も英国の理にかなっているが、情勢はなお不透明だ。カナダ・オプションが選択されたとしても、自動車セクターでどのような交渉となるかは、現時点で全く予測がつかない。

■英国車ブランドが消滅する恐れも

先述した英国内の乗用車総生産台数は150万台と、EU全体の10%ほどしか占めておらず、世界的にみてもドイツの560万台、日本の820万台、中国の1900万台と比べれば、数の上ではそれほど高いわけではない。このことから、Brexitが世界の自動車産業に与える影響は限定的と考えられる。

それよりも気掛かりなのは、今回のBrexit問題が英国の自動車セクターの衰退を加速させかねない点だ。

実際、英国車ブランドのメジャーなものは、ほぼ外資に占められている。たとえば、ロールスロイスとMINIはドイツのBMW、ジャガーやランドローバーはインドのタタ・モーターズ・グループ、ベントレーはフォルクスワーゲンの傘下にある。英国で自動車を生産するメリットの一つとして、EUへのアクセス(無関税)が占める割合は決して小さくはない。そのメリットがなくなってしまったとき、何が起こるのか?外資に見切りをつけられた英国車ブランドが消滅することにもなりかねず、日本のユーザーにとっても気になるところである。

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